剣姫の弟ですが何か 〜ジャガ丸君の好みは豚キムチ味〜   作:万屋よっちゃん
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オリラリオ恋愛讃歌最終節

走った……………只管走った。

 

レオンハルトはリューを追う為にオラリオの彼方此方を探して回った。

 

リューが買い出しの際に行く店、ダンジョンに潜る前に寄るミアハファミリアのホーム。

 

思い付く限りに走り回った挙句気が付けばオラリオの迷宮街、ダイダロス通りに来ていた。

 

 

「はぁ………はぁ………くそっ、リューさん何処に行ったんだよ」

 

 

壁に手をつき肩で息をするレオンハルト。

 

レオンハルト・ヴァレンシュタインは姉であるアイズと同様に容姿端麗であるが色恋の噂が無いことで有名だ。

 

アイズみたくロキのマークがある訳でもなくフィンでいうティオナみたいな存在がいる訳でも無い。

 

噂が無さ過ぎて男色説が流れた位なのだが単純にそう言った事を考える余裕が無かったのだ。

 

天才アイズ・ヴァレンシュタインを越えるための訓練や探索系ファミリアとしての迷宮探索など日常の大半は剣とモンスターの事で埋まってしまう程に。

 

ここ最近では無茶をし過ぎるせいか謹慎命令を出される事が多くなったお陰である程度の余裕が出来ていた。

 

その事もあってか異性を意識する事が多くなった。

 

気が付けば豊穣の女主人に通ってとある店員を目で追っていたり、ギルドの受付嬢と話して顔が熱くなったりといった具合にだ。

 

肩で息をしていたが漸く落ち着いてきた時、背後に視線を感じたレオンハルトは振り向き様にクナイを構える。

 

 

「ふふ、レオンさんそんな物騒なモノを人に向けちゃダメですよ」

 

 

灰色のショートカットで緑色のエプロンドレスを着た少女、シル・フローバ。

 

普段はあざとく飄々としているがいざという時は鋭いという何とも評し難い人物である。

 

 

「そんなに慌てて何かお探しですか?」

 

 

「シルさんには関係無いですよ」

 

 

リューの同僚であるシルを無関係と言うには些か疑問があるが変に話してしまえば弱味を握ったとばかりにパシリ出すに違い無いと警戒しているレオンハルト。

 

しかしシルは何処か見透かしたような顔でレオンハルトを見つめる。

 

 

「質問を間違えました、''誰をお探しですか?''」

 

 

知っているのだ、自分が誰を探していて何故探しているのか。

 

それを知った上で聞くあたり意地の悪い人間だと心の中で毒を吐くレオンハルト。

 

 

「知ってる癖に聞くなんて意地悪過ぎますよ」

 

 

思い切っり吐き出してしまっていた。

 

 

「ふふふ、私には何が何だか…………あ、そうだ。さっきリューが丘の方に向かって走ってましたよ?

 

早く帰らないとミア母さんに怒られるので失礼しますね」

 

そう言いながらレオンハルトの横を通り過ぎるシル。

 

その際に「お礼はシフト1日分で構いませんよ?」と仕事を押し付けてきたのは気のせいだと思いたくなったレオンハルト。

 

気が付けばシルの姿は見えなくなっているので心の中で礼を言ってダイダロス通りを駆け抜ける。

 

 

「丘って多分あそこだよな…………でも何でシルさんが知ってんだよ」

 

 

それは少し前にリューと見たオラリオ全体を見渡せる丘の事だろう。

 

しかし、あの場にいたのはリューとレオンハルトの二人だけだった。

 

話せば話すほど疑問が湧くシルに一抹の不安を抱きながら丘へと向かって行くレオンハルトだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしているんだろうか私は……………アレじゃレオンさんが困るだけだと言うのに………」

 

 

街であった想い人との遭遇は胸がときめくモノでは無く何か別の負の感情を感じたリュー。

 

隣にいたのは自分と同じく細長い耳をしたハーフエルフ。

 

自分の容姿に自信を持っている訳じゃ無いが勝てないと思った。

 

自分よりも身長が高く、自分よりもスラッとした長い足で自分よりも大らかな雰囲気に包まれている。

 

血を血で洗うように汚れてしまった自分とは真反対の人間に思えた。

 

レオンハルトはリューの汚れた過去を何とも思っていないがやはりそれを払拭出来ない………否、払拭などしてはいけない。

 

その罪科は身が朽ち果てるまで背負っていなければならない。

 

 

「早く戻らないとミア母さんにもシルにも心配をかける………しかしこんな顔じゃ戻れない」

 

 

涙で赤く充血して覇気の無い表情をしていては必ず何かあったとバレる。

 

そうなってしまってはまた迷惑をかけてしまう。

 

しかしポーションを飲んでも治癒魔法をかけてもこの情けなく砕けた顔と心の傷は治せそうにも無い。

 

 

「リューさん!!」

 

 

今最も会いたくない想い人の声がリューの鼓膜を響かせる。

 

 

「何しに来たのですか?私を追いかけてくる暇があるならあのエルフと一緒にいた方が有意義だ。

 

彼女を放ったらかしにして他の女を追うとは飛んだ色男になったものですね」

 

全力で走っていたのだろう、息切れし咳き込んでいるレオンハルトに対して罪悪感がこみ上げてくる。

 

 

「リューさんが心配だったんだ。

 

いきなり泣いて走り出すから…………

 

あ、エイナさんはエルフじゃなくてハーフエルフであとただのアドバイザーで別に彼女とかそう言うんじゃなくてどっちかと言うとお姉さんみたいな感じでっていうか何ていうか………………」

 

 

後半捲したてるように早口になっているレオンハルトが少し微笑ましく思い思わず笑みが溢れるリュー。

 

それに自分を心配してくれたという言葉だけで胸が暖まるモノがある。

 

 

「しかしよくこの場所が分かりましたね、全力で撒いたつもりだったんですが」

 

 

「最初は18層かと思ったけど方向が逆だっしリューさんと言われて思い付く場所を探しまくってここに着いたんだ。

 

リューさんにとってどうかは分からないけど俺にとってはリューさんと一緒に来た思い出の場所だから…………………」

 

 

自分で言った言葉が恥ずかしくなったのか頬を赤く染め俯向くレオンハルト。

 

 

「私にとってもここは想い出の場所である事は間違い無い。

 

だが…………私は相応しく無い、あのエイナとやらを追うべきだ」

 

 

リューとて馬鹿じゃない。

 

泣いて走り去った自分を追いかけてきて顔を赤らめ何か言いたそう俯いていたらこの後にレオンハルトが言わんとする言葉が分からない訳じゃない。

 

しかし、その言葉を受け取るには自分は汚れ過ぎてしまっていた。

 

 

「そうやって逃げるんですか?」

 

 

「は?今なんと…………」

 

 

「そうやって過去のことを理由に僕から逃げるんですか?

 

何がそんなに怖いんで「止めなさい!!」」

 

 

何故かレオンハルトの口が切れていた。

 

思わずレオンハルトを殴っていたのだ、そのせいかリューの右拳はジンジンとした痛みが少し残っていた。

 

逃げているつもりは無かった、逃げているつもりは無いのにそのワードに対して過剰に反応した自分に………レオンハルトを殴ってしまった自分に困惑してしまう。

 

殴られたレオンハルトはというと優しい目をしていた。

 

その色は憂いでも憐れみでもない不思議と心が暖まる色だった。

 

 

「リューさんの気がすむなら幾らでも殴ってください、幸い耐久値にはそれなりに自信ありますから」

 

 

レオンハルトもリューも同じレベル4の冒険者である。

 

格下ならまだしも同ランクの冒険者に殴られ普通な訳が無い。

 

止めろ、止めろ、止めろ、止めろ、止めてくれ。

 

どれだけ願おうとも拳はレオンハルトの胸を叩くばかり。

 

自分が何を考えているのか、何故彼を殴っているのか、何故止められないのか分からない。

 

涙が溢れると拳も次第に弱々しくなっていく。

 

ひとしきりき殴り終わると優しく抱き締められた。

 

羞恥のせいか何のせいか分からないが顔が熱くなるリュー。

 

「リューさんが何をしたのかは一応知ってます。

 

僕には貴女の恐怖も苦しみもどうにかしてやる事が出来ません。

 

その恐怖が、苦しみが貴女の犯した罪に対する罰だと言うなら一緒に受けさせてください!!

 

リューさんが怖いと思うなら僕が側にいて護ります、リューさんが苦しいと言うなら僕も一緒に苦しみます。

 

その分嬉しい時は一緒に笑いたいです。

 

だから…………………この先も僕と一緒にいてください!!」

 

 

「私は…………私のこの両手は薄汚れている、それでも貴方はこの手をとってくれるのですか?

 

私は色々な輩から恨まれています、もしかしたら無事に生活をおくれないかもしれい

 

それでも私を…………こんな私を貰ってくれますか?」

 

 

「もちろんですよ、リューさん」

 

 

幸せ、その感情だけが今体中を支配していた。

 

汚れ堕ちた自分の事も未だ思い出すあの時の感触や断末魔も彼となら何とか乗り越えられると思った。

 

普段はそんなに非現実的な事を考えないリューだが遠くの空で昔の仲間たちが祝福してくれているように思えた。

 

 

「痛いやないかこのドチビ!!」

 

 

「ボクは子供の色恋に首を突っ込もうとするのを止めてやったんだ残念女神!!」

 

 

「ヴェ、ヴェルフ!!押さないでよ!!」

 

 

「レオンハルトの奴もやるじゃねぇか!!」

 

 

「私も団長にしてもらいたい私も団長にしてもらいたい私も団長にしてもらいたい私も団長にしてもらいたい………………」

 

 

「新しい妹………?でも年上だから………」

 

 

「ちょ、ヘルメス様!!流石に今写真撮るのは不味いです!!」

 

 

「固いこと言うなよアスフィ、別にこれは観賞用に撮っただけで掲載用じゃないさ」

 

 

見知った顔、その他の神や眷属それに加え冒険者でも無い一般人もチラホラといる。

 

 

「てめぇら全員そこに直れゴルァァァァァァ!!」

 

 

レオンハルトが抱き締めていた手を離すと鬼のような形相で見物人を追い回し始めた。

 

かくいうリューもニマニマと笑っている同僚を追いかけ回していたそうな。

 

 

後日、リュー・リオンとレオンハルト・ヴァレンシュタインの熱愛報道が爆報オラトリアに掲載された。

 

それに加えブラックリストに名前を載せていた冒険者、疾風がリストから消され正式に冒険者に復帰する事が出来るようになった。

 

 

そして熱愛報道されてから五年後、純白のウェディングドレスに身を包み幸せそうにブーケを握りしめらリューと恥ずかしそうに顔を赤らめ頭を掻くレオンハルトのツーショットが載った写真が爆報オラトリアに掲載された。

 




リューさんのヒロイン感が出てるかどうか心配だな〜〜

ふぅ、なんか勢いだけで書きましたわ、…………………」


さて、突然というか何というか次回が最終回とだけ連絡しておきます。

次回作については未定ですが必ず載せるので楽しみにしていてください。、







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