剣姫の弟ですが何か 〜ジャガ丸君の好みは豚キムチ味〜 作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)
「ぁぁぁぁぁああああ!!」
「魔導師は詠唱を急げ!!その他は時間を稼げ!!」
ダメージディーラーであったレオンハルトの戦線離脱は痛かった。
それまで周りのモンスターを倒すか軽く援護するぐらいでよかったのに自らが前線に立たねばならないのだ。
しかし、その程度で崩壊する程リヴィラの街の冒険者は柔じゃない。
魔導師が高火力の魔法の詠唱をしている間に他の冒険者で出来る限りダメージを与えようとの事だった。
「再生速度が遅くなってんぞぉ!!どんどん打ち込めぇ!!」
人間の細胞分裂の回数は決まっている。
某忍者漫画の怪力な医療忍者の使う創造再生の術後は細胞分裂を早め再生させる事で戦闘での死亡を防ぐものだ。
レオンハルトやリューの連続の攻撃すら再生してみせたがダメージはそれなりに残っていたようで再生するのが少し遅くなったのだ。
「…………星屑の光を宿し敵を討て!!ルミノスウィンドォォォォォオオオオオオオ!!」
その叫びが18階層に響く。
抑えようとも抑えきれない位に昂ぶる感情を吐き出すように魔法を放つリュー。
レオンハルト・ヴァレンシュタインを英雄と呼ばずして誰を英雄と言うのか。
英雄である彼はこの怪物必ず倒す、それまでにこの怪物の厄介な再生能力を削り取る………そう、決心していた。
「レオンさん………………」
憧れの剣姫の弟であり英雄物語の主人公のように格好良いレオンハルトに何時からか憧れていた。
自分もこうなりたい、強いモンスターに立ち向かってみんなを守りたい。
その願いに応えるようにベルの右手が白く発光し出す、それに伴い大鐘楼のような音が響く。
白い光は徐々にベルの身体を包んで行く。
英雄願望により強化した一撃、これがレオンハルトやリューでも倒せなかったゴライアスを倒せると思わなかったが右の拳をゴライアスに照準を合わせ構える。
叫べ、咆えろ、名乗りをあげるんだ。
何時か彼と同じ………彼を超える英雄になる男だと、この一撃はその第一歩なのだと。
「ファイアボルトォォォォォオオオオオオオ!!」
白い炎雷が巨大な塊となって吹き出す。
通常のゴライアスならば跡形も無く消しとばしていたかもしれない。
だがこのゴライアスは異常、イレギュラーなのだ。
着弾した炎雷はゴライアスの右半身を削ったが魔石を破壊する迄には至らなかった。
反動で、物凄く身体が怠くなるが次弾に備えチャージを始める。
意識が、持つなら何度でも放つ………英雄になる為名乗りを挙げた責任として最後まで全力を尽くすだけなのだ。
視界は未だにボヤけたまま、身体中の怪我も治りきっておらずボロボロの状態だと言うのに高揚感が高まっていた。
レオンハルトは英雄に憧れていた少年の英雄になる為に挙げた狼煙を感じ取る事が出来たのだ。
「視界がボヤけてるけどあれだけデカイ的だ……外す訳ねぇだろ。
身体は剣で出来ていた…………………」
詠唱を始め一振りの剣をイメージする。
「血潮は鉄、心は硝子」
ドクン、ドクンと脈が強くなる。
「幾たびの戦場を越えて不敗、ただの一度も敗走は無くたった一度の負けを許さない」
魔力がレオンハルトを包む。
「担い手は此処に独り、迷宮の丘にて剣を振るう」
そのイメージが形となり始める。
「故にこの生涯に意味は要らず、その身体は剣で出来ていた」
黄金の刃を持った剣がレオンハルトの手に握られる。
「輝ける彼の剣こそは過去、現在、未来を通じ戦場に散りゆく全ての兵達が今際の際に抱く儚くも尊き夢。
その意志を誇りと掲げ、その真偽を貫けと正す。
今常勝の王は手に取る奇跡の真名を謳う。
其は……………………………………………」
手に握られた黄金の剣に光が集約する。
その光を見届ける者は居ないが一度見たら忘れられない程幻想的で理想的な暖かい光であろう。
人々の理想となった王が振るった黄金の剣が今此処で、このオラリオの地にて再び解放される。
「エクスカリバァァァァァァァァァァ!!」
その剣から放たれた究極の斬撃は黄金の塊となりゴライアスへ向かう。
「ファイアボルトォォォォォオオオオオオオ!!」
白い炎雷もゴライアスへ向かい黄金の斬撃と同時に着弾する。
ゴライアスの断末魔の後に残ったのはゴライアスの表皮のみだった。
誰もいない木の上でヘルメスは慣れる事の無い神託をする。
「あぁ見たぞ、このヘルメスがしかと見た!!
素質が無い?馬鹿を言うなゼウス!!
貴方の孫は、貴方の残した意志は本物だ!!
これからも見届けよう、親愛なる彼らが紡ぐ眷属の物語。
ファミリアミィスを!!」
ヘルメスの神託を聞いた者は居ない。
しかし、この神託は聞こえているのだろう……神々達の元に。
結構書いたつもりなのに2,000字行かないとは…………
とりあえずゴライアス戦は完結です。
そろそろレオンハルトのステータスを作らなくてはw