紅魔館での受難な日々   作:Parfait

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無邪気な紅い月

「じゃあこれが貴方の執事服です。」

 

差し出された服を受け取り、与えられた部屋で素早く着替える。

成り行きで紅魔館に留まることになった僕は、その代わりに執事を務めることとなった。

 

「どうでしょうか?」

 

「ええ、よく似合っていますよ。」

 

「ありがとうございます!」

 

お世辞でも嬉しい。それにしても本当に執事をやらされるとは思ってもいなかった。

 

「では、仕事の説明をしていきますね。」

 

「あの、その前に一ついいでしょうか?」

 

昨日から今日まで、全然人を見かけないことが疑問に思っていた。

 

「はい、何でしょう。」

 

「咲夜さんはメイド長ですよね。じゃあ他のメイドは何人くらい居るんですか?」

 

「わたし一人だけです。」

 

「え?」

 

「今の所、この館の使用人はわたし一人だけですね。」

 

「こ、この広さを一人でですか!?」

 

「まあ貴方のおかげで少しは楽になりそうですが。」

 

仕事を教わる前からめげそうだった。

 

 

 

「じゃあ仕事についてはこんな感じです。」

 

咲夜さんから一通りの掃除場所、掃除方法などを教わり、仕事に取り掛かろうとすると、咲夜さんから引き留められた。

 

「一つ言い忘れていました。くれぐれも地下室にはお近づきにならないようご注意ください。」

 

「え、何でですか?」

 

「地下室は迷宮の様に入り組んでいるので迷った挙句餓死するかもしれませんよ?」

 

「それは嫌ですね。」

 

何故そんな地下室があるのかなど疑問はあるが、咲夜さんの雰囲気を見る限りは聞かない方が良いのだろう。

「じゃあお仕事頑張ってくださいね。」

 

「はい!」

 

始めての仕事。

緊張はするが、少しやる気に満ちた心持ちで咲夜さんと別れる。

そして歩き始めて数分、早速迷った。

 

「このお屋敷、本当に広いな……」

 

歩いても歩いても同じ様な廊下ばかりが続き、無限回廊にでも迷い込んでしまったかの様な錯覚に陥る。しかも窓が無いせいで時間感覚すらもが曖昧になってくる。

 

「貴方こんな所で何してるの?」

 

そろそろ不安に心が蝕まれそうになっていたとき、ふいに後ろから声を掛けられた。

 

「あ、レミリア。」

 

そこには眠たそうに目を擦っているレミリアがいた。

 

「いや、実は迷っちゃって。」

 

「まあ確かに広いものね、この屋敷は。」

 

欠伸をかみころしている所を見ると、寝起きなのだろうか。昨日見た服装とは違い、薄手のネグリジェのような物を羽織っている。

 

「ところで、咲夜を見なかった?」

 

「さっきまでは一緒に居たけど、今は分からないな。」

 

「あら、そう。」

 

レミリア短い返事をした後、その身長差故に上目遣いでこちらをじっと見つめてくる。

 

「えっと、なに?」

 

「わたし、お腹が空いたのよ。」

 

人間ならば当たり前の欲求。しかし目の前に居るのは吸血鬼。そしてやはり僕の予想通りの言葉が降りかかってくる。

「貴方の血、美味しそうね?」

 

無邪気な笑顔でそう呟かれ、僕は冷や汗を流すことしかできなかった。

 

 

 

「うぐっ、うぁ。」

 

首筋に鋭い痛みが走り、漏れそうな声をかみ殺す。結局抗えないまま、血を与える羽目になっていた。僕としても頑張って抵抗したのだが、さすが吸血鬼なのか、見た目からは想像もつかない様な怪力でねじ伏せられ、今に至る。

 

「やはり美味しいわね。」

 

飲み終わったのか、ものの数分で解放され、しゃがんでいる体勢から立ち上がろうとする。

 

「案外、吸わないもんなんだね。」

 

「わたしは少食なのよ。」

 

少しふらつきながら立ち上がり、レミリアの方へ向くと、目を見張った。

彼女のネグリジェが僕の血で真っ赤に染まっていのだ。

 

「ちょ、その服!」

 

「あら、またこぼしちゃったわ。」

 

そう言いながら、口元から血を滴らせる。思った以上に吸われていたのかと思っていると、絨毯にまで血が染みている。

 

「僕の初仕事は、自分の血の掃除か……。」

 

鉄臭い匂いを全身で感じながら、小さなため息をついた。

 

 

 

 

「じゃあレミリアはこの服に着替えて。」

 

「あら、手伝ってくれないの?」

 

「それぐらい一人で着てよ……。」

 

「しょうがないわね。」

 

不満気に呟きながら自分の部屋に入っていく。

あの後レミリアの部屋の箪笥に替えの服があることを発見した。着替えはもう渡したので、安心して床の染みを睨みつける。

 

「絨毯に染み込んだ血ってとれるのかな。」

 

不安になりながらも、さっき咲夜さんに渡された掃除道具箱を探してみる。すると前例があったのか、血液専用洗剤と書かれた瓶を発見した。布をその液体に浸し、染み後にあてがうと、見る間に吸い取っていく。

 

「この手際の良さ、僕は執事が天職かも知れない!」

 

軽く洗剤の力を自分の手柄にしつつ、染み取り作業を続ける。一通り取り終わったあたりで、レミリアが部屋から出てきた。

 

「あら、綺麗になったわね。」

 

「僕も血がこんなに綺麗に取れるとは思わなかったよ。」

 

絨毯は、僕が来る前と変わらないほどになっていた。

 

「ところで貴方、迷ってたって言ってたけど、何処に向かっていたの?」

 

そういえば此処で時間を過ごしてすっかり忘れていた。

 

「実は、大図書館を探しているんだけど。」

 

「じゃあ、パチェにはもう会った?」

 

「パチェ?」

 

「まあいつも大図書館に引きこもっているし、なかなか見ないかもしれないけれど。」

 

「じゃあ大図書館で会えますかね。」

 

「そうね、まあ色々なことを知ってるわよ。貴方のことも聞いてみたら?その知識が使えるかどうかは知らないけど。」

 

会う前から嫌な予感しかしない。

 

「じゃあお仕事頑張って頂戴。大図書館はそこの階段を登って突き当たりよ。」

 

指された方を見てみると、大きな階段があった。さっきはずっと廊下だと思っていたのに。この屋敷どうなってんだ。

 

「ああ、頑張って仕事してくるよ。」

 

大図書館に向かう足取りが重たい。

 

「変な人じゃなきゃ良いんだけどなぁ。」

 

その期待は裏切られると分かりつつも、そう願わずはいられない。

階段を登りながら、なんだかんだで順応している自分を賞賛した。

 




取り敢えずレミリアと絡ませて見ました、次はパチュリーですね。まあ後には紅魔館メンバーだけではなく、他の幻想郷メンバーとも絡ませたいです。次回更新は23日を予定しています。お付き合い頂ければ幸いです。
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