剣姫の弟ですが何か 〜ジャガ丸君の好みは豚キムチ味〜   作:万屋よっちゃん
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オラリオ恋愛讃歌第2節

一晩お洒落について考えたが結論の出なかったレオンハルトは普段通り真っ黒スタイル、違うのはロングコートを羽織っていない位なものだろう。

 

アロンダイトは疎かダークリパルサーやエリュシデータを携帯する事を禁止されたレオンハルトは背中に寂しさを感じていた。

 

 

「え、レオン君?」

 

 

集合時間通りに来たエイナ。

 

赤いミニスカートに白いシャツとシンプルな格好であるがスタイルの良い彼女には逆に映えるモノがある。

 

普段の彼女は眼鏡をかけているが今日は外していてそれが新鮮に思えた。

 

 

「おはようございますエイナさん。

 

今日はミイシャさんも来るって聞いてたんですけど………………」

 

 

「ミイシャなら風邪引いたから行けないって………看病しようとしたらもう1人待たせてるからその人にこれを渡してくれって頼まれて」

 

 

綺麗に折り畳まれた一枚の紙。

 

それを開くと中には綺麗な字が書き連ねられていた。

 

 

『やっほ〜〜レオン君!!最近のエイナが元気無いからレオン君が何とかしてね〜〜。

 

 

因みに私は物凄い元気なんで御心配無用でぃす。

 

お土産は要らないけど強いて言うなら2人の良い報告待ってまーす』

 

これの他にも小さなイラストやら絵文字顔文字が書かれており思わず千鳥で焼き決してしまった。

 

 

「ミイシャさんのは来ないみたいなんで行きましょうか、この前お金使ったんであんまり無いですけど多少位なら奢ります」

 

 

「あ、え、いや私は…………うん行こっか」

 

 

真面目な性分であるエイナはあの写真を見てからレオンハルトへの思慕を断ち切ろうとしていた。

 

写真の二人を見る限りエルフの人もレオンハルトもお互いの事を想っている………そう感じてしまったら諦め無いとレオンハルトに迷惑をかける。

 

しかし年下の人間に抱いた思慕はそう簡単に断ち切らせてもらえるものでも無い為ここ最近何事も上手くいかなかった。

 

この想いを諦める為にも最後に思い出を作ろうとついて行く事にしたのだ。

 

 

「じゃあ先ずはガネーシャの方に行きますか、あそこなら何かしらやってるでしょうし」

 

 

そう言って歩き出すレオンハルトに合わせるようにしてエイナがついて行く。

 

歩き始めて5分程でガネーシャファミリアがある通りに着く。

 

ガネーシャファミリアの主神、ガネーシャの「俺がガネーシャだ!お祭り………それはガネーシャだ!!」という一言で一ヶ月間この通りでお祭りしようぜとなった。

 

それで通りには様々な店のテナントが立っており人通りもそれなりに多かった。

 

 

「やっぱりこういう時は何か食べないと損ですよね!!

 

すいませーん、ジャガ丸君わさび味を二つくださーい」

 

 

屋台のおじさんが揚げ立てのジャガ丸君をレオンハルトに渡す。

 

エイナに渡そうとするレオンハルトだが朝ご飯を食べたばかりだからと断られシュンとしてしまうレオンハルト。

 

やけくそとばかりにわさび味のジャガ丸君を頬張る。

 

 

「まぁいいや、屋台は食物だけじゃ無いんで楽しみましょう。せっかくですから」

 

 

と言ったものの色々な屋台が出ている為か花より団子とばかりに色々食べるレオンハルト。

 

あっちへこっちへと歩き回るレオンハルトに置いてかれそうになっても何とか着いていくエイナ。

 

レオンハルトのフリーとなった右手を自分の右手と繋ごうとするがそこまで至らない。

 

過るは写真のエルフ。

 

 

「レオン君はベル君みたいに好きな人とか居ないの?」

 

 

何を聞いているんだ自分は…………そんな事を聞いても意味など無い。

 

どんな事を考えているか分からないが少なくともレオンハルト・ヴァレンシュタインの気持ちがエイナ・チュールに向いて居ない事だけはエイナ自身が分かっていた。

 

届くこと無い想い………分かったつもりなのにその現実を受け入れる事が出来ない。

 

 

「それは分からないですね…………いや、分かってるのかも知れないけど僕自身が分かろうとしてないだけかもしれないです」

 

 

分かっていたが自分の名前が出ない事に胸が締め付けられるエイナ。

 

顔には出すまいと顔を上げると意外なものが目に写った。

 

緑色エプロン姿で若葉色の髪をし、エルフ特有の長い耳…………写真に写っていた女性だった。

 

背筋に冷や汗が伝う、気付くな……気付かないでくれと。

 

 

「レオンさん……」

 

 

しかしそんな浅はかな願いは通じる事もなく気付かれてしまった。

 

 

「リューさん、こんにちは。

 

シルがまた財布を忘れたとかですか?」

 

 

「えぇ、まぁそんな所です」

 

 

取って付けたような笑顔、自分が仕事場でする営業スマイルと似ていた。

 

自身の負の感情を気付かれまいとする偽の顔だ、それに肩も少し震えている。

 

 

「いやぁ〜〜、今日はかくかくしかじかでエイナさんと遊ぶ事になったんですよ。

 

まぁ殆ど食べてばっかですけどね」

 

 

「そうですか、すいません用事を思い出したので失礼します」

 

 

それだけ言い残すと踵を返し来た方へと歩き出し人混みの中に消えていったリュー。

 

 

「レオン君、リューさんってもしかして………………」

 

 

「多分エイナさんの考えた通りの人物ですよ。

 

『疾風』ことリュー・リオン、アストレアファミリア所属のレベル4の元冒険者ですよ」

 

 

勤勉な彼女が読んだ資料の中に書いてあった名前だ。

 

ファミリアを壊滅させられた私怨から行き過ぎた報復行為によりブラックリストに載った冒険者だ。

 

 

「レオン君、リューさんを追い掛けてあげて」

 

 

「え、いやでも………………」

 

 

リューが行った道とエイナを交互に見るレオンハルト。

 

義理堅く優しいレオンハルトは様子のおかしかった知り合いを追うのと約束を捨てるのを天秤にかけれずにいる。

 

 

「レオン君だって気付いてたと思うけどリューさんは泣いてたよ?

 

泣いてる女の子には優しくしてあげないと駄目だぞ」

 

 

人差し指をピンと立てレオンハルトを注意する自分に嫌気がさす。

 

このまま一緒にいればレオンハルトは自分を楽しませてくれるに違いないし思い出にもなって想いを伝える事も出来るかもしれない。

 

だけどそれを選んでしまったら想いを伝えない事よりも後悔するだろうし思い出にもならない。

 

何より…………自分、エイナ・チュールを否定する事になると思った。

 

 

「(何がしたいんだろ…………私)」

 

 

しかしレオンハルトは困り顔になりながらリューを追いかけようとしない。

 

自分を押し殺してまで吐き出した言葉をどうしてくれるのだと憤りすら感じる。

 

 

「早く行きないよ!!私なんか放って置いてリューさんの所行ってあげなさいよ!!」

 

 

何をしているんだ……………。

 

レオンハルトは悪く無い、それなのに自分勝手な怒りを自分勝手に押し付けているのだ。

 

優しくて頼り甲斐のある年下の少年甘えてしまっている自分が嫌に感じるエイナ。

 

 

「エイナさんだって泣いてます」

 

 

泣いているのか………シャツの袖で濡れた頬を擦るエイナ。

 

きっと頭の中では分かっているのだ、自分の初恋が終わっている事を。

 

この涙はそれを教えてくれているのだろうか。

 

 

「バカねぇ、これは思い出し泣きよ」

 

 

「え、でも………………」

 

 

勘の鋭いレオンハルトならば自身の想いも彼女の想いも気付いているだろう。

 

ここで想いを告げる事は卑怯かもしれない、彼を困らせるかもしれない…………そんな考えだけが頭を過る。

 

だけど言わないとこの先も後悔しか残らず次へ向かって行けなくなる。

 

結局それは自身のエゴに他ならないがある人は『恋愛とはエゴとエゴの押し付け合い』なのだと言っていた。

 

それに習って精一杯の、一世一代のエゴをぶつけてみようと決心した。

 

 

「レオン君、ここで追い掛け無いと一生を後悔するよ?

 

私は本当にもう大丈夫だから、明日から普段のエイナ・チュールに戻ってるから………………………一言我儘言わせて?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レオン君、大好きだよ」








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