遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~   作:特撮仮面

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本編を進めることもあるが、ふと頭に湧き出てきたネタを書き殴る。

この話は、本編にまったく関係ない、混沌遊戯絶唱次元のお話です。GもGXもごちゃ混ぜ。正しくこの小説を混沌に叩き落してやると言わんばかりの話となっています。

う○い棒のど真ん中をぶち抜くような気分でお読みください。


突然湧いてきた電波的番外編~ハロウィン編(その一?)~

 ふと目が覚めた。夢見が悪かったわけでもないし、何か気になることがあったから眠りが浅かったわけでも無い。ただ、何か、何かが自分に危険を囁いたのだ。

 

 彼が目を覚ましたのは、特異災害対策機動部二課、現在、S.O.N.Gと名乗っている国連所属のとある機関の管理する一軒家の一室――ではなく、街から離れた寂れた破棄都市区域にある、比較的損傷の少ない家の一室。

 

 現在の彼にはしっかりとした家があるのだが、一人きりで大きな一軒家に住むというのは、元々サテライトで孤児として一人で生きてきた彼にとってあまり居心地がいいものではなかったし、何よりも何かと寂しい。この世界に着てこのかた孤独と言うものと基本無縁なこともあって、一人で居るということに対する耐性が落ちてきているようだ。

 

 その為、彼は時折こうして元々拠点にしていた寂れた場所に、身を隠すようにしてひっそりと訪れる。だが、これに関してはまだ誰にも話していないはずなのだが…。

 

 廃ビルの二階部分。その一室で目を覚ました彼は、部屋に近づいてくる奇妙な気配を察知して布団から起き上がると静かに扉の近くへと移動した。

 

 腰を落として構える。相手は一人。ゆっくりと部屋に近づいてくることから、明らかに自分がこの部屋に居ることがバレていると見て間違いは無い。しかも、この気配は装者たちの気配ではない。つまり、自分に怨みを持った連中か、はたまた某国からの刺客か。

 

 少しずつ気配が近づいてくる。心の中でカウント。五、四、三、二、一――

 

 今っ!! 彼が部屋から飛び出すと同時に拳を相手に向かって突き出す――だが、それは一瞬の抵抗の後呆気なく相手の身体を突き抜けた。

 

 人肌程度の温もりを感じさせる液体――水だ。無色透明なそれが廊下にぶちまけられる。こんなことをするやつなんて彼が知る女性の中で一人しかいない。

 

 

「トリックオアぁ」

 

 反射だった。気配も何も感じていないが、彼は己の決闘者の本能に従って撃ち放った拳を引き絞り、廃ビルを揺るがす震脚と共に後方に向かって撃ち放った!!

 

 

「とりぃいいい――」

「満足裏拳ッ!!」

「ィグゥッ!?」

 

 

 腹に突き刺さる裏拳。みっともない声と表情をしながら身体をくの字に曲げてその場に崩れ落ちる青色の少女。

 

 

「って、なんだ。ガリィか」

「――は、腹パンしてから気づくとか、この鬼畜め…これが装者だったらどうしてんのよ…」

「ばっか。あいつらの気配を間違えるはずねえだろうが」

「う、ぐぐぐ」

 

 

 お腹を抱えて苦悶の表情をしつつも彼を睨み付ける少女。

 

 病的なまでに白い肌。濃い藍色の髪に蒼色の瞳。全身が水のような青色で統一され、メイド服のようなドレスを身に纏い、身体の関節、その至る所に人間には無い亀裂の入った少女。名前はガリィ・トゥーマーン。魔法少女事変と呼ばれた事件の首謀者に仕える、オートスコアラーと言われる自立する人形の一人である少女。

 

 そんな彼女は、彼と初めて出会ったときの屈辱――と彼女は考えているが、実際はただの黒歴史である――を果たすために、彼に対して何かとちょっかいをかけてくる。

 

 そのことごとくを彼は腹パンで回避してきたわけなのだが、どうやら今回もその例に漏れないらしい。

 

 

「こんなにポンポン腹殴りやがってぇ…子供ができなくなったらどうすんの!!」

「そんときゃ、どういう形であれ責任取るさ」

「はへ?」

「てか、お前人形なんだから子供なんて産めないだろ」

「…うわ!? こいつ種族差別しやがりましたよ!? というかオートスコアラーは皆人形だっての!! 何? ガリィと他の奴らと何が違うッての!?」

「もうちょい胸と尻成長させてから来い」

「ミカはどうなんのさ!? マスターやエルフナインだって大概じゃないのよッ!!」

「ミカは可愛いから大丈夫だ!! キャロリンもエルフナインも可愛いから大丈夫だ!!」

「…ほらぁ、ガリィだって可愛いですよー?」

 

 

 回復し立ち上がると、その場で一回転。スカートをヒラヒラと風に揺らし、停止と同時に止めと言わんばかりに頬に人差し指を当ててあはっ、と可愛らしい笑顔。

 

 

「はっ」

「鼻で笑ったなてめぇえええ!!」

 

 

 いかに性根が腐っていると言われるガリィであっても、これには本気で怒った。掴みかかってくるガリィの額に手を置いて攻撃できないようにしつつ、彼は尋ねた。

 

 いくらオートスコアラーが暇であっても、態々自分のところに来る必要なんてないだろうに、と。

 

 

「そ、それは~、その~」

「ん? …なんかさっきトリックだか何だかって言ってなかったか?」

「ギクッ!」

「…悪戯なんてお前、毎回してるだろうに。何言ってんだか」

「い、いやー、それはですねー」

 

 

 彼女がここに来た理由。それは今日が世間一般では、ハロウィンと呼ばれる日であることが関係している。

 

 ガリィと遊吾は、こうやって顔を突き合せれば言い争ったり、腹パン合戦をしたりする仲であるが、実際のところは仲が悪いというわけではなく、むしろ良い方である。

 

 というのも、丸くなったとは言え遊吾は元々手段を選ばない上に多少ゲスな行為なら躊躇なく行うことが出来る男である。甘々な所は多々あるが、それでもやれるところは顔芸をしながらもしっかりとこなす遊吾のことをガリィはしっかりと評価しており、毎回毎回突っかかるのも彼女が人とのコミュニケーションを行うのがあまり得意ではないからである。

 

 

「ま、まあ今日はこのくらいで勘弁してあげますけど」

「はいはいっと、トリック……あ、そういや」

 

 

 そんな彼女にとって、ここに来たのがハロウィンを誰よりも早く遊吾と楽しみたかったなどという自分の心はそう口に出せる訳でもなく。そんな捨て台詞とともに彼女は転移しようと懐に手を入れた。

 

 そんな彼女のことを放って彼は何やら部屋にある棚のなかを漁っていたが、目当てのものを見つけたのだろう。あったあったとそこから袋を取り出して――ガリィに放った。

 

 

「っと! …なんですかこれ?」

「今日はハロウィンってのやるんだろ? だから菓子」

 

 

 ガリィが受け取ったのは、掌サイズの小さな袋に入っているのは小さなクッキー。と、そこでガリィは気付いた。

 

 一口サイズより少し大きい程度のそのクッキーの表面にはなにかが刻まれている。一体何なのかと目を凝らせば、そこに描いてあるものがなにかわかった。

 

 紋章だ。オートスコアラーたちは、それぞれに属性、対応する紋章が存在する。ガリィの場合は聖杯。彼女の紋章が刻まれているのだ。

 

 こんなものが市販の物のはずがない。驚いてガリィが彼を見る。が、彼は既に玄関に向かっているところだ。

 

 

「どうせ二課に行くんだろ? ほら、行くぞ」

 

 

 彼女を見ずに歩き出す彼。だが、そこで彼女は見た。彼の耳が微かに赤色に染まっていることに。

 

 確かに最近は寒い日が続いている。だが、この部屋はしっかり対策されているせいで暖かい。ならば、あの耳の赤らみはどうかんがえても寒さから来るものではない。

 

 なぁるほどぉ。彼女が表情を変化させる。転移する予定だったが変更だ。

 

 

「あれれ~、どうしたんですか~? 顔が真っ赤ですよぉ?」

「……」

「あ、ちょっと!? 扉閉めないでくれます!? まだガリィが居ますよ!! 何? 光の護封剣? ちょっと本当に何やってんだこのドクサレ決闘者ッ!!」

「だぁあああ!! うっせえまな板ブルーッ!!」

「誰がまな板だッ!! 残念ですけど、風鳴翼の方が小さいですからねッ!!」

「おまっ!? 翼最近マジで悩んでんだから言ってやんなよ!?」

「ならば早く開けろ!!」

「ったく、しゃーねーなぁ」

「しゃーねーじゃねえよムッツリプリンス!!」

「誰がムッツリプリンスだこの性根腐った青色馬鹿!!」

 

 

 子供のような言い争いをしながらビルを後にする二人。

 

 だが、気付いているだろうか? 遊吾もガリィも本気で罵倒している割にはその表情がとても楽しそうな、幸せそうなものであるということに。

 

 

 

※※※※※※※

 

 

 

「…ここはコスプレ会場か何かか?」

 

 

 ガリィと共にS.O.N.Gのハロウィンパーティー会場にたどり着いた彼の第一声は、それであった。

 

 どこを見ても、仮装した人、人、人。その誰もがどこかで見たことのある顔ぶれだった。

 

 

「お、来たか遊吾!」

「ああ、おっさんも――お前誰だよ!?」

 

 

 やって来たのは風鳴響一郎――のはずなのだが、何故全身鎧。しかもつり上がった眼、そして特徴的な紺と白のマスク。その姿を彼は良く知っている。

 

 バスターブレイダー。しかも彼が元の世界で実験調整用にとある会社から借りていて現在も借りたままになっている最新版融合モンスター、竜破壊の剣士―バスターブレイダーその人の姿。

 

 なまじ鍛え抜かれた肉体があるせいで似合っているどころか、カードの精霊じゃないかと疑ってしまうほどの圧倒的存在感である。

 

 

「どうだ? にあってるか?」

「似合うなんてもんじゃねえよ…あんたやっぱモンスターの生まれ変わりなんじゃねえの?」

「はっはっは。馬鹿を言え。そんな存在がどこに居るってんだ」

 

 

 そんな存在――目の前に琰魔竜レッド・デーモンの生まれ変わりが居たりするが、それは割愛する。

 

 そんな二人のやり取りに気づいたらしく、複数人の人物が彼に近寄ってきた。

 

 

「ああ、遊吾君じゃありませんか」

「れっく――レックス!? おまっ、どこの神官だよテメェ!?」

「石板に描かれていた神官を模してみたのですが、にあっていませんか?」

「似合っているから困ってんだよ…」

 

 

 一人は、上半身丸出しで、胸から腹、背中に何やら細長い円、竜の紋章が描かれている。

 

 彼の名前はレックス・ゴルドウィン。そしてその仮装は彼は知らないことだが、彼と同じような名前のレクス・ゴドウィンと呼ばれる人物が行っていた戦闘形態、通称超官モードだったりするのだが、これまた無駄に鍛え上げられた肉体と、二メートルを超える巨体が忠実を良く再現している。

 

 

「……やあ」

「ガチネフィリムじゃねえか!?」

「ごふぁ!?」

 

 

 次に現れた人物の姿を見た瞬間に彼は動いていた。拳を握りしめ、震脚と共に敵を討ちあげる。

 

 昇竜。顎に直撃したそれによって完全に意識を狩られたウェル博士は、そのまま床に叩き付けられるとどこからともなく現れた救護班に搬送されていった。

 

 はぁ、はぁ、と肩で息をする遊吾。なんだこの混沌とした空間は。一体何が起こっている? 混乱している彼の肩に手を置く人物。

 

 今度は誰だよ…。疲れたように振り返る彼――

 

 

「ワクワクを思いだすんだ!!」

「…ふぅ、疲れてんだな」

 

 

 イルカ。イルカである。青いイルカ。筋肉ムキムキマッチョマンのイルカである。顔を正面に戻し、俺、疲れてんのかなぁと目元を擦り、再度振り返る。

 

 

「ワクワクを、思い出すんだ!!」

「…洸さん、なにやってんすか」

「遊吾君――僕だ!!」

「洸さん、あんただった――ってぇえええ!? いや、このドルフィーナ星人誰…って、まさか――」

「そう、そのまさか。次元を超えてきてもらったんだ!!」

「こんな下らないことのためにネオスペースから呼び出してんじゃねえよ!?」

 

 

 ヘルメットに黒のサングラス。そしてライダースーツ。いつもの謎のDホイーラーAの格好をした立花洸が、ドルフィーナ星人にお礼を言う。

 

 君もようやくワクワクを思い出せたようで安心したよ。ドルフィーナ星人は彼にそう言い残して自分の宇宙へと帰っていった。

 

 

「ああ、遊吾君。来てくれたのか」

「…良かったッ!!」

「ど、どうしたんだい?」

 

 

 後からやってきた風鳴弦十郎の衣装を見て思わず泣きながら地面に崩れ落ちる遊吾。

 

 彼の装いは、簡単に言えばジャック・オ・ランタン。頭にかぼちゃがのっているのは些かシュールであるが、悪くは無い。

 

 ようやくまともな見た目の人が出てきたことに彼が安堵していると、目の前でなにやらこしょこしょと話し始める弦十郎と洸。

 

 話がまとまったのだろう。二人は頷くと、眩い笑顔で彼の肩をつかんだ。

 

 

「遊吾君。ちょっときたまえ」

「はっ? …いや、なんか嫌な予感しかしないからやです」

「まあまあ、そう言わずに」

「え? なんなのこの人たち怖い!? ちょっ、まっ、イヤァアアアア!?」

 

 

 お前もコスプレをするんだ! 断る! 大丈夫、元からコスプレみたいなものでしょ? ああ? テメェ俺のコート馬鹿にするなよ!! あ、すいません。マジで調子乗ってましただからまってええ!?

 

 遊吾はそのまま二人に何処かへと連行されるのであった。

 

 

 

 

「………ああ、くそ。どうしてこうなった」

 

 

 嘆く。そこに居るのは一人の学生。

 

 いつものツンツン海胆頭はどこへやら。しっかりと流した黒髪。わざと着崩された赤色のブレザーにネクタイ。黒のカッターシャツ。デュエルアカデミア・ネオシティ中央校高等部の制服。

 

 簡単に言えば、只の格好良い学生だった。仮にもあらゆる戦場を経験し、己を研鑽してきた男。元々高い身長も相まって、イケメンと言うよりかはワイルド、男臭い格好よさを身に纏っていた。

 

 一体どこから入手してきたのかは知らないが、自分な好みでほんの少し制服を大きくしている無駄なこだわりよう。

 

 仮装と言えば仮装だが、なにか違わないか。そんなことを考えながら彼はボーッと壁際でパーティを眺めていた。

 

 学生服、というのが些か恥ずかしいこともあるのだろう。気配を絶つようにして自分を壁と一体化させる遊吾であったが、そんな彼にかかる声。

 

 

「遊吾さん、ですよね?」

「なんだ、ビッキー――お、おまっ、なんつう格好を!?」

「え? えっと、狼男のコスプレですよ?」

 

 

 そこにいたのは、栗色の犬。いや、本人が言うには狼らしい。

 

 頭頂部につけられた髪と同じ色の耳。シンフォギアのヘッドギアめいたデザインのそれ。最近伸ばしているらしい髪がさらさらと流れる。

 

 チューブトップと言うのか、胸回りは栗色の毛で覆われ、腰から下も栗色の毛で覆われている。手足は前腕と膝から下にかけて犬の手足のようなものがとりつけられており、腰からは尻尾がのびる。

 

 なんというか、エロかった。身長差のせいで谷間が見えるし、くびれすごいし、二の腕凄いし太股眩しいしというか格好が明らかにこの時期にそぐわない水着擬き。彼女の健康的な鍛え抜かれた、それでいて確かな若さを感じさせる肢体。それをこれでもかと見せ付けてくる露出度の高い衣装に思わず動揺を隠せない遊吾。

 

 

「どうかしましたか? 遊吾さん」

「い、いや。なんでも」

 

 

 小首をかしげる姿が異様に可愛らしい。

 

 なんだよこの生物兵器。新手の聖遺物か何かか? 思わず目を逸らす。それを見た響は似合ってませんかと肩を落とした。心なしか尻尾と耳も下がっているように見える。

 

 

「違う! 似合いすぎてて目のやり場に困るんだよ! てかこんな寒い時期にそんな格好してんな。ほら、これ貸すから」

「あ、ありがとうございます」

 

 

 とりあえず、目に毒だしいくら暖房がきいているからと行っても肩や臍丸出しなのは頂けない。というか不特定多数にこれを見せるのは腹が立つ。響にブレザーをかけてやると、胸元を手で引き寄せつつはにかむ。

 

 その笑顔にお、おうと目をそらす遊吾。と、そこで響が声をあげた。

 

 

「あ、そうだ遊吾さん!」

「なんだ?」

「トリックオアトリート! お菓子をくれないと悪戯しちゃいますよ?」

 

 

 正直なところ、狼の姿で悪戯何て言われれば、悪戯とはどんなものか少し気になる。

 

 とはいえ、悪戯なんてされる気は毛頭ないので彼は足元においていたバックパックの中から一つの小袋を取り出すと彼女に差し出した。

 

 

「お手」

「わん! って、何やらせてんですか!?」

「いやー、ビッキーならやってくれると信じてました」

「もう…これは?」

「ああ、菓子菓子。悪戯はされたくないからな」

「んー……これ、手作りですか?」

「さーてな」

 

 

 どうやら二課装者御一行の到着らしい。が、その格好を見た瞬間彼は即座に移動すべきと判断し動き出そうとする――が、それを響が止める。

 

 

「ほら、皆来たんですから」

「おい、手を離せよ。いや、離してくださいほんとお願いしますからッ!」

「というかなんで逃げるんですか」

「格好が恥ずかしいってのはもちろんだけど、コート無いと不安なんだよ。とりあえずデッキと決闘盤はあるけどよ…」

「あ、その二つはあるんですね」

「まあ、決闘者だからな」

 

 

 とりあえず行かせて? いやです。と押し問答を繰り返していれば、彼女たちが気付いて声をかけてきた。

 

 

「まったくもー。響、早すぎだよ」

「えへへ、ごめんごめん」

「…遊吾さん?」

「あ、ああ」

「すごい格好良いですよ!」

「そ、そうか?」

「はい」

 

 

 そう真正面から誉められて悪い気はしない。

 

 頬を掻きつつ、彼は声をかけてきた少女――小日向未来の服装を見る。

 

 雪。夜空のような藍色の着物だ。花――というよりは氷の結晶のような紋様が藍色の中に綺麗に散りばめられており、まるで夜空から雪が降っているように見える。

 

 

「雪女?」

「はい。…どうですか?」

「どうって…」

 

 

 結い上げられた黒髪。響のものとは違い、肌の露出がとても少ないので、チラリと覗く白いうなじがなめかしく、また着物のせいか今の彼女が歳上の大和撫子に見えてくる。

 

 結論。響に負けず劣らずエロい。というかこっちは響にはないエロスがある。ボッキンパラダイス的なエロさは響に部があるが、大人の色気はこちらの方が上か。

 

 

――って、なんでさっきからエロだのと考えてるんだよ俺…。

 

 

 内心ため息をはくが、事実色気が、艶やかな雰囲気があるのだから仕方がない。

 

 

「似合ってる」

「ふふ、ありがとうございます」

 

 

 微笑みだけで悩殺されそうだ。余裕のある雰囲気に、何故かどんどんと追い込まれている気がしてならない遊吾。と、彼女の背後から何やら言い争う声が聞こえる。

 

 

「まあまあ、二人とも折角コスプレしたんだしさぁ?」

「こ、これはさすがに恥ずかしいわよ奏!?」

「翼、あんたの座右の銘は?」

「常在戦場」

「よし。これは戦なんだ。分かるね? さ、今こそ戦場に立つんだ!」

「なるほど…よし!」

「や め ろいやホント。いくなら先輩だけにしてくれよあたしは――」

「雪音よ、共に戦場を駆けようぞ!」

「やけくそになってねえか先輩!?」

 

 

 現れたのは三人の女性――だが、その服装が問題だった。思わず顔を背ける遊吾。

 

 似合ってなさすぎたのか? いや、違う。見た目が面白かった? それも違う。

 

 これまた前の二人とは違う意味で似合いすぎていたからだ。

 

 天羽奏は、西洋のドレス。こぼれ落ちそうな胸元。肩口が絞られてふわりと膨らみ、スカートが花のように膨らむ。少し子供っぽいデザインだが、それが彼女の持つ快活な雰囲気と合わさり、明るい大人の女性を演出していた。

 

 風鳴翼。これもドレスなのだが、こちらは魔女――なのだろうか?

 

 というのも、大きく開いた胸元に、刃のように鋭い黒地の下から広がる、白いスカートに、黒の手袋。スカートの白地が少ないため、彼女の長い脚がチラチラと見えてすごい気になる。

 

 戦乙女のような服装であるが、頭に明らかな三角帽子と手に箒。恐らくは魔女のはずだ。背中に翼があれば、ヴァルキリーとか、堕天使だったかもしれない。一瞬脳裏にマキシマという単語が浮かび上がったが、気のせいだろう。

 

 そして雪音クリス。何てことはない。夢魔である。淫魔である。サキュバスである。

 

 とはいえ、そんなRが付く本やゲームほど露出が激しいと言うわけではない。服装も赤色のドレス。それはまだS.O.N.Gの前、フィーネの仲間として彼女が戦っていた頃の赤色のドレスに良く似ていた。

 

 とはいえ、そこは夢魔の仮装らしく結構過激だ。大きく開いた胸元にへそ出しルック。バニーガールコスチュームをより過激にしたデザインと言えばいいのか。側頭部から伸びる羊の角に、腰から伸びる尻尾。とりあえず翼や奏ではまだいいとして、何でクリスはこんな服になってしまったんだ。

 

 頬を染めるクリスに、少しだけ呆れを含んだ視線を送ると、彼女が狼狽えながら応える。

 

 

「し、仕方ないだろ。こういう奴しか残ってなかったんだよ!!」

「どういうチョイスしてんだよ主催者ァ!? 正直ありがとうございます!!」

「お前はどっちなんだよ!?」

「仕方ねえだろ、男なんだから!!」

「うっせぇこの変態ッ!!」

「露出魔に言われたかねえわ!!」

「ばっ、だ、誰が露出魔だこの!!」

「落ち着け雪音。アトラスは恥ずかしがっているだけだ」

「ばっ、ちげぇよ!! 別に動揺もしてなけりゃ、恥ずかしくもねえよ!?」

『ああ…』

「違うッての!?」

 

 

 装者たちの何かを察したような頷き。別に照れてなんかいないと彼が言うが、誰も聞く耳を持たない。それどころか、響やクリスに至ってはわざと彼に身体を絡めようとしてくる。

 

 壁際で待機していたことが裏目に出てしまった。背後が壁である以上前か横に逃げるしかないのだが、前は翼と奏、横は未来、クリス、響。四面楚歌とはこのことか。どうすればいいッ!? 急いで逃亡するための策を考え、彼は気づいた。ノイズになってしまえばいいと。

 

 そこに至った彼の動きは速かった。速かったが、それよりも響の動きの方が速い。

 

 武装組織フィーネの決起事件の後、マリア・カデンツァヴナ・イヴと言う新たな先輩を得た響は彼女から受けと投げ、固めなどの講義を受けていた。彼女の徒手空拳をより強力にするための訓練だったのだが、今回その訓練の成果がこんなところで発揮されてしまった。

 

 

「貰いましたよ、遊吾さんッ!!」

「しまったッ!?」

 

 

 彼女が彼の背後を取る――同時に拘束される身体。力を入れて無理矢理振りほどこうとするが、力を入れれば入れるほどむしろ彼女の身体が彼を締め上げる。力を入れた瞬間を見切り、その方向に身体を沿わせることで力の運用を完全に停止させる。

 

 いかな決闘者である彼と言えど、そんな技を完全に極められてしまえば逃げることは叶わず。気づけば響とクリスに両側から挟み込まれていた。

 

 

「まあまあ、別に良いじゃないですか」

「そうそう。照れてんなら照れてるって言や良いじゃねえか」

「だぁああ!? 離せ!? はっなっせ!!」

「ほらほらぁ、お菓子くれないといたずらしちゃいますよ~?」

「おまっ、今金平糖やったばっかだろうが!?」

「じゃあ、あたしは悪戯しても良いな」

「ばっ、ちげぇよ!? 落ち着けクリス! とりあえず菓子やるから、な? てか、未来たちもそこで見てないで助けて!?」

「ひびきー、それ終わったら今度は私たちだよー」

「うん、分かってるー」

「未ッ来!? ちょっと未来ちゃーん!?」

 

 

 まさかの未来の裏切りに目を剥く遊吾。翼もふふふと微笑むだけで助けてくれそうにないし、奏にいたってはカメラでこちらのことを激写している――

 

 

「ってこら!? 何やってんだ早く消せぇ!?」

「HAHAHA。断る」

「くそがぁあああ!?」

 

 

 色々と拙い。両側から感じる大小様々な柔らかさとか、甘い香りとか。兎に角いろんなものが削られて行っていることに内心で焦る遊吾。なんとかして、なんとかして脱出しなければ。

 

 急いで決闘盤を起動させ、そのカードゾーンに強制脱出装置をセットする。セットから発動まではタイムラグがあるが、こうなれば力押しでも逃げ出すしかない。

 

 彼がそう決心してこっそりと決闘盤にカードを差し込もうとした――そんなところで、彼にかかる声。

 

 

「大分派手にやってるようだね、遊吾。助けてやろうか?」

「流石レイアの姐さん――ってお前誰だよ!?」

 

 

 そこに居たのはレイア・ダラーヒム。その方には小型端末である、妹ちゃんが乗っている――のだが、彼女の服装は妹さんとよく似た包帯――ではなく、銀色の鎖で全身を覆った女性。そのあまりにも派手すぎる姿に、一瞬だが誰だか分からなかった彼が吠えた。

 

 

「ミイラ男だよ」

「ミイラがシルバー巻いて堪るかァ!?」

 

 

 こうして、更にハロウィンパーティーは混沌へと落ちていくのであった。

 

 

 

 

「ほら、マリア姉さん早く!!」

「え、ええ!? い、いやセレナ。本当にこんな格好で行くの!?」

「当たり前でしょ!! 遊吾さんを悩殺するためだよ!!」

「ここに来たのはそんな理由じゃないから!? 落ち着いてセレナ!?」

「…うわぁ、皆混沌としているというか…濃いデスねぇしら――調ェ!?」

「インパクトが足りないからって、シュルシャガナをネフシュタンの鎧っぽくしなくてもいいじゃない調!?」

『フィーネ、分かってない。こういうのは、いかに突き抜けるかどうかが問題』

「そ、そうなの?」

「そんな訳ないデスよぉぉおおお!?」

 

 

「ごめんなさい。態々呼び出しちゃって…」

「構わん。それに、あいつがどんな絆を紡いできたのか、少々興味があったからな」

「ああ、洸さん」

「あ、風鳴司令官」

「ん? そちらの方は…」

「ああ、えっとこの人は――」

「俺は――ジャック。ジャック・アトラスだ。遊吾・アトラスの義理の父親をやらせてもらっている」




ハロウィン忙しくて大変だったけど、一箱で通告スーパーシークレット出て大満足だったよハルトォオオオオオ!!
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