遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~   作:特撮仮面

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注意

今回、オリジナル主人公の過去へと迫る話となっているため、普段よりも濃い遊戯王描写があります。

いつものシンフォギアを期待されている方は、全力でブラウザバック推奨です!!




なに?問題ない? ならば受けろよ、俺の満足を!!


彼と過去の満足

「で、どうしてこうなった…」

 

 

 拷問車輪と言う名前の罠カードがあるのだが、そこに出てくる車輪に拘束された男よりもびっくりな、見事なはりつけである。

 

 あまりにもしつこく逃げようとする彼を、二課の面子が総当たりで止めたのだ。ちなみに勝因はクリスの上目遣い(胸ちら付き)響渾身の抱き付き(胸を押し付けるオプション付き)である。なお、二人とも無意識のため質が悪い。

 

 初めは奏と翼が決闘による鎮圧を狙ったものの、狙いすましたかのようなメタカードにより逆に制圧されてしまったのだ。二課の大人たちでも叶わず導入された最終兵器。ちなみに、この事件の数日後に再開する未来が居れば、笑顔と一言で彼が轟沈することを知るのはまた別の話だ。

 

 

「あの、決闘盤から出てきたデータってどんなものがあるんですか?」

「…見たところサテライト編、ジャック・アトラス編、時空修行編、不満足編、満足同盟編、満足街編、FFCエキシビジョンマッチ編の四種類のファイルがあり、その中でも時空修行編が特に映像数が多いですね」

「いつの間にそんなに貯まってたんだ…。てか、勝手にファイルになってんのかよ…蟹ェ」

 

 

 響の問いかけにオペレーターの藤尭が答える。液晶画面に映し出される膨大な映像データに、所有者である遊吾も驚きを隠せない。

 

 というか、決闘盤に映像を記録できるようにと改造してもらったのは確かだが、まさかここまでの量になっているなんて彼も予想外であったようだ。

 

 

「で、どれを見ますか?」

「…ふむ、遊吾君におすすめを聞くとしよう」

「え? ナニソレコワイ」

 

 

 弦十郎の言葉に本気で顔をしかめる彼。

 

 当然だ。彼からすればこの表示されたデータは彼の全てと言っても良い。なぜ決闘盤を改造していない頃の映像記録があるのかは不明だが、何にせよあまり人に見せてどうこうするものではない。

 

 こうなれば、誰かにこの状況を打開してもらうしかない。奏――は論外だ。ニヤニヤ笑ってるし。翼はなにか期待した目、クリスは決闘者、遊吾・アトラスのファンを語るのでその目は期待に溢れている。というか、あたしは気にしねぇとか言ってる割に無茶苦茶そわそわしてる。

 

 そうなれば――彼が響へと視線を向ける。彼の視線に気づいた栗色の髪の少女は、太陽のような明るい笑顔を彼に向けた。

 

 通じた! これは勝てる! 確信に満ち溢れた彼の前で、響がコンソールに手を置いて言った。

 

 

「じゃあ、サテライト編から見てみましょうよ!」

「ビッキー!?」

 

 

 何故だ!? なぜ裏切った、ビッキー!? 拘束された状態の彼に向かって花咲くような笑顔でいった。

 

 

「だって、気になります!」

「ヒビキタス、お前もか…」

 

 

 はぁ、と大きくため息を吐く彼。まあ、実際のところ彼女たちのことを知ってるのに自分だけなにも教えないのはフェアじゃないか。そう考え直した彼は、再度大きなため息を吐く。

 

 

「わーったわーった。見せる。見せるからとりあえず拘束解いてくれねぇ?」

「逃げないって約束しますか?」

「レクテジンシ、イナゲニ、アア」

「……」

「ごめん、ごめんビッキー嘘です本当に逃げないんで拘束解いてくださいお願いします何でもしますから!」

 

 

 ヴェルズ語。言葉を全て逆さまにしてカタコトを使うのが特徴だ。しかし、冗談で拘束されたまま自分の過去を見るなんて只の拷問でしかないので、慌てて響に乞願する彼。響の反応は、早い。

 

 

「じゃあ、今度一緒に街に行きましょう?」

「お、おう…」

 

 

 彼の耳元に顔を近づけそう囁く響。一瞬の出来事だったが、背筋をはしるゾクリとした感覚と、普段の彼女からは想像できない彼女の表情。

 

 それらは直ぐに見慣れた笑顔に変わるが、一瞬見えた彼女のナニカに少しだけ思う。何かミスった気がする、と。

 

 

「じゃあ、再生します」

 

 

 藤尭の言葉と共に、サテライト編第一話と書かれた動画が再生される。

 

 同時に画面が暗転。暫くすると謎のファンファーレと共に画面に映像が流れ始める。そして――

 

 

『これは、絶対王者ジャック・アトラスの義理の息子である遊吾・アトラス。最強の王子、プリンスと呼ばれる彼の、壮絶な戦いと成長の記録である』

『ロード・オブ・プリンス~始まり、サテライト編~』

 

 

 同時に流れ出す謎のナレーションと題名。カタパルトから射出された戦闘機のごとくコンソールへ迫る彼をクリスがガッチリと受け止める。

 

 

「離せクリス! 俺はそのデータを――」

「止めろ! これからテメェを弄るネタが手に入るかもしれない――あたし達はお前のことを知りたいんだよ!」

「本音駄々漏れじゃねえか!?」

 

 

 ぎゃいぎゃいと騒ぐ二人の間に緒川の仲裁がはいる――いや、彼にだけ影縫いが放たれる。

 

 

「緒川さん酷くないッスか?」

「…モノの数秒で影縫いを突破しないでくださいよ」

「ま、決闘者だからな」

 

 

 しかし、お互いに本気でなかったようで即座に拘束を破壊する彼。ヤレヤレと緒川がため息を吐く、と長いナレーションが終わり、ようやく本編オープニングが始まったらしい。

 

 ちなみに、アニメのようなオープニングのスタッフのなかに、音声監督ラビエル、絵監督ハモン、映像監督ウリア、総監督アーミタイルとか言う名前が書かれていたことは気にしない。

 

 彼の元に暇潰しにやって来る神や、彼を何かと気にかけたりおちょくったりする世界を壊す邪神、悪魔たちの名前が書かれているなんて知らないし、見ていないのだ。声優の名前の欄がほとんどアバターと言う名前だなんて分からない。いやー、全部一人とかすごいなー。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 世界には様々な次元という銀河系が存在し、それらのなかに平行世界という銀河が存在していた。そして、これはそんな次元世界の一つ。数多の次元、時代が融合して出来上がった混沌の次元。

 

 そんな次元世界のとある国にある、近未来型超弩級都市、ネオ・シティ。

 

 上層であり、シティと呼ばれるネオ・シティ中心部と、とある大災害による地殻変動などが原因でシティと分離した巨大な島、サテライト。

 

 二つの街で構成されたこの都市は、かつては差別が横行し、人を人と思わぬシティの人間と、そんな住民に牙を剥くサテライトの住人による血で血を争うような闘争が行われる都市であった。

 

 しかし、そんな時代は二人の若者と、二人に惹き付けられた多くの人々によって変革していった。

 

 伝説の決闘者、不動遊星と、絶対王者、ジャック・アトラスだ。

 

 共にサテライト出身であった二人は、互いに切磋琢磨、思いをぶつけ合い多くの人を魅了した。

 

 絆を束ねて力と変える遊星と、王者の力を用いて敵を圧倒するジャック・アトラス。同じようで正反対の決闘スタイル。

 

 二人の決闘は後にシティとサテライトを繋ぐ架け橋を作るきっかけとなるのだが、それはまた別の話だ。

 

 

 そんな架け橋が出来上がり、サテライトとシティの両方の交流が始まって数年。今までの争いが冗談であったかのように交わり始めたサテライトとシティであったが、全てが上手くいくわけではなかった。

 

 例えば、相も変わらずサテライト民を差別する人は少なからず居るし、その逆もしかり。また、サテライトは架け橋が出来た地域はまだしも、サテライト中心部などの開発の遅れている地域は過去のサテライトをさらに煮詰めたような絶望の坩堝と化していた。

 

 当然だ。シティと繋がることで治安維持部隊が出入りしているのだ。元々犯罪をしていたサテライトやシティの一部が都市部から離れ、手の届かないサテライト中心部、破棄された街に移っていく。

 

 そして、そんなサテライト中心街の一角で彼は目覚めた。

 

 灰を被り、ボロボロの布切れを羽織る小さな小さな子供。遊吾・アトラスその人だ。

 

 その頃只の遊吾であった彼は、その当時のサテライトでは何も珍しくない孤児であった。それこそその日の御飯に困ってしまうほど。しかし、そんな彼にある日転機が訪れた。

 

 ごみを漁っている時に見つけた決闘盤、そして一枚のカードだ。それが彼の全てを変えた。

 

 彼が持っていたカードを実体化させる能力。それは彼を新たな次元へと引き上げた。壊れて電源の入らない決闘盤。だが、それはあくまでも彼の魂の力を放出するための道具でしかない。だから、カードさえあればそのモンスターを実体化。使役することが出来た。

 

 力を手に入れた彼の行動は早かった。即座に彼の安全を脅かすグループを一つ殲滅した。滅したとは言え、殺しはしていない。まあ、子供の彼に手加減なんてできるわけがないため、偶然死ななかっただけでしかないが。

 

 それから彼の生活は激変した。

 

 

「この、糞餓鬼ッ!?」

「レッグル、直接攻撃」

 

 

 巨大な百足のようなモンスターが人に絡み付き、人を遥かに越える人外の膂力によって締め上げられる。

 

 あまりの力に大人がその身体を弛緩させる。無意識の内に手加減を覚えた彼の、せめてもの情け。

 

 倒れた男の身体から使えそうな物品と金を根こそぎ奪う。衣服もだ。

 

 力を得た彼を捕らえんと、もしくは倒そうとして多くの人間が狙い始めていた。当然だ。十数人規模の大きなグループを高々三、四歳の小さな子供が殲滅したという話は、最早ギャグを通りすぎて恐怖の対象である。

 

 だが、恐怖の対象として襲われるようになった彼の生活は、皮肉にも豊かなものとなっていった。

 

 襲撃者たちから奪った衣服を身にまとい、奪った金銭で買い物をする。いかなサテライト中心部といっても市場は存在しており、法外な値段を支払いながらも彼は最初の頃を考えると、とても豊かに生活していた。

 

 

「あなた、凄いわね?」

「……………?」

 

 

 声。頭上から聞こえる。そちらを見れば、そこに居たのは四人の男女。

 

 その内の青色の髪をした年若い少女が彼に声をかける。警戒。明らかに怪しい四人組に向かって壊れた決闘盤を構える彼。彼の背後に立つレッグルが、主に手を出すことは許さないと言わんばかりに全身を震わせてギチギチという不快な音を響かせる。

 

 それを見た四人の中から声が聞こえてくる。

 

 

「お、おい、あいつ無茶苦茶警戒してんじゃねえか」

「えー、そうかなぁ?」

「桐生、だからもう少し話を――」

「優可は黙っててよ。そんなのだから満足できないんだよ?」

「…どうでも良いだろう。必要ならば決闘でケリをつけるだけだ」

「何でそうなるのかな、ジョン? 彼カード二枚しか持ってないよ? アレじゃ決闘なんてできやしない」

「ぐっ」

 

 

 言い争いに発展している四人。子供心にこいつら今なら撒けるななどと考えた彼は、即座に逃走を選択。レッグルに最初に声をかけてきた、恐らくリーダー格の少女を襲うように指示をだす。

 

 だが、そんな彼の考えを読んでいたかのように青髪の少女が話し出す。

 

 

「それとー、そこの少年。君逃げられないよ?」

「…ッ!? これ、いつ!?」

 

 

 彼の決闘盤に装備された手錠のようなデザインの拘束具。それが延びる先に居るのは、青髪の少女。

 

 一体いつ投げたのか? 慌てて外そうとするが、外そうとすればするほどガッチリと拘束がキツくなっていく。

 

 

「それはデュエルアンカー。決闘で勝たないと外れないんだよねぇ」

「……」

 

 

 少女の言葉に彼が構える。邪魔をするならば容赦はしない。睨み付ける彼を見て、少女が楽しげに笑う。

 

 

「良いねその顔! さあ、私のことを満足させてよォ!!」

 

 

 決闘!! そんな言葉と共に勝敗が決した。

 

 勝者、少女。当然だ。彼の手持ちのカードはレッグルを含めて三枚。山札を四十枚以上にしなければルール違反で敗北してしまう。

 

 まあ、そんなことは分かりきっているため普通は勝負が始まることすら有り得ないのだが、ここはサテライト中心部。勝利のためなら多少の無茶苦茶は許される無法地帯だ。

 

 

「???」

「さーて、じゃあ君には私たちの仲間になってもらおうかな!」

 

 

 状況が飲み込めない彼に、少女が笑いながら手を差し出した。

 

 これが、後に伝説と呼ばれる二代目満足同盟発足の瞬間であると同時に、彼にとってはじめての友が出来た瞬間でもあった。

 

 ここから、遊吾・アトラスの激動の人生が始まったのである!

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

 無言。水を打ったかのように静まり返るオペレーションルーム。

 

 第一話でありながら幼い頃の彼の生活が如何なものかを克明に語るアニメーション。シーンのなかには彼が明らかに危ない人に捕まっているところや、地面に倒れ伏せた彼、もしくは彼と同じくらいの歳の子供の姿。

 

 弱肉強食。時代錯誤にも程がある世界で生きてきた彼。第一話終了の時点で、二課のメンバーの胸を襲うのは悲しみ。何と悲しく、力強く育ったのだろうか。

 

 

「…おい、何か言えよマジで。どうしたお前ら皆して!?」

 

 

 遊吾は、静まり返った部屋を見渡す。悲痛な表情を浮かべるもの、目元に涙をためるもの、彼の言葉を聴いて全員が顔を背ける。

 

 

「なあ、響――響?」

「え? あ、はい! 晩御飯はご飯が良いです」

「どうしてそうなった!?」

 

 

 何故だ!? 本気で困惑する彼は、慌てて他の人に目を向ける。

 

 

「クリス!」

「……ぐすっ、あ、あたしはお前の味方だ。ああ、味方だとも」

「クリス!?」

 

 

 クリス号泣。どうやら過去の自分と重ねてしまったらしい。

 

 

「遊吾」

「奏!」

 

 

 眩しい笑顔でこちらを見る奏。お前ならきっと!  期待を込める遊吾の肩にそっと手を置いて彼女は言った。

 

 

「アタシの胸に飛び込んできな!」

「ブルータスお前もかっ!?」

 

 

 慈悲深い目でこちらを見る奏に頭を抱える遊吾、そんな彼の背後から影。

 

 

「安心しろアトラス」

「翼さん!」

 

 

 今度こそ来たかッ!? 期待の眼差しを受けた翼は、優しい微笑みと共に言った。

 

 

「貴様の心を私が守ろう。防人として、何より私という翼に賭けて!」

「格好良い!? でも違う、そうじゃない!!」

 

 

 ダメだッ!? こいつらぶっ壊れてる!! 膝をついて拳を叩きつける彼に、風鳴弦十郎が苦笑しながら声をかけた。

 

 

「あー、満足同盟? はなぜ男女なんだ? あの時、満足同盟拳の時は五人とも男だったはずだが…」

「ああ、それはアレ。俺の居た満足同盟はあくまでも伝説をモチーフにしたチームだからな」

 

 

 彼は語る。桐生恭華をリーダーとした、自分達のチームサティスファクションではない、真の満足同盟、四人の男たちのことを。

 

 そして、彼が語り出すと同時にコンソールが独りでに動きだし、満足同盟編のアニメーションが流れ始めた。

 

 

 

※※※※※※※

 

 

 

「やめろぉ!」

 

 

 壊れた決闘盤が地面に転がる。

 

 少年の悲痛な叫びが響く。廃工場のなかで崩れ落ちる少年。彼の目の前では、満足同盟の鉄砲玉ことクロウ・ホーガンが敵に捕らえられてしまっており、まるで少年――遊吾に見せつけるように痛め付けられていた。

 

 サテライトは群雄割拠。あらゆるチームが敵対するチームとぶつかりあい、領土を奪い合う、正しく決闘者戦国時代。

 

 

「ひはは! さあ、満足同盟のアジトを話してもらおうか!」

「い、嫌だ! 教えるもんか!!」

「そうかぁ――それは残念ッだ!」

「グワァァアアア!?」

「クロウ!?」

 

 

 鞭が放たれる。電撃。激痛に叫ぶクロウ。遊吾は叫ぶ。僕はどうなっても良いからクロウにそれ以上酷いことをしないで! と。だが、それを見た敵のチームリーダーはニヤリと口元を歪めると手元の電気鞭を再び振るう。

 

 

「ぐあっ!?」

「クロウ!!」

「俺に、構うな…」

「でもっ」

「ひははは! 美しい友情ですねェ」

 

 

 腹を抱えて笑う敵チームのメンバーたち。だが、それは電気鞭で叩かれていたクロウ、そして悔しがっていた遊吾も同じ。

 

 

「貴様ら! 何がおかしい!?」

 

 

 怒鳴り声と共に鞭を振り上げる男――雷撃をまとい飛来するソレ。遊吾はそれを無造作につかむ。バチンッという炸裂音。極った! 笑みを浮かべる。しかし、鞭を振るった男の表情が一気に凍りつく。

 

 嘲笑う遊吾。受け止めた腕に装備された――鉄腕。

 

 深紅の鉤爪、シンクロモンスター、アームズエイドだ。少年の身体に明らかに不釣り合いなそれを見て初めて、敵チームの男は理解した。

 

 茶番。最初から彼らは捕まっていたのではない。捕まっていたのは――

 

 

「うわぁああ!?」

「どうし――ああ!?」

 

 

 爆発音と共に取り巻きの一人が吹き飛んでくる。慌てて受け止め、彼の飛んできた方を見て全身を硬直させた。

 

 そこに居たのは、三人の男たち。黒い外套を身に纏っているが、鞭の男はその正体を知っている。

 

 

「ち、満足同盟(チームサティスファクション)

「よく耐えてくれた。クロウ、遊吾」

 

 

 ぐっ、と親指を立てる男。普段表情が動くことが少なく、冷血と思われがちだが、その身体には確かな熱い血が流れる、満足同盟が誇る最強のメカニック。名を不動遊星。

 

 同じように親指を立てるクロウと遊吾。まるでここに来ることがわかっていたかのような満足同盟の動きに敵チームのリーダーが吠える。

 

 

「バカなッ!? 貴様らは確かに遠征に出て居たはずッ!?」

「そう、遠征に出ていたさ…さっきまでな」

「キサマァ、鬼柳!!」

 

 

 満足同盟のリーダーで最高の満足をその身に纏い、サテライト制圧という一大作戦を考案した満足同盟の満足フラッグシップ。また、満足同盟の満足ジャケットなど様々な斬新且つ前衛的なデザインの服を針と糸だけで作り上げる満足デザイナー。

 

 そして何よりも、チームリーダーに満足できる圧倒的デュエルタクティクス。

 

 鬼柳京介。満足同盟リーダーである淡い青髪の男が一歩前に出る。

 

 

「あの決闘盤は特別製でな。発信機としての役割だけじゃなく、緊急時に救難信号となり、そして事前にカードをセットしておくことでそれを発動できる仕組みになっているのさ」

「なにぃ!?」

 

 

 敵チームのリーダーが地面に落ちた決闘盤を見る。

 

 そのモンスターゾーンには、アームズエイドのカードが確かに二枚。そして、破損した外装から除く内部機構の中にある――赤い光。

 

 最強は伊達ではなかった。一人一人炙り出して――そんなことを考えるには些か相手が悪かったのだ。チームリーダーが慌てて取り巻きたちと共にその場から逃げ出そうとする――が、それよりも速く彼らが動く。

 

 

「ぐわっ!? な、なんだこれは!?」

 

 

 風が吹く。彼らの腕、決闘盤に巻き付いた紐付きの手錠。満足アンカーだ。

 

 敵チームの人数は丁度五人。予備の決闘盤を持っていたジャックが、クロウに向かってそれを投げる。遊吾も地面に落ちた破損した決闘盤を装備。逃げ惑う相手チームのメンバーに満足アンカーを取り付ける。

 

 

「随分と俺のダチが世話になったらしいな…これは礼をしなければなるまい…」

 

 

 仲間を傷つけられた怒りを闘志へと変換、それを高めるジャック・アトラス。

 

 

「さあ、このアンカーを取りつけられた以上この決闘からは逃げられないぞ」

 

 

 静かに、だがその奥に確かな怒りを込めて遊星が宣言する。

 

 

「さっきは随分とやってくれたな? 借りは倍にして返すぜ!!」

 

 

 鉄砲玉のクロウこと、クロウ・ホーガンが鋭い眼差しで相手を捕らえる。

 

 

「…捻じ伏せる」

 

 

 ただ目の前の障害物を取り除く。唯一の決闘と言う物理手段を持つ化け物が牙を剥く。

 

 

「さあ、これで決闘の準備は整った――」

『決闘!』

 

 

 満足同盟メンバーが一斉に外套を脱ぎ捨て、同時にカードをドローする。戦いの始まりだ。

 

 この日、サテライトで二番目に強力な勢力であったチーム・サンシャインはサテライトから姿を消すのであった。

 

 

 

 場面が切り替わる。それはとある廃屋での一場面。五人の男たちが机を囲んでいた。

 

 その上にあるのは一枚の地図。サテライト全土の地図だ。それらは全てA地区、B地区といった風に区分けされており、その半分以上が満足同盟によって制圧されていた。

 

 いかにサテライトが広大だと言っても、その中で決闘者と呼ばれる者たち、特にサテライトの区画の一部を自分たちの物だと主張するようなデュエルギャングのような者は数が絞られてくる。その為行うことのできる制圧戦。ある種の決闘戦国時代。

 

 

「今にこの地図全てを黒く塗りつぶす」

 

 

 鬼柳京介が両手を振り上げ宣言する。

 

 

「どうやったって俺たちは、このちっぽけなサテライトの地から抜けだすことは出来ない。だったら、ここで満足するしかねえ」

「このサテライトでドデカいことをして満足しようぜ!!」

 

 

 彼の宣言に、四人の男が頷く。

 

 サテライトと言う閉鎖された空間。明日に希望すら持てない、夢も持てない若人たちは、一人の男の満足により底なし沼のような場所から抜けだすことが出来た。

 

 そう、鬼柳京介は満足同盟のリーダーであると同時に、ジャック、クロウ、遊星の先導者でもあったのだ。そして、それは遊吾も同じ。

 

 未熟な彼の新たな指標。王者へと至るためのナニカ。鬼柳からソレを得る為に彼もまたこの世界、この時代へとやってきた。

 

 

 深夜、ほんの少しの街の明かりを背に受けて、外套を纏う五つのシルエットが決闘盤を構える。

 

 決闘盤を装備した左腕を胸元へと持ち上げ、デッキに手をかける。そして、吠えた。

 

 

『デュエッ!!』

 

 

 彼らの満足へと至るための果てしなき戦いはこれからも続くのだろう。

 

 そう、俺たちの満足はこれからだ!!




「………これが、満足同盟」
「そ、これが後に伝説とも呼ばれる満足同盟だ」
((でも、あのジャケットは正直ないわ~))

「遊吾さん!!」
「どうしたビッキー!?」
「満足ジャケット私にくれませんか!?」
『え?』

「アトラス、私にも一着頼む」
「…あ、あたしは別に、まあくれるってんなら貰ってやってもいいぞ?」
「あ、じゃあアタシもお願いねー」
「奏者四人全員分か、材料会ったっけ――ん? これは――俺に満足が舞い降りた!!」
『一番舞い降りちゃいけないものが舞い降りたぞこいつ!?』
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