遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~   作:特撮仮面

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注意

キャラ崩壊どころか、何かがおかしいことになっています。具体的に言えば、脳筋EMが、現在環境トップに躍り出ているEMemにデッキが書き換わったレベル。作者のノリと勢いと満足とネタが合わさり混沌に見える。


それでも、俺は、お前を信じる!!とかっとビングできる方はどうぞ!





果てなく広がる希望の番外編~ンヒィハロウィン編第二部~

「はぁ、助かったぜ姐さん」

「構わない。派手すぎるのも似合わないからな」

「……」

「おお、妹ちゃんもありがとな」

 

 

 彼の肩に乗り、ペシペシと頬を叩く妹ちゃん。姉であるレイアの手によって二人の装者の拘束から脱出することに成功した遊吾は、二課の装者たち一時別れて現在は彼女たちオートスコアラーがいる方へと向かっていた。

 

 

「ああ、そういえばF.I.Sの装者たちももうすぐ来るそうだ」

「そか。一体どんな仮装で来るんだろうなぁ」

「…恐らく、S.O.N.Gの装者を越えてくる」

「…やめて。軽く想像できるから」

 

 

 F.I.Sの装者。マリア・カデンツァヴナ・イヴ、暁切歌、月読調。この三人は元の生活環境故か、ストッパーがいないと非常に大変なことをやらかしてくる。

 

 二課の面子は事の大きさを分かっていながらやらかすので、それはそれで質が悪いのだが、F.I.S組は夢自覚にやらかす――病院で療養中のマムへのお見舞いが徳用醤油だったりするなど――ので、これもまた質が悪い。

 

 二課の面子があんな色んな意味で凄まじいコスプレをしてきたのだ。F.I.S組が自重したコスプレをしてくるはずがない。

 

 何となくそんな気がしてならず、頭が痛いといわんばかりに額に手をあてる遊吾。先程から頬を叩く妹ちゃんの優しさが涙腺に響く。

 

 

「ああマスター。遊吾を連れてきたぞ」

「良くやったレイア。…久しぶりだな、兄よ」

「おう、久しぶりキャロリン。…背、のびた?」

「親戚のおじさんみたいなこと言うな。伸びとらんわ」

「ボクたちはホムンクルスだから成長速度が遅いんですよ」

「なるほどな」

 

 

 奥から現れる二人の少女。

 

 共に金髪。片方は意思の強い釣り目、もう片方は優しそうに目尻が下がった、瓜二つの少女。

 

 二人の違いは、目元に泣き黒子があるかどうか。

 

 泣き黒子をもっているのが、キャロル・マールス・ディーンハイム。ないのが、エルフナイン・マールス・ディーンハイム。

 

 本来はエルフナインに名字は存在しないのだが、彼の計らいでこうして姉妹として二人は暮らしている。

 

 キャロル・マールス・ディーンハイムは、数ヵ月前に発生した魔法少女事変の首謀者であり、世界を分解しようとした、古き時代より生きる錬金術師であり、エルフナインはそんな彼女が作ったホムンクルス、人造生命体。だったのだが、色々とあった。

 

 過去に実はエルフナインが存在していたとか、キャロルの恩人に決闘者がいて、そいつが彼女に融合を託したとか。

 

 まあ、本当に色々あって、現在キャロルは融合を使いこなす遊吾を兄と慕い、世界を分解しようとしていたことが嘘のように平和に暮らしていた。

 

 

「ところで兄よ」

「どうしたマイシスターズ」

「トリックオアトリートです!」

「お菓子をくれなければ悪戯をするぞ!」

「ばっちこい! ってのは冗談だ。だからひかないでお願い」

 

 

 軽い決闘者ジョークなのに、本気にとられたらしく、キャロルがエルフナインを庇うようにして半歩下がる。

 

 

「ああ、分かっていたからな。効くだろう?」

「…ほほう。キャロルはよほどお菓子がほしくないと見えるなぁ」

「なっ、それは酷いぞ兄!?」

「ははは。ほら、エルフナインお菓子をやろう」

「わ、ありがとうございます!」

「こら、エルフナインも素直に受けとるんじゃない!?」

「でも、ボクなにもしてませんし」

「む、ぐぐぐ」

 

 

 出会った当初のエルフナインでは考えられない口撃。これが出会った頃であればきっと申し訳なさそうに眉尻を落としてわたわたと慌てていただろうに。

 

 良くも悪くも二課やF.I.S組の影響を受けているらしいエルフナインの姿を見て、あの頃は純粋だったなぁなどと考える遊吾。

 

 

「…遊吾さん」

「ん? どうした」

「ボクがこうなってるの、遊吾さんの責任ですからね? 責任とってくださいね」

「え? いや、おう」

 

 

 自分の責任と言われても全くピンと来ない。が、ふと彼女に言った言葉を思い出した。

 

 

「おどおどするくらいなら、やるだけやってからしようぜ?」

「はい。まだ完全って訳じゃないですけど」

 

 

 少しでも言いたいことがあれば、ズバズバ言っていくようにしてるんです! と胸の前で両手を握るエルフナイン。

 

 

「こ、こら兄よ! オレには無いのかオレには!?」

「そんな泣きそうな顔すんな。キチンと用意してんよ」

「まったく、ならば先に渡せば良いものを」

「悪い子はいらないみたいだなぁ」

「う、うそだ! 冗談だぞ兄よ!!」

 

 

 両手を振り、大慌てで弁明するキャロル。

 

 本来ならば彼の数倍は大人であるはずの彼女の、そんな微笑ましい様子に思わず口元を緩める。

 

 

「ほら、これ」

「おお……ん? 兄よ、これはもしかして」

「ああ、キャロルってヨーロッパ出身なんだよな? マカロンって言うのか? 何か伝統菓子らしいから」

「なるほど…これはオレたちに対応しているのか?」

「お、良く分かったな。ちなみに、金粉塗してあるのの、黄と青がエルフナイン。黄と赤がキャロルだ」

 

 

 製作期間一週間。合成着色料を使わずに色を出すのがとても難しく、仮に色が出来てもあまりにも味を落とすようなモノではいけないため、試行錯誤を繰り返し続け、睡眠時間を削りに削っての一週間であった。

 

 ちなみに、オートスコアラー全員にあるクッキーであるが、これも彼手作り。態々金型を風鳴の人脈を使って作りに行く徹底っぷりである。ちなみに、金型作成からの期間を含めると、製作期間は三週間である。

 

 遊吾・アトラス。基本妥協するということを知らない彼は、そうやって今日のハロウィンという日を楽しみにしていたのであった。まあ、彼にとってハロウィンという行事はなじみのないものであるが、贈り物をすると聞けばそれがどんなものであれ妥協したくなかったのだろう。

 

 

「遊吾さん、凄いです!!」

「まあ、上出来じゃないか」

 

 

 彼の説明を聞いて瞳を輝かせるエルフナインと、照れ臭いのだろう、帽子の鍔を手で押さえながらボソリと呟くキャロル。それだけで全力で作った苦労が報われるというものだ。

 

 

「と、ところで兄よ。気になったことがあるのだが…」

「なんだキャロル」

「…なぜ、オレとエルフナインで扱いが違うのだ?」

「A.キャラが違います」

「どういう……ことだ……」

 

 

 キャラクター、つまり性格の違いである。彼はエルフナインの頭を撫でながら言う

 

 

「ほら、エルフナインは天使だけどキャロルは違うだろ?」

「む、それは聞き捨てならないというかエルフナインもなぜ撫でられている!」

「えっと、そのー」

「HAHAHA、エルフナインは可愛いなぁ」

「はわわ」

「うがああ! 何故だ兄!!」

「キャラクターが違います」

「キャラクターが違うとはどういう意味だ!?」

「キャラクターが違うということです」

「にゃああああ!!」

「遊吾さん、そろそろやめてくださいよ。キャロル泣きそうじゃないですか」

 

 

 ううう、と恨めしそうに睨み付けてくるキャロル。確かにやり過ぎかもしれないと、彼はエルフナインから離れ、帽子をとってキャロルの頭を撫でる。

 

 

「悪かった。キャロルも可愛いけど、ほら、なんというかいじめたくなる可愛さだからさ」

「…なんだ、その餓鬼が好きな子供をいじめるみたいな理屈は」

「いやー、反応が良いからつい、な」

「ふん、そんなことを繰り返していれば愛想つかされるぞ」

 

 

 どうやら弄り過ぎたらしい。ふん、とそっぽを向くキャロルに苦笑し悪かったよと謝る遊吾。

 

 

「許さん」

「ほんとごめん。何でもするから許して」

「ん? 今何でもすると言ったか?」

「え? ああ、言ったけど」

 

 

 何でも、と聞いてキャロルの表情が、目が光る。

 

 

「ほほう? …ならば、オレに愛の言葉を囁くがよい」

「愛の言葉?」

「そうだ。例えば、愛しているとかな」

「愛してる」

「にゃっ!?」

「俺は、キャロル・マールス・ディーンハイムのことが好きで、同時に愛している」

「お、お、」

「お?」

「臆面もなく恥ずかしい言葉を吐くんじゃない!?」

 

 

 ムズ痒いを通り越して寒気すら覚えるわ! 顔を真っ赤にしながら怒鳴るキャロル。一体自分は何を間違えたのか。首をかしげる遊吾に、息を整えたキャロルが問いかける。

 

 

「…その言葉に嘘偽りは無いのだな?」

「当たり前だろ?」

 

 

 至極当然なことと本気で思っているらしい彼に、キャロルは帽子をひったくって被り直しつつ溜め息を吐く。

 

 遊吾・アトラスの言葉には嘘偽りがない。実際に彼は自分のことを好きで、愛しているのだろう。それは彼の言動を見ていれば明らかだった。だが、そこには家族愛や親愛、恋愛などの区別は一切なかった。

 

 人の感情を力任せにこじ開け、どんな相手にも真っ向から向き合って素直な感情を叩きつける。身内には甘過ぎるくらいに甘いが、一旦完全な敵と認定した場合、それがどんな相手であれ彼はありとあらゆる手段を用いて排除にかかる。その癖、妙なところで妥協点や折衷案などを切り出すような部分も持つ。

 

 単純な話、彼は大きな子供なのだ。故に彼の好きや愛の言葉には差がなく、嘘偽りもない。だが、同時に大人でもあるから、そこには確かに下心や性欲などが存在している。

 

 彼の幼少期とその後の生活を聞けば、この歪みも仕方のないこと。そして、この歪みは最早変えようのない彼の個性、核となっているのだから変えようがない。

 

 しかし、この歪みは質の悪いことに人を引き寄せる。良くも悪くも派手なことを仕出かすから注目を集め、そして自分達や装者の視界に映る。

 

 そうなれば、自分達は誘蛾灯に群がる蛾のように引き寄せられてしまう。

 

 それは、彼が許容するからだ。その歪みゆえに彼はあらゆる物を許容し、受け入れる。それは、どのような形であれ他者と違う部分を持つ者にとって余りにも心地の良い場所になってしまうのだ。

 

 と、そこまで考えたところでキャロルはふっと微笑んだ。

 

 

「どうしたんだよキャロリン」

「いや」

 

 

 こまけぇこたぁいいんだよ。頭が悪いと自称する彼の談だ。まあ、今のような無礼講の場であれこれ考えたところで意味はないし、こんな考察をしたところでどうこうする話でもない。

 

 錬金術師故かキャロルは何かと考え込む癖があった。未知があれば探求し、分析する。錬金術師の職業病みたいなもの。

 

 だが、世の中には考えても仕方のないことだってある。バカになれとは彼の言葉だが、確かに一々考える必要などない。

 

 

「なあ、兄よ」

「どうした?」

 

 

 オレは、私は、

 

 

「愛しているぞ」

「……ああ」

 

 

 遊吾・アトラスを愛している。それで充分だ。

 

 

「む…」

「ど、どうしたエルフナイン?」

「二人ともなに通じあっているんですか! ズルいですよ!」

「ふ、ふ、ふ。オレと兄は両想いだからなぁ!」

「それはキャロルが言わせたからでしょう!?」

「ふははは、知らんなぁ」

 

 わーわーと言い合う二人を見て、本当に姉妹みたいだなと微笑む遊吾。と、そこで彼は気づいた。キャロルもエルフナインも仮装をしていないということに。不思議に思った彼が、二人に尋ねる。

 

 

「なあ、お前らは仮装しないのか?」

「えっと、それは――」

「ユーゴー!! お菓子くれないといたずらするゾォ!!」

「この声は――そぉい!!」

 

 

 背後からかかる声。そして放たれる朱色の結晶。

 

 声が掛けられた時点で誰かは分かっている。ならば対処は容易い。

 

 彼が身体を反転させれば、そこには眩い笑顔を浮かべた赤色の少女の姿。彼女の鉤爪のような手が開かれ、その中心部から朱色に光る輝き。炎を纏い突き出される刃。いかなオートスコアラーであれど、本気でない上に跳びかかってきているのならば、それを見てしまえば避けるのは簡単だ。

 

 高速で飛来する腕を脇から放つ裏拳で払いつつ肘を曲げ、身体ごと後退。ミカの腕を後方に流しながら、返す腕で彼女の頭を掴み取る。

 

 

「あだ!? あだだだだだ!?」

「ったく、菓子やる前に死んだらどうすんだよミカ」

「えへぇ」

「……」

「わあああ!? 無言で力込めるの止めて痛い痛い!?」

 

 

 赤い髪に赤い服。赤を基調とした色合いの少女。彼女の名は、ミカ・ジャウカーン。オートスコアラーの一人であり、またオートスコアラーの中で一番の戦闘能力を誇る少女である。ちなみに、現在の格好はコスプレらしい犬耳と服。響のものとは違いれっきとした服であるが、良く見れば狼女か犬女の格好らしい。

 

 

「ったく、菓子やらねえぞ?」

「わわ、それは勘弁だゾ!?」

「なら大人しくしとけ」

「はーい」

 

 

 無邪気な声に手を離せば、その場で綺麗に着地してズイッと両手を差し出してくるミカ。

 

 まったく、現金なやつだなぁと苦笑しながら彼は彼女の手にクッキーの入った袋を置く。

 

 

「ほら、菓子だ。ボロボロ溢さないように食べろよ?」

「分かったゾ!」

 

 

 そのまま走って会場の中央に向かうミカ。そこには仮装しているガリィとファラの姿。

 

 ガリィは――あれは恐らく吸血鬼なのだろう。ドレスにマント。所々に描かれたコウモリのプリントからそう察することができる。吸血と言う訳ではないが、思い出などをエネルギーとして吸収できるガリィには良く似合っている。

 

 だが、ファラが問題であった。彼女の服は青と白を基調とした男物の民族衣装のようなものだ。

 

 

「…風が…吹いた」

「カードがちげえよ!?」

 

 

 なぜかは知らないが、それ以上言わせてはいけないような気がしたので彼が慌てて彼女を止める。

 

 

「あら遊吾」

「…フ、ファラ。これ、クッキー。トリートだ、うん」

「あら、ありがと」

 

 

 ファラが微笑む。

 

 彼女は何かと真面目な顔をしてやらかしてくれる。レイアと同じく翼のような面白いオートスコアラーなのだが、時折このような色々ヤバイものをやってくれるのが…。

 

 ファラ、何か面白いことやってほしいゾ。…風が――止んだ! だのとやり取りをしている二人を見て思わずため息を吐く遊吾。

 

 

「まったく騒がしい。そう思わんか? 兄よ」

「そうだなきゃろ――キャロリン!? いつの間に背後をというかいつの間に大人モードに!?」

 

 

 彼の身体を背後から抱きしめてしなだれかかる金髪の女性――キャロルだ。

 

 先程までの子供の姿とは打って変わっての、妖艶な美女。

 

 スラリと伸びた四肢。その腕は蛇のようにしなやかに人を絡めとり、その足はカモシカのようにしなやかに、そして力強く拘束する。猛禽のように鋭い顔立ち、そして獲物は逃さぬと光輝く鋭い瞳。だが、威圧感を与えるであろうそんな鋭い顔立ちも、目元にある泣き黒子でその鋭さはなりを潜め、代わりに色気、万物を惑わせるような色香を湧き起こさせる。

 

 身体付きも大きく変化している。確かに美しい娘であったが、そこは年相応の子供らしく寸胴のような身体だったそれは、今では豊満な胸とキュッとくびれた腰、そして桃のような尻。大きく裂かれた脇の部分から覗く浮かび上がった肋骨が、その姿をより淫らに演出していた。

 

 キャロル・マールス・ディーンハイム。錬金術師である彼女は現在、ダウルダブラの竪琴と言う聖遺物を用いて歌を運用することで、シンフォギア以上の戦闘能力を誇るプロテクターを展開することが出来るようになっている。

 

 そのシステムの一環として彼女の大人モードが存在しているのだが、良く見てみればプロテクターのデザインが所々ハロウィン仕様になっている。つまり、事前にこういう風になる様に準備していたことになる。

 

 一体お前は何をしているんだ!? 現在の状況も含めて吠える遊吾。そんな彼の耳にふぅ、と息を吹きかけるキャロル。

 

 

「ひぃ!? ちょちょちょキャロルィン!? おまナニやってんでおられますか!?」

「落ち着け兄よ。言葉遣いが無茶苦茶だぞ」

「落ち着けるかこんな状況でェエエエ!?」

 

 

 ただでさえ二課面子との会話で精神が削られているところで行われているこの、妖艶な肉体をフル活用しての拷問にも等しいいたずら。

 

 彼は、痛みには慣れている。決闘者としてダイナマイトの爆発に巻き込まれたり、拳銃で撃たれたりした回数も数知れず。何度も拳で殴られ、時にDホイールに轢かれながらも彼は今までほぼ無傷で生きてきた。故に彼は痛みや怪我と言うものに凄まじいほどに慣れている。

 

 だが、その分彼には弱点が多い。例えば甘いものとか美味しい物に弱く、胃袋を掴まれやすいし、本人も過去に何度か語っているように、母性的な女性や年上の女性、また、人に優しくされることにとてつもなく弱い。

 

 キャロルが行っていることも、彼が苦手とする部分の一つだ。

 

 痛みが全くなく、あるのは背中越しに確かに感じる暖かさと柔らかさ。女性特有の肌の感触と、甘い香り。そして耳元でささやかれる蕩けそうな声色と、生温かな吐息。

 

 キャロルと言う存在全てが、現在彼を追い詰めていた。

 

 

「助けてお巡りさん!! 痴女が、痴女が此処にィ!?」

「誰が痴女だ! …本気でいたずらするぞ?」

「ヘルプ! 誰かヘルプミー!!」

 

 

 本気で逃れようとする遊吾。だが、キャロルの展開した竪琴の弦が彼の身体に絡みついて離れることが出来ない。彼が近接格闘術を習い、多少の拘束なら抜け出せるようなレベルになっていたとしても、相手は複雑に絡み合う弦。力の流れが複雑すぎて拘束を解くことが出来ない。

 

 

「ぐ、ぐぅ。このままじゃ…」

「あ、あの!」

「……へ?」

 

 

 本気でノイズ化を考え始めた頃、彼にかかる声。聞き覚えがあるが少し低くなった声に驚いてそちらを見る。

 

 そこに居たのは、キャロルと同じような魔女のような黒衣に身を包んだ女性。頬を赤く染め、もじもじとこちらの様子を伺う姿は、確かな女性でありながら少女のような。薄くも柔らかそうな胸。ほんのりと柔らかい円を描く腰から足にかけての曲線。顔立ちは幼く、垂れた目じりは彼女の人となりを表しているようだ。

 

 

「一万年と二千年前から愛してました」

「ふぇ!? ゆ、遊吾さん!?」

「ゆ、遊吾お前何を言っている!?」

「……はっ!? か、身体が勝手に…」

 

 

 気づけば彼は拘束を脱し、彼女の前に立っていた。

 

 エルフナイン大人モード。その姿は遊吾・アトラスの理想とする女性像に見事にマッチしていた。無論、胸は無いよりもあった方が良い派の彼であるが、これとそれとは全くの別物であった。というか、そんな次元の話ではない。これは文字通りレベルが、否、ランクが違う。胸が小さいとか大きいとか、身長が大きいとか小さいとかそういうものではない。もっと根本的なモノ。

 

 彼は本能的に理解した。これが、彼の通っていたカードショップの一つで、女性型モンスターのフィギュアをプレゼントすればカードのパックを安くしてくれていた店長の言っていた――萌え。

 

 山の木々が青々と萌え得る。そんな風景を見ているような、心躍り、心が安らぐこの感覚。キャロルとは違い、性別が無い、それ故に起こる不可思議な色気を身に纏いながらも、少し自信が無さそうな、恥じているような表情でこちらを見る、初心で純粋な生娘のような反応。その落差、ギャップ。

 

 

「なるほど……これが萌え――」

「どうしたんですか遊吾さん!? 魂が天に昇ってますよ!?」

「こら遊吾、戻って来い!?」

 

 

 何かを悟った表情で後光が差している遊吾を揺さぶる二人。

 

 

「はっ……今、俺なにやってた?」

「…覚えてないんですか?」

「…キャロルに拘束されて、エルフナインを見たところまでは記憶にあるんだけど…」

 

 

 どうやら、彼にとってエルフナインの大人化というのはそれほどまでに衝撃的だったらしい。

 

 というか、何でエルフナインまで大人の姿をしてるんだよ!? 今更驚く遊吾に、キャロルがドヤと表情を自慢げに変えていった。

 

 

「オレのダウルダブラは、錬金術を用いたシンフォギアのようなもの、それは分かるか?」

「まあな。で、今はそれに歌の力を合わせる。本式のシンフォギアの理論と錬金術を融合させることによって、より安定したエネルギーの運用をしてるんだろ?」

 

 

 元々、ダウルダブラは歌ではなく、装備者の記憶をエネルギーとして燃焼することで、絶唱にも勝る攻撃力を発現させるように改造された聖遺物だ。

 

 だが、遊吾との出会いによって彼女はダウルダブラを錬金術の新たなステップへと昇華させた。それが、現在のダウルダブラの竪琴。櫻井理論と錬金術の融合による、新たなる異端技術の結晶なのだ。

 

 

「歌は安定しない。が、記憶という有限のエネルギーを消耗するよりも遥かに効率が良い。記憶の燃焼は安定こそするが、どうしても限りがある。だから今のダウルダブラは歌と錬金術を融合させ、新たにエネルギー機関を設置したわけだが、これが少々厄介でな」

「厄介? 仮にも世界最高峰の錬金術師が言うって、そこまでか」

「ああ。今まで考えられなかった、融合召喚の概念を利用した、全く違う理論の融合。あまりにも未知過ぎて中々上手くいかないのだ」

 

 

 最近は特に行き詰っていてなぁとため息を吐くキャロル。確かに、彼女の言う通り今までやったことも見たこともないモノを作りだそうとしているのだから、それは苦労をするはずだ。だが、それとエルフナインの大人化が一体どんな関係があるのだろうか? 首を傾げる遊吾に、まるで頭の悪い生徒に教える先生のようにキャロルが説明する。

 

 

「現在のダウルダブラを起動する際、膨大な余剰エネルギーが発生している。つまり、無駄というやつだな。今のところこの無駄なエネルギーを無くす手段が無いから仕方なく放出させっぱなしにしている。ここまでは良いか?」

「ああ、まあ何となくは」

「では、オレとエルフナインの身体はどう違う?」

「…性別が無いということ以外は基本的に同規格。というか容姿や性別以外のスペックは基本キャロルと同じのはず――ってまさか!?」

 

 

 彼は何となく彼女の言いたいことを察した。

 

 ようは、ダウルダブラの余剰エネルギーを活用したのである。彼の想像が正解であるとキャロルが笑う。

 

 

「その通りだ! オレとエルフナインの規格はほぼ同じ。ならばダウルダブラの余剰エネルギーをエルフナインに合わせて調整してしまえば、オレと同じくこの姿がとれると考えたのだ!!」

「な、なんだってぇええ!?」

「そして、その目論見は無事成功したのだ!! …ところで兄よ」

「…なんだ、妹よ」

 

 

 キャロルがエルフナインに身体を絡め、そして竪琴の弦で彼の身体を絡めとる。

 

 浮かび上がる身体。状況に頭がついていけていない。そんな遊吾に、キャロルが語り掛ける。

 

 

「この日本という国には、親子丼というものと姉妹丼という文化があるそうだな?」

「え? …え? いや、え?」

「え、キャロルやるんですか?」

「ああ、今がチャンスだ! かの有名な戦国武将、武田信玄で言う風林火山。今は火の如く攻めるべきだ!」

「……なるほど」

「あ、あのー、二人とも?」

 

 

 少しずつ近づいていく距離。そして二人が彼を歓迎するように手を開いた。

 

 

『姉妹丼、食べてみませんか?』

「ひっ!?」

 

 

 妖艶な魔女による誘い。彼はその時初めて恐怖を感じた。今まで感じたことのない類いの恐怖だ。

 

 闇のゲームによる死の恐怖ではない。決闘で負けるあの悔しさを含んだ恐怖ではない。サイバー流やブンボーグ流を相手にした時のオバロパワボリミ解オラァや005006ペンデュラム002002002効果003効果001003効果リミ解オラァのような、攻撃力一万を越える攻撃を仮想立体映像で体感するあの、あ、これ終わったわという悟りを開いたような恐怖感ではない。

 

 もっと根本的なモノ。そう、喰われる。この手に捕まったが最後、蟲惑魔の如く骨の髄までドロドロに溶かされて啜られる。何故か知らないがそう言う確信が持てた彼は、必死で抗う。

 

 だが、何の力が働いているのか彼はノイズになることができず、力技で切り抜けようにも弦は切れない。カードを取り出そうにも腕が拘束されていて動かすことが出来ない。

 

 少しずつ距離が縮まっていく。もうすぐ腕が彼の身体に触れる――そんな瞬間、両者の間を銀色の風が突き抜けた。

 

 ふわりと浮かび上がる感覚。同時に人の温もりと、心地よい暖かさ。思わず目をつむっていた彼が目を開く。そこに居たのは、銀色の耳当てをした、一人の戦乙女。

 

 

「あ、あ」

「随分と大変な悪戯をされていたわね、ユーゴ?」

「ま、まりあぁあああああ!?」

 

 

 大丈夫? と微笑むマリアの胸に思わず飛び込む遊吾であった。

 

 

 

「む、失敗したな」

「だから言ったんですよ? 行事のテンションで陥落するほど遊吾さんは甘くないって」

「うーん、やはりエルフナインの言う通り、日常の触れ合いから行っていった方が良いのか?」

「はい。遊吾さんって、響さんたちとは良くボディタッチをしますけど、ボクたちにはしないんですよ?」

「…信用が無いということか?」

「いえ、ただ、慣れていないだけです」

「なるほど…飼いならしてしまえばいいということか」

「はい。凶暴な野獣なら、少しずつ、確実に、ね」

 

 

「くふふふ、ふははは!? くっ、くくくく」

「ジャックさん!? 何もそこまで笑わなくてもいいじゃないですか!?」

「ふくく、そうは言うが洸。あの遊吾が。あの、あいつの三大欲求は睡眠欲、食欲、決闘欲だとか、鈍感を通り越して最早決闘仙人だとか言われていた、あの遊吾が女相手に振り回し、振り回されをしているのだぞ? これを笑わずしていつ笑うというのだ。く、くくく」

「…呼びだしたの、ちょっと早かったかなぁ」

 

 

「ねえ切ちゃん。ちょっと言いたいことがあるんだけど良いかな?」

「…調。多分それは私も言いたいことデス」

『それ、ポジション逆じゃない?』




二話で終わらせる予定だったんだ。だが、終わらなかった、何故だ!!(ザビ家演説風に)


あ、総合評価が1000ポイント超えたみたいです。感想も200を超えた、のかな?まさかここまで評価がもらえて、続くなんて思っても居ませんでした。これも楽しいと読んでくださる皆様のおかげです。ありがとうございます。
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