紅魔館での受難な日々   作:Parfait

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暇人小娘

夢を、みていた。

まだ「君」が、無邪気な笑顔を見せていた。まだ僕が、本音を隠す重要性を知らなかった。あの頃。なんでもできるが故に、なにもできなかった僕と、なにもできなかったが故に、なんでもできた「君」との日々は、砂上の楼閣のようなものだと理解しながら、盲目的に過ごしていた。そんな忌々しい日々で、また、「君」が、笑っている。

そんな夢。

 

「嫌な夢を、見たな……。」

 

まだ疲れが残っている身体を起こしながらひとりごちる。冷や汗をかいたのか、シャツが身体に張り付いている。ここのベッドは少し硬く、慣れるのには時間がかかりそうだ。まだ少々眠気が残るのは、そのせいか、夢のせいなのか。

 

「起きられましたか?」

 

丁度良いタイミングで咲夜さんが部屋に入ってくる。美味しそうな朝食を片手に持ちながら。

 

「では、朝食を食べ終わったら屋敷を案内しましょうか。」

 

そう言って、僕の部屋に何処か懐かしい微笑みを残していった。

 

 

 

すでに温かい朝食は食べ終え、着慣れない執事服を身に纏う。姿見である程度確認した後、ドアノブに手を掛ける。

 

「よし、今日も頑張るぞ!」

 

言葉に出して気を引き締め、一日の始まりの扉を開く。

 

「気合が入っていますね。」

 

扉を開けた目の前にくすっと笑った咲夜さんが居た。思いっきり聞かれた……。

 

「が、頑張ります……。」

 

めちゃくちゃ恥ずかしいんだけど。

 

「では、一度外に出て見ましょうか。」

 

そう言い、歩き出す。それにしても、これだけ広い館だ、外観はどんなに凄いことになっているんだろうか。やっぱり下手な城よりでかいんだろうな。

既に今もかなりの距離を歩いている。目の前の階段を降りると、豪華な玄関が見えた。壁に飾られる色とりどりの絵画、天井に吊られている荘厳なシャンデリア、脇に置いてある精巧な石像は、洋館で思い描くそのままの豪華さだった。

 

「ここが紅魔館正面玄関です。」

 

咲夜さんが重たそうな大扉を開いていく。徐々に入ってくる強烈な日差しに思わず目を細めた。ずっと薄暗い館内に居たので、久しぶりの太陽だ。やばい、今すごく感動してる。

庭園の中心にある噴水まで歩き振り返ると、こぢんまりとした洋館が見えた。赤褐色で、窓が少ない。この洋館は何でしょうか。きっと紅魔館なんでしょうね。

 

「なんか、小さくないですか?」

 

半ば諦めながら聞いてみる。

 

「本来は小さいんですが、わたしの能力で空間を広げているので館内は広いんですよ。」

 

そんなこともできるのか、「時間を操る程度能力」。万能というかチートすぎるだろう。そこでふと思う。

 

「他にも能力を持っている人はいるんですか?」

 

「そうですね、人里に住んでいる者以外は大抵持っていますよ。」

 

「レミリアとかも?」

 

「今度聞いてみたらいかがですか?」

 

「そうですね。」

 

正直レミリアの能力は想像がつかない。というか吸血鬼自体が能力のようなものじゃないだろうか。

 

「まあ例えばあの人の能力は……」

 

「あの昼寝してる人ですか?」

 

咲夜さんが指を差した方を見ると気持ち良く寝ている人がいた。それに気付いた咲夜さんは、怒りのオーラを滲ませながらつかつかとその人に近づいていき、無言で頭を叩いた。

 

「起きなさい!」

 

「へ、咲夜?何でここに?」

 

「貴女が取り逃がした子を連れてきたのよ。」

 

「いや、だから逃がしてませんって。私。」

 

どうやら見る限り門番さんは咲夜さんに頭が上がらないようだ。それにしても僕のせいで知らぬ罪を着せられてるし、一応フォローしておこうかな。

 

「あのー、咲夜さん。一応僕も知らぬ間倒れていたんで、多分門番さんに罪はないかと……。」

 

「どちらにせよこの人はいつも寝てますから。」

 

咲夜さんの声が冷たい。というかもうこれは門番さんの自業自得だ。完全に。

 

「で、君が何処からともなくやって来たっていう不審者?以外と可愛い顔してるじゃない。」

 

門番さんが立ち上がり、こちらに話かけてくる。

立ち上がると以外と背が高い。咲夜さんよりも少し童顔な顔に、ピンク色の長い髪。着ている緑色のチャイナドレスはスリットがかなり深く動きやすそうだか、白くゆるいズボンを穿いているので際どくはない。

 

「私は紅魔館の門番の紅美鈴よ。君は?」

 

「僕は、瀬名風吹です。」

 

「門番って言っても仕事はしてませんから、騙されてはいけませんよ、風吹。」

 

今日の咲夜さんは辛辣だ……。

 

「ところで、美鈴さんの能力はどういうものですか?」

 

「私?そうね、じゃあ特別に見せてあげるわ。」

 

少し嬉しそうに言い、顔を引き締める。真剣な顔は、少しの幼さを残さない。

 

「私の能力は『気を使う程度の能力』よ。」

 

言うがはやいか、美鈴さんの手に光が集まっていき、どんどん輝きが増していく。そして両手を合わせ、掌を空に向ける。

 

「はあぁっ!!」

 

声を上げるとともに、極大の黄色いビームが空へ向かって放たれた。これは何と言うか……カ○ハメ波だな。

 

「すごいですね。」

 

「これで紅魔館にやってくる輩も一撃よ。」

 

「なら仕事しなさい。」

 

最後まで咲夜さんは辛辣だった。

 

 

 

その後、食堂、大広間、洗い場など主要な場所を案内してもらったが、相変わらず広い。というか予想通り洗濯機など文明の利器などは無かった。全て手洗いをしなきゃならないのはさすがに辛そうだ。

 

「これで大体紅魔館は案内し終わりましたね。」

 

「わざわざ今日はありがとうございます。」

 

「いえ、この屋敷に住んでいるのはお嬢様とパチュリー様と美鈴、そして私と風吹の5人だけですから。そんなに気負わなくても大丈夫ですよ。」

 

「はい、本当に今日はありがとうございました。」

 

「ゆっくりとお休み下さい。また明日。」

 

自分の部屋に向かって歩き出す。咲夜さんの姿が見えなくなって幾らか経ったとき、目の前に幼女が居た。この感じ、前に見た青い子と同じだ。

 

「どうしたの?」

 

話かけると、レミリアよりも幼く見える幼女は、ゆっくりとこちらに振り向いた。肩ほどまでの短い金髪に赤いリボンを結わえている。白黒の洋服に真っ黒いロングスカートと全体的に黒い。そんな彼女は、真っ赤な目で、こちらを見つめていた。

 

「おまえ、美味しそうだなー。」

 

あどけない顔に似合わない邪悪な笑みで、こともなげに言う。これはヤバい。所謂本能という奴が告げている、これはヤバいと。咄嗟に背を向け走り出そうとする、と、突然視界が漆黒に染まる。暗闇の中何度も転びそうになりながらも無我夢中で走り抜ける。狂ったような笑い声が徐々に離れていくのを聞きながら、あてもなく走り続けていた。

 

「撒いた、か?」

 

ふと我に帰ると、辺りを包む闇が消え、周りが見えるようになっていた。しかし、この場所は見覚えがない。石畳に石壁、多分御影石だろうか、無骨な印象を受ける。1m間隔で置かれている蝋燭は、この空間に灯りを与えてはいるが、薄暗さは拭えない。まあこんな定番な空間は多分あそこしかないだろう。

 

「もしかしてここって、地下室?」

 

進んでも進んでも同じような景色しか見えない。ここが咲夜さんの言っていた地下室だとすると、迷宮のはずだ。正直、どこに出口があるのか分からない。

 

「まさか本当にこのまま餓死とか……。」

 

洒落にはならないが、現状では冗談で済ますことが出来ない。取り敢えず、歯で指を噛み、血で壁に印をつけながら歩く。それを頼りに、まだ行ったことのない道へと歩いていく。

 

「あれは……。」

 

やっと見えた、見慣れない光景。それは、頑丈な鉄格子。中をみやると、そこには、幼く美しい、ひとりの少女が囚われていた。

 

「おにいちゃん、誰?」

 

その美しい声は酷く、僕の脳髄を揺さぶった。

 

「君は、誰?」




ついに次回で紅魔館メンバーが全員出ます。そろそろ紅魔館から風吹を出してあげたいです。それにしても質問に質問で返すってなんなんですかね……。
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