剣姫の弟ですが何か 〜ジャガ丸君の好みは豚キムチ味〜   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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エイナ・チュールとジャガ丸姫

「いらっしゃいませにゃ!!」

 

 

緑のエプロドレスに身を包み出迎えてくれる猫の獣人。

 

アーニャといってレオンハルトと面識があるのだが……

 

「あっ!金髪野郎にゃ!お前、またエルフと来てるのにゃ、エルフ好きにゃのか?」

 

 

この通り口が悪いし、声がデカイ。

 

奥の方で皿が盛大に割れ、ミアさんの怒声が鳴り響く。

 

 

「何にする?好きなの頼んでいいよ。

 

今日は私持ちだから」

 

 

メニュー表を見ながらエイナがレオンハルトに聞く。

 

その後ろで金髪紐野郎にゃーと騒いでいるがレオンハルトは無視をする。

 

パスタを頼んだレオンハルト。アーニャと兄妹喧嘩のような喧嘩をしている所を見てエイナは笑っていた。

 

 

「お、お久しぶりですレオンさん……………」

 

 

少し遅れてレオンハルトの机の上にパスタが置かれる。

 

若葉色の髪に女神を彷彿とさせるその容姿、エルフのリュー・リオンだ。

 

 

「リューか久しぶりだな」

 

 

「それより、さっきのエルフ好きと言うのは…………」

 

 

「別に種族が好きって訳じゃねぇよ、ただ俺の周りには美人が多いってだけだ。

 

ただし、アーニャてめぇは別だ」

 

 

「にゃ、ニャンだとぉ!?」

 

 

サラダをつつくエイナを他所にアーニャと喧嘩をし出すレオンハルト。

 

 

「(まぁデートじゃないから何とも言えないけど………他の子と話し過ぎだよね……………ちょっと寂しいな)」

 

 

ハーフエルフであるエイナにとってリューは知り合いの王族エルフ、リヴェリアと何処か似ているような気もしていた。

 

 

「レオンさん、折角女性と二人きりで来ている、しかも相当な美人だ。

 

これを放ったらかしにするのは褒められたことじゃない。

 

すいません………出過ぎた事を言いました」

 

 

清涼感溢れる声音でそれだけを言い残し厨房へと去っていったリュー。

 

 

「(全く私は一体何をしているんだ。

 

これではレオンさんとの距離が縮まらない。

 

何でレオンさんの周りには綺麗な人が集まるんだ…………こんな考えを持つとはアストレア様が知ったら驚くだろうか)」

 

 

かつての主神に想いを馳せながらこんなのは自分らしくないと否定する。

 

リュー自身、レオンハルトの事を考えると舞い上がってしまい冷静な自分を保つ事が出来ないのだ。

 

だから、エイナと一緒にいるレオンハルトを見てドス黒い感情が湧いたのは事実であり否定するつもりもない。

 

だが、自分と似て尖った耳を持つ女性、エイナを放ったらかしにして何時もようにアーニャと戯れ飯にありつく。

 

その様子を寂しそうに見ているエイナを見たら腹が立ってしまったのだ。

 

自分の気持ちを代弁してくれたようで嬉しかったエイナだが去り行く時のリューの悔しそうな表情を見たら手放しでは喜べなかった。

 

 

「あっ、すいませんエイナさん……………知り合いが多いとどうも舞い上がっちゃって」

 

 

「今度から気をつけるんだぞ。

 

さてそろそろ時間だし帰ろっか」

 

 

既に支払いを済ませていたエイナがレオンハルトを連れ店の外に出る。

 

 

「エイナさん、今日は本当にありがとうございました」

 

 

ギルドも近くなった時にレオンハルトに呼び止められるエイナ。

 

 

「いいのよ別に、今度買い物に付き合ってくれたらそれでチャラにしてあげる」

 

 

レオンハルトは一見年下の様に見えないのだが一緒に行動すれば彼のそれは年相応のものと言える事が分かる。

 

彼が見た目に反して少年であるならば自分はお姉さんで居なければならない、余裕を見せてないと何かが持ってかれてしまいそうだったから。

 

今の自分は上手くお姉さんを演じられていられるだろうか。

 

そんな疑問が付きまとう。

 

 

「お詫びというかなんというか…………兎に角プレゼントです」

 

 

レオンハルトが小包をエイナに渡す。

 

 

「へぇ………レオン君がプレゼントかぁ………開けさせてもらうね」

 

 

小包から出てきたのはネックレスだ。

 

エイナの瞳と同じエメラルドグリーンという色をした石が付けられている。

 

 

「明後日誕生日というのをリヴェリアから聞いたから買って来たんです。

 

何時こうやってゆっくり出来るか分からないし……………そのネックレスは魔除けと幸運をもたらすという効果があるみたいなんで是非つけてください」

 

 

照れ臭そうに頬を掻くレオンハルトを見て心が温まった。

 

 

「ふふっ、ありがとレオン君」

 

 

ギルドの事務員とは多忙だ。

 

その多忙さ故に誕生日が近い事を完全に忘れていた。

 

普段は屈強な男たちばかり見て、書類に追われ、同僚のミスのカバーをする、そんな毎日で自身の中で大事な何かが忘れ去られていた。

 

目の前の少年はそれを思い出させてくれたような気がした。

 

 

「(あぁ、そっか。

 

私レオン君の事好きなんだ)」

 

 

ギルド事務員、エイナ・チュール。

 

自身の気持ちに気付いた一日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い、何してたの………」

 

 

「知り合いと飯食べてきた」

 

 

「今日は私と訓練する約束、してたよね?」

 

 

金色の長く美しい髪をたなびかせる少女、剣姫。

 

レオンハルトの姉でもある。

 

 

「訓練は別にいい、でもジャガ丸君まだ買って貰ってない」

 

 

「え?」

 

 

「お腹減った、作って」

 

 

「いやいや、作れるけどもこの時間にそんなもん食ったら太るぞ!?」

 

 

アイズの愛剣、デスペレードを突きつけるアイズ。

 

若干涙目で物欲しそうにしているその表情は男なら(特にベートなら)前屈みものだろう。

 

 

「分かった、分かったから落ち着けって!!

 

ジャガ丸君作るから落ち着けって!!」

 

 

「善は急げって言う、から早く作って」

 

 

その善はアイズの空腹を満たすという極めてどうでも良い善なのだがアイズを一旦空腹にしてしまうと大変な事になる。

 

昔、アイズのジャガ丸君をベートが勝手に食べた時アイズは暴れ回り屋敷を半壊させてしまった事がある。

 

その責任としてベートが止めに入ったがボロ雑巾のように、それはもう見てて可哀想になるくらいボコボコにされていた。

 

その様子を見た幹部以外のファミリアはアイズの事を裏でジャガ丸ジャンキーやら芋姫などと呼んでいるらしい。

 

 

「なら良い」

 

 

剣をしまい、レオンハルトの手を引っ張って調理場へと連れてかれたレオンハルト。

 

次の日、黄昏の館の厨房の芋と小豆が消えてしまいヴァレンシュタイン姉弟は母(リヴェリア)に半日近く説教されたそうな……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うん、ヒロイン候補全部出てないけどエイナさんのスタートダッシュが素晴らしいです。

最後の方のジャガ丸云々の話は眠さ故のおふざけです。

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