遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~ 作:特撮仮面
過去、鬼柳京介率いる満足同盟編は、本編三話、一話三十分の映像だったのだが、あまりの内容の濃さに皆疲労してしまったため急遽休憩を挟むこととなった。
「…はー」
「どうしたんだ? 元気無いぞ、響?」
「あ、奏さん」
休憩室でため息を吐く響の目の前に差し出されるお茶。あったかいもの、どうぞと差し出されたそれを、あったかいもの、どうもと受け取り、ソレを差し出した主――奏にペコリと頭を下げる。
いいよ。片手をひらひらさせつつ、隣に座っても良い? と問いかける奏。特別断る理由もないので、少しズレてどうぞと隣を開ける。
「あんがと。…ねえ、響? 何でため息なんて吐いてたんだい?」
「へ? …いや、遊吾さんにあんな過去があったんだなぁって」
「ああ、サテライト、だっけ?」
「はい」
サテライト。とあるエネルギープラントの暴走による大災害、それによって起こった地殻変動により出来た街。元々同じ国、同じ街でありながら全く正反対の進化を遂げたシティとサテライト。
サテライトの暮らし。それは映像越しでありながらも壮絶であった。
元々栄えていたであろう高層ビル。摩天楼は窓ガラスが全て割れ落ち、剥き出しのコンクリートと荒れ果てた大地によってあまりにも簡単に滅びを連想させる。
人々はそれこそ生きることに必死で、日々が奪い合いの生存競争。サテライト沿岸部、シティに近い場所はまだしも、中心部にいけばいくほどその生活は困難となっていく。
そんな中、中心部を独りで生きてきた彼、遊吾はどのような気持ちだったのか。そして、そこに生きる人々の姿を見て、響は少しだけ気落ちしていた。
決闘、デュエルモンスターズ。本来人々を笑顔にするための力が人々を傷つけ、笑顔を奪う。
それはどこか、自分達のシンフォギアに似ているような気がしたのだ。
人々を守るための力であるシンフォギア。しかし、世界情勢に疎い響にも分かってしまうほどには、諸外国はその軍事的利用価値を見出だしていた。
一歩間違えればシンフォギアもあの決闘と同じ道を歩むこととなる。そう考えてしまうと、響の足元にポッカリと穴が開いて、そこに引きずり込まれてしまうような感覚に襲われる。
だが、そんな力を振るって尚、彼は決闘を行う。彼の決闘は何処かぶっ飛んだものではあるが、その分のインパクトなどは他の追随を許さない。なぜあんな生活をしていながら笑顔に出来る決闘を行うことが出来るのか。
「んー、そういうことが分かってるからじゃない?」
「分かっているから…」
「そう。分かってるからアイツは出来るんじゃない?」
極端な話、壊し方を知っているならば、それが壊れないためにはどうすれば良いかなど自然と分かってくる。ならば、人々から笑顔を無くす方法を知っているのならばその逆もまた然り、と言うことだ。
「まあ、そんなに気負わないこと。それと、折角仲間が居るんだから相談しなよ?」
そういうことに詳しい翼だって居るし、クリスやおっさん、それにアタシも居るんだからと笑顔で響の頭を撫でる奏。
確かに、自分独りで悩むよりも誰かに相談した方が良いかもしれない。独りで悩んでいたことで未来を何度傷つけたことがあることか。
「はい! ありがとうございます!」
「ああ。さ、戻ろうか」
「はい」
そうだ。自分は一人ではない。あのときも、今も、これからも、私にはこの場所があるのだ。頼れる大人がいて、男の子が居て、友、親友とも呼べるような人たちがいる。
そう、あの場所とは違うのだ。呪いのように呟くことしかできなかったあの場所とは――。
※※※※※※※※※※
「さて、とりあえず満足同盟がどんなものかは理解してもらえたと思う」
休憩が終わり、コンソールを前に遊吾が言う。
サテライト、そしてデュエルギャング。中々ハードだった話。それらが作り話であると言う可能性は否定できないが、同時にこの映像が真実であった場合改めて彼の異常性に納得が出来るのも事実だ。
「遊吾君の居た満足同盟、二つあったようだがこれはどういう意味なんだ?」
風鳴弦十郎から質問がとぶ。彼の所属していた満足同盟は二つ。
鬼柳京介率いる満足同盟と、桐生恭華率いる満足同盟。
「ああ、それは俺が時間跳躍した結果だ」
「時間……タイムスリップということか?」
「ああ! まあ、それはまた今度話す。まずは満足同盟についてだな」
遊吾が説明を始める。
桐生恭華の満足同盟は、あくまでも初代満足同盟をリスペクトして生まれたチームに過ぎない。無論、その実力は自分の生きていたサテライトにおいてもトップクラスであったが、最強と言うわけではなかった。当時のサテライトでは珍しく、女性主体のチームだったから直接的な打撃力不足だったこともあるが、若すぎたことと、実力に対して守るものが多すぎた。
守るもの、それは例えば孤児院であったり、自分達の拠点だったりと色々だ。特に恭華は孤児院のことをよく気にかけていたからな。本人の若さも相まってそこにつけこまれてしまった。最後の最後、サテライト統一前に行われた大規模戦闘、結果は敗北。案外あっけなかったものだ。
とはいえ、ただ敗北したわけではなく、チームメイト一名がチームを抜けて行方不明となり、敵チームのリーダー含む半数が行方不明という形での決着だからな。まあ勝ったと言えば勝ったのか。うーん、微妙だな。
「その後、満足同盟は解散。皆方々に散り散りになったって訳だ」
「そうか…。それは過去の、初代満足同盟のように考え方の違いからか?」
「知らね。あれ以来あいつらと会ったこと無いしなぁ」
当時の状況を振り返り、彼が呟くように言う。
桐生恭華は甘い少女だった。そして、他の奴等も。別にそれが悪いとは言わない。むしろあんな世界でよくあんな性格を保てていたものだ。
孤児院の一つや二つ潰されても仕方がないだろうに。まあ、そんなあいつらと居るのが好きだったからとりあえず異次元にぶちこんだり、強制的に退出させたりしてた訳だが。
自分が抜けたからといってアイツらが仲違いをするとは考えにくいし、置き土産もしっかりしておいたから問題はないと思うが、本当に何故解散してしまったのだろう。改めて問われることで、本当に何故解散してしまったんだと首をかしげる彼。
「あー、何となく理解した。ありがとう」
「そうか? 別になにも話してないんだが…」
風鳴弦十郎は彼の話し方から大体の経緯を察したらしく、苦笑しながら引き下がる。
何となくだが、彼の人柄ややりそうなことを考えると自然と分かってしまうのだ。彼がどれだけ無茶をしたかなんてことは。
「で、この上映会まだまだ続くわけ?」
「…そうだな。遊吾君のことを政府に報告しなければならないからな」
恐らく彼が行ってきたこと、出会ってきたこと全てが撮られているであろう映像データ。彼の過去に興味がないわけではないが、それよりも彼がこれから社会で暮らすための手続きをするために、彼の過去を把握する必要がある。
まあ、満足同盟時代ほど酷い話はないだろう。そう高を括っていた二課の面々であったのだが、それが間違いだと教えられた。
「さて、じゃあ最近のものから遡っていくか…」
これから始まるのは、彼の人生に多大な影響を与えた決闘者たちの濃い話のオンパレード。その反応の一部をここに記そうと思う。
※※※※※
「な、友情ごっこだと!? この男は何を言っている!?」
「な、なんて酷い」
「………」
「ちょっ、ショックで固まってる!?」
「あれだけ手酷くやられてもまだ信じようとするのか!?」
「…この男もまた犠牲者、と言うことなのか……」
「……」
「ほら、ハンカチハンカチ!」
裏切り、策を巡らせ戦った一人の少年と、何度裏切られようと、どれだけ絶望が、未来がなくても明日を信じてかっとび続けた少年の生きざまを見た。
「絶望…未来は変わらない…」
「何でバイクと合体しないんだ?」
「何で自分が犠牲になることを……」
「彼もまた防人だったと言うことか…」
「……………」
「あー、ほらほら、よしよし」
「ちょっ、なんですかこのセルフBGM!? てかキャラ変わりすぎなんじゃ」
「不満足してる!? というか満足するしかないって、それ満足って言いませんよ!?」
「なんだ、この、開拓時代のアメリカを思わせる世界観は……」
「まるで訳がわからんぞ!?」
「中々リアルファイト強いですよね、満足さん。いい満足顔です」
「満足してないからね、仕方ないね」
「決闘者の風上にもおけないやつです!」
『俺たちの満足はこれからだ!!』
未来に絶望した英雄が託した、絆によって歩んで行く未来を見た。絶望のなかに見出だした希望が起こす奇跡。それは暖かく、力強かった。
一人の男の生き様を見た。贖罪のため、そしてそれは彼の満足へと変化していった。
――そして、二課の面子は、はじけた。
「凄い楽しそうに決闘するんですね」
「頑張れ先生!」
「…あの男の子と俺は同じ空気を身に纏っている気がする」
「何でみんな死ぬんだ!」
「そうか、これが愛なんだ…」
「融合…遊吾…ハッ!?」
「一体何を考えた!? 言え!!」
無邪気な少年が青年として成長していく様を、そしてそれにつられるようにして変化していった彼らの青春を見た。
そして、伝説の決闘王、武藤遊戯の映像を見ている頃には――
「なぜバイクに乗って決闘をしないんだ?」
「レベル4のモンスターが二体、来るよ翼!」
「それはどうかな? と言える決闘哲学」
「攻撃対象は月、つまりルナアタック!!」
「まるで意味がわからんぞ!?」
二課の面子は適合していた。
※※※※※※
「あー、皆ようやく正気に戻ってくれたようだな…」
まさか、歴代決闘者がどんな活躍をしていたか紹介していただけなのに精神をすり減らし、ある種の発狂状態のような精神状態となってしまった二課の面々を拳で正気に戻し終えた遊吾が、大きくため息を吐きながら言った。
彼が見た中でも特に濃かった映像を高々数時間ほど連続で見せた程度だったのにこの反応。絶対にありえないが、実際に彼らが自分の世界に来たらどうなってしまうのやら。そんなことを考えて頭を振りながら、彼は言葉を続けた。
「あー、これで良いっすか?」
あ、ああ。そう風鳴弦十郎が言って退室を許可しようとしたところで、ふと気づいた。
これは彼が見てきた風景なだけであって、彼自身の出生や成長などに関係している映像ではないと。だが、同時に弦十郎は理解したからこそ頷くと彼の退室を許可した。
遊吾が一礼して部屋を出ていくのを見送る弦十郎。その背中に、緒川が声をかけた。
「行かせてもよろしいのですか? まだ彼自身の話は完全に聞いてはいないのですが…」
「…異世界からその身一つで来たんだ。あまり元の世界の話をするのも酷だろう」
閉まる扉を見つめながら彼は言う。
遊吾・アトラス。並々ならぬ精神力、自らの命すらも簡単に賭けて勝利をもぎ取るその姿勢は素晴らしい。年齢は響たちと同じくらい、大体十五歳と言っていたが、下手をすればそれよりも若い可能性すらある。それこそ幼稚園や保育所に入る前後の年齢だと思われるころの環境がアレなのだ。正確な年齢は詳しく検査をしなければ分からないだろう。
確かに彼は早熟している。他の同年代の子供と比べて、普通の学力などは劣るだろう。だが、それはあくまでも教育が行き届いていない環境で生きてきたから。その発想力、瞬間的な爆発力やあらゆる危機的状況、状態に対する精神力などは下手をすれば彼の倍生きている大人ですら追いつけないかもしれない程だ。
更に、彼は容赦を知っている。彼は覚悟を知っている。
だが、それは風鳴翼のように特殊な力を持って戦わなければならないという命を持つわけでも無ければ、天羽奏のように復讐のために刃を振るうわけではない。雪音クリスのような夢の為でも無ければ、立花響のような想いを貫く為ではない。
ただ、あったから。ただ、使う必要があったから。彼にとって闘争とは日常であり、それが変化した姿が決闘。そして同時に闘争は彼にとって自分の証明のようなものであったのではないだろうか?
強き者が生き残る。そんな世界が常識であった彼にとって、力となり、己の意志を示す決闘は方法がどうであれ彼にとってとても重要な要素であったと考えられる。ならば、その決闘が失われた世界、つまりこの世界にやってきた彼にとって、決闘が無いということがどういう意味を持つのか。
今回、過去を聞いたのは間違いだったかもしれない、と弦十郎は考える。
ルナアタックから時間が経ったが、その間も彼はフラフラと各地に出かけたり、こっそりとDホイールを弄っている姿が確認された。
これが何を意味するのか。弦十郎は何となく想像がついた。
元の世界に帰りたいのだろう。口では言ってはいないが、そう考えているのは何となく分かる。彼が時々遠くを見ているような姿を何度か見かけたし、彼自身も何度か「今なら親父と戦って勝てる気がする」と言った発言をしていた。
今回の彼の過去の話。もしかしたら彼を知ろうとするどころか、逆に彼の心に少なからず傷を与えてしまったかもしれないな…。仕事とはいえ子供の心に何かしらの悪い影響を与えてしまったのではないかと考えると何ともやるせない気持ちになってしまった弦十郎は、深く息を吐くのであった。
「あー、駄目だなぁ…」
皮肉なまでに青い空。現在拠点となっている二課仮本部の屋根の上、寝転がった彼が空を見ながらそう言った。
改めて見た過去の映像、自分の故郷と自分の関わってきた多くの決闘者たちの記録。それらは彼にとって確かな血となり肉となっている――のだが、同時に現在の彼にとって他にないほどの枷となっていた。
この世界に居るのは好きだ。おっちゃん、響や未来のような大切な人が出来た。奏と決闘をするのも良いし、翼と話したりバイクを弄るのは楽しい。クリスと出かけたりするのも面白いし、二課の人と色々はなしたりするのも勉強になって好きだ。
だが、ふと気が付くといつも考えていることがある。
親父と戦いたい。誰かと本気で決闘がしたい、と。
この世界には決闘者はいない。彼が世界を飛ぶ目的は、自分が強くなること。強さとは即ち決闘での実力ということでもあるのだが、この世界ではどう足掻いても決闘の腕が上がることは無い。で、あるならばルナアタックが終了した時点で彼は元の世界に帰還しても良いものだが、今の今まで彼の手元のカードたちは彼をこの世界から帰してくれない。
それはきっと何かしらの意味がある、それは分かっている。だが、それでも彼は時々思ってしまうのだ。どうして俺はこんな世界に居るのか、何故俺は戻ることが出来ないのか、と。
「あー、こういうときあいつらならどうするかねぇ…」
今まで関わってきた仲間、そして桐生率いる満足同盟の仲間たち。どうしていただろうか? まあ、リーダーである桐生恭華の言葉なら何となく想像はできる。
「満足、してないみたいだね」
「ああ? ったりめぇだろ。ろくに決闘もできねえ、好き勝手暴れられねぇ。やりたいことは何にもできねぇくせに枷ばかり増えるんだか――ら?」
この世界に彼女はいない。いや、あの時以来彼女とは一回も会っていない。
となると、そこに居るのは彼女と声質が似ていたり、もしくは彼女と同じような言葉を言っただけの別人ということになる――恐る恐る上げた視線の先にあるのは、健康的な肌色の眩しいカモシカのような健脚。そして最近妙に視線の吸い寄せられる胸部と――涙を浮かべ、曇った太陽。
「び、ひびきぃ!?」
「遊吾さん、やっぱり…」
ドンドンと沈んでいく彼女の笑顔に大慌てで起き上がった彼が待ったをかける。
「い、いやー! たのしーなー!! 二課に居るのって!! うん、たのしーなー!!」
「……」
「…ゴメン」
流石に誤魔化せないと分かったのか、バツの悪そうに頭を掻きながら苦笑する遊吾。それを見て少し寂しそうに響も笑う。
「分かってました。遊吾さんが凄い帰りたがってるって」
悲しそうに呟く響。遊吾は人前でそんな素振りを見せたことなど無かったはずなのだが、彼女にはバレバレだったらしい。
普段の振る舞いから、立花響は真っ直ぐで人の迷惑を考えないような子だと考える人は多い。しかし、実際の立花響という少女は、人の心の機微に敏感で、敏い娘である。それに、彼女は彼と互いに見たことが無い場所が無いほどには深い付き合いをしている。その為、彼が何を考えているかを何となくながら感じ取ったのだろう。
「遊吾さんは、ジャック・アトラス。…お父さんを越えるって目標があるんですもんね。私たちとずっと一緒に居られる訳、無いですよね…」
「……」
父、その言葉を発するときだけ一瞬詰まった彼女に彼は表情を顰める。
立花響の父は、現在行方不明なのだ。これは、立花響が被害を受けたあのコンサート事件が原因である。
立花響の父は、親を知らない遊吾から見ても好感の持てる良いお父さんであった。仕事を頑張りながら、妻に、娘に対してサービスを忘れず、また遊吾に対しても「息子が欲しかったんだ!」と彼が家に上がる度に何かと構ってくれた。
少々子煩悩な所があるが、響と同じく真っ直ぐで優しかった父は、あの壮絶なコンサート事件を娘が生き残った事をそれはもう自分のことのように喜び、職場でも生きていたと歓喜の嵐であったらしい。
だが、それが問題であった。その当時の彼の勤めていた会社の取引先の社長、その娘もコンサート事件に巻き込まれていたのだ。しかも、その娘は死亡。この差が彼の命運を分けた。
ワイドショーが面白おかしくコンサート事件の被害者をはやし立て始めたことで、被害者に対するバッシングがスタート。取引先への心象が悪いと彼はドンドンと仕事を外されていき、更に同僚たちからも虐めが始まった。
家に帰ると地域から攻撃を受け、会社へ、社会へ出ていけば言葉の暴力と言う嵐が彼の身体を、心を打ち据える。彼は頑張った。頑張ったが、彼の心は悲鳴を上げ、そして折れた。
仕方がない。会社での虐めなど平気、へっちゃらと乗り越えた。だが、一家の大黒柱として家族を守り抜けないことが、彼の心を酷く傷つけた。日々壊れていく我が家。泣く娘。必死に気丈に振る舞う妻と母。会社に味方は居らず、仕事も禄に出来ない日々。そんな日が何度も続き――彼は逃げた。
遊吾は覚えている。段ボールハウスで寝ていた彼の元に現れ、光の宿らぬ瞳で、やつれた頬を無理矢理笑顔に変えながら「へいき、へっちゃら、のはずなんだけどね。ごめん、ごめん……ごめん……」嗚咽すら漏らさず、ただ静かに暗い瞳から涙を流す彼の姿を。
彼との約束はある。だが、それよりも何よりも彼女が悲しんでいるのを見ていられるほど彼は血が冷たくは無かった。
「大丈夫だ。まだ帰らねえよ」
「まだ、ってことはいつか――」
「当然だろ? 元の世界が俺の生きる場所なわけだし、親父をボコすのは俺の人生の目標だ」
彼の言葉に顔を伏せる響。当然だよね…、そうぽつりと呟く彼女。
「でも、でもよ?」
「……」
「別にこっちに来れないってわけではないだろうし、それに親父に勝ったらすぐに帰ってくる予定だしな」
「え?」
彼の言葉に顔を上げる。目の前にあるのは、太陽のような笑顔。
「向こうだと決闘ができる。でもさ、お前らと一緒に色んなことをするのは、嫌いじゃねぇ。最悪こっちで決闘を広めりゃいい話なわけだしな!」
「あ…はい!!」
彼の言葉の意味を察して、太陽が昇る様に響の表情が笑顔に変わる。ああ、それでいい。彼女の笑顔を見て彼は思った。
やっぱり、立花響は笑顔が似合う、と。
「さて、俺は満足できてねぇってわかった響にはご褒美をやらないとな?」
「…何か、嫌な予感しかしないんですけど」
「さあ、俺と決闘だ!!」
「やっぱり!?」
どこからともなく紙製プレイマットとデッキを取り出した遊吾が、その場に胡坐をかくとテキパキと決闘の準備を始めた。
こうなっては梃でも動かないことを知っている響は、あーもう! と自分も彼の前に座り、デッキを手に取った。
「さあ、満足させてくれよ?」
決闘!!
今日は調子が良いらしい。数ターンの内に、流れるように響を劣勢に立たせた彼は、手札とフィールドと交互ににらめっこをしながら、ムムム、と唸る彼女の表情を見て思わず頬を緩め、ふと何を思ったか空を見上げてみた。
澄み切った雲一つない青い空。自分にとって決闘とは武器であると同時に、己の全てである、が。たまにはこうして外でのんびり決闘をするのも、悪くないかもしれない。
つまり、彼の黒歴史。
次回の遊戯絶唱シンフォギアGは――
一、未来、二課に立つ
二、爆誕!! 決闘者弦十郎!!
三、未来、友情のガイウスシュート
Ⅳ、未来の後の響コンボ!! 次の次くらいから遊吾、異国へ跳ぶ!?
の三本です。
GXもついに佳境。キャロルの歌もいい感じですね。エルフナインちゃんまじでヒロイン。…ついていようが無かろうが、いいと思うんだよね……。
「遊吾さん! 僕と融合しませんか!?」
「どけ! 貴様は一度行っているだろう!! 融合するのは私だ!!」
『…どくされ鬼畜ロリペド野郎』
「誤解だ!? って、エルフナインもキャロルも変なこと言うんじゃねえ!? 必要だったからお前らと超融合しただけだろ!? あれ疲れるからヤなんだよ!」
「む、ならば私とシンクロだ!! これなら問題あるまい?」
「どうしてそうなった!?」
「なら、僕とオーバーレイネットワークを構築すればいいじゃないですか!!」
「ゼアル!! じゃねえよ!? てかマジでお前ら落ち着け!?」
「あはっ、じゃぁ~? 私が遊吾を食べて出てくればいいんだね?」
「なるほど、リリースしてアドバンス召喚――ってうるさいわ!! というかキャロりん本来の人格出てんぞ!?」