ブラック・ブレット 紅き守り手   作:フルフル真

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第15話

あの暗殺未遂から1週間ほど経過していた

 

あの後真莉が動ける様になった直後に反省会という名の対策会議が行われた

 

護衛ユニットのどこに問題があったのか明確にして次からの事件を防ぐため前向きに事件を見つめ直す...などという美しい会議であったならどれほど良かっただろうか

 

蓮太郎と真莉もその会議に出たが蓮太郎は失望の色を濃くし真莉も既に飽きて来たのか後ろの壁にもたれ船を漕ぎ始める

 

会議は『聖天子の帰りのルートに狙撃手が待ち伏せしていたのはどうしてなのか?』という責任の押し付け合いに終始したからだ

 

当然真っ先に責められるべきは保脇を含めた警護計画書を作成した聖天子付護衛官だったが保脇は会議の場で

 

保脇「こいつらが!!こいつらが犯人です!!」

と口角泡を飛ばしながら片隅の壁に背を預けていた2人を指差してきた

 

なんでも彼の言い分では『今まで一度としてい聖天子が狙われることはなかったのに、蓮太郎たちが雇われた途端、聖天子の暗殺未遂が起きている、ゆえに蓮太郎たちは暗殺者と内通している』とのことらしい

 

これは二つの意味でおかしな話だった

蓮太郎たちが依頼を受ける旨を電話で伝えた時『では、当日は聖居まで来てください』と事務官の一人に告げられた

そして当日聖居に行くとリムジンに乗せられ会議の場まで行き、帰りに襲われたのである

真莉に至っては会議の場の後少しして別の場所で戦いを行っていた

さらに言えば2人は護衛として雇われたにもかかわらず一切護衛に関するブリーフィングを受けてはいない、おそらく、蓮太郎たちをよく思っていない保脇たちが意図的に2人をのけ者にした結果だろう

 

皮肉にもそれが、蓮太郎たちに鉄壁のアリバイを証明してしまっている

百歩譲って蓮太郎たちが暗殺者となんらかの形で内通していたとしても護送ルートを知らない2人は暗殺者に教えるべき情報がないのだ

というより極論を言って仕舞えば真莉が本気で聖天子殺害を目論んでいるのならば護衛官や蓮太郎などこの場で瞬殺されている

 

当然蓮太郎は(真莉の事は言わずに)弁明したが途中何度も大声で保脇が蓮太郎の発言を遮った

「騙されるな!」だの「みなさんこいつの意見を聞いてはいけません!」だので始めてから言葉巧みに会議列席者を丸め込もうとする

ライバルを様々な手管で蹴落としてきたと息巻く保脇はさすがと言うべきか弁が立ち、酷いこじつけと屁理屈をそれらしく伝える能力には長けていた

 

一言で彼の言い分をまとめると『私は悪くない』であり、どうやら彼としては如何あっても蓮太郎たちが罪を被らないと我慢ならないらしい

 

会議の場で劣勢に立たされた蓮太郎を救ってくれたのは隣で眠っている男....ではなく意外にも途中で乱入してきた聖天子だった

 

聖天子「里見さんと古畑さんに依頼したのは私の意志であります、その里見さんと古畑さんを疑うという事は即ちわたくしの判断を疑うということ...何より保脇さん、東京エリアを救ってくれた英雄を犯人扱いするとは何事ですか!恥を知りなさい!」

とピシャリと言いつける

保脇はぐうの音も出ない様子で悔しそうに席に座った

だが彼が諦めていないのはその修羅に燃える執念深い瞳を見た瞬間にわかる

薄気味悪く笑いながら口の中で小さくブツブツと呟く保脇の視線は蓮太郎の背筋に充分以上に寒いものを走らせた

 

後で蓮太郎に同情的な職員から話を聞くと保脇は蓮太郎と聖天子の中を民警と国家元首以上のものであると勘違いしているらしい

はた迷惑な話だと蓮太郎は思った

 

 

 

 

 

 

 

「あぅぁ」

ベチャリ

 

という音が聞こえ蓮太郎の意識が戻ってくる

蓮太郎「...お前何個落とすんだよ」

 

蓮太郎が地面を見ると大粒のたこ焼きが3個ほど舗装路に墜落していた

 

蓮太郎は彼女...ティナ・スプラウトに呼び出され国定公園に来ていた

国定公園は燦々と陽光が降り注ぎ草木ともに風に吹かれ気持ち良さそうにしている

 

横目でベンチを見ると先程そこでなけなしのお金を叩いて買ったたこ焼きのトレイを持っているティナを見るといつぞやのパジャマと比べて随分と気合の入ったドレス姿だった

だが胸元のボタンを一段かけちがっており、髪留めの位置もおかしい

おそらく眠くてそこまで気が回らなかったのだろう

 

 

ティナはしばらく地面に落ちたたこ焼きを眺めた後、ゆるゆると顔を上げ至極真面目な表情を作った

 

ティナ「蓮太郎さん、このたこ焼き、私の口から逃げるようなのです、まだ、内部のタコが生きている可能性が...」

 

蓮太郎「ねぇよ、ちょっと貸せ!」

 

蓮太郎はトレイを奪い取ると爪楊枝で一個刺し無理やり口に放り込む

ティナは束の間驚いた顔をしていたが、もそもそと咀嚼し始めると徐々に表情筋が緩んでいき、なんとも幸福そうな顔になる

 

ティナ「れんたろうひゃん、もっと、くらひゃい」

 

ティナは半分ベンチから身を乗り出しながら目を閉じ、小さな口を開ける

なんだかキスをせがまれているようで一瞬どきりとするが、どちらかというと鳥のヒナに餌付けしているような感覚に近いなと思い直す

ひょいぱく、ひょいぱくと食べていくごとに幸福なオーラを発散して弛緩するのが面白くなり気付けば自分のたこ焼きも全部ティナに上げてしまっていた

 

蓮太郎「ちょっとじっとしてろよ」

 

蓮太郎はハンカチを出してソースまみれになった口を拭こうとするとティナら目を細め顔を上げ蓮太郎のされるがままになる

すると後ろから声が聞こえた

 

???「これは事案か...とりあえず通報しとくか...お前んとこの社長に」

 

蓮太郎「それはやめろ!!...って、真莉?何してんだここで?」

 

後ろにいたのは真莉だった

 

真莉「俺が公園にいちゃまずいのかよ...って俺が好き好んで公園にいる様子なんて想像できねぇな...んなことより何やってんだお前?」

 

蓮太郎「ティナにここら辺を案内してたんだよ、そんでここでたこ焼き食ってたんだよ」

 

真莉「へぇ、お前金ねぇのに良くやるな...さて、確かティナ・スプラウト...だったっけか?久し振りだな」

 

ティナ「はい、お久しぶりです、真莉さん」

 

ティナは真莉に挨拶する、真莉はティナをじーっと見ている

ティナは首をかしげながら真莉を見る

 

ティナ「どうしました?」

 

真莉「ん?あぁ、わりぃ、何でもない、前回のパジャマとは大きく違ってたからな、ちょっと見とれてたわ」

 

真莉のまさかの言葉にティナはちょっと固まり次第に頬を染め俯いてしまった

 

真莉「...俺なんか言ったか?」

 

蓮太郎「お前...まぁ良いか」

 

真莉と蓮太郎が喋っていると無機質な音が響く

ティナの持っている携帯が鳴ったようだった

ティナは画面を見ると急に恐ろしいまでに強張った

 

蓮太郎「お、おい」

 

蓮太郎は心配になり手を伸ばすがそれをすり抜けティナがベンチを飛び降りる

 

ティナ「蓮太郎さん、真莉さん、私、もう行かなきゃ」

 

ティナはこちらの返事を聞かずに2人に背を向ける

 

蓮太郎「お、おい!待てよ!」

 

なぜか蓮太郎はとてつもない不安に駆られて声をかけると彼女は半分だけ振り返る

風が強く吹き、あたりの木々を強く揺する

ティナは金髪を抑えながらうっすらと笑った

 

ティナ「また会いましょう、蓮太郎さん、真莉さん」

 

丁寧に一礼して去っていく彼女の背を2人は見ていた

 

 

 

 

 

 

ティナは国定公園を歩きながら折り返して電話をかける

 

『遅いぞ』

 

ティナ「すみませんマスター、どうしても電話を取れない状態にありました」

 

マスターと呼ばれた人物は溜息を吐く

ティナ「それで?」

 

『次の聖天子の警護計画書が流れてきた』

 

ティナ「早いですね」

 

てっきり二回目は警戒されて計画書が漏れてくることはないと諦めていただけに拍子抜けした、よほど無能な人間が聖天子の側近にいるのだろう

 

『我らの依頼主は東京エリアに逗留してる間にカタをつけたいとお望みだ』

 

ティナ「しかしまたあの民警が邪魔しますよマスター?」

 

『奴らの正体も分かった』

 

ティナ「本当ですか?」

 

ティナは携帯を強く耳に押し当てた

 

『天童民間警備会社というらしい、また次の会議まで少し時間がある、今度も邪魔されてはかなわんよ』

フッと彼女の主人が笑った

 

『ティナ・スプラウト、次の任務を伝える...天童民間警備会社社長、天童木更を殺害せよ』

 

ティナ「はい、マスター」

 

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