遊戯絶唱シンフォギアG~歌の苦手な決闘者系オリ主黙示録~   作:特撮仮面

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彼と新たな仲間たち?

「あー、ったくあいつら無茶苦茶やりやがって…」

 

 

 神六人との決闘は疲れる。邪神と違って地縛神は決闘の途中で精神攻撃とかしてこないからまだマシだが、だからと言って神との疾走決闘六連戦は身体に堪える。

 

 身体ではなく魂から来る疲労にドッと疲れを感じつつ身体を起こす遊吾。

 

 と、そこで彼は自分の居る部屋に気付いた。真っ白いベッドにテーブル、そして壁。どこかの病室らしい。どうやら自分は寝かされているようだが、もしかして地縛神に魂を引っ張られた際に気でも失ったのだろうか?

 

 マリアや子供たちに心配をかけてしまったかもしれない。ベッドから立ち上がり、壁にかけてあった服とコートを手に取る遊吾。さっさと着替えようと素早く服を脱いだのだが、

 

 

「ユーゴ? だいじょ――」

「お、マリア。何か悪かった――マリア?」

 

 

 病室に入ってきたマリアに謝ろうとするが、何やら様子が変なことに気づいて眉をひそめる遊吾。

 

 さて、ここで遊吾の姿を確認してみよう。

 

 早脱ぎの技術によって遊吾は既にレッド・デーモンズ・ドラゴンの描かれたトランクス一丁。後は裸だ。至るところに傷の入った鍛えられた肉体。彼がまだ成長期の子供であると言うこともあって完全な筋肉質と言うわけではないが、世間一般で言う細マッチョと呼ばれる人よりかはゴツく、力強さを感じる筋肉。

 

 しなやかな獣と言うより、力強い竜を思わせる肉体。生まれてこのかた男性の、しかも同世代かつ少なからず信頼を寄せる人の裸なんて見たことのないマリアにとって、遊吾の体は些か刺激が強すぎたらしい。

 

 瞬間湯沸し器のようにドンドンと全身が赤くなっていくマリア。

 

 

「きゃあああ!?」

「マリア!?」

 

 

 悲鳴と同時に反転、しかし慌てすぎていて扉に額からぶつかる。痛みに、はうっ、と涙目になりながらも部屋から飛び出し、扉が物凄い速度で閉まる。

 

 いや、こういう場面は俺が悲鳴を挙げる方だろ…。最近見た漫画で、ヒロインが部屋で着替えをしているところ、急に部屋に入ってきた男がヒロインの下着姿を見てしまうと言うシーンがあったなと、場違いなことを考えながら服を着替える遊吾。

 

 いつものように腰にベルトを巻き、コートを着たところで扉越しにこちらの様子を伺っているマリアを呼んでやる。

 

 

「マリアー、もう大丈夫だぞー」

「…本当ね? ここで扉を開けたらユーゴがバイセプスとかポーシングしてたりとかしないわよね?」

「お前は俺のことを何だと思ってるんだ!?」

 

 

 いくらなんでもそんなことしねえよ! 時々放たれるマリアの意味不明な発言に、アホかお前はと声をあげる遊吾。

 

 そんな彼の言葉を受けて、それはもう、恐る恐る扉を開けて中に入ってくるマリア。その姿は見知らぬ人の家に預けられた猫のようだ。しかし、そうやって恐る恐る部屋に入ってきたマリアは遊吾の顔を見ると慌てて部屋を出ていこうとして――

 

 

「おいこら!? 逃げんじゃねえよ!?」

「はなせ!? 離してユーゴ!?」

 

 

 後ろから抱きつくように彼女を拘束する。バタバタと暴れるマリア。

 

 

「なんで逃げる!?」

「恥ずかしいからよ! わかる? ユーゴの顔を見たらさっきの姿を思い出しちゃってどうすればいいのか分からないのよ!!」

「思春期のガキかお前は!?」

「マトモな思春期を、青春なんてしたことないわよ! 悪い!?」

「あ、すまん…」

 

 

 彼女の青春は妹を守り、妹の影を追うことに費やされてきた。それを聞いて思わず真面目に謝る遊吾。

 

 一瞬静まり返る病室。はぁ、とため息をはくとマリアが身体に回された遊吾の手にそっと触れる。

 

 

「ごめんなさい。ちょっと慌てすぎだったわね」

「あーいや、こっちこそ無遠慮に着替えてたしな」

「いいえ、焦ってノック忘れてた私が悪いのよ」

「マリア君、遊吾君は、起き……」

 

 

 部屋の空気が凍りつく。

 

 部屋に入ってきたのはレックス・ゴルドウィン。このF.I.S.の研究所の所長であり、同時に研究と子供達の間で揺れる大人。

 

 さて、レックスから見て今の二人はどう見えるだろうか?

 

 後ろから抱きつく男と、そんな男の手に優しく手を添える女。明らかに事案である。

 

 

「遊吾君。そうか……」

「ちょっ、何かヤベェぞ!?」

「落ち着いてください所長!?」

 

 

 慌てて弁解しようとする二人であったが、ボルテージが振りきれているレックスにそんな言葉は届かない。そして――

 

 

「ハァアアアア!!」

「服が弾けとんだぁ!?」

「あれは、所長の拘束解除!?」

「拘束解除? 知っているのかマリア!?」

 

 

 一昔前の日本の世紀末格闘漫画の主人公のように盛り上がった筋肉によってレックスの白衣が弾けとぶ。

 

 拘束解除、それはレックス・ゴルドウィンが真の力を発揮するさいに発生する現象のことである。

 

 漫画のように衣服が弾けとび、鋼鉄の肉体がさらけ出される。それは威嚇と同時に相対するものに対する最後の慈悲。拘束解除はあまりにも強力すぎるため、これを行ったあと数秒はレックスは反動で動くことができないのだ。

 

 つまり、この時点で彼から逃げるか、それともその数秒の隙をもって彼を倒すか。

 

 そこまで聞いて遊吾は思った。あれ、俺その数秒を無駄にしていないか、と。

 

 

「遊吾君、ちょっとお話ししようか?」

「どこの超官だよこんちきしょう!」

「ユーゴ、無茶よ!?」

「ほう? 向かってくるか!!」

 

『うおおおお!!』

 

 

 衝撃。レックス・ゴルドウィンと遊吾・アトラスの拳がぶつかり合った!!

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※

 

 

 

「あはは、ゴメンね遊吾君」

「………いや、もういいけどよ」

 

 

 レックス・ゴルドウィンは昔からカデンツァヴナ・イヴ姉妹やレセプターチルドレンと呼ばれる子供たちを見守ってきた。

 

 無論、実験も行いはするが基本的にそこまで非道なことはしない。何故なら、彼にとって子供たちは子供たちだからだ。彼にとって子供たちは自身の研究と同等かそれ以上の価値を持つ存在。

 

 特にカデンツァヴナ・イヴ姉妹に関してはその気が強く、抱き締めている姿を見て思わずお父さんのような心境になってしまったらしい。

 

 それを聞いて、そんなバカ親的思考で本気の殴り合いをされたらたまったものではないぞと内心文句を言うと同時に、切歌、調、マリアの三人と二、三度風呂に入ってみたりしたことは黙っておかなければならないな、と本気で考えるのであった。というか、もしも夜な夜なマリアの部屋で二人して遊んだりしていることがバレたら命が危ない。

 

 

「どうしたんだい? 少し顔色が悪いみたいだけど」

「い、いや、何でもない!」

 

 

 慌てて取り繕う彼。このまま言及されるのは不味い。彼は慌てて別の話題に逸らそうと考えて、ふと自分がなぜ病室で寝ていたか気になったので聞くことにした。

 

 

「…君、二回心臓が止まったんだよ? 原因不明なんだけど、なにか持病とかあるのかい?」

「い、いや。無いが…」

 

 

 それを聞いて思わず焦る。二回心臓が止まった。二回、それは彼が地縛神のダイレクトアタックを受けた回数だ。一回目はマトモに、二回目はダメージを減少させることで何とか耐えたのだが、どうやら肉体に甚大なダメージを与えてしまっていたらしい。

 

 あちゃー、と額に手を当てる遊吾。これはマリアに謝っとかないと、などと考えてマリアの方を見るが彼女は平然と彼の着ていた入院着を畳んでいた。

 

 意外な反応に驚いていると、そんな彼の視線に気付いたマリアが声をかける。

 

 

「どうしたの? ユーゴ」

「いや、心臓止まったってのにマリアが冷静だなって」

 

 

 取り乱したり、怒ったりしそうなものだが先程からそんな様子が欠片もないことに疑問を感じていたのだが、彼女は、ふふ、と微笑んだ。

 

 

「そりゃ、当然焦ったわ。でも…」

「でも?」

「ユーゴは絶対帰ってきてくれるもの」

 

 

 優しい微笑み。

 

 驚きやら喜びやら照れ臭さやら、思わず視線をそらした彼の視線の先に、ニヤニヤと笑う筋肉達磨。

 

 

「な、なんだよレックス所長」

「いやー、青春だねと」

 

 

 は? 何言ってんのこいつと視線を向ける遊吾。HAHAHAと笑っていたレックスであったが、ふと表情を真面目なものに変えると遊吾に向き直る。

 

 雰囲気が変わった。今までの気のいい男から仕事を行う大人のそれへと表情を変えたレックスに遊吾も姿勢を正す。

 

 

「そうやって青春してる邪魔をして悪いんだけど…今すぐに日本に帰ってもらえないだろうか?」

「なに?」

「所長!?」

 

 

 マリアが立ち上がり声を荒げる。そんな話を自分は聞いていない、と。どうしてそんなことを言うのだ、と。

 

 

「立花響」

「!? なんでビッキーのなま――ってまあ、当然か…」

「やはり、君は日本の奏者と浅くない親交があるみたいだね」

「日本の!?」

「マリア君は知らなかったようだね」

 

 

 遊吾・アトラスという名前はこの世界のどこにも存在していなかった。しかし、立花響や雪音クリス、風鳴翼という奏者の動きを追うと必ずその人物にぶち当たる。

 

 性別も年齢も出身国も不明の完全な異物。これからF.I.S.が行う計画に、そのような不確定要素は出来る限り排除しておきたい。

 

 彼の力はあまりにも未知数だ。だが、この国から遠ざけることで最低限の時間稼ぎは行うことが出来るだろうし、日本が彼の存在を認め、戸籍などを作ってしまえば彼は活動が難しくなるはずだ。ただでさえシンフォギアシステムの件で世界的にバッシングの対象となっている日本。D-noiseと言う下手な核兵器よりも危険な存在である彼をそのまま自由にさせておくはずがない。

 

 

「さて、遊吾君。別に君を拘束しようなどと私たちは考えない。ただ、日本に帰ってほしいだけなんだ。分かってくれるかい?」

「…ユーゴ」

 

 

 マリアが不安そうな表情で彼を伺う。

 

 さて、どうすればマリアの助けになるようになるか…。別に日本に戻ったところで俺に損なんて何もない。だが、自惚れでなければ日本に帰ったらマリアが凄い悲しむような気がする。調にカレーの作り方を教えてないし、切歌との決闘の再戦の約束もはたしていない。

 

 ついでに言えば子供たちに凄い召喚法を見せてやるとか言っておいてそれもやってないし。ここまで約束事が一杯あるのにそれを反故するなんて御免被る。

 

 

――あれ? そういや俺、ビッキーや未来と色々約束してたよな…。や ば い

 

 

「どうしたのユーゴ!? 顔色凄い悪いわよ!?」

「あ、ああ、気にスンナ。ちょっと色々あるんだよ、うん」

 

 

 これは日本に戻ったら迷わず謝罪だなぁ。電話の時もそうだったが、自分のことを考えて何かとフォローしてくれる響や未来。今度本気で何かしないと、そう考えながら彼はレックスに対する回答を考える。

 

 下手なことをすればマリアの迷惑になる可能性もある。だが、ここで日本に戻ってしまえばマリアと会うことは難しくなるだろう。それに、マリアの仲間で居ると言ったのにここで帰ってしまえばどうしようもない。ならばどうするか。答えは一つだ。

 

 

「分かった。じゃあ日本に帰るとするよ」

「ユーゴ、どうして!? 私たちは――」

「仲間だ。けど、仲間だからこそ迷惑をかけるわけにはいかない。だから俺は日本に戻るよ…ごめんな」

「…さて、じゃあ手配をしなければならないな。遊吾君はここでマリア君と最後の言葉を交わしておいてくれ」

 

 

 悔いのないように、そう言い残してレックスは部屋を出ていく。

 

 無音、無言。レックスが帰った後の部屋は水を打ったかのように静まり返っていた。外の広場から聞こえてくる微かな子供たちの声以外、二人の間には全く言葉が無い。

 

 マリアは考える。ここで彼を責めるのは楽だ。仲間だと言ったのに裏切るの!? この裏切り者!! とでも叫べばいい。叫びながら彼を叩いたって良い。だが、それでいいのだろうか? それで自分は満足するのだろうか? 自分にとって、彼はその程度の人間なのか? いや、違う。彼は彼女が生まれて初めて家族以外で見つけた陽だまり、否、彼女を受け止めてくれる海だ。

 

 時に荒れ、時に静まり、その姿は常に変化し続けているがその在り方は変わらない。そんな彼。私にとって彼は大切な存在。ならば自分は彼を笑顔で見送らなければならない。

 

 これは仕方のないことなのだ。自分がどれだけ喚いたところで変わるわけではない。だから、仕方のないことなのだ…。

 

 

「ねえ、ユーゴ」

「―――だから、そこを何とかする必要がある…。トークンを生成? いや、それじゃあ――」

「ユーゴ?」

 

 

 何やら決闘盤に手を当ててブツブツと何かを呟く遊吾。一体何をしているのだろうか? ユーゴ、と彼の顔を下から覗き込むようにして彼の表情を伺ったマリアであったが、彼女が真正面から顔を覗き込んでいるにも関わらず、彼は真剣な表情をして何かをブツブツと呟くばかり。

 

 普段全く見せない彼のあまりにも真剣すぎる表情に、思わず不安になってユーゴ? と弱弱しく声をかける。

 

 

「そうなるとやっぱフォニックゲインの残量がネックだが――どうしたよ? マリア」

「いや、その、何をブツブツ呟いてるのかなって」

「ああ、まあ気にすんな。こっちの話だからよ」

 

 

 彼女が声をかけると、彼はいつものように真面目なのか不真面目なのか良く分からない気の抜けた表情で笑って見せる。どうやら何を真剣に考えていたのかは聞かせてもらえないらしい。

 

 しかし、彼女は不安を覚えることはなかった。彼のその瞳が安心しろと言っているような気がしたから。だから彼女は彼の手をとって笑顔で提案する。

 

 

「ユーゴ、決闘しましょう!!」

「え、ああ構わねえけど。良いのか? マリアってそこまで決闘強くない――」

「言ったわね!? 昨日までの私とは違うってことを教えてあげるわ!」

「言ったな!!」

 

 

 二人して言い合いながら外に出ていく。子供たちはまだ外で遊んでいるはず。ならば子供たちを観客として決闘を行ってみるのも良いかもしれない。前に聞いたのだが、彼はプロデュエリストなる職業に就いているらしい。デュエリスト、決闘者とはデュエルモンスターズを用いて決闘を行う人達のこと、そしてプロとなるとサッカーやボクシングのように多種多様な競技が存在しており、スポンサー契約などが発生する立派な職業だという。

 

 プロの決闘者と言うものがどれほどの実力なのか、最後に知るのも悪くないかもしれない。でも、私だってプロの歌手なのだ。舞台の上で早々無様な所なんてみせるつもりはない。

 

 こうして二人はレックス・ゴルドウィンが呼びに来るその直前まで、白熱した決闘を繰り広げることとなる。

 

 また、この時の二人のプロ顔負けの熱いエンターテインメントデュエルを目にしたことでデュエルモンスターズの才能に目覚め、後にこの世界で再誕したデュエルモンスターズを使って世界を救うことになる少年が居ることを、まだ誰も知らないのであった。

 

 

 

※※※※※※

 

 

 

 

「さて、じゃあ話を続けよう」

 

 

 研究所の所長室、そこで複数の男女が話をしていた。

 

 盗聴、盗撮の対策のとられた部屋、その部屋のスクリーンには一つのデータが映し出されていた。

 

 月の軌道データだ。ルナアタックから暫く時間が経ち、世界に平和が訪れたかのように思われていたのだが、本当は違っていた。

 

 ルナアタック時に破損した月は、ほんの少しずつであるがその軌道を本来の衛星軌道上からズレ始めていたのだ。しかし、その変化は誤差程度の微々たるものであり多くの研究機関は気づいていなかった。しかし、櫻井理論が世界に発表され、最近になって月が先史文明の遺産であることが発覚、そして月が大きく軌道を逸れて地球に向かって落下し始めていることが判明した。

 

 これを知った各国の研究機関は即座に自国政府にこの事実を発表、至急対策を考がえるよう呼びかけたのだが、これに対して各政府はこの発表をもみ消し、無視することを決め込んだのだ。これは、最悪自分たちだけでも地球に月が衝突する前に脱出する術があることを意味していた。

 

 こんな政府の対応に対して研究者たちは憤った。しかし、国と言う敵を前に彼らは対抗する術を持たなかった。だが、このF.I.S.だけは違った。

 

 彼らは多くの聖遺物を用いてこの月を正常な軌道に戻すという作戦を考え出した。しかし、この作戦には自分たちに大きな影響力を作り出し、各国政府と交渉を行う必要があった。しかし、いくら国家機関と言えどもF.I.S.だけでは発言力が足りない。

 

 その為のマリア・カデンツァヴナ・イヴである。彼女の歌の才能と類い稀なる容姿を利用したアイドル育成計画。マリアをデビューから数ヶ月で米国一の歌姫に仕立て上げることで、その話題性を利用しようとしたのだ。この目論見は成功した。

 

 マリアは既に米国の殆どの音楽チャートで一位を所得、このままいけば一カ月もしない内にトップアーティスト、いや、正しく史上最速の女王の誕生だ。

 

 しかし、そこで大きな障害が現れた。

 

 言わずもがな、遊吾・アトラスと言う少年だ。

 

 彼の力は誰も把握していない。しかし、D-noiseとしての活動のデータを見た限りでは、彼の能力は現在のF.I.S.の誰にも勝る。故に彼を遠ざけた、はずなのだが…。

 

 

「このように、これから我々は計画を遂行していくことになる、のだが…」

「どうされました? ゴルドウィン所長」

「い、いや、何でもない」

 

 

 ナスターシャからの言葉に、途切れ途切れで大丈夫だと答えるレックス。

 

 違和感がぬぐえない。彼は確かに送迎の車に乗って空港へ向かったし、飛行機に乗ったという話も受けた。だが、何だこの違和感は。まるで彼がどこかで自分たちを見張っているような…。そんなことを想像して、彼は思わず首を振る。そんなことはありえない。心停止した際に彼の身体を調べたが、彼の身体は健康的で模範的な人間の身体そのものだった。

 

 彼の不可解な行動に困惑するナスターシャに、大丈夫だ、と苦笑しながら彼は説明をつづける。

 

 

「制御システム、メサイアに関してはまだ解析中ですが、あと数日で制御可能になる、と私は考えています」

「神については?」

「駄目だ。アレが一体何なのか分からない。当初の計画通り神は無しで行くつもりです」

 

 

 彼が違和感を感じた理由は他にもある。

 

 マリアの表情だ。彼を見送るときこそ涙ぐんでいたが、会議に出席している彼女の表情はさっぱりとしていて、どこか澄んだ青空のようだ。何故だ? レックスは考える。

 

 マリア・カデンツァヴナ・イヴと言う少女は決して意志が強い娘ではない。優しく、甘い、そんな娘だ。決して今みたいにどこか強い意志を孕んだ目をするような娘ではなかった。それに、少しだけ聞いた彼女の話から察するに、彼女は彼にある種の依存のような感情を抱いていたはず。ならばもっと取り乱していても良い筈だ。

 

 しかし、彼女はそんな雰囲気を微塵も見せない。何故だ?

 

 

「つまり、控えている世界的音楽の祭典、QUEENS of MUSICで決起を行い、同時に我々も動く。分かりましたか?」

『はい』

「…マリア」

「………」

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ!!」

「は、はい!?」

「どうしたんですか? 返事が無いようですが」

 

 

 レックスの言葉に表情を暗くさせるマリア。やはり、彼が居なくなってショックが大きかったか。

 

 

「やはり、彼が居なくなって悲しいですか?」

「いえ、そうじゃないんです……ただ……」

 

 

 しかし、ここで同情するわけにもいかない。彼女は計画の起点となるのだから頑張ってもらわなければ。レックスが口を開こうとした――その時!

 

 

「話は聞かせてもらった」

「!? だ、誰だ!?」

 

 

 虚空から響き渡る謎の声。若い男の声にその場にいた全員が慌てて辺りを見回す中、マリアだけは大きなため息を吐きながら、しかしその口元に歓喜の笑みを浮かべながら言った。

 

 

「つまり、世界が滅ぶということだ!!」

「絶対皆さんに迷惑かけちゃうなって考えてただけです」

 

 

 虚空から現れたのは、極彩色の人型。ノイズ、否、D-noiseだ。

 

 D-noiseはその場で光に包まれると、その姿を人間へと変化させる。

 

 黒のTシャツにジーンズ。頭に紺色の襤褸布で出来た鉢巻を巻き、裾を破り白いギザギザで加工してある革ジャン、通称満足ジャケットを身に纏った男。

 

 遊吾・アトラスその人がそこに居た。

 

 

「馬鹿な!? 君は確かに――」

「確かに、飛行機に乗って日本に飛び立ったぞ? ちなみに、いくらノイズだからって位相空間使っても空間転位の如く瞬間移動なんて出来ねえからな?」

「な、ならば何故…」

 

 

 何故、大人しくいうことを聞いて帰ったはずなんじゃ!?

 

 

「大人しく言うことを聞いて僕は日本に帰らせていただきまーす――なぁぁんて、そんな大人しく言うこと聞くと思ったぁ?」

 

 

 酷い煽りである。マリアもドン引きの顔芸である。

 

 怒りにゴルドウィン以下研究者たちの表情が引きつる。だが、彼はお構いなしに話を続ける。

 

 

「だってー、そんなことをしたら皆に会えないじゃないですかー。ボクー、そんなことしたくないですしー」

「…な、ならばなぜ抵抗しなかったのですか?」

 

 

 怒りを抑えてゴルドウィンが尋ねる。そんな彼を、馬鹿じゃねーの? と言った表情で、妙に間延びした声で説明する遊吾。

 

 

「だってー、そうしたらマリアたちに迷惑がかかるじゃないですかー」

「しかし、それは現在この場所に居る時点で変わりませ――」

「果たしてそうかな?」

 

 

 急激な変化。突然襲い掛かる重圧に思わず足を退く研究者たち。何だこの圧力は。まるで空間が直接歪み、圧縮されているような、そんな威圧感。ゴルドウィンこそ何とか耐えているが、それ以外の研究者たちは重圧に耐えきれずに膝から崩れ落ち、顔を真っ青にしている。

 

 

「俺が何故此処に居ると思う?」

「そ、それは位相空間を」

「ばっか、さっきそれは否定したろうが」

「ならばなぜ――」

 

 

 分からない。理解できない。そんな様子のゴルドウィンに、大きく顔を歪ませて彼が言う。

 

 

「鈍いなァ!! アレは俺を模したトークン、つまり分身なんだよォ!!」

「分身!? ならば今の君は――」

「どうだろうなァ? 本物かなぁ? 偽物かなぁ? でもー、この施設面白そうなモノ、お前らがメサイアとか神とか言ってるものあるから、もしかしたら本物がそっちに行ってるかもしれないしなぁ? ここ危ないから政府にいいつけちゃってるかもしれないしなー」

「貴様ッ!!」

 

 

 レックスが歯を食いしばる。何という奴だ。まさかここまで捻じ曲がった野郎だとは!!

 

 怒りに震える研究者たちを見て、ひゃぁあああははは!! といっそ清々しいほどに笑う遊吾。そんな彼の後頭部を、マリアが思い切りすっ叩いた。

 

 

「あいたぁ!?」

「ユーゴ、貴方とんでもないことやるとは思ってたけどねぇ……」

「あれ? マリア? ちょっ、何だその手のハリセンは!? 落ち着け!! 俺が悪かった。ちょっと調子こいてたから! だからちょっとまってぇえええええええええ!?」

 

 

 こうして、F.I.S.に住所不定無職の、日本から来た自称一般人、遊吾・アトラスが加わるのであった。

 

 

 

 

 

「ねえユーゴ」

「ん? なんだマリア。正座崩していいのか?」

「駄目。って、そうじゃなくて。何でここに戻ってきたの? 日本に戻るチャンスだったのに」

「…満足同盟」

「へ?」

「満足同盟、決闘者、D-noise、色々呼び方はあるけどさ、その全てにおいて俺自身、遊吾・アトラスと言う奴は仲間が悲しそうだったら絶対見捨てない。例え嫌われようと、迷惑だと、自己中心的過ぎると言われようと絶対にだ」

「ゆーご……ぐすっ」

「ちょっ!? マリア!? 何で泣くんだよ、泣き止めってほら!! えっと、ごらんグレートモスだよ!!」

「うえぇえええええん!!」

「やっぱ昆虫族は駄目か!? くっ、ナッシュこんな時君がいてくれたらッ!! というか助けてくれジャックぅうううう!!」

「わあああ!!」

「おいこら、いや、抱き付くのは良いけどとりあえず泣き止め、な? 何? 抱きしめろって? 別に良いけど――って、更に泣くのか!? そんなに嫌なら言うなよ、って違う!? あああ!! 誰か助けてぇえええ!!」




オリジナル展開を考えると更新時間が滞る罠。

友達が三箱買って一枚もダンテを当てない中、四パックで彼岸の旅人ダンテを当てて「悔しいでしょうねぇ」したら、友人がキレて決闘挑んできました。また、ちょっと体調が悪いですが私は元気です。


GXの最後でアームズエイドを装備したビッキー。そしてキャロルとエルフナインの超融合。これは閃くしかないじゃないか!!


「遊吾さん!! ボクたち気づいたんです!!」
「何に?」
「日本人の貞操感で一夫多妻が駄目なら、僕たちが一つになれば一夫一妻で完璧だって!!」
「その理屈はおかしい」
「そこで見ていろ、遊吾・アトラス。オレと――」
「ボクの――」
『超融合を!!』
「っておいお前らいつの間に俺の超融合のカードを――って馬鹿やめろぉおお!?」



「遊吾さんが腕になったぁ!?」
「響、俺を使ええええ!!」
「はい!!」
『フォニックゲインを力に変えてぇえええええ!!』
「遊吾さんにビッキーがつっこむ…閃いた!!」
「未来君!? どうしたんだみくくぅううううん!?」
「……遊吾さんと、焼肉、食べたかった、な」
「みくくぅううううううん!?」
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