この話の次で終わりの予定です!
蓮太郎のまさかの一言で辺りはより一層空気が張り詰める
本来なら聖天子の政務を削りすぎない為早い段階で区切るのが暗黙の了解なのだが蓮太郎はそうしなかった
聖天子は驚きから覚め凛とした表情を作り蓮太郎に問う
聖天子「...聞きましょう」
蓮太郎「...俺はケースの中身を見た」
蓮太郎の言葉で聖天子は瞳を見開いた、周囲の人間は話の流れが見えず困惑した様なざわめきが生まれる
その中で聖天子程ではないがもう一人驚いている人物もいた
真莉「(そっか、見られていたか...失敗したな)」
真莉も少し驚きながらも真剣な表情を崩さない
蓮太郎は跪きながら続ける
蓮太郎「悪いとは思ってる、ゾディアックガストレアを倒した後ミサイルに教会が焼かれるまでの短い間に取り返したケースを開けて見たんだよ、その中には...」
蓮太郎は一旦区切り続ける
蓮太郎「...壊れた三輪車が入ってたんだ...どういう事だよ!何故!あれがステージVを呼び出す触媒になりえたんだ!いや、そもそも突如世界に現れた適性生物ガストレアってなんなんだ!十年前、この世界に何があったんだ!教えてくれ聖天子様!」
場にぶちまけられた喧噪はもはや収拾がつかないほど大きくなっていた、その中で真莉は目を瞑り思考していた
真莉「(そっか...あれから、十年か...色々変わるもんだな...っと、流石に止めなきゃな、ってかもしかして俺このために呼ばれたのか?はぁ)おら、蓮太郎、そこまでにしとけ」
まさかの横槍で蓮太郎は不機嫌に真莉を見る
真莉は意を介さずに続ける
真莉「お前だってコスプレ好きってのがバレるのは嫌だろう?聞かれたくねぇ事、言いたくねぇことだって誰にでもある、それこそ俺にだってな、そんぐらいわかるだろ?」
蓮太郎「っちょ!?バカ!?コスプレ好きじゃねぇよ!!」
周囲がまさかの一言で周囲は先ほどと違い笑いが生まれてきた
聖天子は蓮太郎と真莉に近づき二人に聞こえるぐらいの声量で言う
聖天子「七星の遺産は東京エリアの外、未踏査領域のとある場所に隠しておいたものなのですがその一つが今回奪われてしまったのです、あれは本来破壊した場合どうなるか予想がつかないものでした、ゾディアックはそれを取り戻しに来たのです、それ以上はお教えする事はできません」
蓮太郎「お教えできませんってオイ...」
そこまで言うと蓮太郎が何故か浮く、蓮太郎が驚愕する
蓮太郎「っな!?おい!?真莉!?」
真莉が蓮太郎の襟を掴み絶妙な力加減で持ち上げる、周囲の人間が驚愕の眼差しを向ける中真莉は蓮太郎に言う
真莉「おら、分かったろ?これ以上聞いたって無駄だ、今のお前じゃなんもわかんねぇよ、分かったところで何もできねぇけどな(ボソ)」
真莉が言うとなんも言ってこない蓮太郎に視線を向けると蓮太郎が若干青い顔をして空気を求め口をパクパクしていた
真莉「あ、わりぃ」
真莉は謝ると蓮太郎を解放する
蓮太郎はやっと吸えた空気を一心不乱に吸い真莉に怒りを向ける
蓮太郎「なにしやがる!?死ぬとこだぞ!」
真莉「はいはい、そこらへんも含めて行くぞ、外でその話は聞いてやる」
蓮太郎はまだ何か言いたげだったが溜め息を吐き真莉に続く
大扉に近づいて来た時後ろから聖天子の声が聞こえた
聖天子「...彼女たちイニシエーターは可能性です、知っての通り序列が向上すれば民警のペアには様々な特権が与えられます、擬似的な階級もそうですがその中でも機密情報のアクセスキーは魅力的でしょう、貴方は序列が千番なのでアクセスレベルは三です、そして並み居るライバルを倒しIP序列十番以内に入れば最高アクセスキーであるレベル十二が与えられます...里見さん、勝ち取りなさい、欠番の《巨蟹宮》(キャンサー)を除く十一体、現存するゾディアック八体全てを倒し、藍原延珠と共に序列の階梯を駆け上がるのです、その時里見さんは知るでしょう、自分が何者で何をなすために生まれてきたのかを、強くなってください、そして最強になるのです、貴方が里見高春(たかはる)と里見舞風優(まふゆ)の息子を名乗るなら、貴方に真実を知る義務がある」
蓮太郎は弾かれたように振り向き聖天子に向かって突撃する
しかしすんでのところで真莉によって地面に抑えつけられる
蓮太郎は暴れるが真莉に拘束されているため身動きが取れない、地面に横たわりながら蓮太郎は続ける
蓮太郎「どういう事だよ!どうしてここで父さんと母さんの名前が出てくんだ!」
いつまで待っても答えを返さない聖天子に蓮太郎は噛み付かんとばかりに吠える、すると聖天子は冷ややかな瞳を向ける
蓮太郎はそれに射すくめられ動きを止める
真莉はもう良いと判断し蓮太郎の拘束を解く
聖天子「この場で私に掴みかかれば不敬罪で処刑されますよ」
蓮太郎は背筋が凍るような殺意が部屋に満ちている事に気がつく
しかし次の瞬間その場にいた聖天子と蓮太郎以外の人たちが急激に青ざめる
蓮太郎が気付いたのは先ほどと比べられないほどに吹き出した殺気だった
蓮太郎はその殺気を放っている真莉に顔を移す
真莉はダルそうに、それでいて普段より若干低い声で言う
真莉「別にお前らがどう考えようと俺には一切関係ねぇ...だがなぁ、俺の友達を目の前で殺そうなんて考えてんだったら...俺が相手になんぞ?」
ッゴ!っと風がなびく様な錯覚を覚えるほどの殺気にあたりが更に青ざめる
真莉「蓮太郎、お前もそんな事でぎゃあぎゃあうるせぇ、こんなとこで問題を起こしてみろ、お前だけの問題じゃなくなんだぞ、天童社長や延珠、それと夏世にこれ以上迷惑かけるつもりかお前は?」
真莉の言葉でハッとした蓮太郎は歯を食いしばり握った拳を震わせながら手を下ろし大扉に走り体当たりして外に出た
残された真莉は頭をガジガジと掻き蓮太郎を追うため踵を返す
すると聖天子が真莉に言う
聖天子「古畑さん、里見さんのこと、よろしくお願いいたします」
聖天子はぺこりとお辞儀をする、それを横目で見ていた真莉は言う
真莉「言われなくてもそのつもりだ、友達ってだけじゃねぇ...それが高春と舞風優との約束だしな...まぁつい最近なんだがな、あいつがあの二人の子供って知ったのは...最後にこれだけは言っとくぞ?あんたは隠し事向いてねぇ、さっさと話した方が楽になるとは思うがね...そんじゃな」
真莉は最後まで傍若無人な態度を取り大扉から出る、ゆっくりと扉が閉まる、聖天子は目を閉じ思考していた
聖天子「貴方は一体何がしたいんですか?真莉さん(ボソ)」
真莉と別れた蓮太郎は天童の屋敷に来ていた、天童本家は東京エリア第一区の一等地に立つ豪邸で屋敷というよりカントリーハウスを思わせる巨大な洋風建築だ
幼い蓮太郎が引き取られ育てられたのもこの家だった現在蓮太郎は八畳一間に二人暮らしだし木更も本家を出て自立している、こうやってこの家に訪れるのも随分と久しぶりだった
蓮太郎は合鍵で中に入ると目的の部屋まで一気に上がる、途中で老年のハウスキーパーとすれ違う
彼女は蓮太郎を見ると
女「ぼっちゃま...なのですか?」
と呟き持っていたお盆を落としてしまう
蓮太郎は何かを言おうとしたが早くしないと奴が帰って来てしまうと思い顔を伏せ知らないふりをして目的の場所に急ぐ
やがて目的の部屋の前まで来るとXD拳銃を抜き歯と膝を器用に使いサイレンサーを取り付けて連続で発砲
蝶番を撃ち抜く、やはり義手が無いと不便だなと蓮太郎は思いながらサイレンサーを取り外し空薬莢を拾い集めるとドアを破って部屋に入る
中は広く暖かなカーペットと反面の壁を埋める書架、そして中央には大きな紫檀材の執務机があった
蓮太郎は手早く済ませようとそう思って机の引き出しを開け書類を探し始める
すると突如蓮太郎の携帯が着信を知らせる
知らない番号からの電話だった
蓮太郎は一瞬迷ったが出る事にした
受話器を耳に当てて待つと聞こえて来たのは...
???『やぁ、里見くん、こんにちは』
背筋がぞわりとした、蓮太郎は暴れだしそうな心臓を押さえつけて大きく息を吐いた
蓮太郎「...生きていたのか、影胤」
蓮太郎は足のあたりがむずむずして蛭子影胤を蹴り飛ばした時の感触が蘇るのを感じた
あの戦いの後直ぐにステージVが現れたのでその後どうなったのか知らなかったが
流石に生きているとは不覚にも思っていた
影胤『いやいや、なんとかね、友人に助けられてね、中々効いたよ、今はその友人が安静にしろというのでね、しばらくは仕事ができなくて困っている』
蓮太郎「人殺しの仕事か?これを機会にやめたらどうだ?」
影胤『いや、表の仕事さ、そのうちまたどこかで会う事になるだろう、今日はその挨拶だ、次に会う時は...負けないよ』
蓮太郎「...次に勝つのも俺だ、お前にはもう負けねぇ」
実際のところあれは相手の裏をかいた奇策中の奇策を山程用いて辛くも勝利した戦いだった、万全の準備を整えた影胤ペアに正面から勝てるのは自分が知っている中では恐らく1人...いや、2人だろう
影胤『もう一つ、そろそろ里見くんにも私の依頼主を紹介しておこうと思ってね』
蓮太郎の背後で撃鉄を起こす音がして反射的に蓮太郎は携帯電話を捨て後ろを見ずにXDをドロウ、音をした方に向ける
蓮太郎は覚悟を決めゆっくりと立ち上がりながら振り返る
そこには蓮太郎に銃を向けている天童菊之丞がいた
蓮太郎の鼻先にはマグナム弾仕様の二連発ピストルが向けられていた
蓮太郎のXDも回避不可能な距離でトリガーに指がかかっている
菊之丞「コソコソと賊の真似か?蓮太郎?」
蓮太郎「...もう帰ったのかよ?夜まで帰ってこないとばかり思ってたぜ...天童閣下」
菊之丞「ここでなにをしている?」
蓮太郎「証拠になりそうなものを探してたんだよ、けどもういい、本人に直接聞いたほうが早い、天童菊之丞...表立っては今回の事件、轡田(くつわだ)防衛大臣の暴走って事になってる、だが俺はそうは思わねぇ、今回の一連の事件の黒幕、それはあんただ、天童菊之丞」
菊之丞は眉一つ動かさなかったが引き金に掛かった手に僅かに力がこもるのを感じて脈が早くなる
菊之丞「木更の差し金か?」
蓮太郎は少し考える仕草を見せ答える
蓮太郎「...俺の友達に相談して二人で決めたことだ」
菊之丞「...あの小僧か、相変わらず碌なことをせんな...」
菊之丞のまさかの言葉に蓮太郎は言う
蓮太郎「っ!?あんた、真莉に会ったことあるのか?」
菊之丞「そんなことはどうでもいいだろう、それより私が黒幕か...何故私がそのようなことをしなければならない?私の目的が東京エリアの破滅だと思ったのか?馬鹿らしい」
蓮太郎「俺も最初はそこがわからなかった、けれど影胤がケースを奪ってステージV召喚のために未踏査領域に逃げ込んだ時、何故かその情報が組織的にリークされる寸前だったんだよ、もしそんなことになれば東京エリアに壊滅的なパニックに陥って誰にもメリットが無いはずなのに...」
菊之丞「貴様は答えを見つけたというのか?」
蓮太郎「ガストレア新法」
蓮太郎の一言で菊之丞の眉がピクリと動く
蓮太郎は続ける
蓮太郎「聖天子様が他の反対を押し切って捩じ込もうとした法案だ、呪われた子供たちの社会的地位を向上させ共存していくための法律、十年前の大戦中にあんたは奥さんをガストレアに殺されて以来筋金入りのイニシエーター差別主義だ」
そこまで蓮太郎が言った瞬間何の前触れもなく腹を蹴られ蓮太郎は地面に転がる
菊之丞は憤怒の形相で蓮太郎に拳銃を押し付ける
菊之丞「貴様に何が分かる!!」
菊之丞の怒声に反論を加えたのは蓮太郎では無く新たに現れた第三者だった