艦これの短編集   作:雷鳥

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私の中の那珂ちゃんのイメージ↓

『誰かの笑顔を見るのが好きで自分から笑い起こす為に馬鹿をやる空気の読めるアイドル』&『目立たないだけの実力のある武闘派』

というのを形にしようとしたらこうなった……どうしてこうなった!?



【鎮守府のNAKAさん】

 来たの最北の鎮守府には一人のアイドルが居る。

 

 鎮守府の司令官曰く『いや、あの子はアイドルというよりは8○3だと思う』と言って怯え。

 

 同僚の軽巡洋艦娘達曰く『とても強くて優しい子だよ。同じ軽巡艦として頑張らないと』と言って誇り。

 

 部下の駆逐艦娘達曰く『NAKAさんはNAKAさんよ』と言って信頼の眼差しを向ける。

 

 相手によって色々な顔を見せる北方のアイドルNAKA。果たして彼女の本当の顔とは一体。 

 

「――という訳で青葉、気になります!」

 

「……青葉さん長い。モノローグと言うか、前振りと言うか……でもでもアイドルのNAKAちゃんの事が気になるなら答えないとねキャハ☆」

 

 ご紹介が遅れました。私、大本営所属の重巡洋艦娘の青葉と申します!

 

 そして目の前にいるのが先程話題に上げた艦娘の間で話題の軽巡洋艦娘の那珂ことNAKAちゃんです。

 

 私は持参したカメラから手を放して手帳を取り出しつつ目の前のアイドルを観察する。

 

 瞳は大きな目で眉はどちらかと言えば太めだが綺麗に整えられている。

 

 栗色髪の毛は頭の左右でお団子に結われ、白いシュシュで留められている。

 

 肌は健康的な小麦色でオレンジと白を基調とした川内型特有の制服の下には黒のインナーとスパッツを履いている。アイドルとしては露出は控え目な方だろう。 

 

 そんな彼女は今、私の発言を聞いて嬉しそうに笑顔でウインクしいる。確かに可愛い笑顔だと思う。

 

「それでNAKAちゃんの何が聞きたいの?」

 

「ずばり! NAKAちゃんの素顔です!」

 

 私がずばり尋ねると、NAKAちゃんは『え~NAKAちゃんの素顔~困っちゃうなぁ』なんて言いながらちょっとウザイ位のオーバーアクションでこちらをチラチラ照れた表情で見詰めながら身体をくねらせる。

 

「どうでしょう? タイトルとしては『激録! NAKAちゃんの素顔!』というのを考えているのですが?」

 

「う~~~~~ん……ボツ!!」

 

「ボツ!?」

 

 NAKAちゃんは腕を組んで首をこれでもかと傾げながら、いきなり両手を交差させてバツ印を作ってこちらにに突き出してきた。

 

「だってだってNAKAちゃんはこれが素だし」

 

「いやいや、それでは証言と食い違いが多過ぎますよ。特に司令官が怖がっているのが気になります」

 

 その辺どうなんですか? と尋ねると、NAKAちゃんは良い笑顔で答えた。

 

「えへへちょっと着任時にね。カチンと来ること言われてNAKAちゃん頑張っちゃっただけだよ~キャハ☆」

 

 ……なんでしょう。先程までと同じ笑顔の筈なのに、青葉の『ヤバイよヤバイよ』センサーが反応しています。

 

「そ、そうですか。と、ところでNAKAちゃんはこの鎮守府の水雷戦隊の一部隊の旗艦を勤めていますが、作戦時もそんな感じで?」

 

「そうだよ~。だってNAKAちゃんが笑顔を止めたらみんなが不安になっちゃうからね。ああ、NAKAちゃんモッテモテで辛い! でも嬉しい!」

 

 そう言ってNAKAちゃんは立ち上がって両手を空へと向けて大きく広げてみせる。さ、さすがはアイドル、個性的な世界観を持っておられる!

 

「まぁ、そんなに気になるなら、みんなに聞いてみたらいいんじゃない?」

 

「みんなに、ですか?」

 

 NAKAちゃんは腰を下ろして椅子に座りなおすと、テーブルのコーヒー、意外なことにブラックの無糖を優雅に飲みながら、先ほどまでの子供のような可愛らしさではなく、落ち着いた笑顔を私に向けてそう提案してきた。

 

「NAKAちゃんはこれがありのままの姿だと思っているけど、人によっては違うだろうし。ならみんなから話を聞いて、共通点を見つける。その共通点こそが、NAKAちゃんの『素顔』って事になるんじゃないかな?」

 

 なるほど。それは確かに面白い理屈です。元々この鎮守府でのNAKAちゃんのお話を皆さんに聞く予定でしたから、私としても試みる価値はありそうですね。

 

「分かりました。では青葉は取材に行ってきますね。最後にまたお話を訊きますが、よろしいですか?」

 

「もちろんだよ☆ NAKAちゃんは戦闘中以外のファンへのサービスは断らないよ☆」

 

 私が立ち上がってそう申し出ると、NAKAちゃんはピースサインをしながらウインクして快く了承してくれた。

 

 ではまずはやはりここの提督さんに話を訊くとしましょう。

 

 

 

 

【提督への取材】

 

 は? 那珂がここに来た時の話……まぁいいか。

 

 私は元々は大本営勤務の新人提督だった。自分で言うのもなんだが、まぁ優秀な方だったよ。女性ではあるが、訓練校時代は男も倒すほどの腕前だった。

 

 そんな私に、本土防衛の一つである北方鎮守府を任せたいと指令が来た。選任はもうかなりの御歳だったからな。もちろん喜んだよ。人々の為に戦えることもそうだし、何より自分の部隊を持てるのが嬉しかったな。

 

 初旗艦は電を選んだわ。なんといか、あの子放っておけなかったのよ。大本営でもかなりのドジっ子で有名だったしね。

 

 って、話が少し逸れたわね。

 

 それで私はここに着任して、建造依頼を出したの。青葉は艦娘だから知ってるでしょうけど、同型艦は轟沈か解体で人間に戻さない限り建造はされないわ。私が依頼したのはとりあえず最低限の防衛のための駆逐艦と軽巡洋艦。

 

 そして送られてきたのが駆逐艦は綾波型の曙、潮。朝潮型の満潮、霞。そしてそれを率いる為の軽巡艦の長良型の由良、そして川内型の那珂だったわ。

 

 それで最初に挨拶に来たのが那珂だったのが、思えば悪夢の始まりね。

 

 実は私ね、訓練校時代の演習で一度川内型の神通を見てね。彼女のファンになったのよ。

 

 あの人カッコイイじゃない? 普段は物腰柔らかいのにいざ戦場では鬼のごとき苛烈さでさ。女の私でも憧れたわ。

 

『よし! 私が提督になったら絶対この子を部隊に入れる!』

 

 なんて思っていたのよ。運が良い事に先代の神通さんは寿退役で枠は空いていたし。で、送られてくるのが川内型だって知ってワクワクしてたのよ。

 

 で、入ってきたのが。

 

『どうも初めまして☆ 艦隊のアイドル! NAKAちゃんだよ~よっろしく☆』

 

 ……私ね、その、キャピキャピした女の子って苦手なの。うん、なんというか神通じゃないショックも重なってね……言っちゃたのよ。

 

「はあぁ……なによ川内型のハズレじゃない」

 

 って。うん、ごめなさい。人を外見とか言動で判断したのは指揮官失格よね。猛省しているわ。

 

 それでね。それを聞いた彼女、笑顔のまんまいきなり私に詰め寄ってね……私の後ろの窓を思いっきり拳で殴り壊したの。うん、そうよ。右ストレートが私の頬ギリギリを物凄い勢いで通り過ぎて行ったわ。

 

 彼女はガラスで傷ついた腕やそこから滴る血を気にもせずに私に笑顔でこう言ったわ。

 

『NAKAちゃんは~これから沢山戦って沢山怪我して~沢山痛い思いするの。でもね、そんなのみんなの笑顔を守る為ならどって事ないの。だから人を外見や言動で判断しちゃうような~提督でも従うよ――でもね』

 

 そう言ってあの子笑顔のまま薄目開けて言ったのよ。

 

『これから来る子達にまで同じ態度取ったら……NAKAちゃん何するか分からないよ?』

 

 てね。ええ一語一句間違いないわ。なんせ未だに私のトラウマで夢に見るんだから。正直ちょっとチビったわ。

 

 ……まぁそれ以来どうにも彼女には頭が上がらないというか、何かと色々弱いというか。彼女は彼女でその時の事をネタに私を脅すし。ね? どう考えても8○3でしょ?

 

 は? じゃあなんで解体申請しないのかって?

 

 ……そりゃ優秀だし……私としても色々駄目な部分を指摘してくれるし……今じゃこの鎮守府中核の一人だし……なんだかんだで優しいし……って何よ青葉その顔は! は? ツンデレ乙? 何それ何語?

 

 

【提督への取材終了】

 

 

 

 

 なんというか、テンプレのツンデレを見た気がしました。外見は長門さんみたいな武人な感じでしたのに、最後のあれはもうどう見ても乙女のそれでしたよ。

 

 同姓にまで惚れられる魅力の持ち主、ますます興味深い。

 

「さて、次は同時期に配属された駆逐艦の子達に聞いてみましょうか」

 

 

 

 

【隠れNAKAちゃんラブ勢(初期配属駆逐艦四人)への取材】

 

 あ、青葉さんだ。

 

 は? 何よまた来たの青葉。

 

 何か用? 見ての通りこれから昼食なんだけど?

 

 訓練時のNAKAさんの様子を教えて欲しいですって?

 

 ……怖いです。

 

 ……まあ怖いわよ。

 

 ええ。怖いわね。

 

 厳しいわよ。え? 意外? ま、普段のあの人の姿だとそう見えるでしょうね。

 

 NAKAさんに笑顔のまま『曙ちゃ~ん。隊列ずれてるよ。これで何度目? ねぇねぇ何度目?』とか言って詰め寄ってこられた時は本気で泣きそうになったわ。

 

 曙ちゃんその後『うっさいこのクソ軽巡!』なんていつもの調子で言っちゃってNAKAさんに旗艦にされて『ほら指示出さないと私達動けないよ~ほらクソ軽巡のNAKAちゃんは~そんな曖昧な指示じゃ理解できないよ』って言って散々いじり倒されたよね。

 

 曙、あなたあの時ガチ泣きだったわね。

 

 やめて! 思い出させないで!

 

 ……とまこんな感じよ。は? 他のみんなは何をされたかって?

 

 あ、満潮! 満潮のエピソードあるわ! この子捻くれていて普段は前になんて出ないくせに、実戦や訓練だとやたらと先走るからNAKAさんに笑顔で『満潮ちゃん何々そんなに沈みたいの? いいよいいよ。満潮ちゃんにとっては私達はどうでもいいんだね? いいよいいよ。NAKAちゃんもみんなも、満潮ちゃんが目の前で満足気に沈むのをガン泣きしながら見届けるから。それから一週間泣いて暮らして~鎮守府お葬式祭りが一ヶ月くらい続くくらい落ち込んであげるよ』とか言われて顔真っ赤にして泣いたのよ!

 

 それ以上言うなぁぁぁこの馬鹿ぼの!

 

 先に私の黒歴史をバラしたのはお前だこのアホ潮!

 

 ……えっと、それ以来満潮ちゃんは無茶な特攻はしなくなりましたから、あれはあれで良かったと私は思います。

 

 あら、他人事なの潮? あなたは逆にオドオドし過ぎて『潮ちゃんオドオドし過ぎだよ~。それはね、仲間を信用していないのと一緒だよ。だから今度からそれで艦隊行動が遅れたら……揉むから、その胸部装甲』って言われて一月くらい揉まれ続けたじゃない。まあその甲斐あってか、オドオドしなくなった上に更に大きくなったんでしょ? 羨ましいわ。

 

 ……青葉さん。霞ちゃんはNAKAさんと旗艦の座を掛けた演習で漏らしました。

 

 ファアアアアアアアアア!? ちょちょちょちょ潮!? あれはあの場のみんなだけの内緒にするって言ったじゃない!!

 

 知らないもん。

 

 ちょっ。青葉何が『その話詳しく!』よ! 駄目だからね! 絶対記事にしたら許さないからね!!

 

「「『ひぃぃいいごめんなさい! もう許してぇええええ!』」」

 

 このバカアオコンビがぁぁぁあああ! もう怒った。今日こそ決着付けてやる!

 

 望むところ。提督に演習の許可を貰いに行くわよ!

 

 一番負けた奴が明日のお昼の驕りよ!

 

 ……まあえっと、そんな感じです。今の私達があるのはNAKAさんのお陰ですね。ちょっとやり過ぎな感じですけど、私達の悪い所を直してくれて、生き残る可能性を上げてくれました。この鎮守府ではみんなNAKAさんの事を怖いと言いますけど、避ける人はいませんよ。

 

 何やってるのよ潮! あんたもやるのよ!

 

 うん! それじゃあ青葉さん。また。

 

 

【隠れNAKAちゃんラブ勢(初期配属駆逐艦四人)への取材終了】

 

 

 

 

 なんというか、凄いのを聞いてしまった。とりあえずガチ泣きとお漏らしの話は記事にしよう。タイトルは『毒舌勢、NAKAちゃんに惨敗。海に流れるしょっぱい雫。ポロリもあるよ』と言ったところでしょうかね。

 

 さて、今度は同僚の由良さんですね。

 

 

 

 

【由良への取材開始】

 

 あら青葉さん。まだ何か? 

 

 え? 戦闘中のNAKAさんの様子ですか?

 

 そうですね。一言で言えば……狂人、ですね。

 

 青葉さんも知っての通り、私達艦娘は艤装とのリンクが続けば腕が飛ぼう足が飛ぼうが修復剤でまた生やせます。

 

 それと我々は砲雷撃戦が主体です。もちろん人型を活かして接近戦も視野には入れてますが、基本は砲や魚雷での攻撃が基本です。

 

 NAKAさんは……余裕があるときは艦隊行動に重きを置いて行動します。ですが、一度戦局が敗色濃厚になると……敵に突っ込みます。

 

『駆逐艦のみんなはNAKAちゃんが作った隙をついて確実に仕留めるように。由良ちゃん指揮権を譲渡するからお願いね~。それじゃあNAKAちゃんのソロライブ、はっじまるよ☆ NAKAちゃんとっか~ん!』

 

 って言って単独行動を取ります。ええ。そうです、一人で派手に動いて敵の注意を引き付ける。所謂囮役であり被害担当艦という奴です。

 

 大丈夫なのかって? 大丈夫じゃありませんよ。実際NAKAちゃんは何度も腕や体の一部を欠損、目や顔も酷く損傷させます。

 

 ……それでも彼女は笑うんです。

 

『大丈夫だよ。こんなのすぐ治るし。それに私達より紙装甲の駆逐艦のみんなにやらせる訳にはいかないでしょ? かといって私達より遅い重巡洋艦娘や戦艦娘には囮は無理。むしろ攻撃に回って貰わないと詰む』

 

 正論過ぎて毎回何も言えないんですよ。

 

 一度私が代わりに囮役をやるって言ったらじゃあ腕試ししようかって話になって……ええそうです。ボコボコにやられました。

 

『NAKAちゃんに勝てないようじゃ囮なんて心配で任せられないよ。NAKAちゃんはね。必ず生きて帰る覚悟を持って囮役をやってるんだよ。その為に毎日鍛えてる。由良ちゃん、私を超えたいなら私の倍の努力と覚悟を持つんだね。もっとも、そしたら私はさらに倍の努力と覚悟を持って由良ちゃんを超えるんだけどねキャハ☆』

 

 と笑顔で言われてしまいました……その時に『あ、この人には敵わない』って思いました。それ以来私は彼女が被害担当艦として必要な訓練をするように、私は私で一刻も早く敵を撃滅させる為の訓練を続けています。敵をさっさと倒せば彼女への被害も減らせますから。

 

 とにかく戦闘中の彼女はとても怖いです。ですが同時にとても頼もしいです。勝てる勝てないではなく、この人が一緒なら生きて帰れる。そう信じさせられるだけのカリスマと実力を、彼女は備えていると私は思います。

 

 だから私も、いつか彼女の相棒になれるように頑張っている所です。彼女の相方ポジション、意外と競争率高いんですよ?

 

 

【由良への取材終了】

 

 

 

 

 

 ……まさか戦闘中の彼女がそんなだとは、先ほどお会いした時にはぜんぜんそんな風には見えませんでしたけど、まあそれは訓練の話を聞いた時も感じた事ですから今更ですね。

 

「……にしても、NAKAさんはいつも笑っていますね。あとはやたらと他人の為に体を張っているように思えます」

 

 どんな時でも誰かの為に笑う。これが彼女の『素顔』なのだろうか?

 

 私は結局当初と同じモヤモヤを抱きながらNAKAさんの部屋へと再度赴く。

 

 ドアをノックすると明るい返事と共に入室許可が下りたので扉を開ける。

 

「どうも青葉です」

 

「おっ帰り青葉ちゃん☆ ささ、座って座って」

 

 初めてお会いした時と同様に快く部屋へと招かれ、先ほど座っていた椅子へと勧められて座る。

 

「それでどうだった?」

 

「はい。正直に言ってさっぱりです。共通点は笑顔とか他人の為に行動している、位でしたね。正直、私にはそれがNAKAさんの素顔とは思えないんです。あ、いえ否定はしませんよ。もちろんみんなの為に頑張っているのも立派なNAKAさんの一面だとは強く思っているのですが、どうにも……」

 

 歯切れの悪い私に、NAKAさんは『なるほどね~』と言ってしきりに頷いてみせる。

 

「……ねぇ青葉ちゃん」

 

 そして一頻り頷くと、こちらに向き直り一言つぶやいた。

 

「どうしてNAKAちゃんをNAKAさん。なんて呼ぶようになったの?」

 

「―――」

 

 ……言われた瞬間……初めて私は自分の変化に気付かされた。

 

 そう言えば、どこからだ? 私がNAKAちゃんを『NAKAさん』なんて呼ぶようになったのは?

 

「青葉ちゃんが違和感を感じるのは『目の前のNAKA』があまりに違うからじゃない?」

 

『自分が見た事がある那珂と』

 

 ……その通りだ。私はこれでも大本営に所属していた。そこで何度か『先代那珂ちゃん』と会話したことがあった。

 

 確かに言動はそっくりだ。

 

 その笑顔も本物だろう。

 

 なのに何故か――私には目の前の相手が。

 

「作り物な気がしてならない?」

 

「――あ、あうぅ」

 

 心に思った事をそのまま告げられて言葉に詰まる。

 

 NAKAさんがゆっくりと近付いてくる。私はまるで蛇に睨まれた蛙の様に身動きがとれずに……その頬を引っ張られた。

 

「いたたたた!?」

 

「きゃは☆ もう青葉ちゃん驚きすぎ~それに反応が素直で分かりやす過ぎるよ~広報としてどうかとNAKAちゃんは思うな」

 

 そう言ってNAKAさんは笑顔を浮かべながら私の頬を引っ張るのを止めるとそのまま部屋に唯一ある窓の前まで移動し、こちらに背を向けたまま口を開いた。

 

「……昔、一人の艦娘と、その艦娘に助けられた人間が居ました」

 

 静かに放たれる言葉には、こちらに口を開かせるのを阻む鋭くも重い声色が含まれていた。

 

「しかし人間は助けられた時には既に肉体が限界であり、艦娘もまた肉体の損傷が激しく、もう持ちそうにありませんでした」

 

 NAKAさんはそこで言葉を切ると窓に手を触れ、窓に映る自分を見詰める。

 

「そこで艦娘はある一つの賭けに出ました。それは無事な人間の身体に自らの艤装を装着させることでした。今でこそ艦娘はクローンによる建造に置き換わっていますが、ほんの数十年前は『適正のある人間に艤装を付ける』方法を取っていました。艦娘は、その事を知っていたのでしょう」

 

 NAKAさんは今度は窓を開け、そこから吹き込む風に髪を遊ばせる。

 

「艦娘のその咄嗟の判断が功を奏し、人間は『艦娘』となってなんとか助かりました。しかし代わりに艤装を失ったその艦娘は肉体の修復機能が著しく低下し……死んでしまいました。しかし艤装には彼女の魂の残滓が残り、人間はその残滓から彼女の『夢』を知りました」

 

 NAKAさんは窓から上半身を軽く出して、夕暮れの空を覗き込んだあと、こちらへと振り返った。

 

「その後、その人間は『助けてくれた艦娘の夢を叶える為』に『正式な艦娘』となりました。そしてその艦娘の夢、それは――」

 

『大好きなみんなを笑顔にしたい!』

 

 NAKAさんは最後にそう締めくくると私の前に座り直す。

 

「……つまりNAKAさんはその――」

 

「青葉ちゃん」

 

 私の言葉を遮る様に、NAKAさんはウインクしながら私の口元を人差し指で抑える。

 

「これはただ、NAKAちゃんが考えた創作のお伽話。そしてそのお伽話はまだまだ続いている。正体を明かすのは無粋ってものだよ」

 

 そこでNAKAさんは笑顔で告げた。

 

「それでどうかな? 面白い記事が書けると思わない?」

 

「……はい。そのお話の結末、青葉は気になります!」

 

 私が笑顔で答えるとNAKAさんも笑顔で頷き、うん。その笑顔が見たかった! と言って最初に見せてくれた明るく暖かな笑顔を向けてくれた。

 

 

 

 

 その後、NAKAさんとは他愛無い話しかしなかったがとても充実した時間を過ごし、私は大本営に戻ったその足で事務担当の大淀さんにお願いして『転属願書』を発行して貰い、自室へと戻り、願書に必要な事を記入する。

 

 そんな私を姉妹艦であり同室の衣笠が訝しげな表情させる。私は彼女へと視線を向けながら答える。

 

「どうしたの青葉、戻って来た途端に『転属願書』なんて貰ってきて?」

 

「NAKAさんがとても面白い方でしたので密着取材をしようと思いましてね」

 

「一つの鎮守府に居たら他の鎮守府の取材が出来ないってごねていた青葉にそこまで言わせるなんて、そんなに面白い人なのNAKAちゃんって?」

 

「ええ。面白い……そしてとても魅力的な方ですよ。良かったら衣笠も一緒に転属しませんか? 重巡洋艦の数は少ないと言っていましたから今なら転属できると思いますよ?」

 

 できれば私も知り合いが傍に居ると助かるのでそう衣笠に尋ねると、彼女は腕を組んで唸る。

 

「う~ん。青葉がそこまで言うなら私も行ってみようかな。それでNAKAちゃんて結局どんな感じの人なの?」

 

 衣笠の言葉に、私は彼女の笑顔を浮かべながら、ウインクしながら答えた。

 

「艦娘想いの優しくも怖い、けれど誰よりも『夢の為に生きている人』ですよ」

 




二次でも最近はカッコイイ那珂ちゃんが増えて嬉しい私です。

ええ、私はファンですが……何か?

因みにうちの那珂ちゃん……何故か道中大破はするけどボス戦まで行くと高確率でボスに向かってクリって撃破してくれます。さっすが那珂ちゃん!

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