艦これの短編集   作:雷鳥

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なんか唐突にシュールなのが書きたくなったので。



【口癖艦隊コレクション】

 唐突だが、俺は転移者だ。転生者ではない。

 

 現実の世界で交通事故にあった俺はなんやかんやあって神様によって大好きだった『艦隊これくしょん』通称『艦これ』の世界に提督として転移させて貰った。

 

 既にその世界での戸籍もあり、生きる上で問題ない程の資金まであると物凄く至れり尽くせりな状態で逆に申し訳ないと思いつつも、俺は大好きな艦娘に会えると、意気揚々と鎮守府の門を潜り、そして提督の執務室、そこで初期艦に選んだ電と書いて『いなづま』と読む『なのです』という独特な口癖を持ったドジっ子が、笑顔で俺を迎えてくれた。

 

「なのです!(よろしくお願いしますね司令官!)」

 

「……んん?」

 

 ……思えばこの時にもっと深く考えていれば……こんな事にはならなかったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれからもう一年か」

 

 懐かしい夢を見た。

 

 この世界に着たばかりの初々しくも愚かだった頃の夢だ。

 

 慣れ親しんだ鎮守府の執務室。外からはカモメの鳴き声と共に駆逐艦の子達の楽しげな声が響いている。

 

 窓辺に立ってその声を聞いていると、扉がノックされた。

 

「じゃない(司令官、しつれいするわ)」

 

「ああ、雷か。入って来ていいよ」

 

 入出を許可すると、元気よく扉が開かれ、入って来たのは暁型の四姉妹だった。そう言えば今日は秘書艦は電だから補佐は彼女達か。

 

「ハラショー(おはよう司令官)」

 

「レディー!(おはよう司令官!)」

 

「なのです!(おはようございます司令官)」

 

「はいおはようみんな。今日はよろしくね」

 

 笑顔で彼女達に挨拶をして、電は秘書艦の席に、他のみんなは会議なので使う長方形の長いテーブルの方に座って、電が渡す書類をコピーしたり、資料の仕分けなんかを手伝う。

 

「じゃない?(司令官飲み物入れるけど何がいい?)」

 

「じゃあお茶で――」

 

「バーニングラーブ!(紅茶が私を読んでるネー!)」

 

 いつものように唐突に現れた戦艦、金剛に電と雷は苦笑し、響は呆れ、暁は驚きのあまり白目を向く。

 

「バーニングラーブ(ヘイ提督、良い茶葉手に入ったから私が淹れてあげるネー)」

 

「じゃない!(ダメよ金剛さん! 今日は私達が秘書なんだから!)」

 

 世話好きの雷と金剛の二人が笑顔のまま火花を散らし始めたので館内放送で他の金剛型の姉妹を呼ぶ。

 

「ひえー!(お姉さま流石に大人気ないですよ)」

 

「大丈夫です!(お姉さませめてお茶のお誘いはお昼にしましょう。ね?)」

 

「マイクチェック(さあお姉さま帰りますよ)」

 

「バーニングラーブ!?(NO~~~!?)」

 

 やれやれ帰ったか。

 

 比叡、榛名、霧島に感謝しながら雷からお茶を貰い、書類仕事の続きを行う。

 

 そして懐かしい夢を見たせいか、改めて思う。

 

 ……なんでみんな口癖でしか喋んないんだよおおおおおおお!!

 

 くっそ、一年かけてやっと気にしない無の境地に至ったのに昔のことなんて夢見てんじゃねぇよ数時間前の俺! タイムマシンがあったら殺してるところだぞ!

 

 そう。なぜかこの鎮守府、というか俺だけなのだが、艦娘の言葉が彼女達がよく使う言葉、つまり口癖としてしか聞き取れないのだ。

 

 じゃあなんで言ってることが分かるのかって? 脳に直接意味が文字として飛び込んで来るんだよ。文字通り『こいつ直接脳内に!?』状態なんだよ。

 

 これで脳内に浮かぶ文字だ彼女達の声だったらまだ救いがあったが、それも無い。

 

 この事実に気付いたのが電からの指示で他の艦娘を建造してからなのだからもう笑えない。

 

 ……神様の悪戯だろう程度で気にせずにポンポン建造した過去の自分を殴りたい。

 

 愛宕は『ぱんぱかぱーん』としか言わないし、曙は『クズ提督』としか呼んでくれないし天龍は『フフフ』と言ってこちらを切なくしてくる。

 

 まぁこの辺はいい。問題は一部の人物名を呼称する奴らだ。『北上さん』とか『千歳おねぇ』とか所構わずである。意味が解るとは言え勘弁して貰いたい。

 

 ああ、気にしないようにしていたのになぁ。

 

 そんな事を考えていると、また扉がノックされる。

 

「やりました(司令官、演習より帰還しました)」

 

「那珂ちゃんだよ!(遠征から帰還したよー!)」

 

「ああ。お疲れ様、加賀、那珂」

 

 入って来たのは演習に出していた第二艦隊の旗艦の加賀と遠征に出していた第三艦隊の旗艦の那珂ちゃんだった。そしてやはり彼女達も口癖でした喋らない。

 

 思えば昔は大変だったなぁ。

 

 一言二言に凄い長文の意味が込められているので、報告を纏めるのが凄く大変だった事を思い出し、成長した自分に対して物凄く複雑な気持ちになる。今では瞬時に脳内に送られてくる意味を理解し記憶できるようになってしまった。

 

「――なるほど。報告ありがとう。補給をすませたら今日の任務は終了です」

 

「やりました(了解です)」

 

「那珂ちゃんだよ!(はーい!)」

 

 そう言って対照的な二人は一緒に執務室から出て行く。それを見届けながら、そろそろ見回りの時間が迫っていた。

 

 ……ああ、大変だけどやらないとなぁ。

 

 正直執務室の外に出るのはキツイ。なんせあっちこっちから口癖が響き、その意味が脳内に飛び込んでくるのだから。

 

 ホント、なんで昔の夢なんて見ちゃったかねぇ。

 

 内心でボヤキながら、電に執務を任せて見回りへと向かい……外に続いている扉を開け放つ。

 

『まあそうなるな(よし今日も瑞雲の調子はいいな)』

 

『あらあら?(荒潮ちょっといいかしら?)』

 

『あら~?(何かしら陸奥?)』

 

『ビックセブン!(はははどうだ睦月型のみんな、これがビックセブンの力だ!)』

 

『不幸だわ!(姉さま見て、茶柱が立ってるわ!)』

 

『空が青いわ(良かったわね山城)』

 

『ぽい!(早く出撃したいっぽい!)』

 

『僕は大丈夫(はいはい。お呼びが掛かったらね)』

 

『クソ提督!(ちょっと待ちなさい漣!)』

 

『グズ司令官!(霰私のプリン食べたでしょ!)』

 

『何それ意味わかんない!(きゃっ!? 危ないじゃない!)』

 

 ……俺はそっと扉を閉じた。

 

 よし。とりあえず一回自室に戻って瞑想しよう。そしてまた悟りの境地に至るのだ。

 

 改めて特殊な世界で生きている現実を突きつけられ、俺は溜息を吐いた。

 

 誰か代わってくれないかなぁ。

 




さすがに全員分は考えられなかったので、特徴的な人達だけをピックアップ。オチとして最後の三人の怒涛の罵声の畳み掛けだけは決まっていた。

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