遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~ 作:特撮仮面
遊吾・アトラスの裏切り。
ただ、彼が助けたい人々が彼女たちの敵であったというだけだ。だが、改めて彼がF.I.Sと共に居ることを知った彼女たち。予想されていたことである為まだ衝撃は少ないが、それでも痛いことには変わりはなかった。
だが、遊吾・アトラスがF.I.Sに協力しているということは同時に二課の面々に新たなF.I.Sへの見解が生まれた。
遊吾・アトラスは多少人よりもゲスな部分があるものの本質は善人だ。さらに、彼が協力すると言うことは即ち彼が自ら手助けしようとしているということであり、これはF.I.S、フィーネという組織がただ国欲しさに決起した武装集団ではないことを意味していた。
また、彼の様子から少なくともマリア、調、切歌の三人はそれだけの人間であるということが予想された。
恐らく、フィーネという組織は一枚岩ではなく、利用しようとする者と、それを利用してなにかを起こそうとしている者、そして純粋に事を成し遂げようとしている者。恐らくはこの三者に分けられる。
遊吾・アトラスを含める装者たち四名は皆何かしらの重要事項を成し遂げることに集中していると推測されるが、ユー・トイルイ・テッシとウェル博士、この二人がフィーネを利用して何かを行おうとしていると見て間違いはないだろう。
方針としては、ソロモンの杖の確保と装者たちの確保。そして、ウェル博士及びユーと名乗る男の逮捕。
その機会はすぐに訪れた。
F.I.Sの暁切歌、そして月読調の提示した決闘。
その狼煙たる反応が現れたのだ。場所は東京番外地・特別指定封鎖区域。
私立リディアン音楽院高等科及び特殊災害対策機動部二課跡地。フィーネとの決戦、彼と彼女達が命を懸けて戦い抜いた思い出の地。
「ここが戦場になるとはな…」
装者たちによる決闘を約束していたが、現実は違う。
彼の目の前で繰り広げられている壮絶なる戦。
漆黒の異形。ずんぐりむっくりとした図体。顔の半分程ある巨大な口と、楕円形の頭。
空より落ちし巨人。完全聖遺物、ネフィリムの起動とそれを用いた二課装者の――彼女たちの身に纏うシンフォギアの補食。それが決闘という形で呼び出された彼女たちへの、ウェル博士の策だったのだが…。
「おうおう、ボコボコじゃねえか…」
咆哮、激震。震脚により大地が砕け、練り上げられた力は脚から腰に、腰が回転により増幅された力は肩を伝い、拳に込められその力を遺憾なく発揮。衝撃が身体を突き抜け、背後の空気がはぜる。
身体を貫かんとする衝撃に浮かび上がる巨体。叩き込まれるまるで狙い済ましたかのような弾丸の雨。
獣の唸り声めいた駆動音と共に弾丸が次々と吐き出される。着弾と同時に爆発。弾丸内部にフォニックゲインを仕込むことで、徹甲弾の如く装甲を突き破り内部で炸裂するという悪魔のような弾丸が、巨体を問答無用で抉り飛ばす。
だめ押しとばかりにミサイルのバーゲンセール。季節外れの花火が大地を照らす。
巨体が墜ちる。そこに間髪入れず吹き込む風。疾風怒濤。幾千幾億の刃が一刃のもとに打ち込まれる。
巨体がピンボールめいて弾け飛ぶ。が、流石は完全聖遺物。あれだけの攻撃を受けて尚その形状を保っている。だが、ネフィリムは完全に逃げ腰。それどころかもう装者を見ている眼が凄い。完全に涙目。圧倒的捕食者を前にした兎のように恐怖にかられている。
ウェル博士発狂。まあ、仕方がない。完全無欠の生物兵器たるネフィリムがただのシンフォギアに目を背けたくなるようなレベルの蹂躙を受けているのだから。
「侮るなって、言ったんだけどなぁ…」
腹芸が得意ではない以上、なにかと裏の仕事をこなせるウェル博士に本命を知られる訳にもいかず、今回の決闘に関してはノータッチにならざるを得なかった訳だが…これは参戦するしかないだろう。
しかし、起動してまもないとは言え仮にも完全聖遺物たるネフィリムをここまで追い込むとは…。衝撃的だからよく覚えている、戦姫絶唱シンフォギアGの決闘の話と現在の状況を比べて思わず額に手を当てる。
手加減する訳にもいかなくなっていたが、これはどちらにしても全力でいかなければ勝てないだろう。
――さあ、絶望を始めよう。
ここから、俺の全身全霊を賭けた戦いが始まるのだ。
※※※※※※※※※※※※
それは、唐突に現れた。
「なんだよ、あれ?」
クリスが油断なくガトリングを構える。
視線の先、ネフィリムとウェル博士を守るように浮遊する楕円形の機械。
ウェル博士たちを守るような配置。恐らくは護衛のマシンか。だが、護衛なら何故ネフィリムが危機に陥っている段階になって現れるのだ。
見たところなんの力もないただの球体――のはずだが、その存在が放つ威圧感は目の前のネフィリムのそれを上回る。
『些か無謀だったようですね』
「お、お前はユー!? それは一体!? それに、無謀だと!?」
ウェル博士。動揺が隠せない。彼も知らされていない謎の兵器。
ネフィリム。虎の子であるそれを難なく撃破され、プライドがボロボロとなったところに現れた存在。一体何が起こるというのだ。
彼の様子から、その球体が只の球体では無いことを改めて確信し気を引き締める装者たち。
『そうです、無謀です。確かにネフィリムは強い。強いが――その程度です』
「その程度だと!? この、僕のネフィリムが!!」
『ええ、その程度です。そのネフィリムはまだ何の力もありませんからね…』
ネフィリム。ありとあらゆるエネルギーを吸収することでドンドンと強くなる、成長する兵器。だが、その性質上”何かを取り込まなければ強くなれないのだ”ならば、起動して間もなく、聖遺物の欠片を捕食することで起動形態を保ち続けていただけでしかないネフィリムは一体何か?
完全聖遺物ゆえに、壊れにくいだけのただの案山子。
『いやぁ、作戦前には随分と言ってくれましたが、少女たちを相手にしたお人形遊びすら禄に出来ず、あまつさえ逆に弄ばれ、更には大口叩いて説教をした者に救われる。作戦前と今で随分と差がついてしまいました――悔しいでしょうねぇ』
「貴様ァ!!」
怒り狂うウェル。だが、事実だ。
ユーの正体を知り、二課の装者たちと並々ならぬ関係であることを知ったウェル。彼はユーに言った。
本当に彼女たちを倒せるのか。むしろ手加減してわざと負けたり、こちらの情報を流したりしているのではないか? 事実、倉庫の一件からして本国の動きが早すぎるとF.I.S側で少々悶着があったのだ。そのタイミングでの糾弾。
そんなことをした後に、そんな存在に庇うように前に立たれるなど、屈辱以外の何物でもない。
『さて――貴女方にはこれから絶望を味わってもらいましょう』
「絶望だって? そんな球一つ、あたしのイチイバルでぶっとばしてやるよ!!」
『ふふ、随分と威勢が良いこと…私にもそんな時期がありましたよ』
では、お見せしましょう。現れろ、機皇帝グランエル∞、グランエルT、グランエルA、グランエルG、グランエルC!!
空間が歪む。グランエル∞――グランエルコアの周囲に展開された装甲が組み合わさり、一つの巨大な球体となる。
グランエルT、A、G――魚のような形状の機械たちが空間より飛び出し、そして最後にグランエルC、貝のような形状の巨大な円盤が姿を現した。
『合体せよ、グランエル∞!!』
グランエル∞の全面、銀色の装甲に縁どられた、まるで目を瞑った人を思わせる装甲部分が展開され、内部よりグランエルコアから放たれる緑色のエネルギーが光を放つ。装甲後部に格納されていた巨大な二枚の装甲が展開。球体の横に固定されると、蟹の爪のように組み合わさっていた装甲が解放され、接続部分がむき出しとなる。
グランエルG、魚のような形状のそれは、各部位で装甲が展開され、盾を持った腕のように変形。グランエルA、尻尾の部分が回転、全身を伸ばし、キャノン砲を思わせる形状へと変形。
そして、二つのパーツはグランエル∞との間で紫電を散らしながら――合体する。
展開されていた装甲が閉じ、空気を排出。ブッピガンと言う金属音と共にパーツの固定が完了する。
グランエルC、頂点の球体と、左右で分解。球体の底部分が展開され、無限軌道が内部より競り上がり、頂点の球体が杖のような胴体部となり、脚部となる二つの巨大な装甲と合体。そして、既に合体済みのグランエル∞と稲妻を走らせ合体する。
上空より飛来する剣、グランエルT。グランエル∞に突き刺さるように金属音を響かせ合体。
グランエルTが展開。内部より深紅の一つ瞳が光を放つ。
『これが最強の機皇帝――機皇帝グランエル∞!!』
両腕を振り上げ、下ろす。排熱――プシュッという音と共に各関節部より蒸気がたちあがる。
『か、かっこいい!!』
「――ハッ!? こ、こら、立花、雪音!! 見惚れている場合ではないぞ!! 凄く格好いいけれども!!」
『ハッ!?』
「そ、そうですね!! クリスちゃん、しっかり!! すっごく格好良くてもあれ敵だからね!!」
「そ、そうだな!! 各パーツごとに変形が違いながら、統一された機能的なデザイン。敵ロボでモノアイってテンプレながら独特の形状と合体時の効果音で物凄い心躍る変形合体ロボットだけど敵だからな!! 油断するなよ! 胸からビームとかあるかもしれないぞ!!」
『随分と男心の分かる女の子たちで助かりました』
彼女たちの反応に思わず苦笑してしまうユー。
元々映画や漫画、ゲームなどなど様々なことに影響されやすいクリス。多趣味かつそういう文化にも理解のある響。実は結構格好良いモノなどが大好きな翼。どうせならファンサービスの一環として他の機皇帝も見せてやりたいところだが――まあそれはまたいつか、そういう日が来ればみせるとしよう。
『さて、まずは警告をしておきましょう』
「警告?」
翼が眉をひそめる。確かにあのグランエル∞というロボットからは並々ならぬ威圧感を感じるが、そんな存在が一体何を警告するというのだ?
『グランエル∞の力は、単純な話神にも勝ります。一撃でも受ければ、いくらシンフォギアでも耐え切れないでしょう。それでも、戦いますか?』
グランエル∞の攻撃力は、自身のライフポイントの半分となる――が、これはあくまでもデュエルモンスターズで使用するために調整されたもの。本物のグランエル∞は、攻撃力をライフポイントと同じ数値とし、あらゆる攻撃、効果を防ぎ、敵を殲滅する絶望の象徴。現在の彼のライフポイントは全くの無傷であり、4000。
この機皇帝グランエル∞は、イリアステルの一人、ホセの使用したものとほぼ同一の物を再現している。故にその攻撃力はライフポイントと同等である4000。
デュエルモンスターズにおいて、4000と言う数値は三幻神――俗に神のカードと呼ばれる存在と同じ攻撃力を持つということになる。
攻撃力3000のレッド・デーモンズ・ドラゴンすらこの世界では類を見ないほどの破壊の化身となるのだ。ならば、神と同等の力を持つグランエルの一撃を受ければどうなるか――そんなもの想像に容易い。
「そんなの、決まってんじゃねえかよ!!」
『…なるほど』
ガトリングを構えるクリス。
最早言葉は不要だった。息を吸い、吐き出す。ならば、絶望を与えることにしよう。ネフィリムなど敵ではないレベルの絶望を。
『ならば、砕け散りなさい』
視界が赤く染まり、スコープが表示される。距離測定。十字の中心に立花響。有効範囲にクリスと翼。あとは――引き金を引けば良い。
――グランド・スローター・キャノン
ゾクリ、背筋を奔る寒気に急いで後輩二人へと飛ぶ翼。ブースターを全力噴射。二人が潰れたカエルのような声を出すがそんなものは構いはしない。そのまま身を投げ出した。
静寂。撃ち放たれた光の奔流は対象を失って彼女たちの後方へと飛んでいった。
「何すん――」
「あぶな――」
翼に文句を言おうとした二人――連鎖する爆発。まるで時間がまき戻るかのように着弾地点から次々と噴火のような爆発が起こり、文字通り大地が弾け飛んだ。
爆風によって木の葉のように舞い上がる少女たち。何とか体勢を立て直して地面に着地するが、自分達が元居た場所を振り返り、言葉を失った。
破壊。フィーネの合体した赤き竜かそれ以上の力を誇る一撃。
大地はUの字に抉りとられ、それがどこまでも続いていた。幸い、番外地は街から離れた場所にあることもあって市街地に被害は出ていないようだが…。
『余所見をしていてもよろしいのですか?』
「しまったッ!?」
砲身が轟ぐ。チャージ時間を短縮し、単発で撃ち出されたエネルギー。
翼が全力で待避する。威力が落としてあるとは言え、大地を抉る威力。なんと凄まじいパワーか。
余波で体勢を崩す。その隙を見逃すグランエルではないが、そんな彼にミサイルが殺到する。
「やらせるかッ!」
イチイバルの連謝。だが、グランエルはその図体に似合わぬ機敏な動きでそれを悉く避けていく。
今はイチイバルやガングニールを狙うときではない。どちらも強力なシンフォギアだが、同じ土俵で戦う関係でグランエルの方が圧倒的優位に立つことができる。だが、戦闘経験が豊富であり、グランエルを振り切る機動性能を持つ天羽々斬相手であれば少々部が悪い。
『故に!』
「でぇえええい!!」
イチイバルへの砲撃。ズレた場所へ弾着。爆風によって体勢を崩す。狙いを即座に天羽々斬へ――飛び込んでくるガングニール。だが、そんなものなんの問題もない。
右腕を前に――グランエルGが緑色の粒子を放ち、ガングニールの拳を受け止める。
「うそぉ!?」
激痛。グランエルGは破壊されるかわりにグランエルに装備されているシンクロモンスターを破壊するという効果を持つ。
元々ガングニールの攻撃とグランエルの攻撃力を比べた場合、破壊なんてされるはずがないのだが、あえてシンクロ状態の自分にダメージを通すことで完全にダメージを殺す。
『砕け散れ!』
「あ――ッ!?」
グランエルGがエネルギーを放出。弾き飛ばされるガングニール――同時にグランエルが前方へ急速加速。振りかぶった右腕を叩き付ける。
ホームランボールめいて吹き飛ぶガングニール。少女の身体の数倍はある腕に殴られたのだ。しかも神の拳に等しい威力のそれに。
衝撃、沈黙。
天羽々斬が吼える。激情を歌に。瞬間シンフォギアの出力が跳ね上がり、天羽々斬の形態が変化。神速の剣技をもってグランエルに迫る――が、それを彼は待っていた。
「出力が!?」
ガソリンが尽きた車のように空中で謎の減速。シンフォギアの形態も通常のものへと戻り、更に適合率が低下していることで白から灰へとその色を変色させる。
一体何が!? 突然のシンフォギアの不調に目を見開く翼――彼女の目の前で重低音。同時にエネルギーチャージの際に発生する風と甲高い虫の羽音のような音が響く。
彼女が顔をあげた先にあるのは、漆黒の闇とその奥で微かに輝く炎。その炎は徐々に身を荒ぶらせていき――
グランド・スローター・キャノン。
グランエル必殺の一撃が彼女の身体を呑み込んだ。
「つばささぁあああん!?」
「てめぇえええ!!」
怒りに燃える瞳。二人の装者が叫ぶ。
「ぎ、ああああ!?」
「翼さん!?」
悲痛な叫び。
グランド・スローター・キャノンを零距離で受けながらも何とか生きていた翼。だが、そんな彼女の身体には今、グランエルの胸、グランドコアから放たれる光の糸によって全身を貫かれていた。
意識を失っていた身体が激痛で覚醒する。全身の皮を無理矢理引き離されるような痛み。彼女のシンフォギアが解除され、生まれたままの姿で地面にゆっくりと寝かせられる。
機皇帝とは、絶望の名。
かつてあった連なる未来。その時代に人類が滅亡の危機に瀕した原因のひとつであり、シンクロ召喚を滅ぼすために開発されたモンスター。
天、地、人。三体の機皇帝の中で最強を誇る地の機皇帝グランエル。その真価が今発揮されたのだ。
シンクロモンスターの効果を無効化する能力と、シンクロモンスターを吸収する能力。
シンフォギアはシンクロと同じくレベルを組み合わせて発現する。ならば、その扱いはシンクロモンスターとそう比はない。故に、天羽々斬を吸収したのだ。
「そいつから離れろぉおおお!!」
突貫。天羽々斬の装者を守るために彼女がガトリングをミサイルをありったけの数連射しながらグランエルへ立ち向かう。
ガングニールは急ぎ装者の元へ。グランエルの攻撃を生身で受ければどうなってしまうか分からない。
――だからこそ、彼はそこを狙う。
『ふむ、煩わしいですね…』
イチイバルの攻撃を全て右腕で防ぎ、左腕――砲身たるグランエルAを裸の装者へと向ける。
チャージ。光が砲口に収束される。そんなタイミングで装者の元に飛び込んできた少女。視界に映るガングニール、その恐怖に歪んだ表情。構わない。
Lockon。必中の一撃が放たれる。
『グランド・スローター・キャノン!』
衝撃。視界に影。
グランエルのセンサーに反応。なるほど、砲撃のなかに飛び込んできたか。
二人を守るように立ち塞がるイチイバル。その前方には数多の光。イチイバルの――現在存在するシンフォギアの中で最大の防御障壁。月を砕くために放たれた、彼のカ・ディンギルの砲撃を防いだフォニックゲインの輝きだ。
だが、そんな光は彼になんの感情も抱かせない。あれは俗にファンネルなどと呼ばれることもあるビット兵器が無数に集まることでできる障壁だ。
そんな石ころがいくら束になったところで――
「ッ!? っそだろ…」
徐々に障壁が溶け始める。
当然だ。現在のグランエルの攻撃力は、元々の数値に吸収した天羽々斬の力を加えたもの。その力は既に神を葬る段階にまで来ているのだ。
そんなものを真正面から受け止めて、無事でいられるはずがなかった。
ビットの輝きはそれを上回る光に呑み込まれ、連鎖的な爆発を引き起こす。
衝撃でイチイバルの身体が浮き上がる――同時にその身体を光が貫いた。
「ぎぃ!? や、あ、アアア!?」
「クリスちゃん!!」
地面に転がる装者。イチイバルが光となりグランエルの胸に吸収される。
これで、準備は整った。あとは彼処のガングニールを始末するだけだ…。
ゆっくりと視線を向ける。
少女の目には、絶望。先輩が、仲間がなすすべもなく打ち倒され、更に自分にまで牙を剥く。
数十倍もある無慈悲な冷たい兵器。
無機質な瞳が彼女を捉え、砲身が光を放ち始め――
「やらせないよッ!!」
衝撃と共にグランエルの体勢が崩れる。
援軍!? 砲撃が放たれた地点に居たのは、二人の男女。
赤い髪を風に揺らし、その手に槍を持つ女性。そしてその隣には身の丈ほどもある巨大な剣を握り締める男性。
どちらも、これ以上無いほどの憤怒の表情でグランエルを睨み付ける。そこにあるのは、怒りと悲しみ。こんなことをする必要があるのか。何故ここまでできる。
男性――風鳴響一郎が、グランエルに、否、その内部にいる少年に向かって、吼えた。
「戯れも大概にしやがれよ、ユーッ!! いや、遊吾・アトラァァァスッッ!!」
大地を揺らす咆哮。それに彼はいたって冷静に返す。
『戯れ? 馬鹿を言うな。これは遊びだ。ハンティングゲームと言う名のなァ?』
直後、グランエルの腕が吹き飛んだ。