剣姫の弟ですが何か 〜ジャガ丸君の好みは豚キムチ味〜 作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)
「うん、そういう訳で今日付けで直接契約は解消ね」
「いやだから意味が分からんて」
ダークリパルサーとエリュシデータが折れたから修理を頼もうとゴブニュファミリアに足を運んだレオンハルトだったが思わぬ事で面食らってしまった。
直接契約を結んでいた上級鍛冶師のリズベットから解約を申し出されたのだ。
「だからー、お母さんが体調崩したから田舎に帰るって言ってんの」
「だからって直接契約を切る事に繋がらないだろ!」
「ゴブニュ様にも言って恩恵を無くしたから前みたく槌を叩けないのよ、ていうか私はもう満足したし」
「満足ってどう言う……………って完成したのかよ」
冒険者の目的が富と名声であるなら鍛冶師の目的は至高の一振りを造り上げる事だ。
リズベットも鍛冶師であるからして至高の一振りを求めていた。
とある英雄譚に登場する騎士が振るう剣を造り上げるのだと知り合った当初から聞かされていたレオンハルト。
「ちょっと、待ってて取ってくるから。
あ、あとこの二振りは親方達に見せてくる」
大剣くらいの重さの剣を両手で抱え運ぶリズベット。
レオンハルトの知っている彼女なら大剣でジャグリングしちゃうくらいお転婆なのだが運ぶだけで精一杯な所を見ると恩恵を失ったのは大きいのかもしれない。
「またロキファミリアかよぉぉぉぉぉぉぉ!!大切断といいもういい加減寝かせろチクショォォォォォオオオオオオオ!!」
親方の魂のシャウトに思わず苦笑いをして心の中で謝罪するレオンハルト。
五分程するとリズベットが布に包まれたものを持ってきた。
「ハァッー重かったー!!ほい、これが私史上最高傑作だよ」
余程重かったのか腕をパタパタとさせている。
リズベットがゆっくりと包みを取るとその剣が姿を現す。
黒、何処までも飲み込まれそうになる程黒く美しい刃。
その色故か禍々しく感じるが何処となく聖剣のような清らかさを感じるレオンハルト。
「へぇ…………こりゃ凄い剣だな」
「でしょー?今回は願いの結晶とも呼ばれてる聖晶石っていう鉱石を使ったんだ〜。
不壊属性〈デュランダル〉もつけてるし付与属性〈エンチャント〉私が今まで溜めてきた貯金全部費やして買ったから失敗出来ないな〜と思って頑張ったら出来ちゃった」
頬をかきながらアロンダイトの説明をするリズベット。
不壊属性が付いているだけで折れる事はまず無い、そして付与属性というのは魔力を纏わせる事を可能にするものだを
魔力を纏わせ増幅させ放出する事で魔法を打ち出す事が出来る、つまりは魔剣の真似事を可能とするのだ。
素材の性能、そして不壊属性によって魔剣のように折れる事は無い。
付与属性を付ける事が出来るのはリズベットのみなのだが知る人ぞ知るゴブニュファミリアである為買う冒険者は居ない。
その事を理解しているのか付与属性の剣を造ろうとしない。
「レオン、これを使ってちょうだいって言うかそれレオン用に造ったからレオン以外はあんまりしっくり来ないかも」
エリュシデータもダークリパルサーもレオンハルトもレオンハルトの拘りがある。
重さ、柄の長さ、刀身に刃渡と細かく注文し調整に調整を重ねている。
それを知っているリズベットはこのアロンダイトをレオンハルト用に造っていた。
「分かった………有難く使わせて貰うよ」
「じゃーね!!、レオン!!エルフの嫁さん泣かすんじゃ無いわよ〜〜!!」
店を出るレオンハルトに最後の爆弾を落とすリズベット。
それはヘルメスファミリア監修の爆報オラトリアに乗っていた記事。
ニヤニヤしているリズベットに苦笑いで手を振りながら戦争遊戯の作戦会議をする為ヘスティアファミリアの仮ホームとなっている豊穣の女主人へとむかうのだった。
とりあえずレオンハルトの折れた武器の代用というか代わりがアロンダイトっす。
まぁだからと言ってエリュシデータとダークリパルサーが倉庫入りするって事は無いんで安心してください。
付与属性に関しては……………ええまぁうん。あまり触れないでやってくださいw