遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~   作:特撮仮面

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G本編が始まるぞ!!


筆者のノリと妄想とその他もろもろが爆発的に増加する!! 筆者の全てをくれてやろう、ついて来れる奴だけ、ついて来い!!


彼と新たな始まり

 月読調。彼女はとても不思議な少女である。どれくらい不思議かというと、それはもう大変不思議である。

 

 

「ほーら、良い子ちゃん」

「サイバードラゴンを出してほしいとか言うから、何すんのかと思えば…」

 

 

 唐突に現れたと思えば、サイバードラゴンを出して。なんのことだと首をかしげながら尋ねると、ただ一言触りたい。

 

 そうなってくれば、仮想立体映像ではなく彼自身の能力で召喚した方が早い。そう考えて、中庭でモンスターを実体化させた彼。現れる銀色の、鋼鉄の竜。すると、調はゆっくりとサイバードラゴンに近づいていき――その頭に抱き付いて頬ずりを始めた。

 

 頬ずり、というか最早モフり、といった風だ。もしもサイバードラゴンに毛が生えていたならば、日本のムツ某の如く顔を埋めてその感触を楽しんでいたに違いない、そう思わせる程の傾倒っぷり。夢中でサイバードラゴンを撫でる調に彼が尋ねた。

 

 

「ロボット、好きなのか?」

「当然。この世の中にロボットが嫌いな女の子はいない」

「いや、その理屈はおかしい」

 

 

 真面目に断言する彼女に思わずそう言ってしまうのだが、ふと考えてみると、クリスはアレでいて結構映画やアニメに影響されやすく、二人で何度かロボットアニメを鑑賞した結果彼女のシンフォギアの武装や彼女のファイトスタイルがソレに類似することがあったし、響も結構ロマンチストな気があるが、ジャンク・ウォリアーが好きだったりと何かと男の子が憧れるようなロボットや戦士が好きだったりする。

 

 奏は良く分からないが、翼も結構ロボット好きだ。となると、この世界の女の子、もしくは装者となる人は皆ロボットが好きなのかもしれない。

 

 

「そう、皆ロボットが好き、ロボットが好き…」

「そうだな――って、おいまて、軽く洗脳しようとしてないか?」

「デース」

「切歌の真似すんの禁止」

 

 

 デースで誤魔化されるのはレックスくらいだと調の頭をポカリと叩く。

 

 痛い、と抗議の眼差しを向けてくる調にやれやれとため息をはく。相変わらず良く分からない奴だ。なんと言うか不思議ちゃん?

 

 

「不思議ちゃんは失礼」

「なぜばれたし」

「顔に出てる」

 

 

 何故この世界の女性は自分の考えていることが分かるんだ? 俺ってそんなに分かりやすい? と問いかければ、彼女は顎に手を当てて考えると渾身のドヤ顔をしながら言った。

 

 

「愛だよ」

「何故そこで愛?」

 

 

 自分が分かりやすいことと愛は一体どんな関係があるというのだ。訳がわからず疑問符を浮かべて首をかしげれば、クスクスと調が笑う。

 

 

「いずれ分かるよ、いずれ」

「えー、そこは答えてくれよ調」

「それは私じゃ答えられな――」

 

 

 唐突に言葉を途切らせる調。と、唐突に、それをだのと呟き始めたかと思うと表情を改めて彼に尋ねる。

 

 

「遊吾。遊吾は立花響のことをどう思う?」

「は? なんで急にビッキーの話が出てくるんだよ?」

「良いから答えて」

「あー、ビッキー、響のことか…」

 

 

 なぜ彼女がそんなことを聞いてくるかは分からないが、とりあえず改めて考えてみよう。

 

 立花響、十五歳。栗色の髪にバツの髪留め、そして輝く笑顔が特徴的な少女。誕生日は九月十三日、趣味は人助け、好きなモノは御飯&御飯。そう言えばスリーサイズを教えてもらうという約束だったが未だ聞いていなかったな。

 

 使用するシンフォギアはガングニール。数年前のライブ事件の際に天羽奏のシンフォギアであったガングニールが砕け、その破片が彼女の胸を貫通、その際心臓付近に食い込んだ聖遺物の破片は彼女の肉体と完全に融合し、その結果彼女はシンフォギアの融合体となり、適合者でないにも関わらずシンフォギアを纏い戦うことができるようになってしまった。

 

 彼女のシンフォギア、ガングニールの特徴は繋ぐ力。戦うための力ではなく、人と人とを繋ぎ、誰かを助けたいという彼女の想いにシンフォギアが答えたことで出来た能力だ。この性質故にガングニールは伝説の槍でありながら武装を一切持たず、戦闘スタイルは徒手空拳に固定されている。

 

 そして、彼女は彼にとって大切な人である。

 

 大切な人、というのも、彼がこの世界――彼の辿って来た異世界との交流から、自分たちの居た次元世界を決闘次元とし、便宜上シンフォギア次元と呼ぶことにする――に来て初めて強い関係をもった異性が彼女であったのだ。遊吾の元居た決闘次元とは違い、このシンフォギア次元には決闘と言う文化が存在していなかった。

 

 決闘が全てと言っても過言ではなかった彼は、この次元世界に来てそれを失った。異世界ということもあって彼の常識は通用しないし、身寄りも全くない。そんな中で彼が出会ったのが、彼女だ。

 

 その頃、公園でよくたい焼きの移動式屋台を開いていたおっちゃん、風鳴響一郎という男の元でアルバイトと言う形で匿ってもらっていた彼は、彼女と出会うことで自分と言うものを取り戻し、本来の自分として生きていくことができるようになった。

 

 彼にとって立花響という女の子は、彼が憧れた主人公、ではなく、真正面からぶつかって本当に尊敬し、憧れる異性であり、同時に彼にとってこの世界で見つけたかけがえのない存在である。

 

 そんな彼女と同列の存在として、小日向未来が存在する。

 

 彼女は立花響と違い、普通の女子高生であるが、響を青空で燦々と輝く太陽であるならば、彼女は人を優しく包み込む暖かな陽だまりと言ったところか。黒髪といい正しく大和撫子、母性に、優しさに溢れた少女。しかし、それだけではなく己の意志を貫き通す鉄の意志と鋼の強さを持った少女。しかし、時々ネタに走りだしたり、大真面目にネタをぶち込んでくるというおちゃめな一面もある。

 

 彼女もまた、彼に優しさを与えてくれた人物であり、彼にとってかけがえのない存在である。

 

 そうして考えていけば、彼にとって日本で活動しているシンフォギア奏者とその関係者は彼にとって少なくない影響を与え、彼を導き、支えてくれた人ばかり。とても良い縁を結んでいることを改めて実感すると同時に、彼がこれから彼らに弓を引かねばならないということに少なからず後悔を思わせる。

 

 

「かけがえのない、大切な人、か?」

「小日向未来」

「時々お茶目、俺のことを信じて待っていてくれる。本当にあれだけ信頼してもらうってのも中々ないというか、世話になりっぱなしなんだよなぁ…。かけがえのない大切な人だな」

「天羽奏」

「俺と繋がってたこともあって理解のある人。同じ決闘者として尊敬するし、ツヴァイウィング時代からファンだし、結構こっち来るまでに世話になったし…大切な人だな」

「風鳴翼」

「決闘を教えた先導者として、今後に期待だな。相変わらず凄い歌唱力だし、どんどん魅力的になっていってるからもう、ファンとして凄い嬉しいよな。この間歌ってくれた時は凄い良かったし。大切な人で、ある意味ビッキーと同じく憧れが無いわけでもない」

「雪音クリス」

「天使。近年お目にかかれないほど純粋にいい子だよな。穢れを知って尚真っ直ぐ進んでいくなんて中々できねぇよ。ビッキーもそうだけど。あと、一緒に出かけると面白いし、何だかんだで世話焼きだし、素直じゃなくて隠しているつもりなんだろうけど可愛いもの大好きだし。何あれいじらしい」

「だよね!!」

「お、おう。って調お前しって――」

「…つまり、一言で言うと?」

「おい、キャラ戻すな。…あー、大切な人だな」

 

 

 彼にとって例に挙げた全ての人は大切な人である。区別が全くないことに思わず苦笑した調は、やれやれと言った風に言う。

 

 

「今はそれでいいのかもしれない、けど」

「けど?」

「いつか大変なことになる。大変な選択をしなければいけない時が来るよ」

「…マジ?」

「マジ」

 

 

 そう言って頷くと、また虚空を見る調。何度か頷くと、再度彼を見ていった。

 

 

「精々頑張りなさい」

「……なあ、調?」

「なに?」

「名も無きファラオとか宿ってないよなお前?」

「???」

「いや、気にすんな」

 

 

 それは無いか、と首を振る彼。

 

 彼女の様子が、もう一人の自分や自分に憑依している人格に語り掛けている姿とよく似て居た為そう思ったのだが、それは無かったらしい。

 

 調がレセプターチルドレンの一人であることから、フィーネが宿っている可能性は零ではないが、フィーネ自身が言っていたように、彼女が目覚めれば既存の月読調という少女の人格は消滅するだろうし、そもそも彼女が消滅するとき、

 

 

「いつかの時代のどこかの場所で。私は貴方達を語り継ぐとしましょうか」

 

 

 などと格好良く去っていった彼女が、消滅してから一、二カ月で復活するとか、何というか残念な感じが凄い。まあ結構フィーネこと櫻井了子は残念なところがいくらかあったので正直復活していても不思議ではないが、調の人格が消滅していたりしていないことからその線は薄いだろう。

 

 その後、彼と調は夜遅くまでサイバードラゴンを愛でてみたり、サイバードラゴンの融合体、エクシーズ体などの様々な進化体を使って遊び惚けるのであった。

 

 

 

※※※※※※※

 

 

 

 夜。久しぶりにマリアの家へと帰宅した彼は、割り当てられていた部屋で明日に向けて最終調整へと入っていた。

 

 正確には数日後に始まる世界的音楽の祭典QUEENS of MUSICへ向け、明日から現地入りするため、その為の最終調整である。

 

 サクリストS、そしてネフィリムと、自分たちの切り札の一つであるメサイア、救世竜。自分に出来ることは全て行った。あとは――

 

 彼は腰のベルトに厳重に固定してあるカードケースを取り外す。それは彼の思い出、彼の決闘者としての始まりである拾い集めた寄せ集めのスクラップデッキ。そしてそのデッキケースには一枚の写真――日本でプリント倶楽部、通称プリクラと呼ばれるゲームセンターなどに置いてある写真撮影の機械によってとられた小さな写真を見る。

 

 そこに居るのは、一人の少年と四人の少女。皆笑顔だ。まさか四人同時に撮るとは思っていなかったせいで結構大変だったし、この後も個別に撮ったりしていたからとても疲れたのを覚えている。

 

 この世界で初めて、否、恐らく自分が生きてきた中で自分の想いで繋いできた魂の絆。だが自分はこれからその絆に牙を剥かなければならない。今の自分に出来るのだろうか? 昔ならば慈悲も躊躇もなしにやっていただろうが、今の自分で出来るのか。

 

 そう考えていると、扉がノックされる。この家に居るのは現在自分を含めて二人しかいない。どうぞ、と扉を見ずに声をかければ、部屋に入ってくるのは予想通り、この家の主であるマリア。寝間着姿のマリアはお邪魔します、と部屋に入ってきた。

 

 

「おいおい、ここはお前の家だろ?」

「でもほら、今は貴方の部屋だから」

「なるほどな」

 

 

 カードケースをベルトにかけ直しながら彼が振り返る。どうした? 問い掛けるが返答はない。こう言うとき遠慮はいらないって言ったはずなんだがなぁ。頭を掻きながら自分の横をポンポンと叩く。

 

 

「ほら、何かあるんだろ? 突っ立ってねえで座れよ」

「ええ。邪魔するわね」

 

 

 彼女が慣れた風に彼の隣に腰かける。が、それ以降彼女に動きはない。恐らくは何か葛藤したりしているのだろうが、このまま無言でいるのも時間の無駄。折角の二人の夜なのだ。これから始まる日々を考えれば、ゆっくりできるのは事が全て終わってから。

 

 となれば、やることは一つだ。

 

 

「よし、卓上――じゃねえが、ベッド上決闘だ。デッキはあるか?」

「え? いや、部屋だけど」

「ったく、決闘者としての自覚が足りねえなぁ」

「私は決闘者になった覚えはないのだけど」

 

 

 そんなことを言いながらも、態々部屋からデッキをとってくる時点でマリアも大概毒されている。とは言えそれを指摘してくれる人は一人もいない。

 

 そうして始まった決闘。頭をつき合わせながらマリアが尋ねた。

 

 

「ねえ、遊吾?」

「うん?」

「…本当に戦うの?」

 

 

 ドドドウォリアーでダイレクトね。墓地から効果が使えないだと、インチキ効果も大概にしやがれ! などとやりとりをしながら彼は考える。

 

 

「…確かに、あいつらと戦うのは気が引けない訳じゃねえ。二度と修復不可能な傷を与えちまうかも知れねえ」

「なら!」

「だからこそ満足――いや、違うか…」

 

 

 満足、それは彼に刻まれた最初の言葉である。桐生京華と出会い、初めて人に教えてもらった言葉であり、彼が出会った満足同盟、そのリーダーである鬼柳京介の個性でもあるその言葉。満ち足りる。そこには様々な意味が含まれており、一言の満足には百通りの意味がある。

 

 だが、この場面で満足していいのか。誰かとの大切な絆を壊さないといけないかもしれないという状況で自分は満足するのか。それは本当に満足と言えるのか。違う。満足と言う言葉は何かを壊すために使うんじゃない。何かを築き上げる為に使うものだ。

 

 多くの人に繋げられ、多くの人と繋がり続けた魂。それが自分だ。だが、そんな繋ぎ続けたモノと自分はこれから戦わなければならない。それは自分にとってとても大きな障害となるだろう。サテライトを生きていた自分ならまだしも、今の自分でどれだけ出来るか…。だからこそ彼は改めて決意する。自分は彼女たちと戦うと。この戦い、どんな形でもマリアたちの仲間で居ると。

 

 

「俺は、それでもお前たちと共に在る。繋げられるのではなく、初めて繋げたお前たちと一緒に居る」

 

 

 それに――

 

 

「俺、あいつらに言ったからな。支えようと思った、支えたい奴が居るって。心配かけてるのに、それでも自分を信じてくれるあいつらなんだ。ここでその言葉を反故にして帰ったら、絶対こっ酷く叱られる」

 

 

 てか、格好悪くてあいつらの前に立てねえよ。笑う遊吾。

 

 

「…なんでそこまでするの?」

「そこまでってーと?」

「私たちはそれこそ数ヶ月程度の付き合いでしかないわ。なのに、何でそれほどまでに信じあえる人たちよりも付き合いの浅い私たちをとるの?」

 

 

 私たちの境遇に対する同情? それとも、拾ってもらったことに対する恩義? それとも――

 

 

「そうすればあわよくば――なんて下心でもあるのかしら?」

「………」

「え? …え?」

 

 

 世界という途方もなく強大な敵を相手にすることがどれだけ至難の業であるか。世界という巨大な海から見れば、自分たちはその海を漂流する一枚の木の板のようなもの。それほどまでに強大なものを相手にすることは、彼女の心にに大きな不安の影をおとしていた。その為、普段は言わないようなことを彼に尋ねたのだが――下心と言われてそっと目を逸らした彼に、思わず目を剥くマリア。

 

 当然だ。風呂覗き事件やF.I.S暴露事件、混浴と言う名のおっきい子供(金髪と海胆)のお世話など、彼とは色々な身体的接触が発生したりしていたものだが、そんなことがあったにも関わらず彼が彼女と関わるスタイルは全く変化が無かったし、基本的に決闘馬鹿な彼と下心と言うものが彼女の中で全く噛み合わない。

 

 本当? と信じられないようなものを見る目でじーっと彼を見ていると、視線に耐えられなくなったらしい彼はベッドから立ち上がるとそのままカーテンのされた本棚へ向かい、その中からプラスチックケースを取り出してくる。

 

 それは良く雑貨屋などで置かれている安物のCDケース。彼がそれを開けて取り出すのは――

 

 

「私のCD?」

 

 

 マリア・カデンツァヴナ・イヴが今までリリースしてきたアルバムの数々。態々買い揃えたのか、少し前に発売された最新のものから、どこから取り寄せたのか現在入手困難でプレミアがついている彼女のデビューシングルまでそろえてある徹底っぷり。一体どうしたというのだ!? 驚くマリアをよそに、遊吾はプルプルと震えながら言った。

 

 

「そう、聴き惚れましたよ。持ってかれましたよ畜生! あれだよ、ツヴァイウィングや翼、ビッキーやクリスの歌以来の大ヒットだよ!! ええ、持っていかれましたとも。デビューシングル買取で壮絶な争いがありましたよ。最新盤に至ってはショップで他のファンとの熱い多々買いが行われましたよ!! 悪いか!?」

「い、いや、というか、え? ユーゴはツヴァイウィングのファンなんじゃ…」

「好きな歌手が二人以上居て悪いか!? それになぁ――」

 

「明らかに怪しい男を看病してくれて、カードも大切にしてくれるような、そんな優しくて家庭的で胸も大きくて安産型な良い感じの臀部してて母性的なその癖メンタル結構弱いし実は美味しい物に目がないし負けず嫌いで素直じゃない所もあって結構子供っぽいところが結構ある年上の美女なんて、いくら女に興味が無いとか、只の決闘馬鹿とか言われてる俺でもクルもんがあるっての!! すいませんね、美人と仲良くなれたなんて下心抱いてて!!」

 

 

 俺はこれでターンエンドだ! 顔を真っ赤にしながら叫んだ彼。はあはあと大きく息を荒げている。

 

 まったく、本当に、本当に――

 

 

「私のターン。ドドドウィッチを召喚して、効果でドドドドライバーを特殊召喚。二体のモンスターでエクシーズ召喚、エクスカリバーね。何かある?」

「あ」

「エクスカリバーの効果、オーバーレイユニットを二つ取り除いて、攻撃力を2000の二倍の4000に。バトルフェイズでダイレクトアタック」

「しまったぁああ!?」

 

 

 馬鹿なんだから。

 

 何故何もせずターンエンドなんてしたんだ俺ェ!? と頭を抱える彼を見て、思わず笑ってしまう彼女であった。

 

 

 

「マリア、もう一戦!! もう一戦!!」

「良いわよ。相手してあげる」

 

 

~~二十分後~~

 

 

「ユーゴ、もう一戦!! 今度こそ勝つわ!!」

「えー、どうしよっかなー」

「ユーゴ!!」

「はいはい、じゃあやるか!!」

 

 

 

「――ふぅ、もう遅いし寝ることにするか」

「あ、ほんと。…名残惜しいけど今日はここまでね」

「じゃあ寝るか」

「ええ――ええ!? いや、ユーゴ!?」

「ン? どうしたよ」

「何か自然な感じで布団に入っちゃったんだけど私!?」

「気にすんなって!!」

「気にしなくていいの?」

「ああ!」

「じゃあいっか。おやすみ、ユーゴ」

「ああ、おやすみ」

 

 

 

※※※※※※※

 

 

 

 

 青空の下、世界最高峰の音楽の祭典を目前に控えたスタッフたちが慌ただしく動き回っている。その顔は皆素晴らしい仕事にありつけた充実感と誇りに溢れていた。

 

 そんな人々を観客席から眺める一人の女性――マリアだ。

 

 観客席でありながら、足を組み作業をする人々を見る姿は、女王の名に恥じぬ気品と確かなカリスマを感じさせていた。が、彼女の内心は大いに大荒れであった。

 

 当然だ。大掛かりなライブは数回こなしているものの、世界規模となれば話は別。女王マリアとしての威厳を損なわないように振る舞いつつ、自分たちの台頭を声高らかに叫ばなければならないのだ。

 

 実際、先程まで居た楽屋では電話越しに――

 

 

「無理無理、あの観客席が満席になる中で宣言とか私には絶対無理!!」

『マリア、とりあえず落ち着いて、練習しようぜ!! ほら、ライブの一曲目、不死鳥のフランメが終わったところから!!』

「え? ええっと……ん、んん!! う、うろたえるな! わたしたちの名は――フィーにゅッ!!」

『…ふぃーにゅ?』

「…うわぁあああ!! 駄目よ!! もう終わりよ!! さっき挨拶してきた風鳴翼だって私の姿を見て鼻で笑っていたに違いないわ!! というか何よあのSAKIMORIとNINJA!? ちょっと情報見たけど馬鹿じゃないの!? 何で人間が分身したり影に相手縫い付けたり水の上走ったり壁を平然と駆け上がるの!? 馬鹿なの、死ぬの!? 助けてセレナぁああああ!!」

『マリア姉さん、いくらなんでも無理だよ…』

『可愛いから大丈夫だ!!』

「本当?」

『可愛いから大丈夫だ!!』

 

 

 などと言ったやりとりが繰り広げられていたりした。とりあえず歌でも歌って落ち着こう。そう考えて昔から妹のセレナとよく歌っていた、祖母に教えてもらった歌を小さく口ずさんでいたマリア。そんな彼女の懐で携帯電話が鳴り始める。

 

 即座に取り出して番号を確認。表情を改めたマリアは、通話ボタンを押した。

 

 

『こちらの準備は完了。サクリストS、そしてメサイアが到着次第作戦を始められる手筈です』

 

 

 ついに来た。目を瞑り大きく息を吸いこむマリア。

 

 大丈夫。かっとビングよ、マリア。勇気をもって一歩踏み出す。彼から教えてもらった魔法の言葉を心の中で呟きながら、彼女は立ち上がる。

 

 

「OKマム。世界最後のステージの幕を上げましょう」

 

 

 少女は決意した。これより世界は震撼し、激動する。世界には変革という嵐が訪れ、そして――

 

 

『ああ、彼からの伝言です』

「ユーゴから?」

『今日の晩御飯は奮発しようと思うけど、何かリクエストある? だそうですよ』

「まったく、こんな状況でも変わりないのね、彼」

『…それが、彼の強さなのかもしれませんよ? マリア』

「知ってる。…そうね、ケータリングで美味しそうなものは確保してるけど、ちょっと野菜が多いから――ハンバーグにでもしましょうか?」

『分かりました。そう伝えておきます』

「ええ、お願い」

 

「やった、今日の晩御飯はハンバーグー!」

 

 

 少女の晩御飯のハンバーグの上に、チーズが乗った。




次回のネタバレ

「てめぇ、卑怯だぞ!!」
「何とでも言え、私とて世界を救わねばならん」
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