遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~ 作:特撮仮面
疾走決闘――ライディングデュエルにおいて、先攻後攻は第一コーナーを制したものによって決まる。つまり、先攻を取るためには対戦相手よりも先にコーナーへと侵入する必要があるのだ。
ジャックのDホイール、ホイールオブフォーチュンは、あらゆる性能を高水準にまとめたスーパーマシン。正しくキングにのみ許されたDホイールだ。しかし、それに対して遊吾のDホイールは彼が手伝ってもらいながら独自に改造したもの。そのスペックの差は明らかだ。
だが、前へ出たのは、遊吾。
『おおっと、先を行くのは遊吾だ!! ホイールオブフォーチュンの加速をもろともしないぞぉ!!』
ホイールオブフォーチュンの前に出る。そこからはジャックを前に出させないためにブロックだ。ジャックの動きに合わせて、右、左と車体を寄せることで前へ行かせない。
『間も無く第一コーナーだァッ!! キング、このまま先攻を譲ってしまうのかぁ!?』
「ふんっ」
MCの言葉を鼻で笑い、ジャックがハンドルのボタンを押した。
いかなDホイールであっても、加減速は重要だ。疾走決闘は走り続ける限り決闘は続くが、事故を起こした場合は基本走れない。
第一コーナーはそこまで急ではないが、現在の加速ではコースアウトの可能性が高い。遊吾がコース手前でブレーキングするのに対し、ジャックは加速した。
ホイールオブフォーチュンの後部がスライドし、そこから加速用のブースターがむき出しになる。甲高い吸引音を一瞬奏で、青白い光を吐き出しながらホイールオブフォーチュンは加速する。
「馬鹿なッ!? 死ぬ気か!?」
隣を正しく風のように駆け抜けていったジャックに声を荒げる。あの速度で侵入すればコースアウト待ったなしのはずだ。
だが、キングは彼の、そして悲鳴をあげる観客たちの予想を越える。
疾走決闘の行われるレーンは基本的にガードレールが存在せず、代わりに湾曲した壁が設置されている。これはフィールなどを用いたアクションなどを行う曲芸師のような疾走決闘者が居るからなのだが、ホイールオブフォーチュンは正しくそれだった。
超加速、彼は迷うこと無く壁へと走り、コースに沿った壁へと乗り上げ、駆け抜ける。そして――
『飛んだァァアアア!! ジャック・アトラス、コースの壁を利用して第一コーナーを制しましたッ!! 先攻はキング、ジャック・アトラスだぁ!!』
割れんばかりの大喝采。あわや大惨事のところを、ライディングテクニックで見せ場へと変えたジャックの背中を見て、自分の目指す背中がいかに遠いかを実感する。だが、その程度で止まるつもりはない。
アクセルをふかし、負けじと食らい付く。
「ふん、あれほどほざいたのだから簡単にやられてくれるなよ? 俺のターンッ!!」
ジャックが雄叫びと共にカードを叩き付ける。
「俺は手札から、レッド・スプリンターを召喚ッ! そしてレッド・スプリンターの効果発動! 手札から、レッド・リゾネーターを特殊召喚する!」
赤い炎を纏う獣のような悪魔が駆け、その咆哮に応じるように音を操る悪魔が現れる。
場に存在するのは、効果モンスターとチューナーモンスター。
「来るかッ」
「俺は、レベル4のレッド・スプリンターに、レベル2のレッド・リゾネーターをチューニング! 赤き魂、ここに一つとなる。王者の咆哮に震撼せよ! シンクロ召喚、現れろ! レッド・ワイバーン!!」
レッド・ワイバーン。炎を纏う赤い火竜が光を貫き天高く舞い上がる。
一回のみだが、敵を除去する効果を持つ厄介なモンスターだ。攻撃力2400は手札から通常召喚できるモンスターでは突破が困難。序盤に出すモンスターとしては最適解の一つと言えるだろう。
「俺はカードを二枚セットし、ターンエンドだ」
ジャックと遊吾の視線が交差する。
彼の言葉、彼のモンスターが放つフィールに、彼は全霊の想いを込めて右腕を振りかぶる。
「俺のターン、ドローッ!! …よし! 俺は手札から、トライデント・ウォリアーを召喚! こいつの効果は知ってるよな?」
『おおっと、遊吾が出したのはトライデント・ウォリアー! 手札からレベル3モンスターを特殊召喚できるモンスターだ! 相変わらず珍しいカードを使っていく!』
「俺はインフルーエンス・ドラゴンを特殊召喚!」
青い翼に針金のような身体。人型の竜が現れる。だが、隣に並ぶ屈強な戦士と共に居てもその威圧感はレッド・ワイバーンの比ではない。
彼は高らかに叫んだ。
「俺は、インフルーエンス・ドラゴンの効果発動、 トライデント・ウォリアーの種族をドラゴン族へと変更する!」
「そして、レベル4のトライデント・ウォリアーに、レベル3のインフルーエンス・ドラゴンをチューニング!!」
王者の魂、今大いなる翼羽ばたかせ、勝利の咆哮を上げよ! シンクロ召喚、現れろ、エクスプロード・ウィング・ドラゴン!!
燃え上がる炎。巨岩のような身体に、屈強な手足。だが、その腕と脚は極端に細い。異形の竜が、頭頂部の王冠のような襟を広げ、咆哮する。
フィールが大地を揺らし、ジャックに襲い掛かる。だが、その程度で揺らぐキングではない。
『おおっと、現れたのはエクスプロード・ウィング・ドラゴンだ! 攻撃力2400の大型モンスター! だが、これではレッド・ワイバーンの餌食になるばかり――?』
「レッド・ワイバーンは確かに強力なモンスターだ。だが、どんなモンスターにも弱点はある!」
レッド・ワイバーンはフィールド上に自分よりも攻撃力の高いモンスターが存在するときに効果を発動できる。だが、エクスプロード・ウィング・ドラゴンの攻撃力はレッド・ワイバーンと同じ2400。つまり、効果を発動できない。
「バトルだッ! エクスプロード・ウィング・ドラゴンで、レッド・ワイバーンを攻撃!」
『だが、攻撃力は同じ! これでは相討ちだッ! ここでプレイミスかぁ!?』
「俺がプレイミス? とんだロマンチストだな!! エクスプロード・ウィング・ドラゴンの効果発動! このモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つモンスターと戦闘を行う場合、ダメージ計算を行わずにそのモンスターを破壊し、相手にそのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」
吹き荒べ、キング・ストーム!!
エクスプロード・ウィング・ドラゴンの口部より放たれる炎の竜巻。破壊力の塊であるその竜巻に飲み込まれ、レッド・ワイバーンは無惨にも爆散してしまう。
「ぐぅっ!?」
『キング、大ダメージだッ!! ライフポイントは残り1600! 遊吾、今までとは何かが違うぞォ!!』
2400という巨大なダメージ、そして叩き付けられる遊吾のフィールに、流石のジャックも少し揺らぐ。
「俺はカードを二枚セットし、ターンエンドだ」
先程までの過激さが嘘のように、彼は静かにターンエンドを宣言する。
自分達に言葉は要らない。俺たちは決闘で十分だ。
だから――
「来い、親父ッ!!」
――遊戯王の新たな――
※※※※※※※※
「おっといけない」
ビデオデッキを操作する。最終回でもコマーシャルを忘れない。なんと商魂逞しいことだろうか。
「ちょっと待ってて。すぐに本編いくからね」
その言葉に誰もがガヤガヤとざわめきだす。息も詰まるような決闘。たったの二ターンだけなのに、あの親子が放つ気迫はあまりにも激しく、見るものを魅了する。
挙動の一つ一つが視線を惹く。聞きなれた声。笑顔。
「――き! 響!!」
「うひゃあ!? み、未来? どど、どうしたの?」
「…顔、真っ赤だよ?」
「……未来こそ」
ぽーっとしていた響の姿はまるで乙女だった。
仕方のないことではある。焦がれていた相手が晴れ舞台で大活躍。しかも、彼の挙動や言葉には常に彼女たちへの想いが確かにあるのだから。
「お前ら、初だなぁ?」
「クリスちゃんが言っていい言葉じゃないと思う」
「にゃにおう!?」
「だって、口元凄い緩んでるよ? 弛いよ? ゆるゆるだよ?」
「う、うるせぇ!」
こうして言葉を発していなければ叫びそうだ。と言うか、決闘開始からここまで何度か頑張れと叫びそうになってしまった。
「皆、楽しんでるようでなによりだね」
「あ、奏さん!」
奏と翼が響たちに合流する。二人とも、遊吾の元気な姿が見れて嬉しそうだ。
「ふふ、皆楽しそうだな」
「ところで、自分の名前が召喚口上に入っていた翼さん、何か?」
「わ、私!? え、あ、いや、戦ったことがあるから、感慨深いと言うか…」
「またまたァ、エクスプロード出た瞬間にそれはもう、胸キュンッみたいな表情してたくせにィ?」
「か、奏!!」
実際のところは、ただとても嬉しかっただけなのだが、心の何処かで嬉しいと言う気持ちが無かったわけでもないので、大慌てで奏の口を塞ぎにかかる翼。
「へえ、ふーん、そうですかー」
「なるほどなー」
「へー」
「な、なんだ皆して!?」
「ねえ未来? ファンとの恋愛ってどうなの?」
「うーん、どうだろうねぇ?」
「ば、馬鹿を言うなッ! アトラスは信頼できる男ではあるが私は決して――」
『っほーん?』
「アアア!!」
私をころせぇ、と顔を覆ってしゃがみこむ翼。からかいすぎちゃった、と舌を出す奏と、それを見て苦笑する面々。と、スクリーンの方で洸が再開するぞと声を上げる。
これからどうなるのか、期待と不安の眼差しがスクリーンを見上げた。
※※※※※※※※
「ふん、中々やるではないか。だが――俺のターンッ!!」
『さあ、遊吾の攻撃に対してキングはどう答えるのか!! 注目のターンだ!!』
「相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、バイス・ドラゴンは特殊召喚できる!!」
飛翔する青紫の竜。大型モンスターでありながら特殊召喚を行うことのできる特殊なモンスターの一体だが、無論無条件で特殊召喚できるというわけではない。この効果によって特殊召喚されたバイス・ドラゴンは自身の効果で攻撃力と守備力を半減してしまうのだ。
「俺は、ダーク・リゾネーターを通常召喚!!」
『おおっと――これは、バイス・リゾネーターだァ!! 合計レベルは8!! さあ、会場も叫べ!!』
「俺は、レベル5のバイス・ドラゴンにレベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!!」
『王者の咆哮、今天地を揺るがす! 唯一無二なる覇者の力、その身に刻むが良いッ!! シンクロ召喚、荒ぶる魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトォッ!!』
爆炎を巻き上げ巨竜が飛翔する。半ばから折れた角、傷だらけの右腕。数多の傷を受けながらも巨竜は気高く、誇り高く飛翔する。それは数多の戦場を切り抜けて尚無敗の王者ゆえに。その姿、その在り方こそが王者。
「レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトの効果発動!! このモンスターの攻撃力以下の攻撃力を持つ、特殊召喚されたモンスターを全て破壊し、その数×500ポイントのダメージを与える!! アブソリュート・パワー・フレイム!!」
スカーライトが右腕を地面に叩き付ける。瞬間、右腕に燃え滾っていた炎が大地へと伝わり、コースを粉砕し永ら全方位に破壊力を伝播する。
その威力は凄まじく、エクスプロード・ウィング・ドラゴンはその力の奔流に呑み込まれて砕かれ、遊吾もまたあまりの破壊力にDホイールを宙に投げ出されてしまう。
舌打ちをしながらもDホイールを操作。コースの壁を利用して見事コース上に復帰する。だが、その表情に余裕はない。
「ったく、なんつうフィールだ…。前よりも強くなってやがる…」
あれが、キング。相手の大きさに圧倒されるが、同時に闘志を燃やす。これほどの相手が今までいただろうか? いや、居ない。壁は大きければ大きいほど越え甲斐があるというものだ。故に彼は笑う。
「おら、掛かって来いよ親父!!」
「どこまで耐えられるか!! 俺は、レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトでダイレクトアタック!! 灼熱の、クリムゾン・ヘル・バーニングッ!!」
遊吾に迫る極炎。防ぐ術はない。炎に煽られDホイールが傾くが、危なげなく体勢を立て直す。
『さあ、遊吾のライフは一気に500に。どちらのデッキも強力なシンクロモンスターを使用するデッキ。さあ、どうなる!!』
「ターンエンド」
「俺のターン、ドロー!!」
弾かれるように右腕を跳ね上げる。引いたのは――
「さて、やられたらやり返すってな。相手フィールド上にのみモンスターが存在するとき、バイス・ドラゴンは特殊召喚できる! 来やがれ、バイス・ドラゴン!! そして、ダーク・リゾネーターを通常召喚!!」
現れる、二体のモンスター。その構図は先ほどのレッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライトと同じ。
「見せてやる親父!! 俺の新しい、俺の、俺自身の魂をッ!! 俺はレベル5のバイス・ドラゴンにレベル3のダーク・リゾネーターをチューニング!!」
王者の鼓動、今此処に呼応する!! 天地を焼き払う絶対なる力、その身に刻めッ!! シンクロ召喚、俺の魂、琰魔竜レッド・デーモン!!
ソレは、スカーライトとも似つかぬ巨竜。より筋肉質な肉体は、その名の通り閻魔を彷彿とさせる。
『ああっと、アレは何だ!? 我々も目にしたことのないドラゴンが現れたぞォ!!』
「琰魔竜レッド・デーモンの効果発動!! 攻撃表示のモンスター全てを破壊する!! 深紅の地獄炎!!」
琰魔竜から放たれる深紅の炎がスカーライトを滅ぼさんと迫る。が、その炎は急激に勢いを失ってしまう。
琰魔竜に絡みつく漆黒の鎖。
「永続罠、デモンズ・チェーンだ。貴様のモンスターはこれで動けん」
「姑息な手を――なんていうと思ってか!! 俺のフィールドのシンクロモンスターが存在することで、シンクローン・リゾネーターを特殊召喚する!!」
新たに現れる悪魔。小柄ながら、その効果は強力だ。
鎖で縛られた王が悪魔により解き放たれる。光は炎となり、新たな竜が呼び起こされる。
「王者の咆哮、今天地を揺るがす!! 王者の魂よ、更なる高みへ舞い上がれ!! 現れろ、琰魔竜レッド・デーモン・アビス!!」
両腕に刃が生える。デモンズ・チェーンの拘束から逃れた王は、縛り付けんとした者を睨み、咆哮をあげる。
レッド・デーモンの進化体の登場に、ジャックも驚いているようだ。
「バトルだッ!! 俺はアビスでスカーライトを攻撃!! 眼下の敵を打ち払え!! 怒却拳!!」
『レッド・デーモン・アビスの攻撃力は3200!! これではスカーライトを破壊されてしまうぞ!!』
「くっ…」
王と王がぶつかり合う。全身を炎と変えてスカーライトがアビスを打ち据える。だが、アビスはそれをもろともせずにスカーライトの身体をガッチリと掴み、コース上へと叩き付けた。
大質量の激突とあまりにも激しいフィールのぶつかり合いによってコースが爆発。さらにアビスが地面から起き上がろうとするスカーライトの顔面に爆炎纏いし拳を叩き付ける。
スカーライトが完全に沈黙する。勝利の咆哮を上げるアビスの隣に、シンクローン・リゾネーターが並び立つ。
「レッド・デーモン・アビスは相手に戦闘ダメージを与えることで、墓地のチューナーモンスターを守備表示で特殊召喚できる!」
『おお! アビスの隣に更なるチューナーが現れた! これは次のターンに決めると言うことなのでしょうか!!』
「否!! このターンで決める!! 俺は緊急同調を発動!! この効果により、俺はバトルフェイズ中にシンクロ召喚を行うことが出来る!!」
アビスが悪魔の呼び声に応え、新たな姿に進化する。
アビスが筋骨隆々と、完全に破壊者のそれであったのに対し、それはレッド・デーモンのように圧倒的強者の雰囲気を出しながらも、どこか王者としての品格を残した姿。
王者の魂、今此処に木魂する!! 天地鳴動、天地を揺るがす我が魂を見よ!! シンクロ召喚、琰魔竜レッド・デーモン・べリアル!!
『ああっと!? バトルフェイズ中のシンクロ召喚だぁあ!! これならば追撃が可能!! キングのライフは1000!! それに対してべリアルの攻撃力は3500!! このまま決まってしまうのかァ!!』
「イケェ!! レッド・デーモン・べリアル!! 割山激怒撃!!」
べリアルの拳がむき出しのジャックを捉える。巨大な拳による一撃によってコースは完全につぶれ、ジャックの姿は土煙の中に消える。
だが、確実に決まったであろう場面になっても遊吾は試合をつづける。
「ターンエンドだ」
「――俺の、タァアアアアアン!!」
土煙を尾に引きジャックが飛び出してくる。そのフィールド上にはレッド・スプリンターとレッド・リゾネーターの姿。そして、ジャックのライフポイントは1000から、4500となっていた。
『おお!! アレは――リジェクト・リボーンだ!! バトルフェイズを強制終了させ、シンクロモンスターとチューナーモンスターを特殊召喚できるそのカードで、ジャックはあの窮地を潜り抜けるどころか、レッド・リゾネーターの効果でべリアルの攻撃力分ライフポイントを回復してみせたァ!!』
「俺は、レベル6のレッド・ワイバーンにレベル2のレッド・リゾネーターをチューニング!! 王者の鼓動、今此処に列を為す!! 天地鳴動の力を見るが良い!! シンクロ召喚、我が魂、レッド・デーモンズ・ドラゴン!!」
『出たぁ!! ジャック・アトラスの魂のカード、レッド・デーモンズ・ドラゴンだァ!!』
「来やがったか…」
自分を導いてくれたシンクロモンスター。ある意味、ジャックと同じく自分の親や兄のようなモノであるレッド・デーモンズが自分の目の前に立っている。それが嬉しくもあり、少し寂しくもあり。だが一つ言えることがあるとすれば、彼らのおかげで今自分は自分だけの魂を手にこの場に立っているということ。
「行くぞ遊吾ッ!! 俺は手札からチェーン・リゾネーターを通常召喚!! チェーン・リゾネーターは自分フィールド上にシンクロモンスターが存在するとき、デッキからリゾネーターモンスターを特殊召喚できる!! 現れろ、ダーク・リゾネーター!!」
「チューナーモンスターが二体――」
『チューナーモンスターが二体並んだァ!! 来るぞ!! キングの、キングたる所以がッ!!』
「荒ぶる魂――バーニングッソウルッッ!!」
ジャックが真っ赤な炎と燃え上がる。それは魂の輝き。それは太陽の如く燃え上がり、王者を更なる領域へと昇華する。
「王者と悪魔、今此処に交わる! 荒ぶる魂よ、天地創造の叫びを上げよ!! シンクロ召喚、荒ぶる魂、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン!!」
深紅の竜。決闘王者、ジャック・アトラスの真の切り札。その圧倒的存在感、そしてその圧倒的強さはあらゆるモンスターを前にしても絶対的な強さを誇る。しかもあれは――
「本物、か」
「ああ。レプリカではない。これは俺の、俺の魂そのものだ」
一般の市場に出回っているスカーレッドではなく、ジャックが己の、己の紡いだ絆によって手にした真に世界に一つしかない、本物のスカーレッド・ノヴァ・ドラゴン。
仮想立体映像でありながら、その雄々しき姿は誰もが頭を垂れてしまうほどの迫力があった。
「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの攻撃力は、墓地のチューナーモンスターの数×500ポイントアップする!!」
『現在のジャックのチューナーモンスターは、四体!! つまり、攻撃力は5500!!』
「これで終わりだ――荒ぶる魂、バーニング・ソウルッ!!」
『さあ、べリアルの攻撃力は3500。これを受ければ遊吾の負けは確定してしまうぞォ!!』
「やらせるかよ!! 永続罠、デモンズ・チェーン!! スカーレッドの攻撃及び効果を無効化させてもらう!!」
『首の皮一枚つながったァ!!』
「中々しぶとい、が…俺は手札から魔法カード、マジック・プランターを発動!! 俺のフィールドの永続罠、デモンズ・チェーンを墓地へ送り、カードを二枚ドロー!! 俺は速攻魔法、サイクロンを発動! 貴様のデモンズ・チェーンを破壊する!!」
『これでスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンを拘束する物は何もない!! 絶体絶命のピンチ、挑戦者はどう越えるのかァ!!』
「俺はカードをセット。ターンエンドだ」
頼みの綱の一つであるデモンズ・チェーンが破壊された。
自分の手札はシンクローン・リゾネーターの効果で墓地から手札に加えた、ダーク・リゾネーターのみ。セットカードは二枚。内一枚は現状博打でしかない。
さあ、どうする――と言っても、悩んだところで仕方がないことだ。こういうときは、ドローして考えるッ!!
「俺のターン、ドロー!! ――!! 俺は魔法カード、闇の誘惑を発動!! カードを二枚ドローし、手札の闇属性モンスターを除外する!! 俺が除外するのは、ダーク・リゾネーター!!」
あと一枚。デッキの上、引いたカードは彼女に受け取ったカード。急激に頭が冴えていく。あと一枚、あのカードを引くことができればこの状況を越えることが出来る。
「続けていくぞッ! 俺は続けて強欲で貪欲な壺を発動ッ!! デッキ十枚を裏側で除外することで、カードを二枚ドローする!!」
『続けてドローカードを引く!! この男の運命はここで終わるなと叫んでいるようだァ!!』
落ち着け。慌てたところで結果は変わらない。ここで引ければ俺の勝ちは決まる。外せば――それまでだ。考えるな。感じろ。繋げ。皆が繋いでくれたソレを、今度は自分がカードを通して繋ぐんだ。
「こいつが俺の――ドロォオオオオオオオオオオ!! ッ!! きったぁああああああああああッッ!!」
「ほう?」
「俺は手札から魔法カード、ハーピィの羽根箒を発動!! 相手フィールド上の魔法、罠カードを全て破壊する!!」
『此処に来ての大量除去カード!! 凄まじい引きだァ!!』
「くっ、やってくれる…」
「さりげなく二枚目仕込みやがって…。まあ良い、これでとりあえず憂いは無い! 見せてやるよジャック!! 俺の、いや、俺たちの力を!!」
アクセル全開。コースなんて関係ない。胸を借りる。。絶対王者、彼を、彼女たちとの約束、俺の夢。これが――
「俺は、琰魔竜レッド・デーモン・べリアルの効果発動!! 自身をリリースし、墓地の琰魔竜レッド・デーモン・アビスを特殊召喚する!! そして俺は手札から、レッド・リゾネーターを召喚!!」
「態々攻撃力を下げていくか!!」
「馬鹿言うな!! 戦術だ戦術!! タクティクスってやつだ!! 俺はレッド・デーモン・アビスでスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンを――」
「スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの効果発動!! このモンスターを除外することで、バトルを無効にする!!」
「させるかァッ!! レッド・デーモン・アビスの効果発動!! 相手モンスターの効果を無効にする!! 怒縛眼!!」
「ちぃ――だが、まだ攻撃力はスカーレッドの方が上――!?」
「こいつが俺の、魂の一撃ッ!! ライフポイントを半分支払い、ライフポイント4000との差分、攻撃力をアップする!!」
『これでアビスの攻撃力は――6950!! 効果が無効となったスカーレッド・ノヴァ・ドラゴンの攻撃力を遥かに上回る!!』
魂の一撃の効果を得たアビスの姿は、太陽そのもの。その身を炎で焼きながらも、気高き王を打ち倒さんと躍りかかる。
スカーレッドも、アビスの力によって力を封じられながらも一歩も引くこと無くぶつかり合う。互いに掌を合わせ取っ組み合い、角で、牙で、眼前の敵を打ち倒さんとぶつかり合う。だが、僅差――互いに繰り出した拳。クロスカウンターの形で互いの顔面に打ち放たれた拳は、スカーレッド・ノヴァ・ドラゴンをギリギリのところで打ち倒した。
「だが、俺のライフは尽きていないぞ!!」
「それはどうかな?」
「なんだと!? ――まさか」
遊吾の不敵な笑みと同時に、彼のフィールドに墓地の悪魔が現れる。
これで、彼の場にはレベル2と1の悪魔、そしてレベル9の竜。チューナーモンスターは二体。そして、合計レベルは――
「12。だが、貴様はもうシンクロを行うことは」
「果たしてそうかな?」
「――そのカードは!?」
遊吾が翳したカード。速攻魔法――
「約束通り、あんたに返すぜッ!! 速攻魔法発動!! バトル・チューニングッ!!」
「バトル・チューニングだとぉ!?」
『バトル・チューニングだァ!! 公式大会でしか配布されていない超激レア速攻魔法!! その効果は単純にして明快!! バトルフェイズにシンクロ召喚を行うことが出来るッ!!』
「そういうことだッ!! レベル9の琰魔竜レッド・デーモン・アビスに、レベル2のレッド・リゾネーターとレベル1のシンクローン・リゾネーターを――ダブル・チューニング!!」
『って、おいこらお前馬鹿!? これ以上加速すれば壁に追突――』
MCの言う通り、このまま進めば彼はカーブを曲がり切れず壁を乗り上げてしまう。だが、彼の言葉を聞いて尚遊吾は加速を止めるどころか、さらにDホイールを加速させる。
――最速、最短で、一直線にッ!!――
『飛んだぁああああああああああああ!?!? って、何処へ消えた!?』
遊吾の姿が搔き消える。一体どこへ消えたのか。壁を越え、天高く舞い上がったかと思えば突然姿を消した遊吾に誰もが動揺を隠せない。そんな中、対戦相手であるジャック・アトラスだけは冷静に状況を理解していた。
「――来るかッ!!」
――こいつが俺の、銀河創造!! 俺の過去、現在、全てを繋ぎ、総てを束ね――
黒は赤に、赤は青に、青は銀に、銀は白銀に。彼の身体から溢れる炎は、巨竜を、彼のDホイールを、彼の身体を白銀へと変える。
「未来へ響けッ! 我が魂ッッ!!」
琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティッ!!
スタジアムの上空から白銀の光が降り注ぎ、そこから四つ腕の竜が現れる。
血潮の深紅角、血よりも深く、炎より熱い紅い瞳。その脚は大地を掴む大樹の如く、その腕は天を繋ぐ大空の如く。孤高でありながら、全てを繋ぎ、掴み取る腕を持つ者。
その姿は、正しく絶対王者。彼の魂の体現、琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティ。
「くっ、ふ、くふふふ――ははははは!! 女に現を抜かすか貴様ッ!!」
「うるせぇ!! 好いだろうが、というかそろそろ俺に母親を作ってくれませんかねぇ!!」
「ふん、俺に釣り合う女が居ないのだ。それに俺の戦いのロードに女はいらん! 貴様こそ随分と良い身分ではないか?」
「おまっ、分かるか? あいつら皆、親父よりも格好良くて、誰よりも綺麗で可愛くて強いんだぞ!! 俺がどれだけ気が引けて肩身狭い思いしてると思ってんだ!!」
「お前がそんな繊細な玉かッ!!」
「それもそうだなッ!!」
彼は宣言する。この決闘を終幕にするための言葉を。
「俺は、琰魔竜王レッド・デーモン・カラミティでダイレクトアタック!!」
「響き、轟け俺の絶唱ッ!! 深紅の絶対破壊ッ!!」
「ぐぉおおお!?」
ジャックのフィールを上回る圧倒的破壊力の奔流。それは会場中を揺るがし、その衝撃はコースを完全に大破させた。
水を打ったように静まり返る会場に、試合終了のブザーが鳴り響く。
虚空に表示される映像は、WIN。勝利の栄光を手にしたのは――
『き、き、きまったぁあああああああああああ!! FFC決勝戦、勝利したのは、新たな王者に君臨したのは――ゆうごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおあとらぁああああああああすッッ!!』
「――ぃいいいよっしゃぁあああああああああああああああああああああああ!!」
カラミティと遊吾の声が、天高く、どこまでも響き渡った。
届けと、どこまでも、どこまでも…。
※※※※※※※※
「遊吾さん…よかった……」
会場中が静まり返り、時折鼻を啜る音が響く。
遊吾・アトラスの疾走決闘。そこに込められた魂は、確かに共に戦った皆の心に届いていた。
「これで、遊吾君のことはおしまいだね。この後、彼が何処に行ったのかとかは分からないよ…」
「そう、ですか…」
彼がどうしているのか分からない。もしかしたら、今も決闘王者として戦っているのかもしれないし、己を鍛え直すと言って旅に出ているのかもしれない。
だが、一つだけ分かったことがある。
それは、彼の想い。彼が願い、望んだ、そして掴み取った夢。きっとこれから彼には今までにないほど輝きに満ちた未来が待っているのだろう。そこに自分たちは居なくても良い。でも、だからこそ彼女は思った。
どうか、彼の良く道が笑顔で溢れますように。
「さようなら、ゆう――」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?』
『うわぁああああああ!?』
会場中を貫く悲鳴。
突如として壇が爆発。一体何事か!? と会場中が騒然となる中、響は動いた。
何故動いたのか分からない。だが、確かな確信があった。爆発音に交じった男の声。それは彼女が最もよく耳にして、夢の中でも思い描いていた声。
ゆっくりと煙が晴れていく。
そこにあるのは、横転した一台のDホイールと、一人の少年。
「いってぇ…ここ、どこだ――」
「ゆう、ご?」
「ん? ……響?」
「ゆうごぉおおおおおお!!」
「うおぉお!? ちょっ、泣くな響!? え? 何で皆そんな泣いてるの!? え? ちょ待てマリアお前泣き崩れんな翼も一緒にって未来もほら泣きや――切歌調とりあえず落ち着けてかいつの間に背後に回ったクリスぅうう!? 奏お前笑ってんじゃというかお前まで抱き付くんかい!? 何このカオス!? 痛い痛い痛い!?」
遊吾・アトラス。
FFC決勝戦終了後、約束を破ったから謝りに行ってくると書置きを残して行方不明に。大昔のヨーロッパを経由して響達の居る現代日本に帰還。帰還後沢山の折檻や愛の鞭を受けながらも、約束を果たすべく行動。この世界でもデュエルモンスターズが流行っているということを聞いて、布教活動をしつつ、装者たちの活動を支援している。
元の世界に戻りそうになる時は多いが、帰還しようとすると色々と大変なことになってしまうので、最悪この世界に骨を埋める覚悟をしつつある。
最近の願いは、いっそのことこの世界と自分の元居た世界が融合してしまえばいいのに。
やってみたかったタイトル回収。
アニメテイストのデュエルなので、タイミングなど結構雑ですがどうかご了承ください。
とりあえず、これにて遊戯絶唱シンフォギアGは完全に終了しました。残りはネタが感性次第番外編を書きつつ、気が向いたらGXを書く、みたいな感じで。
皆さん、永い間応援本当にありがとうございました!!