遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~   作:特撮仮面

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注意!!


 今回の話には、非常に高い遊戯王要素。にわか決闘者特有のガバガバデュエルシーン。シンフォギアどうしたんだよ、おい? といった要素が多大に含まれています。

 これらが苦手な方は即座にブラウザバックを推奨しています。


 一向に構わんッ!! とエルフナインちゃんの前で漢脱ぎ出来る方はそのままスクロール。


彼の居た場所

「まったく、何事かと思ったぞ」

「わ、わりぃ…その、ちょっと夢見がさ」

 

 

 朝食のパンを頬張りつつ、今朝方大声をあげてしまったことにポリポリと頭をかきながら頭を下げる海胆頭の少年、遊吾・アトラス。そんな彼に対し、子供か貴様はとあきれた風に笑いながら珈琲を飲む男。

 

 金髪に鋭い眼光。そして白い普段着に包まれたガッチリとした鋼のような肉体。

 

 ジャック・アトラス。世界に名を轟かせる決闘王であり、遊吾・アトラスの義理の父親。彼は遊吾の変化に目敏く気が付いていた。

 

 

「ところで、随分と雰囲気が変わったが何かあったか?」

「雰囲気? …そうか? 俺、いつも通りだと思うんだけど」

 

 

 雰囲気と言われても分からない。首を傾げる遊吾に、ふむ、とジャックが顎に手を当てて彼を見る。

 

 見た目こそ今までの遊吾と変わりはないが、持っている雰囲気が明らかに違っている。

 

 遊吾・アトラスの生まれはサテライト。あの、地獄のような世界で生き抜いてきたこともあり、彼は平常時でも常に尖った雰囲気を放っていた。彼がジャック・アトラスの義理の息子としてもなめられないようにしようという考えもあってのことで、彼は家の中でも刃のような闘気を隠しもしなかった。

 

 だが、今の彼は違う。雰囲気はとても穏やかなものとなっているし、前と違ってコロコロと表情を変えるようになっている。彼のことを心配して放った先程の言葉であるが、これがもしも前の遊吾であったならば、部屋に入った時点で、何でもねえよ、などと顔を顰めながら突っぱねていたことだろう。しかし、今の彼はそんなことをせずに心配させてしまったことに対し少し申し訳なさそうにしながらもどこか嬉しそうに笑っていた。

 

 一体何があったのか。この馬鹿息子が行方不明になるのは日常茶飯事であるが、ここまで変化して戻ってきたことは一度も無かった。

 

 

「どうした親父? 手が止まってんぞ」

「…ああ、少し考え事をな」

 

 

 気にするなと首を振る。

 

 彼がどこに居て、何をしてきたか分からない。だが、一つ。たった一つだけ分かることがあった。だからジャックは残る珈琲を一息に煽ると立ち上がり、部屋を出ようとする。

 

 

「今日、何か仕事?」

「いや。少し出てくる」

 

 

 遊吾の言葉に首を振り、壁に掛けてあったコートを身に纏い、ジャックは家を後にする。今日の彼に仕事は無い。だが、どうやら考えていたことを先にする必要があるようだ。彼はDホイールに跨るとアクセルをふかしてガレージから飛び出した。

 

 目指すはネオ・シティ中心部にある、ネオ・シティ管理局。通称セキュリティだ。

 

 

 

 

※※※※※※※※

 

 

 

 

「――あー、とりあえず暇だから出てきたけど、間が悪いなぁ…」

 

 

 ジャックも居らず、いつものようにデッキを弄る気にもなれなかった遊吾は久しぶりにネオ・シティ中心街へと出かけることにした。エキシビジョンマッチ選考会までそう日が無い。だが、なぜか全くその気になれない遊吾は、当てもなくぶらぶらと街を散策することにしたのだった。

 

 まず彼が最初に訪れたのはCDショップ。しかし、彼の部屋にプレイヤー、コンポ類は置いておらず、あるとすれば父親の部屋のみ。それに彼は音楽にあまり興味がなく、最近の人気アーティストは? などと聞かれても答えられないだろう。

 

 そんな彼が何故CDショップに訪れたのか、それはある種の無意識的な行為。彼は迷わずアーティストコーナーへ。調べ探すは日本とアメリカの女性アーティスト。

 

 …どうやら、彼女たちのアルバムは置いてないらしい。

 

 

「……? 俺、誰か贔屓にしてる奴って居たっけ?」

 

 

 自分の思考に思わず首をかしげる。

 

 自分に好きなアーティストなんて居なかったはずだ。何故そんなことを考えたのか。自分のことでありながら何がなんだか分からない彼は、少し奇妙な気持ちになりながらCDショップを出た。

 

 気晴らしにもなりはしない。やれやれと首を振りながら彼はDホイールに跨がるとそのまま道路に出ていこうとする。

 

 

「――遊吾!? 貴方、遊吾でしょっ!?」

「誰だッ!? ――お前…」

 

 

 彼の背中に投げ掛けられる声。彼が振り返った先にいたのは、赤色のブレザーを着た少女。彼は彼女の名前を知っていた。

 

 

「桐生…桐生恭華か?」

「そっ、満足同盟リーダー桐生恭華っ!! ……久しぶり、遊吾。元気にしてた?」

 

 

 ヒーロー番組のヒーローめいたポーズをとりつつ、懐かしむように笑う。

 

 彼女の名前は桐生恭華。遊吾が過ごした子供時代のサテライトで、若手ながら多くの人間を率いて戦っていたチームのリーダーを勤めていた少女だった。

 

 

 

 

「焼き払え、レッド・デーモンッ!! 炎掌撃!!」

「きゃあいっ!?」

 

 

 爆炎を纏う竜の掌底が悪魔の身体を抉り飛ばす。同時にブザーが鳴り響き、仮想立体映像が解除される。勝者は遊吾。爆発の衝撃で地面に転がっているのは恭華だ。

 

 

「おい、スカートスカート!」

「はへ? わっ!? …見た?」

「何も」

「ホントに?」

「ああ。白のレースとか大胆だなぁとか思ってないぞ」

「わぁあああ!? 見てるじゃんっ!?」

「決闘者はパンツ見えないもんなんだけどなぁ」

 

 

 さすがにバツが悪いらしく、ポリポリとそっぽを向く遊吾。

 

 

「でも、変わったな桐生」

「何が?」

「昔はパンツ見えようが気にしてなかったろ? てか、あの頃は下着どころか微かな膨らみさえも――」

「何言ってんの!? それはセクハラ!! セキュリティ呼ぶよ!!」

「いや、事実だし」

「う、いや、確かに……」

 

 

 昔の桐生恭華の服装は、軽装を通り越して露出狂染みていた。

 

 まあ、あの頃のサテライト中心部だとまともな服がある方がおかしいことだったのだが、それにしても腰まで縦に切り裂かれたスカートにダメージ加工というには破れすぎなシャツ。とりあえずパンツは履いていたが、ブラジャーなんて無いこともあって剥き出しだった胸部は臍から半分見えているような状態。

 

 今思えば大概な服装をしているものである。

 

 

「そ、それを言うなら遊吾も大概じゃないのよ!!」

「へ?」

「ぼろ布一枚!! あれどうなのっ!?」

「いや、俺って服ってもの自体知らなかったし」

 

 

 事実、彼が略奪していたのは金目のものや食料、武器、カードだ。服には一切目を向けていなかったし、服を手に入れてもサイズが合わないし専ら布団の代わりだった。

 

 何にしても、そんなサテライト時代とは比べ物にならないくらい豊かになった。あの頃は想像できなかった生活をしているのだ。

 

 

「互いに変わったってことかしらね」

「そうだな……ところで、その服ってもしかして――」

「そ、デュエルアカデミアの制服。私、中央の高等科に通ってるから」

「中央か!? すげぇな。…そっか、学校か…」

「そういう貴方は学校とか行ってないの? 史上最年少でプロ入りを果たした無敗の王子、遊吾・アトラス選手?」

「おいこら、分かってんじゃねえかよ」

 

 

 くすくすと笑う恭華。

 

 ジャック・アトラスに拾われた数年後、史上最年少のプロ入り。これでも公式戦無敗(一部例外あり)の決闘王子。プロの決闘者として認知されている彼は、ジャック・アトラスの息子ということもあって何かと仕事を依頼されることがあり結構多忙だったりする。とは言え、最近は彼自身がシティを離れることが多いこともあって最近はめっきりプロ活動は止まってしまっているが。

 

 

「ねぇ、デュエルアカデミアに来ない?」

「はぁ?」

「優可だって居るし、ジョンも」

「…皆居るのか」

「ええ。だから、どう? もう一回、満足してみない?」

 

 

 彼女が笑って手を差し出してくる。その姿が、過去に自分を勧誘してきた彼女とだぶる。確かに学校にいくのは楽しいだろう。彼女たちがいる学校生活、考えただけでも楽しそうだった。

 

 

「…わりぃ。今は無理だ」

「…そっか」

「俺には未だ果たさなきゃいけねえ約束が沢山あるし、それに――」

「それに?」

 

 

 そこで端と気がついた。自分は一体何を言っているんだ? 約束とは何だ? そんな重要なことを俺は誰と約束した?

 

 視界が霞む。ノイズ混じりの光景。罵詈雑言の書かれた壁。伏く少女たち。彼女の笑顔。彼女たちの歌。月。翼。餡パン。アメリカの研究者。子供たちの笑顔と、彼女たちの優しい表情。

 

 

『遊吾さん!!』

『ユーゴ!!』

 

 

 特に彼の耳に響く、太陽のような日溜まりの少女と、少し発音のおかしい優しい女性の声。

 

 

「遊吾!? どうしたの!?」

「あ? ……あ、俺、どうしてた?」

「急に顔が真っ白になるから何事かと思ったじゃない」

「ああ、悪い。少し調子悪くてな…。すまん、帰る」

「え、ええ。それじゃあまた」

 

 

 フラフラとその場を去っていく遊吾。顔面蒼白。まるでゾンビのようにフラフラとしながらDホイールに跨がり走り出す。

 

 

 

 

 宛もなく走り出した遊吾。彼は行く。ライヴ会場を、街を、海沿いの道を、街を見渡す高台を。そのどれでも彼は走馬灯のようなものに襲われた。

 

 あれは一体何なんだ。俺は一体何を忘れているんだ。頭がおかしくなった訳ではない。アレは幻なんかじゃない。そう確信しつつ彼は走り続け――

 

 

「…ここに来ちまったか」

 

 

 最後にたどり着いたのは、メインスタジアム。ネオ・シティの中心部に存在し、日々様々な決闘大会が行われているネオ・シティ在住の、いや、世界中の決闘者が一度は立ちたい舞台の一つだ。

 

 なぜこの場所に来たのか。彼がスタジアムの卵のような屋根を見ながら物思いに更けているとそんな彼に背後から声がかかる。こんなところで誰だとそちらを向けば、そこにはジャック・アトラスの姿。だが、その雰囲気はいつもの父親としてのジャックではない。

 

 

「どうしたんだよ親父」

「来い」

 

 

 たった一言言うと、彼はそのままスタジアムに入っていく。

 

 どうしたというのだろうか? 今スタジアムはエキジビションマッチに向けて会場設置などで立ち入りは禁じられているはずだ。

 

 何をするって言うんだ。決闘王ジャック・アトラスとして立つ彼に困惑しながらも遊吾はその背中についていくのであった。

 

 

 

※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

 エキジビションマッチでのライディングコースは通常の周回コースとは違い、ダウンヒルやS字、U字などライディングテクニックも試されることとなる。

 

 コース変更のためメインスタジアムは使用できないため、二人が訪れたのは地下にあるサブアリーナの一つ。エキジビションマッチ選考会で使用される周回コースだ。

 

 

「で、なんだよ親父態々こんなところへ呼び出して」

 

 

 彼の言葉に対する返答はない。流石の遊吾もこれには腹をたてた。只でさえ今日は意味不明な出来事ばかりで気分が悪いというのに、ここに来ての義父の意味不明な行動。

 

 俺、帰るぞ。苛立ちを隠そうともせずにDホイールのアクセルをふかす。

 

 

「何故決闘している?」

「は?」

 

 

 義父からの突然の言葉に思わず手を止めて振り返る。

 

 

「何言って――」

「お前は何のために決闘をしているのだと聞いている」

 

 

 鋭い眼光。圧倒的存在感に押し負ける。硬直する身体。絶対王者の眼光を前に思わず跪きそうになる。

 

 しかし、何のために? それは昔から話しているだろうに。

 

 

「俺は親父みたいな決闘者になるためにこうして腕をだな――」

「親父みたい? 本当にそうか?」

「…どういう意味だよ」

 

 

 一体何が言いたい。眉をひそめる遊吾をジャックの鋭い言葉が貫く。

 

 

「お前では俺にはなれん」

「なっ!? …そいつはどういう意味だよ。俺は決闘王にはなれねぇってか?」

「さっきからそう言っているだろうが」

 

 

 決闘王になれない。それは聞き捨てならない話だった。遊吾の目付きが変わる。それを見てジャックが更に煽る。

 

 

「まあ、今の貴様では俺はおろか他のどんな決闘者にも負けるだろうが」

「んだと? 俺がそこら辺の木っ端決闘者に負けるだと? 言ってくれんじゃねえかッ!!」

 

 

 怒りを通り越して殺意すら放ちはじめる。認めてほしい、越えたい人物にそんなことを言われて冷静さを欠いた彼。彼の放つ気迫は並の者なら気圧され、息すら出来なくなってしまうほどに濃く、重い。

 

 巨竜のごとき気迫。だがそれを真っ向から受け止めて尚、ジャックの表情に変化はない。冷や汗一つかかず冷めた目でこちらを見るジャックに、遊吾の感情がみるみる膨れ上がる。

 

 

「ふん、弱い者ほど良く吠える。まあいい、今の貴様など一ターンで十分だ。むしろ釣りが返ってくる」

「ッッッテメェッ!!」

 

 

 竜の咆哮、火山の噴火を思わせる感情の爆発。

 

 ジャックの挑発。それが何を意味するのかは分からない。だが、ここまで言われて黙っていられる訳がない。

 

 デュエルモードオン。スピードワールドネクスト、ライディングデュエルスタンバイ。

 

 仮想立体映像が展開され、虚空にカウントダウンが表示される。

 

「何のつもりかわかんねぇけどよ…なめんのも大概にしやがれよッ」

「………」

 

 

 3…2…1……

 

 

『ライディングデュエル、アクセラレーションッ!!』

 

 

 叫び声と共にDホイールのタイヤが激しく空転。甲高い悲鳴を上げながら一気に最高速となりスタートラインを飛び出した。

 

 先頭は遊吾。疾走決闘のルール上、第一コーナーを先に曲がった決闘者が先攻を得る。これで遊吾の先攻が決定した。遊吾はDホイールのデッキに手を掛けて宣言する。

 

 

「俺のターン!! 俺は手札からレッド・リゾネーターを通常召喚し、効果発動! このカードが召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のモンスター一体を特殊召喚する! 現れろ、古代の機械騎士!!」

 

 

 炎を纏った小さな悪魔が、その手に持った音叉を鳴らす。すると空間に大きな穴が開き、そこからボロボロの鎧を纏った機械仕掛けの騎士が飛び出した。

 

 これでフィールド上に二体のモンスターが揃った。レッド・リゾネーターはチューナーモンスター、そして古代の機械騎士は普通の効果モンスター。ならばやることは一つ。

 

 

「俺はレベル4の古代の機械騎士に、レベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!! 紅蓮の翼翻し、天空を焼け!! シンクロ召喚、紅の流星! レッド・ワイバーン!!」

 

 

 悪魔と騎士が星となり、新たな光が生み出される。

 

 レッド・ワイバーン。赤い炎を全身から迸らせる深紅の飛竜。レッド・デーモンズなどと比べると小柄なれどそのポテンシャルは並のモンスターの上を行く。

 

 

「俺はカードを二枚伏せてターンエンドだッ!!」

 

 

 カードを裏向きで決闘盤に叩き付けるように挿入して宣言する。これで自分のターンは終了。次は後攻、ジャックのターンだ。

 

 彼は言った。一ターンで十分だと。上等だ。ならやってみやがれってんだ。

 

 自分がセットしたのは永続罠カード、デモンズ・チェーン。そしてもう一枚は罠カード、リジェクト・リボーン。デモンズ・チェーンは相手モンスターの効果を封じたうえで攻撃も封じる効果を持ち、リジェクト・リボーンは墓地のシンクロモンスターとチューナーモンスターを場に特殊召喚しながらバトルフェイズを強制終了させる効果を持つ。それに、レッド・ワイバーンはこいつ以上の攻撃力を持つモンスターを破壊できる効果がある。

 

 これだけの布陣。いくらジャックでも突破は困難だ。仮に越えるのならば、大量の除去カードを使用せねばならず、一ターンキルは成立しない。

 

 

「俺のターン! …遊吾、一つ教えておいてやる」

「何だよ?」

「これがキングの決闘だ!! 良く見ておくんだな!!」

 

 

 ジャックがそう叫ぶと同時に彼のDホイール――一本の巨大なタイヤに乗っかるような独特なデザインのDホイール。ホイール・オブ・フォーチュンのスラスターが蟲の羽音のような音を一瞬放ち、急激に加速する。

 

 加速用のブースターだ。一気に抜き去られる。先攻と後攻が入れ替わる様に、彼らの位置が変動する。遊吾を抜き去りトップに躍り出たジャックが決闘盤にカードを差し込む。

 

 

「相手フィールド上にモンスターが存在するとき、手札からバイス・ドラゴンを特殊召喚できる! 現れろ、バイス・ドラゴン!!」

 

 

 紫色の甲殻を持つ竜がフィールドに現れる。巨大な翼を羽ばたかせるバイス・ドラゴンであったが、その図体に反して威圧感がみるみる減っていく。デメリット効果である、自身の効果で特殊召喚されたこのモンスターの攻撃力、守備力が半分となる効果が発動したのだ。

 

 更に流れるようにジャックがカードを叩き付ける。

 

 

「俺は手札からダーク・リゾネーターを通常召喚!!」

 

 

 丸い球のような黒い悪魔。先程遊吾が召喚した、レッド・リゾネーターと瓜二つの悪魔が姿を現す。

 

 

「俺は、レベル5のバイス・ドラゴンにレベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!! 王者の咆哮、今天地を揺るがす。唯一無二なる覇者の力をその身に刻むがいい!!」

 

 

 悪魔が音叉を鳴らし、その身体を光の輪へと変化させる。巨竜は輪の中にその身を投じ、身体が五つの光となって新たな力へと昇華する。

 

 五つの星と三つの輪が一つとなり、膨大な熱量が大地を揺らす。

 

 巨竜の咆哮。紅の悪魔、絶対王者が己の存在を示すかのように天に咆哮する。

 

 

「シンクロ召喚! 荒ぶる魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト!!」

 

 

 レッド・デーモンズ・ドラゴンスカーライト。

 

 片角が折れ、右腕が義手となり、全身の至る所に傷を負いながらもその力を、風格を更に高めたレッド・デーモンズの新たな姿であり、ジャックの新たな魂ともいうべきシンクロモンスターが遊吾に牙を剥く。

 

 だが、その程度で慌てる遊吾ではない。レッド・デーモンズの気迫は恐ろしいが、処理自体は簡単なモンスターだ。

 

 

「レッド・ワイバーンの効果発動! このモンスターの攻撃力を上回る攻撃力を持つモンスター一体を破壊する!!」

 

 

 彼の宣言と共にレッド・ワイバーンがその口から膨大な熱量の炎を吹きだそうとするが――突如としてその熱量が収まっていく。一体何が起こったんだ。驚きに目を見開く遊吾。

 

 

「速攻魔法、禁じられた聖杯を使わせてもらった。レッド・ワイバーンの効果は無効だ」

「くっ!?」

 

 

 禁じられた聖杯。攻撃力を400ポイントアップさせる代わりに、モンスターの効果を失う速攻魔法。

 

 だが、攻撃力が400上がったところで今のジャックには全く関係が無いのだ。これには流石の彼も焦る。急いでセットしてあるデモンズ・チェーンの効果を発動する。

 

 

「なら、セットカードオープンッ!! デモンズ・チェーン!! これでレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果を無効に――」

 

 

 虚空より現れた漆黒の鎖が絶対王者を拘束する。

 

 あらゆるモンスターを封じ込める力を持つ鎖を前に、いかな王者と言えどその力を封じられるだろう。事実、デモンズ・チェーンはスカーライトを雁字搦めに絡めとり、その力を完全に無力化した――だが、次の瞬間。スカーライトの右腕から膨大な熱風が放たれ、デモンズ・チェーンが融解、圧倒的膂力を持って引きちぎられてしまう。

 

 

「何だと!?」

「魔法カード、ハーピィの羽根箒を発動。貴様の魔法、罠ゾーンのカード全てを破壊させてもらった」

 

 

 ハーピィの羽根箒。一時期禁止カードに指定されていたカードで。その効果は単純明快。相手の魔法・罠ゾーンのカードを破壊するというもの。

 

 たったの一枚、デメリットすら無い効果であるがゆえに使用禁止となったこともある大量除去カード。まさかここで引き込んでくるとはッ。思わず歯噛みする遊吾。

 

 永続魔法や永続罠は一度発動してしまえばその効力を最後まで使用できるが、逆に場に無ければその効果は終了してしまう。この場合、スカーライトを封じたものの、クリムゾン・ヘル・セキュアの効果でデモンズ・チェーンが破壊された為、その効果が途切れてしまったのである。

 

 こうなれば、彼を縛る物はもう何もない。鎖などと言う煩わしい物で拘束しようとした敵を睨み付け、スカーライトが怒りの咆哮を上げる。

 

 

「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果発動! このモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つモンスターを全て破壊し、その数×500ポイントのダメージを相手プレイヤーに与える!!」

 

 

 アブソリュート・パワー・フレイム! ジャックの宣言と共にスカーライトが右腕を振りかぶる。

 

 次の瞬間、収束された灼熱の炎がレッド・ワイバーンを捕らえその身体を粉微塵に吹き飛ばした。爆風に遊吾の身体が揺れる。仮想立体映像でありながらも感じてしまう膨大な熱量。チリチリと頬を焼くスカーライトの気迫に思わず目を背けそうになる。だが、あのモンスターの攻撃力は3000。公式レギュレーションによってライフポイントは4000となっているが、500減っても3500。仮にスカーライトの直接攻撃をくらってもライフポイントは500残る。

 

 まだいけるッそう考える遊吾だったが、そんな彼の考えが読めているかのように、ジャックが言った。

 

 

「まだ生き残れる。次のターンで逆転すればいい、そう考えているな?」

「――ッ!?」

「キングたるこの俺が、そのようなことをすると思っているのかッ!! キングの決闘は三歩先を行くッ! 俺は手札から、クリエイト・リゾネーターを特殊召喚!! 更に、シンクローン・リゾネーターを特殊召喚!!」

 

 

 扇風機のような青いプロペラを背負った悪魔と、巨大な音符を背負った悪魔が姿を現す。

 

 どちらも単体では最弱モンスター。だが、彼のライフポイントは削り切ることが出来る。

 

 だが、ジャックの狙いはそこではない。彼は決闘者の本能で理解した。彼は、ジャックはここで折るつもりだ。彼の心を。しかし、並大抵のことでは彼の心は折れないだろう。ならばどうすればいいか。簡単な話だ。

 

 

「荒ぶる魂――バーニング・ソウルッ!!」

「俺は、レベル8のレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトに、レベル3のクリエイト・リゾネーターとレベル1のシンクローンリゾネーターを――」

 

 

 ダブル・チューニングッッ!!

 

 

 スカーライトを中心に悪魔が炎の輪となり、その身体を包み込む。高速回転する炎の輪はやがて一つの巨大な球体となり、その内側より紅蓮の炎が生誕する。

 

 

「王者と悪魔、今此処に交わる!! 荒ぶる魂よ、天地創造の叫びを上げよッ!!」

 

 

 折れた角が生え変わり、義手が新たな腕となる。

 

 巨大な角、そして全てを踏み砕かんとする脚、万物を砕くその拳。なにより、天を掴まんと広げられた巨大な双翼。その姿正しく紅蓮の悪魔。

 

 

「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンッ!!」

「スカーレッド……」

 

 

 その力強く、雄々しい姿に彼は茫然と言葉を漏らすしかない。

 

 そのスカーレッドは、一般に販売されているモノとは違った。それはジャック・アトラスが手に入れた、特別な力を持つカード。本当のスカーレッド・ノヴァ・ドラゴン。

 

 即ち、彼が使用するようなスカーレッドではなく、真のスカーレッド。その力は、仮想立体映像でありながら観客席を、コースを焼くことから察することが出来る。

 

 

「さあ、遊吾・アトラス。覚悟は出来ているか」

 

 

 ジャックの言葉と共にスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンが飛翔する。

 

 スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンは自分墓地のチューナーモンスターの数×500ポイント攻撃力を上げる能力を持つ。今ジャックの墓地に存在するチューナーモンスターの数は三体。

 

 

「攻撃力、5000ッ…」

「バトルだッ!! スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンで直接攻撃ッ!!」

 

 

 バーニングッ・ソウルッ!!

 

 紅蓮の炎を纏ったスカーレッドが遊吾へと飛翔する。その姿は正しく紅の流星。彼が召喚口上として使用したような生温いものではない。それは流星、紅蓮の炎を纏い降り注ぐ隕石だ。

 

 攻撃力5000。ライフポイントを遥かに上回る衝撃にDホイールが耐え切れずに弾き飛ばされ、その衝撃で遊吾も宙へと投げ出される。

 

 スカーレッドの勝利の咆哮を耳にしながら彼は宙を舞い――恐ろしいほどの衝撃と共にコースへ落ちた。

 

 地面を数回転がり、そのまま倒れる。

 

 この程度の痛みには慣れている。だからすぐに立ち上がることだってできる。彼は自分にそう言い聞かせて立ち上がろうとする。だが、身体は彼の言うことを聞かずピクリとも動かない。

 

 

「…立ち上がれないか。ふんっ、貴様如きそうして地面に這い蹲っているのが御似合いだ」

 

 

 Dホイールが遠ざかっていく。

 

 後に残るのは微かな風の音。先程までの騒音が嘘のような静けさに思わず目頭を厚くしそうになりながら、彼は痛む身体を引きずってその場から去っていくのであった。

 

 

 

※※※※※※※

 

 

 

 盛大にフッ飛ばされたこともあって少し時間をかけて帰宅した遊吾は、暗いリビングを通りすぎ、自分の部屋へ。

 

 ジャックの今回の行動の意味を考えるが、なんとなく察していた。

 

 遊吾・アトラスには決闘の才能が無い。いや、正確に言えば並よりも才能はあるがジャックたちのような特別な才能を持っていないのだ。故にどうあがいても二番手。王に届かない王子で止まっているのだ。

 

 アレはきっと警告なのだろう。このまま決闘者として戦い続けても自分たちには決して届かないという。だがここで決闘者を辞めて何になる。俺から決闘を無くしたら俺は何をしていけばいいんだ…。ベッドに腰かけて頭を抱える。

 

 だがまあ、当然の報いなのかもしれない。目的すら果たせず、こうして無様に此処に帰ってきた自分への。

 

 

「ああああ!! ……はぁ。気晴らしに何か見るか」

 

 

 何にしても悩んだところでどうしようも無い。

 

 部屋に置いてある小さなブラウン管テレビを点ける遊吾。だが、どこもかしこもやっている話題は次のエキシビションマッチ選考会とFFC――future friend cupの話題ばかり。だからと言ってドラマなどには欠片も興味が無いので、彼はCDラックをあさり始める。

 

 しばらく何種類かDVDやVHSを発掘するも、どれもこれも何度も見てしまったものばかり。さて、どうしようか。本格的に暇つぶしのできる物が無くなってきた時、それが目に入った。

 

 

「戦姫絶唱シンフォギアGか…。久しぶりに見ようか」

 

 

 彼が取りだしたのは、戦姫絶唱シンフォギアGと題名の打たれた、DVDのパッケージ。パッケージの表紙には、響とマリアを中心に、翼、クリス、切歌、調が描かれている。

 

 今でも戦っているのか。それとも自分の目論見は達成できたのか。そんなことを考えながら彼はDVDプレイヤーにディスクを挿入し、再生ボタンを押す。

 

 それから数分。再生ボタンを押したり、早送りしたりと色々してみるが一向に映像が流れない。ディスクを取り出そうとしてもボタンに本体が反応しない。もしかして本体の故障だろうか? そう考えて大きくため息を吐いた。

 

 

「!? …はっ? い、いや、どういう状況だよ、こりゃあ…」

 

 

 突然流れ始めた映像。その内容に思わずそう呟いてしまう。

 

 彼の視線の先、画面の中では、響たち装者が地面に崩れ落ち、それを前にして咆哮をあげる黒く醜い竜の姿があった。

 

 彼は知っている。その竜の名前が救世竜と呼ばれていることを。それが聖遺物ネフィリムと融合したことで生み出された存在だということを。

 

 そして思い出す。

 

 彼が、その竜の息吹をもって敗北したということを…。




状況説明

色々やらかしながらフロンティアのシステムとかネフィリムのシステムと戦う→無様にも遊吾敗北的な何か→遊吾作戦失敗のせいでネフィリムが超強化→皆がヤバい。

結論。遊吾のせいで世界がヤバい。

オリ主介入によって原作の状況が更に悪くなるという稀有な例、かもしれない。

果たして遊吾はこれからどうするのか。
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