遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~ 作:特撮仮面
「何者だテメェ…」
野生の猫のように警戒心を露にしてガトリングを遊吾に向けるクリス。
後ろで響が何か言っているがそんなことは気にしていられない。こいつはヤバいと彼女の本能が警鐘を鳴らし続けているのだ。
全身黒ずくめの――体型からして恐らくは男。シンフォギア奏者たちの中にあるその存在は、あまりにも異質で異常な存在であった。
「そんなに睨まないで下さい。恐ろしくてたまりません」
「ハッ、観客席をあたしらにぶん投げた野郎が良く言うぜ」
座席が飛んできた際、イチイバルはその性質上、他のシンフォギアよりも視野が広くなっている。そのため、彼女は捉えていた。観客席の通路、そこでいくつかの座席を大きく振りかぶる黒ずくめの姿を。
座席をぶん投げるなんてどんな力をしてやがる。背格好もあいまって彼の事を警戒せざるを得ない。F.I.Sの三人の前にたつ黒ずくめの男、遊吾。
こちらを警戒する三人を見て、ふと懐かしいという感覚にとらわれた。
そういえば、最初自分は三人と敵対関係にあったな、と。ノイズとなり生き抜いた二年。そして響が覚醒して始まった激動の数ヵ月。あれを越えて、今三人は共に戦う仲間となり、自分は再度敵として立ち塞がっている。
「何が可笑しい!」
「おっと、申し訳ありません。少し、ね」
思わずクスリと笑ったのが聞こえたのだろう、翼の鋭い言葉に両手をあげて謝罪する。そしてそのまま彼は手を腰に当て、執事のように恭しく三人に向かって一礼。
「申し遅れました。私の名は、ユー・トイルイ・テッシ。長たらしい名前ですから、親しみを込めてユーと呼んでください」
あまりにも分かりやすい偽名。だが、それで良い。これでやりたいことは出来る。この言葉をしかるべき人が聞いていればこれから自分が行う行動をある程度予想して行動してくれるはずだ。
名乗りで更に胡散臭くなる。これで三人は先ず戦う相手が遊吾・アトラスとは考えない。俺が仕掛ける罠にはソレが必要だ。幸い、彼女たちの知る知識、俺の過去の映像でも見せていない部分は多々ある。自分の歩みこそ見せたが、どんな存在が、どうやって戦っていたか、などは見せていないのだから。
だが、アレを起動するのは中盤戦から。シンフォギアに対して圧倒的とも呼べる絶望を用いるのはもう少し待つ必要がある。
『マリア、切歌、調。ジェットストリー――じゃなかった。各個撃破狙うぞ』
『手はず通り、切歌と調はツーマンセルで動いてくれ』
『はーい、デス!』
『分かった』
さて、これで後は三人への割り振りだが――。
「やめようよ、こんな戦い!! 今日であった私たちが争う理由なんてないよ!」
響が叫ぶ。それを聞いて彼は、ある種の安心感を覚えた。彼女ならばそうする、と言う予想通りの行動だったからだ。
立花響は力を恐れている。それは、過去に自分が命の危険にさらされ、さらには数の暴力という迫害を経験しているからだ。だから彼女は力を恐れ、傷つけると言うことを恐れる。
だが、この場においてその考えは異端。その考えはあまりにも甘すぎる。
「傷ついたことも無い――そんな綺麗事をッ!!」
「なっ」
調が珍しく表情を露にする。憎々しい、忌々しいと言わんばかりの、歯を食いしばり、響を見下す彼女の目。そこには計り知れない怒りが宿っていた。
「綺麗事で戦う奴の言葉なんか信じられるものかデス!」
「そんな!? 話し合えば分かり合えるよ!! 戦う必要なんか――ッ」
「偽善者…」
「え?」
彼女たちは幼少期から現在に至るまで、レセプターチルドレンとして施設の中で育ってきた。彼女たちは国が利用価値の無くなった自分たちを消そうとしていたことを知っている。それをさせないための今回の作戦であることも。だが、そのせいで彼女たちは帰る場所を、帰る家を失った。マリアだって、隠された森の中の家はあるが、帰ることは許されない。
「この世界には、貴女のような偽善者が多すぎるッ!!」
彼女たちは安らぎを捨ててこの場に居る。そんな彼女たちからすれば、甘っちょろい理想を語る響が気に食わなかったのだろう。敵対心むき出しで次の瞬間には飛び出しそうな二人に対し、彼がそっと手を挙げる。
止めろ。彼の思いを汲んで渋々といった風に武器を下げる切歌と調。
「…話し合い、ですか?」
「はい。話し合えば分かりあえると思うんです! だから!!」
「なるほど。では、話し合いに応じましょう」
「本当ですか!?」
「ええ」
この場での話し合いには応じよう。まあ、応じるつもりはないのでとりあえず精神を潰す。
立花響の一番の強みは、ガングニールによる一点突破の性能の高さではない。フォニックゲインを束ねるという能力もあるが、そこも違う。
彼女の人間性によって起こる、士気の上昇。それが立花響の一番厄介な部分だ。太陽が昇るように、彼女が調子をあげればあげるほど、仲間たちは士気を上げていく。これは、歌が戦闘能力に直結するシンフォギア装者にとってとても効果がある。
奏者の気持ちの入りようでシンフォギアはいくらでも強くなる。故に、彼女は先に潰しておく必要があるのだ。しかし、彼女自体の戦闘能力は高い。ならばどうするか。簡単な話だ。
「ですが、何を話し合うというのです?」
「え? それは、何で私たちが争わなきゃいけないのか、とか」
「争う理由? 私たちがテロリスト、悪であり、貴方方が政府の側――つまり、世間一般で言う正義である。これが理由ではありませんか?」
そうだ。争う理由なんてそんなものだ。信仰している神が違う、好きなモノが違う。争いの理由なんてそんな傍から見たら下らないようなもの。
「それに、立花響さん? 貴女はここに降下する際に何をしようとしていましたか?」
「え? 何って、それは――」
「そう、貴女は風鳴翼の援護をするために拳を振るおうとした。つまり、この時点で貴女は私たちを叩きのめそうとする意思があった。そんなことをしておきながら貴女は話し合いを、という。随分とおかしなことをおっしゃりますね」
「でもそれは――」
「風鳴翼を助けるためであった…。ならばこちらも、仲間を助け、事を為す為に貴女方に刃を振りかざします。さて、他に何か言うことはありますか?」
「あ、う…」
彼女の支えを粉々に砕いてしまえばいい。幸いなことに彼女の脆い面に、先程の調と切歌の言葉が突き刺さっている。振り切れた時の響ほど怖いものは無いが、逆にメンタルをボロボロにしてしまえば彼女は立ち直るのにとても時間を有する。
振り子のようにグラグラと揺れる心。屁理屈を押し付けて、状況に追いつかれる前に、そのまま押し潰す。
「話し合いなんて、均衡していて初めて成立するものです。ですが、私たちと貴女方では力が違う。だから私たちはこうして武力を用いて世界に訴えているのですよ。だから、貴女の言葉なんて――」
「私たちには届きません」
真正面から言ってやる。明らかに揺れた。彼女の身体がグラつく。これで良い。瞳の光が弱まっていることを確認する。こうなったら最早使い物にはならないはずだ。
「ですが――」
彼が動く。野獣のように大地スレスレまで身体を縮めてからの加速。縮地、そう呼ばれる技法とよく似た、瞬間的に身体をトップスピードへと跳ね上げる技術。
彼女の懐に潜りこんだ彼は、そのまま彼女の首を掴んで思い切り持ち上げる。細い、細い首。身体は重いが軽く、筋肉がついているとはいえ若い女性らしい華奢な身体。俺が傷つくなんてのは錯覚だし、仮に傷ついたとして、それは違う。そうだ。俺は自ら捨てるという選択をしたのだ。それなのにこんなことを考えるなんて、どうかしてる。
「その理想は尊いもの。その想いを貫けるのであればあるいは、と言ったところでしょうか」
「立花!!」
「っこの腐れ外道がッ!!」
クリスの射線に彼女の身体を置く。これだけで彼女は撃つことができなくなった。自分の身体が翼に晒されるが、首を鷲掴みにしている以上翼も動くことは出来ない。
苦しみ、もがく響。苦悶する表情にどこかクルものを感じつつ、彼は言葉をつづける。
「その想いを貫きたければ、拳を振るいなさい。貴女のハートを最短で、一直線に伝える為にはソレしか手段はありませんよ」
「あぐっ!?」
そうだ。もう元へは戻れない。振り出しへは戻れない。だが、やろう。決めたのだ。たとえ何があってもマリアたちを見捨てない、と。この世界で繋いだ絆全てを失っても俺は成し遂げる。異世界人というこの世界に存在しない者であるということを利用した計画。ノイズ襲撃から行われている圧倒的なマッチポンプを。
「さあ――」
覚悟を決めろ!!
吠える。太陽の光も、陽だまりも、翼の羽ばたきの奏も安らぐ雪の音も、何も要らない。それらをコストとして自分は為す。自分に出来る最高の友情ごっこを。
響を翼に向かって投擲。同時にクリスに向かって駆け出す遊吾。
『調と切歌は翼を! マリアは響を任せる!!』
『了解デス!!』
『分かった…』
彼の無線に応えて響を抱える翼に斬りかかる二人。だが、マリアからの返答は無い。
「くそっ、近いんだよ!!」
「それはすまないね。近づかないと攻撃できないもので」
「こなくそッ!!」
『ねえユーゴ』
『どうした?』
『…いえ、何でもないわ。ハンバーグよろしくね!』
『もう仕込みは済ませているから安心しろ!!』
クリスは接近戦闘が苦手だ。風鳴司令や翼から何度か指導を受けているところを目撃しているものの、結果的に彼女のシンフォギアの性質上近接戦闘はやはり難しいということで結論が出てしまった。アームドギアを小型拳銃型にすることで弱点を補おうということになったのだが、彼の速度と打撃力が、彼女がアームドギアを展開することを許さない。
抉り込むようなボディブロー。堪らずたたらを踏むクリス。その隙は逃さない。引き絞られた弩の如く打ち出されるストレート。吹き飛ばされたクリスはそのままスピーカーに激突して停止。
「くそっ、好き勝手やりやがってッ!」
「フンッ」
追撃の振り下ろし。横っ飛びに回避したクリスはそのままアームドギアを変形させる。ガトリングでは隙が大きいことを考えての弩の形態。赤いフォニックゲインの矢が形成される。
よくもやりやがったな! 彼女が狙いを定める――が、そこにはスピーカーに拳をめり込ませたまま腕を振りかぶる黒ずくめの男の姿。
「馬鹿力かテメェ!?」
「おおおお!!」
打ち出されるスピーカー。空中機動が不可能である以上撃ち落とすしかない。
連射。雨霰と降り注ぐフォニックゲインの矢によってスピーカーは空中で鉄屑と成り果てる。クリスが急いで彼のいた場所を確認するが、そこに彼の姿はない。
「どこ――上!?」
「ハァッ!!」
月が陰る。上を向けば、そこには拳を振りかざす彼の姿。スピーカーと共に空へと跳んだ彼は、投げた勢いを利用して更に上へと飛び上がったのだ。
防ぐしかない。腕を交差させると同時に打ち出される拳。まるでトラックにでもぶつかったような衝撃と共に彼女の身体が地面に叩き付けられる。
「ガッ!?」
衝撃で肺の中の空気が全て抜ける。チカチカと明暗する視界。目の前が暗くなりそうになるのを、なんとか気合いで持ち直す。
全身に力を込めて立ち上がる。大きく息を吸い、歌を歌い直す。身体の調子を確認。痛む部分は多いがまだまだ戦える。しかし、と彼女は考える。
黒ずくめの男は強い。強いのだが、これは強いだけではない。こいつは自分の、いや、自分達の動きを全て把握している。自分の行った攻撃、そして回避行動が全て失敗していることから、この襲撃のために恐ろしいほどに自分達のスタイルを研究したに違いない。
そして同時に考える。
「さて、まだまだ戦えますよね? 英雄さん?」
「ちぃっ」
彼の戦闘能力なら自分に止めをさしていてもおかしくはないはずだ。事実、先程地面に叩きつけられた時など絶好の攻撃のチャンス。それなのに攻撃しなかったのは何故だ。
そこには何か作戦があるのか、それともこの男が自分に手加減するような理由があるのか。一筋縄では行きそうにもない相手に、彼女は額から流れる汗もそのままに、どうやって相手をするか考え始めるのであった。
「ハァ!」
「くっ!? 届かせないかッ!」
大鎌を弾き、剣を振るう。だが、それは届かない。
最適な距離の取り方だ。鎌と剣、リーチの差を活かして翼の攻撃を届かせない。それどころか、鎌という実戦に向かない武器でよくここまで戦えるものだ。
翼は切歌の動きを的確に捌く。彼女と切歌の単純な実力は、明らかに翼の方が上。現に遊吾の強襲以降彼女は目立ったダメージを負っていない。
しかし、同時に彼女も二人にダメージを与えていないのだ。
「これで――ッ!? またッ!?」
「遅いッ!」
「その隙もらったデス!!」
彼女が距離をとる。切歌の背後には誰もいない。アームドギアを展開しようとするが、それは彼女に向かって撃ち出された無数の円盤――高速回転する丸ノコが襲い掛かる。
あんなものを喰らったらひとたまりもない。急いで飛び退くが、そこに飛び込んでくる緑色の螺旋――切歌の鎌を何とか受け止める。が、不安定な体勢で受け止めてしまったために彼女の身体がぐらつく。
今ッ! 切歌の肩部装甲、そこに不自然に開けられた穴から炎があがる。間接各所に備えられた噴射機構が点火、彼女を緑色の竜巻へと変える。
「ぐぁ!?」
「調!!」
「もうやってる」
弾き飛ばされる翼。切歌が名前を呼ぶよりも早く調は動いていた。
撃ち放たれる二枚の大きな丸ノコ。人間の身体なんて瞬く間に切断するであろうその一撃を翼は受け止めることができない。
激しい直撃音。金属を削る不快な音が響く。受け身すらとることが許されず、そのままステージの大型モニターに叩き付けられる翼。そこへ一枚目から数秒遅れて二枚目の鋸が襲い掛かる。
「ぐわぁあああ!?」
モニターから落ちる翼。そんな彼女を見て、切歌は思わず顔を背けたくなった。
この戦闘が始まる前、遊吾は言った。切歌と調のコンビネーションは、二課のどの奏者も上回る、と。
彼女のシンフォギア、イガリマと、調のシンフォギア、シュルシャガナは対となるシンフォギア。中、近距離で力を発揮するイガリマと、中、遠距離の戦いを得意とするシュルシャガナ。火力と手数を互いに補い合うその組み合わせは、ずっと共にあった切歌と調という二人が使用することでより強力に作用する。
さらに、切歌も調も小柄な女の子だが、リーチの問題は補われ、ついでに相手の射程外から攻撃が加えれるのだ。
だが、それだけで勝てるほど二課の装者は甘くない。故に彼は彼女たちに位置取りを教えたのだ。
切歌と調は無意識的に互いを補う動きを行える。ならば、連携について口出しすることはない。むしろ口出しをすれば彼女たちの動きは悪くなってしまうだろう。だから彼は二人に、戦闘の際は極力敵を背後に置けと教えた。基本としてシンフォギアの一撃はデカい。だからこそ敢えて回避行動をとった場合に仲間を誤射するような位置取りをし続けることで、装者の技を放ちづらくする。
現に翼はその技のほとんどを封殺されてしまっていた。蒼ノ一閃は撃ち出しが早いものの、放った刃は物体に当たるかフォニックゲインが減少しきるまで消えることは無い。そのため、狭い戦場では誤射の危険性が上がる。彼女の新技、風輪火斬は発動までのタイムラグがあるため、二人の連携によって放つことを許されない。彼女が覚えている忍術もまた、二人が高速で動き回り、片方の動きが止まればもう片方が迎撃すると言った具合に対処されるせいで使い物にならない。
立ち上がる翼。闘志は萎えていないようだが、ダメージは無視できないようだ。苦しそうな彼女の表情を見て少しだけ気が引けてしまう切歌であったが、自分たちのやるべきことを思い出して気合を入れなおす。
「調、ドンドン行くデス!!」
「うん!!」
戦の神が振るいし、赤と緑の刃が、羽ばたく翼に牙を剥く。
「ぐっ、このッ!!」
「そんな腰の入ってない拳でッッ!!」
「ぐぁあ!?」
響の拳が外套によって弾かれ、無防備な胴体に彼女のヒールが突き刺さる。
弾き飛ばされる響。それに追随するように鋼鉄の刃の如き切れ味の外套が襲い掛かる。
「くぅっ!?」
脚部アンカーを射出。空を弾いて体勢を立て直す響。だが、空中でアンカーを射出することは現在の形態では身体に負荷がかかり過ぎる。脚部に奔る痛みを無視して何とか外套を避けることに成功する――が、着地した彼女の目の前には、既に拳を構えて待ち構えるマリアの姿。
「ハァッ!!」
「あぁあ!?」
拳を上げて防ぐ。何とか防御に成功するが、足元がおぼつかない。精神的なショックがそのまま身体へ、そしてシンフォギアへフィードバックされているのだ。現在の彼女は、時限式であるマリアよりも弱く、脆い。そんな彼女の姿に思わずマリアは吠えた。
「たかがその程度!? その程度で貴女はそのガングニールを、想いを貫く無双の刃を振るうというの!!」
「く、う…私は、誰かを、助けたくてッ!!」
そう。マリアは顔を伏せる。響の構えは異常に不格好であった。日ごろの鍛錬の成果なのだろう。表面的に見ればその構えは美しく、力強い。
だが、その中に力は無かった。心の篭らぬ拳。いくら想いを貫く為のガングニールであっても、彼女の悲痛な叫びを力へと変えることは出来ない。マリアが両手を合わせて握り締める。彼女の手甲が撃ち出され、それは槍となって彼女の腕の中に納まる。
アームドギア、ガングニール。その名に相応しい無双の槍。彼女が歌を高める。同時に槍の穂先がドリルのように高速回転を始める。
高速回転は空気を巻き込み小さな竜巻へと変化する。そして、その回転が最大限に高まった時、彼女は駆けだした。
「その程度で、その程度で彼の支えだなんて――笑わせるなッ!!」
「あっ――」
♰Spiral Spear Strike♰
響が再度防御を固める。だが、それを身体の回転と共に撃ち出した外套が跳ね上げ、その勢いのままマリアがガングニールを叩き付ける。
烈風の如き一撃。響は悲鳴を上げることすら許されず、紙屑のように吹き飛ばされる。
彼女がどうなるか何て、気にする必要も無い。この程度で折れるのならば、その程度の器だっただけの話。思わず熱くなってしまった自分を諌めながら、彼女は調たちの援護に回ろうと動き出すが、その前にF.I.Sのメンバー全員に無線通信。通信の送り主はナスターシャだ。
『残念ですが、最終手段を用いります』
『…やっぱ集まらなかったか』
『はい。遊吾の持つ、フォニックゲインを回収する能力を利用しても起動に必要なフォニックゲインの62%しか確保できませんでした。それ無しでは34%。少々やりすぎたみたいですね』
『34は出来る女の数字なんだが、仕方がないか。というわけだお前ら。増殖ノイズ君をぶっ飛ばし次第撤収!!』
会場の中央から、緑色の光が溢れ出す。
そこから現れるのは、緑色の大型ノイズ。増殖分裂型だ。マリアがノイズの能力起動のために、アームドギアから光線を発射。ノイズを炸裂させると同時にわき目も触れずに退却を始める。
増殖分裂型ノイズ。それは一気に殲滅しなければ、幾らでも分身を形成、その存在を増やし続ける特殊なノイズのことだ。ソロモンの杖の研究によって発覚したその存在は、攻撃を受けた場合にそれをエネルギーに変換し、新たに自分の分身を作り続けるという特殊な性質を持つ。その為、これを消滅させるには許容容量を遥かに上回る力で無理やり轢き殺すしかない。
単純計算、絶唱一発分。果たして彼女たちはどうするか。原作のようにあの技で粉砕するのか。作戦プランの変更に、これからを想いつつ、彼は考える。
今回の作戦。戦闘の面で言えばこちらの圧勝であるが、その内容は正直褒められたものではない。徹底的に彼女たちの戦闘スタイルを計算しつくして、メタにメタを張って叩き潰しただけである。F.I.Sの装者三人は皆適合率の低いリンカー投与の時限式奏者であることを考えれば、それでもいい戦績だが、これがいつまで続くか分からない。それほどまで正規装者と時限式装者には力の差がある。
これからどうしていこうか…。そんなことを考えながら、彼は暗闇を駆けるのであった。
「うわー、何ですかアレ」
「あれじゃね? オーロラオーロラ」
「綺麗」
「あんな化け物と戦わないといけないわけ…」
「マリア。響は化け物じゃないぞ? 日本にはもっと化け物がいるからな」
「え? マジ?」
「マジ。融合症例で、NINJAやりつつOTONAやってシンフォギア奏者やってるおっさんも居るし。NINJA居るし、垂直跳びでビルの屋上に一っ跳び。コンクリでノイズ撃退して更にラスボス素手でボコすOTONA居るし」
「…日本って何なの?」
「…修羅の国?」
『ああ…』
「…ああ、俺だ俺だ。プランDを発動した。これから無茶苦茶していくが、そちらの首尾はどうだ?」
「なるほど、今のところ順調ってわけか。頼んだぜ。関係各所にはこっちから連絡入れとくから」
「…そうだな。でも、これが俺にできる最善だ。最後に勝ち逃げさせてもらうさ」
次回予告
「アンチリンカー? どうせならシンフォギア纏わせなくしようぜ」
「…外道だね、君」
「ばっか、俺の半分は優しさで出来てんのよ。てか、博士にゃ言われたくねえよ」
遊吾、お前マジで修復不能なレベルで絆ぶち壊しに行ってるなおい…。どうすんのよ、コレ。
GX最終話、そしてラジオから思いついたネタ
「マリアさんのシンフォギアから盆踊りが流れ始めるんだよー」
「本当ですか!?」
「でたらめを言うんじゃない!? というか、それは翼のシンフォギアの役割でしょ?」
『あ、そうか』
「お前たち……」
「あ、でもあたしのイチイバルはやっさいもっさい流れるぞ?」
『マジで!?』
「ああ。大分前に、遊吾とやっさいもっさいの踊りの練習してるときに、なんとなく心の中で歌ったらシンフォギアからやっさいもっさい流れだした」
『ジーッ』
「な、わ、私はやらないぞ!?」
「――話は聞かせてもらったァッ!!」
「奏さん!?」
「今年の忘年会の出し物は、奏者絶唱、カラオケフォギアだ!!」
「先輩のから恋の桶狭間が流れ始めるのか…胸熱だな」
「クリス!?」
「遊吾・アトラスさんかぁ…ボク、あってみたかったなぁ」