遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~   作:特撮仮面

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彼の策略

「だからフロンティアにそんな豆鉄砲が通用するはずがないだろうに…」

 

 

 動力炉に通ずるフロアで、フロンティア各施設から送られてくる映像データを確認する。

 

 先程、ウェル博士が月に対してフロンティアから砲撃――アンカーを撃ち出すことでフロンティアを完全に浮上させることに成功。これによって島のように浮かび上がっていたフロンティアは上空へと飛翔。現在、海面の数百メートル上空を滞空している。

 

 そんなフロンティアに対し、追撃の米国海軍は砲撃を開始。だが、高々戦艦の砲撃程度で巨大な島であり、聖遺物であるフロンティアに傷を付けることができるわけはなく。逆にフロンティアから放たれる姿勢制御用の重力波によってその形状を鉄くずへと変形させるばかり。

 

 それを見て大人しく逃げてくれればいいのによ、と他人事のように呟きながら彼はメサイアの最終チェックを終える。

 

 

「メサイア起動。フロンティア制御室を経由して、フロンティア及びネフィリムの制御補助を開始」

 

 

 円筒形の鉄の棺桶。メサイアの制御システムが起動する。

 

 現在のフロンティアの状態とネフィリムの状態が棒グラフや数値で表示される。

 

 現在のネフィリム及びフロンティアの制御率は73%恐らくこれからより制御率は上がると考えられる。流石はウェル博士。ナスターシャとは全く違う分野からの聖遺物へのアプローチ。ネフィリムの体組織からネフィリムを制御するためのLiNKERを作り出し、それを自分に投与するという正気を疑うような行動。

 

 やはり博士と名の付く奴等はどこかイカれてやがる。改めて確信しつつ遊吾はメサイアによるフロンティア及びネフィリムへの介入を行う。

 

 メサイアの目的はあくまでも各聖遺物の出力増強と制御の安定性を高めるもの。故に過度な介入は怪しまれる可能性が高いが、重要なのはメサイアのシステムを一部でも食い込ませるということ。それ以降は自分の力で何とかできる。

 

 メサイアによる出力制御を行っている途中、突然通信回線が開く。

 

 そこに居るのは、目元に慈愛と悲壮を宿す女性。

 

 ナスターシャ・セルゲイヴナ・トルスタヤ。フルネームで呼ぶと呼びづらいし噛む、といった関係各所からの要望によって、ナスターシャ教授やマムと呼ばれている女性。

 

 マリアと同じように、不器用であるが優しさに溢れる女性は少し悲しそうに言った。

 

 

『調と切歌が戦闘を開始しました』

「…てことはクリスも戦闘中か」

『ええ。…遊吾、今だからこそ聞きたいことがあります』

「なんだよマム。藪から棒に」

 

 

 ネフィリムとのシンクロ率は12%ウェルとの融合状態にこれだけ介入できれば十分だろう。フロンティアは30とちょっとか…。まあマシか。

 

 コンソールをガタガタ鳴らしながら操作を続ける。こういうところで手先が器用なやつに憧れるよな、などとどうでも良いことを考えていると、ナスターシャがゆっくりと彼に尋ねた。

 

 

『貴方は何を知っているんです?』

「何を、ってーと?」

『貴方の行動は作為的なものすら感じれるほど、的確です』

 

 

 確実すぎるほどに二課と我々の動きを読み、策を考える。しかも、その策は全て態々何かを起こしてほしい――いや、何かが起こることを前提とした一部穴のある策ばかり。

 

 

『貴方には何が見えているのです? 遊吾』

「俺基準でマリアたちが幸せになれるような未来」

『なるほど』

 

 

 彼の言葉にナスターシャが顔を綻ばせる。

 

 彼女の私生活で行われていた行動と、彼女の乗る車椅子に仕掛けられた仕掛け。そして彼がこれまで行ってきた行動。

 

 その全てがナスターシャの頭のなかで組み合わさっていく。まるで見てきたような彼の的確な指示、動きは元々ある程度描かれた脚本から生み出されたもの。彼が良く話していたレックスの性格と、数時間前に残ったF.I.S職員からの通信の内容『事は成された』という言葉。

 

 不可解であり、同時に不審であった彼の行動の数々の意味がようやく見えてきた。

 

 

『ですが、そんな絵空事のような未来を作り出すことが可能なのでしょうか?』

 

 

 彼の望む未来は、言葉にするなら簡単だ。だが本当にそれは可能なのだろうか?

 

 世界というものは優しく、美しいと共にどこまでも冷たく、醜い。彼はそのことを理解しているはずである。

 

 しかし彼はそのことすらもしっかり勘定に入れているらしく、ニヤリと悪戯を思い付いた悪餓鬼の表情で言った。

 

 

「これから、関係各所とメサイアの力を借りて全世界に電波ジャックを仕掛ける、かもしれねえ」

『はっ?』

「まあ、そこら辺はウェルやらマリアやらが勝手にやりだすかもしれねぇけど。その時はそこにちょちょっと手を加えてだなぁ――」

『ちょっと、ちょっと待ちなさい』

「なんだよマム?」

『一体何をするつもりなのですか!?』

「何ってそりゃ」

 

 

 笑みを深めて彼は言う。

 

 

「世界の善意ってやつに呼びかけんだよ」

 

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

「なんだ、後輩が皆居なくなって泣いてるかと思ったのに、よっ!」

「そちらこそ、人恋しくて泣いていると思ったのだがなっ!」

 

 

 銃と剣。遠距離と近距離。相反する武装を持つ二人の歌姫が舞い踊る。

 

 蒼い風が舞い、銀色の軌跡が空を斬る。鋭い気迫の乗った刃、動きこそ基本的な剣の振り方であるがそこには長い鍛練の末に生み出された美しい殺意が籠る。

 

 当たれば確実に仕留められるであろう一撃を、限界スレスレ、紙一重で避け続けながら赤い花がステップを踏む。

 

 大型銃器などを主軸としていたアームドギアであったが、近接戦闘での取り回しの悪さから、小回りの利く自動小銃の形状へ変化させ、踊るように弾丸を放つ。

 

 一撃もらえば仕留められると言うことはクリスも知っている。故に彼女は距離を詰めさせない。彼女の剣が届くということは同時にこちらの射程圏内でもあり、互いに手の内を知っているからこその、付かず離れず、まるで出来の良い演舞でも観ているような、そんな戦闘が続く。

 

 

「で、あの馬鹿は何やってんだ?」

「さてな! 私が出る前に何やらダンボールを用意していたのは見た!」

「それどう考えても馬鹿やるじゃねえか!?」

「違いない!!」

 

 

 至近距離で放たれる弾丸を超人的な反射でいなす。返す刃で彼女の首を狙えば危なげなく後退して再度弾丸を吐き出す。

 

 互いに互いを一撃で打ち倒すことのできる大技を持っている。持っている、がそれを使うということは即ち隙を晒すと言うことだ。

 

 シンフォギアの性質上、どうしても大技を使うには歌を高める必要があるし、アームドギアを使用するのなら変形の時間も視野に入れなければならない。

 

 互いに互いの技を知り、良くも悪くも技術が拮抗している現状でそんなタイミング丸わかりな技を使えばどうなるかなんてわかりきっている。だから彼女たちは基本的な立ち回りと純粋な技術をもって相手を打ち倒さんと動く。

 

 

「で、そちらの馬鹿はどうだった!」

「あいつ、また女引っかけてやがった。こっちが純粋に心配してたってのに」

「なんだ雪音? あんなに『あの馬鹿心配するだけ無駄だー』とか言ってたのに心配してたのか?」

「ばっ、言葉の綾だっての!?」

 

 

 頬を染めながら吠えるクリス。

 

 リズムが崩れた。神速の剣技が彼女の胴を薙ぐ。

 

 

「あぶなっ!?」

 

 

 上半身を反らして何とか身体を捉えることだけは避ける。だが、上体を反らしたことで狙いがそれた刃は彼女の下乳の装甲を切り裂いた。

 

 バックステップで距離をとったクリスは、若干軽くなった己の胸をちらりと見て言った。

 

 

「何かさっきから胸ばっかり狙ってねえか!?」

「なんのことだ? 私は何も知らないな」

「絶対さっき胸小さいとか言ってること気にしてるだろ!?」

「知らん。…ちっ」

「今小さく舌打ちした!?」

 

 

 てか、何であたしらこんな会話してんだよ!? 一旦距離を離したことで余裕が生まれ、クリスが言う。

 

 

「雪音が敵対するからだろう。そんな首輪まで着けられて」

「あ、この首輪? あの馬鹿曰く、裏切ったら電流流れるらしい」

「何だと!?」

「ついでに会話は全部筒抜け。少しでも言動がおかしかったらスイッチ一つでビリビリだそうだ」

 

 

 本当なら、爆弾の方もあったんだけどな。選べる二タイプってことで、あたしはあの馬鹿特製のこっちにした。何の気なしに彼女が言う。

 

 何と卑劣な。思わず歯噛みする。音声だけ、というわけではないだろう。恐らくはどこか安全な所からこちらの戦闘を確認しているはず。あの首輪がどれほどの物かは分からないが、いかな防人とて妙にクリスのシンフォギアと調和しているお洒落な首輪だけを切り落とすことは不可能に近い。

 

 

「って、選んだ?」

「ああ。ドクター・ウェルの作った無骨な爆弾タイプと、遊吾の作ったお洒落電撃タイプ。人食い鮫もイチコロな電流が流れるらしい」

「何故そんなものを嬉々として選ぶかッ!?」

「いやな? フィーネと契約すると、もれなく俺のブロマイド付きで首輪も着くとか言われたらつい…」

「悪徳商法に騙されているぞ!?」

 

 

 少しでも裏切った理由を真面目に考えた私が悪いのか!? クリスのあまりにも頭の悪すぎる回答に思わず頭が痛いと額を抑える翼。

 

 

「ま、それは冗談として。そろそろあたしのとっておきで決着つけさせてもらうぜ? 先輩」

「――ッ!? …ふっ、それは面白い」

 

 

 初めて先輩と呼ばれて、内心狂喜乱舞しながらも、何とかそれを表面に出さずに冷静に返す翼。

 

 雪音クリスは責任感が強い。いや、強いなどと言う話ではない。強すぎてネガティブになってしまうほどに強い。

 

 だからか、彼女は気にしなくても良いことを気にして、自ら壁を作り出す癖がある。彼女が二課の面子の名前をお前やてめぇ、馬鹿などで済ませるのはそのためだ。

 

 だからこそ彼女が先輩と言ったことはそれだけの意味がある。それは彼女なりの信頼。ならば先輩として彼女の思いに答えなければならない。

 

 さあ、どこからでもかかってこい! そう気合いを入れて構える翼を見て笑いながら、クリスはとっておきを展開した。

 

 歌と共に新たに展開される装甲。腕や足に新たに装甲が追加され、胸部装甲が厚みを増す。

 

 腰部に新たなスカートが増設、肩に大型コンテナ、両腕にはガトリング、そして前腕部には明らかに打ち出す気満々のバンカー。

 

 可愛らしいヒールの脚部装甲は少し大人っぽく尖ったものへと変形、太股の側面装甲が新たに追加された。

 

 響や翼のシンクロとも、マリアや未来のエクシーズとも違う、純粋なシンフォギアのアームドギア形成の技術を応用した、スタンダードな強化形態。

 

 唐突なクリスの変身。全身これ兵器。敵対者絶対ボコすという彼女の意思を完璧に反映した馬火力シンフォギアの登場に思わず叫んだ。

 

 

「そんなとっておき予定に無いぞ雪音!?」

「そりゃ、言ってないからなぁ!!」

「あ、もしかしてさっきからかったの気にしてるな!?」

「気にしてねえよ!! それにさっきも言ったけど別に心配なんてしてねえしっ!!」

「絶対気にしてる!?」

 

 

 コンテナ、ミサイルポット、ガトリング全ての武装が大地を揺らすほどの咆哮を挙げ、次の瞬間フロンティアに盛大な花火がうち上がるのであった。

 

 

 

 

 同時刻、フロンティア遺跡前でも戦闘が行われていた。

 

 月読調、暁切歌。ほんの少しだけ違う考えを持ったがために敵対してしまった少女たち。彼女たちは仲違いをしたわけではなく、ただ考え方がほんの少しだけ違っていた。その為に敵対せざるを得なくなってしまっただけであって決して本心から敵対しているわけではない。

 

 だが、それでもぶつかり合わなければならない時がある。

 

 

「なんで分かってくれないデスか!! 世界を救うには、大切な人を守るにはウェル博士の方法しか無いデス!!」

「そんなことない!! 遊吾だって言ってたよ、世界を救うのは何も強大な力だけじゃないって!!」

「なら、何で遊吾はウェル博士に賛同したんですか!? おかしいデスッ!!」

「それは――」

 

 

 言葉に詰まる。確かに彼女の言う通り、なぜ彼がウェル博士の言葉に賛同し、フロンティアの力を用いた統治などということを言い始めたのかは分からない。

 

 彼がそんな話をし始める少し前に、力だけが全てではないなどと言っていたのだから尚更だ。

 

 矛盾。彼が何を思い行動しているのかが全く分からない。だが、一つだけ分かることがあるとすれば、彼が態々ウェル博士に賛同する理由がないということだ。今まで関わってきた彼の性格を考えれば、自然とそう思える。仮にこの仮定が間違っているのならば、それは彼が自分達を騙していたということ。

 

 もしもウェル博士の思想に賛同して動くというのならば、それはきっと――

 

 

「私達を守るためだよッ!!」

「どういうことデスかッ!?」

 

 

 何故彼の行動が自分達を守ることに繋がるのだ。ふざけたことをぬかすんなら、その首かっ捌くデスッ、と苛立ちを込めて鎌を構える切歌。

 

 彼の行動が何故自分達を守ることに繋がるのか。咄嗟に出てきた言葉。考えろ。何故そう考えた。

 

 ここで答えなければ、彼女は今度こそ本気で切りに来るだろう。額から汗が伝う。考えろ、考えろ。

 

 

――まったく、そんなに気張ってちゃ分かるものも分からないわよ?

 

「――フィーネ!? な、なんでフィーネが…」

 

 

 心の奥底から呼び掛ける声。彼女の魂に宿るもう一人の女性。

 

 同時に彼女の隣に気配が生まれる。それは他の誰にも見えない、彼女にだけ見える人。

 

 

『貴女が呼んだんじゃない。手を貸してって』

「言ってた?」

『ええ。無意識でしょうけど心のなかでね。ああ、そう言えば助けてゆう――』

「わぁあああ!?」

「ど、どうしたデスか調!?」

 

 

 無意識に心で思っていたことを話されるほど恥ずかしいことはない。大慌てで叫んだ調を見て、一体どうしたんだと切歌が慌てる。

 

 その声にハッと調が現在の状況を客観的に理解する。

 

 突然、何もないところに向かって手を振りながら奇声をあげる少女。うん、ヤバイ。とてつもなくヤバイ。

 

 もしかして、リンカーに何か仕込まれて――などと神妙な顔をして呟く切歌に大慌てで叫ぶ。

 

 

「何でもない!! 何でもないよ切ちゃんッ!! 本当に何でもないからッ!!」

「そ、そうなんデスか?」

「そうなんですッ!! だからちょっと待って!!」

 

 

 ぜぇ、ぜぇ、と肩で息をする調を見て、クスクスと笑う。

 

 

「誰のせいでこんなことになってると思ってるの?」

『聞かせる貴女が悪いわ。私はただ寝てただけなのに』

 

 

 ねぇ? ニヤニヤと笑うフィーネに、思わずギリッと歯を食いしばる調。

 

 おかしい。自分達が聞いたフィーネとこのフィーネはあまりにもイメージがかけ離れている。これではただの神秘的な衣を纏った近所の悪戯好きなお姉さんではないか。

 

 

『あら、ありがとう』

「…勝手に心を読まないで」

『そう言われても、勝手に聞こえてくるからねぇ。私にはどうしようもできないわよ?』

 

 

 だから仕方ないと笑うフィーネに、はぁ、と思い切り溜め息を吐く。なんで私の中に宿ってるんだろう、この人。私のキャラと違いすぎる。

 

 

『そりゃ、ボケとツッコミ、みたいな』

「私たちは漫才師ではない」

『はたしてそうかしら。…で、なんであの子が貴女たちを守ろうとしていると思った理由、分かったかしら?』

 

 

 どうやら、自分を落ち着けるためにこうして出てきてくれたらしい。…正直、ある意味でこちらの方が落ち着かないが、彼女のお陰でリラックスは出来た。

 

 煮詰まっていた感情が吐き出され、頭がスッキリとしている。何故彼が自分達を守ろうとしているか。それは――

 

 

「女の勘だよ切ちゃんッ!!」

「一番しちゃいけない答えが返ってきたデスッ!?」

 

 

 それマジで言ってるデスか!? と叫ぶ切歌に調が笑いながらいう。

 

 

「うん、マジだよ。…だって、私たちの常識をぶち壊す遊吾なんだよ? 普通に考えて分かるはずない」

「………確かに」

『……遊吾、貴方この子たちに何やらかしたのよ』

 

 

 フィーネは覚醒を繰り返していたから覚えていないだろうが、研究所の検問を突破するために巨大な外壁をDホイールで飛び越え、F.I.Sの食事事情に革命をおこして皆の胃袋を握り、裏の支配者と呼ばれ、F.I.Sが初めて分裂した、性癖の乱を引き起こした張本人。

 

 楽しかった。もちろん、毎回巻き込まれたり、怒ったりするのは大変だけれど、それが何よりも面白くて、楽しくて。

 

 

「真面目に考えるなら、遊吾が何も言わないのがその理由、だと思う」

「……それは、遊吾がなにか悪いことを企んでるってことデスか?」

 

 首を振る。悪いことをしても、彼に何のメリットもないのだ。ウェル博士は力を使って何かをしようとする意思があった。ナスターシャや自分達にだって、フロンティアの力で落下する月を止めると言う確固たる目的があった。

 

 だが、遊吾にはそれらがない。あえて言うのならば、ナスターシャたちのように月の落下を阻止すると言う目的なら作ることができるが、態々フロンティアの力を使って悪さをするなんてことをする必要なんてないのだ。

 

 何故なら、彼は元から力を持っているからだ。決闘に準じた力ではあるが、全てを流す濁流を発生させ、人ではどうしようもない巨大なモンスターを使役し、己はノイズとなって人を滅ぼすことも可能。彼単体で力が完結しているのだ。それなのに一々F.I.Sに近づき、フロンティアを使い、などとまどろっこしいまねをする必要があるだろうか? いや、無い。

 

 ならば何故彼はウェル博士に同調したのだろうか? これは恐らくという予想でしかないが、一つ思い当たる節がある。

 

 

「切ちゃん。もしも、もしもだよ? 遊吾がそのポジションを欲しているのだとしたら?」

「ポジション?」

「うん。悪い人の立場じゃないと出来ないこととかがあるとしたら。もし、その立場なら大切なものを守れるかもしれない、とか考えたりしたら?」

「…いくらなんでも突拍子もないデスよ」

「もう一度言うよ、切ちゃん。会って間もない私たちの為に国に喧嘩を売る人が、無茶苦茶なことしないと思う?」

「…もしかして、デスが、遊吾の目的って月とか関係ない?」

「うん。フロンティアとか月の落下とか毛頭頭に無いよ。あっても当面の目標なだけ」

 

 

 なら、遊吾・アトラスが態々ウェル博士の考えに賛同してまで行おうとしていることとは、

 

 

「遊吾が行おうとしていること、それは――」

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

 

「私は、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。武装組織フィーネのリーダーだ。どうか、私の話を聞いてほしい」

 

 

 ウェル博士の暴挙。フロンティアの浮上と共にアンカーを用いて月の落下を加速させる。それは彼女たちの誰もが想像できなかった狂気。英雄になる、たったそれだけのために彼は全世界を混乱に叩き落とそうとしていた。

 

 現在のウェル博士はネフィリムの力を有し、その力を用いてフロンティアとネフィリムを制御している。ネフィリムと一体化している以上、フロンティアの制御を彼から奪うことはできない。

 

 仮にできるのだとすれば、それは爆発的なエネルギーを持つ聖遺物であるメサイアのみ。しかしそのメサイアは現在ユーが制御しており、何故か電波ジャック後に彼とは一切の連絡がとれない状態にある。

 

 何かあったのか、なにかをしようとしているようだが、いったい何をしようとしているのかはわからない。

 

 どちらにしても、ウェル博士に頼んでも月を押し戻すことはできないだろう。ならば自分達が何とかするしかない。

 

 その作戦が、この全世界への放送である。

 

 フロンティアの大本の制御はマリアの居るブリッジで行っているが、だからといって全てのシステムを制御しているわけではない。それ自体が巨大な聖遺物であるフロンティアは、幾つかの制御室から制御されているのだ。

 

 その一つがナスターシャの居る制御室だ。主としてフロンティア各所の環境システムなどの末端の細かい部分を制御する部屋であるその場所からフロンティアブリッジの映像を出力。世界規模の電波ジャックを行ったのだ。

 

 彼女たちの狙いは一つ。マリアの歌を世界に流し、放送を見ている世界中の人間からフォニックゲインを抽出すること。現在の地球の総人口は約七十億。その大半は聖遺物を起動するだけの力を持っていないだろう。だが、聖遺物が起動できないからといってフォニックゲインを放出できないなどということはない。

 

 フォニックゲインとは、端的に言って感情の爆発、思いをエネルギーとして表出させているのだ。

 それがどれだけ微弱であっても、それが世界人口の半分だとしても、その総数は三十億を超える。それだけの出力があれば月を押し返すことも可能ではないか。

 

 成功確率などどれだけあるか分からない。失敗するかもしれない。だが、こんなところで諦めたくない。嘘で塗り固められた自分でも、いや、嘘をつくことしか出来ないからこそ諦めたくない。最後まで何が起こるか分からないのだから、なら私は自分の喉がつぶれても諦めない。彼なら、いや、彼だってそうするだろう。

 

 ここで終わりたくない。終わらせたくない。だから――

 

 

――力を貸してッ! ユーゴ、セレナッ!!

 

 

 エクシーズ。希望を背負う覚悟の槍を纏い、女王が歌う。

 

 力強い歌声はカメラを通して世界へと広がって行く。力強さのなかに籠った彼女の確かな思いが少しずつ人々に伝播していく。

 

 足りない。少しずつ放たれ始めるフォニックゲインだか、これだけでは月を押し返すことは不可能だ。

 

 それを何より感覚で理解したマリアが、歌う。何度も、何度も、何度も。

 

 だが、足りない。どれだけ声をからすように全力で歌おうが、届かない。

 

 それは武装組織フィーネへの反感であったり、テレビを通してという状況のせいもある。それに、歌で世界が救えるなどと言われて誰が真面目にそれを受け取るだろう。

 

 それでもマリアは歌おうとする。絶対に届くと信じて。嘘をついて。

 

 荒っぽい足音。歌い出そうとしたマリアの元へ、疲労困憊のウェル博士が現れる。

 

 

「ドクター!?」

「ぐっ、この僕をここまでこけにしやがってッ!!」

 

 

 鬼気迫る表情。擦りきれ、砂まみれになった白衣。

 

 雪音クリスの反逆と、風鳴翼の逆襲。最早手駒でしかないと考えていた少女たちによってソロモンの杖を失ったウェル博士は必死の思いで逃亡しブリッジまでたどり着いたのだ。

 

 今の彼にマリアたちは見えていない。彼の頭にあるのは、自分を傷つけた少女たちへの復讐のみ。

 

 

『お願いですウェル博士。世界中のフォニックゲインをフロンティアに収束するのです。そうすれば月の落下は――』

 

 

 ウェルがフロンティアの操作を開始。ナスターシャがとうか自分の声を聞いてほしいと彼に頼み込む。

 

 制御室ではなく制御中枢であるブリッジならば、そう考えて、そしてウェル博士の中の人間性を信じての願い。

 

 だが、その願いは彼の怒りにガソリンをぶちまけただけだった。普段ならなにも言わないでいれただろうに、それに気付けないほどに、ナスターシャもまた焦っていたのだ。

 

 

「ならッ!! お前がッ!! 月をどうにかしにいけば良いだろうッ!!」

『いったいなにを――きゃあ!?』

「マムッ!?」

 

 

 ウェルの叫びと共に、短い悲鳴。

 

 フロンティアの一部、ナスターシャの居る制御室がフロンティアから切り離され打ち上げられる。

 

 あまりの出来事にマリアが必死に通信を飛ばす。しかし帰ってくるのはノイズばかり。

 

 

「は、ははは。なんだ? 僕に何か言うことがあるのか?」

「ドクターッ――」

 

 

 親の仇。灼熱のごとき視線でウェルを射抜く。が、彼女は怒りをそのままに立ち上がり、再度歌を歌おうと息を吐く。

 

 ここで怒りのままに暴れるのは簡単だ。たが、自分にはやらなければならないことがある。マムの、ナスターシャの想いを無駄にするわけにはいかないのだ。

 

 だが、いや、だからこそ、生まれかけた希望を絶やすために彼が動いた。

 

 

『おや、大変なことになっていますねぇ?』

「ユー・トイルイ・テッシがッ!? お前、なにをやってくれているんだッ!!」

『おや? 何かミスでもしましたかな?』

「あの首輪だッ!! なんだあれは、欠片も機能しないじゃないかッ!!」

『おかしいですね――ああ、そういえば破損信号が出ていましたが…なるほど』

 

 

 彼は頷く。恐らく風鳴翼の剣によって首輪が機能しなくなったのだろう。首輪という一歩間違えれば大惨事の場所、そこを戦闘中に的確に斬るのだから、流石は防人といったところ。

 

 

「なにを呑気に言っている! 僕は死にそうになったんだぞ!!」

『いえ、こちらも首輪を斬るなんて想定していませんでしたから。これは申し訳ないことをした』

 

 

 いっそ清々しいほどの謝罪。忌々しそうに舌打ちすると、ウェル博士は言う。

 

 

「まあ、いい。で、邪魔者は始末したけど、これで本当に大丈夫なんだろうな?」

『はい。ナスターシャの乗った制御室は単独飛行など出来ませんから。恐らく今ごろ宇宙の塵となっているでしょう』

 

 

 塵? 彼は一体何を言っているんだ? 状況が理解できない。なぜ彼はあそこまで愉快そうに笑えるのだ? 何故彼は、マムのことをそのように言えるのだ?

 

 

「ゆ、ユー――」

『おやマリア。お歌の時間は終わったのですか? 私はもう少し聞きたかったのですがねぇ』

 

 

 黒装束の下で彼が笑う。それはマリアが欲していた笑みではない。それは彼女が過去に何度も見てきた笑顔。相手を蔑み、侮辱するための笑み。

 

 

『所詮は偽りでしか無い貴女では、フロンティアは動かせない。それを分かっていて尚必死に歌う貴女は、何と愚かで、美しかったでしょうか』

 

 

 とても楽しいと言わんばかりの声色。彼が愉悦と笑う。

 

 言葉が出ない。口を開こうとしても、どれだけ声をあげようとしても声帯を震わせるのは微かな吐息。脚が、腕が震える。何故、どうして。心の奥からドンドンと言葉が溢れ出し、それが彼女の頭を掻き乱す。

 

 

「な、なんで……」

 

 

 必死の思いで捻りだした言葉は、単純な問いかけ。

 

 彼女の言葉に、彼がいっそ憎たらしいほど優しい声音で、まるで子供を相手にするように彼女に言う。

 

 

『なんで、ですか。それはナスターシャ教授を塵と言ったことですか? それとも、こうしてウェル博士と協力していること? はたまた――いえ、そうですね。簡単に、分かりやすく言うならば裏切りでしょうか? いいえ、裏切りですらありません』

 

 

 彼の眼が細くなる。

 

 やめろ。彼女の身体が熱にうかされたように激しく震えだす。やめろ。言うな。彼が言おうとしていること、それは自分の破滅につながる。理性ではなく本能が彼の言わんとする言葉を察してしまい、彼の言葉が聞こえないようにしようとする。

 

 

「やめろ…」

『何故裏切りではないか? 簡単なことです』

 

 

 人はその身が危険に晒された際、身体を丸くすることによってその危険を回避しようとする。これは人間の防御反応であるとされる説もあるが、身体を丸くするという行動は、人間が最も安心する姿勢であるからとする説もある。何故なら、その姿勢は人間が生まれる前からしている姿勢であり、その間は母体によって身体が保護されているからである。

 

 

「やめて――」

『元々裏切ってなどいませんよ? 当然でしょう。だって私たちは――』

「やめてぇええええええええええええええええええええ!!!!」

 

『仲間ではないからです』

 

 

 無意識の内に抑えていた耳当て。どれだけ耳を抑えようとも、通信機を通して彼の声が聞こえてくる。どれだけ身を屈めようと、丸くしようと、どれだけ逃げようとしても彼の声が彼女を離さない。

 

 叫び声を上げる。いや、それは叫びを超えた絶叫。何も聞きたくない。そんなの嘘に決まっている。だが、どれだけ否定しようとも、彼の言葉は荒波のように彼女の心を呑み込み、白いキャンバスにぶちまけられた黒色のインクのように彼女の心を犯す。

 

 

『楽しかったですよ。貴方達との仲間――いいえ、家族ごっこは』

 

 

 まさか、女王マリアなる者がただの生娘だったことは驚きでしたが。まあ、何ですか? 仲間だと錯覚させてしまったことは本当に申し訳ありませんでした。安心してください。もう騙されることは二度とありませんから。

 

 侮辱、屈辱、怒り、悲しみ。だが、それよりも何よりも、彼女の心を穿つ、虚無。彼の優しい笑顔。切歌や調に弄られる彼の姿。かけてくれた言葉、仕草、表情。

 

 彼女から大切なナニカが抜け落ちてしまった。心が折れた、なんて生易しいものではない。文字通りの消失。文字通りの虚無だ。

 

 強い光を放っていた瞳からは光が完全に消え去り、静かに涙が頬を伝う。その口元はひくついて奇妙な笑みを浮かべ、その口からは意味を持たない笑い声のような息が漏れるだけ。力なく崩れ落ちた肢体はまるで打ち捨てられた人形のようだった。

 

 

「や…やりすぎじゃあないか?」

 

 

 いくら英雄になるという強欲を持つウェルからしても、マリアの姿は見るに堪えなかったのだろう。引きつった表情でユーに問いかける。だが、ユーの言葉は無慈悲なモノで、

 

 

『これくらいも耐えられませんか。所詮は偽りの人形。彼女は森の中でひっそり生きるのが丁度いい』

 

 

 本当にこいつは人間なのか? 自分の論理感が破綻していることを加味しても、この男のやることは異常すぎる。ウェル博士は内心でとんでもない男を味方につけてしまったと彼を恐れた。

 

 いくら非常な人間でも、こんなことはしない。彼の言葉に嘘はまったく感じられない。ならば彼は本当に今までの間で彼女たちとごっこ遊びを演じてきたのだろう。何と恐ろしく、おぞましい。英雄願望の強い自分とは違う、完全な悪の姿に最早言葉が出ない。

 

 

『さあ、ウェル博士。続きを――』

「ちょぉっと待ったァッ!!」

 

 

 全力疾走。マリアの前に飛び出す影。

 

 

『立花響、ですか』

 

 

 私立リディアン音楽院高等科の制服を着てブリッジに飛び込んできた少女――立花響は、ウェルやユーのことなど完全に無視し、さっさとマリアの元へと歩き出した。

 

 一体何をするんだ? 突然現れた少女の行動に誰もが動きを止める中、彼女はマリアの眼前へと歩いていき――

 

 

「マリアさんッ!!」

 

 

 感極まったように彼女を全力で抱きしめた。

 

 これには誰もが驚く。彼女とマリアとの間には何の接点も無い筈。あっても敵として出会ったことくらいで、彼女がそんなことをする理由は無い。リアクションこそとれなかったが、マリアもそんな気持ちだった。だが、彼女の胸に抱かれていると、何故か凄く懐かしい感覚が蘇ってくる。

 

 力の入らない瞳。動かすことすらできない身体。だが、その感覚を心が求める。暖かい、温もりを。

 

 

「マリアさん。私、大切な人が居るんです」

 

 

 唐突に響が語り始めた。ゆっくりと彼女の瞳を見つめ、優しい笑みを浮かべながら。

 

 

「その人は、いつも無茶苦茶する人で、そのせいで私も未来も、皆心配して。でも、その無茶苦茶でいつもみんな助けられて。その人の笑顔が私は好きで、その人のためなら何でもできる、何でもしてあげるって、そう思っちゃうんです」

 

 

 壊れ、軋む世界に、暖かな声が聞こえてくる。彼女の視界に映る笑顔、それは彼女がとても良く知るモノと類似していた。いや、そのまんまと言っても良いかもしれない。

 

 

「でも、私は今すっごく怒ってます。その人の無茶のせいで物凄い傷つく人が居るから。だから私、これからその人を全力で殴りに行くんです。だから――」

 

 

 ふと、彼の言葉を思いだす。確かあれは日本のことを聞いたときの話だ。

 

 日本での生活の中で彼と親交の深かった少女。彼は言っていた。彼女と自分は似ていないが、なぜか良く似ていると言われることがある、と。なるほど、確かにそうかもしれない。

 

 

「一緒に、殴りに行きませんか?」

 

 

 こんな悪戯っ子のような笑顔、全力で無茶苦茶をする馬鹿じゃないと浮かべられないから。

 

 彼女と彼の笑顔が重なる。

 

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 

 少女たちが紡ぐ歌。シンフォギアの最終兵器にして装者の命を燃やす絶唱。

 

 Emustolronzen fine el baral zizzl

 

 カメラを通して歌が世界に響き渡る。その美しくも力強い二つの歌声に、誰もが目を奪われる。 

 

 Gatrandis babel ziggurat edenal

 

 拳に、脚に力が宿る。ゆっくりと立ち上がる二人。それはまるで互いに翼を預け飛ぶ鳥のように。

 

 Emustolronzen fine el zizzl――

 

 歌が静かに終わりを迎え、静寂が世界を包み込む。瞬間、二人を中心に黄金の粒子が溢れ出す。

 

 

「な、何が起こっているッ!?」

『馬鹿なッ!? 生身でありながら絶唱を紡ぐ――いや、シンフォギアを纏うというのかッ!?』

 

 

 立花響にシンフォギアは無い。だが、彼女の身体には融合した聖遺物がある。

 

 聖遺物とは本来一個の物。だが、彼女たちが身に纏うシンフォギアはその元々一つであったものが分離して出来た欠片から作られている。

 

 ならば、破片同士が呼び合い、くっつくことくらいどうということないではないか。元々一つの物であったのだから。

 

 

『一体何をしたッ!? マリアの心は完全に折れていた。何をもってそれを立ち上がらせるッ!?』

 

 

 エクシーズ化したマリアのシンフォギアのアウフヴァッヘン波形は、通常の物とは完全に異なる形状となっている。その為、通常の手段のシンクロ、聖詠では身に纏うことは出来ない。

 

 故に響はガングニールを纏うために絶唱を用いた。

 

 絶唱は恐ろしくリスクの高いものであるが、シンフォギア毎に取り付けられている共通の機能だ。彼女はこの共通という部分に目を付けたのだ。

 

 いくらエクシーズ化しているとしても、絶唱の際には本来のガングニールと同様の波形のフォニックゲインを放出する必要がある。ならば、あとはランク化したアウフヴァッヘン波形にフォニックゲインを重ね、それと己を同調させてしまえばいい。

 

 彼女の体内の聖遺物とガングニールが同調し、新たな波形を作りだす。

 

 

『…いや、そうか。それがお前らの――』

 

 

 膨大なフォニックゲインによって世界が白に染め上げられる。

 

 瞬間、マリアの耳に微かに聞こえた声。それが何を言っているのかは分からなかったが、何が言いたいかは理解できた。

 

 相変わらず破天荒な妹だ。でも、その言葉に今は賛成しよう。愛する妹の遺したこの、シンフォギアで――

 

 

『これが、私の――私たちのッ!!』

「激槍――」

「銀腕――」

「ガングニール――」

「アガートラーム――」

『ッだぁああああああああああああああああああ!!』

 

 

 黄金の右腕と白銀の左腕。繋ぎ、束ねる力が今、フロンティアに降り立った。

 

 手をぎゅっと握り絞め、彼女たちは声をそろえて世界に――いや、たった一人の男に向かって宣言する。

 

 

『とりあえず、ぶん殴るッ!!』

 

 

 気炎をまき散らす二人の姿に、彼は安心したような、ホッとしたような笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

※※※※※※※

 

 

 

 

 

 黒い異形。同調もできぬ融合体。無理矢理引き出された、強力無比にして理不尽。絶対的な力。

 

 そんな強大過ぎる力を前に、彼はボロボロの肉体で無謀にも挑み、そして――

 

 

「ああああああ!? ……ゆ、夢?」

 

 

 何だか分からないが、とても危険な夢を見ていた気がする。それこそ己の命が燃え尽きるような、

 

 

「どうした遊吾!?」

「あ、親父…。いや、何でもねぇ。すっげぇ悪い夢見た気がしただけだ…」

 

 

 ネオ・シティの一角。アトラス家の自室で彼は――遊吾・アトラスは目を覚ました。




遊吾君まさかゲス化+帰還。一体何が起こったというんだ…。
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