ブラック・ブレット 紅き守り手   作:フルフル真

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本年度最後の更新になります!

長らく待たせて申し訳ございませんm(__)m

今年はだいぶ忙しい年でした...
来年はなんとか更新日を増やして皆様に楽しんでもらえるように頑張ります!!

それでは皆様良いお年をお迎えくださいm(__)m


第21話

聖天子「そんなことがあったのですか...」

 

車中、聖天子は膝の上で上品に手を重ねると顔を伏せた

 

聖天子「すみません、良かれと思ってあなたがたに依頼をしたのですが...まさかこんなことになるとは...」

 

延珠「お主、そんなこと気にすることないぞ!依頼が来た時木更はカンテンの雨が降ってきたみたいで嬉しかったと言っていたしな」

 

延珠だ、上手なフォローである...『干天の慈雨』と『カンテンの雨』を間違って使っていなければの話だが...するとその横から声が聞こえた

 

 

夏世「延珠さん、それはもしかして干天の慈雨と言いたいのではないでしょうか?いや、まぁ確かに延珠さんの例えでも間違ってはいませんけどね」

 

I.Q200を超える頭脳を持つモデル・ドルフィンのイニシエーター、千寿夏世だ

 

蓮太郎も頷きながら合皮のシートに背を深くもたせかけながらその尻馬に乗る

 

蓮太郎「延寿の言う通りだ、ウチとしてはきちんとリスクこみで金をもらってるんだからアンタが気にすることなんて何もねぇよ、真莉はどう思ってるかはしらねぇけど、それに建物は保険もおりそうだしな...ただ、保脇は俺と真莉が犯人と通じてると思ってるからやりにくいったらねぇけどよ...」

 

聖天子「犯人と通じているんですか?」

 

聖天子が微笑を浮かべながら打ち返してきて蓮太郎は口をつぐまざるを得なかった、通じてはいないが俺も真莉も知り合いだ、と言ってらこの国家元首はどんな顔をするのだろうか...

 

今日の第二非公式会談は河岸を変えて料亭で行われ、時刻は午後八時から深夜までのスケジュールになっている

現在の時刻は午後七時半

 

前回の調子から考えると、今回の会談も実りあるものになるとは思えなかったが、それは護衛の領分を超えているので蓮太郎も真莉も口を挟んだりする事ではない

 

延珠「蓮太郎、上手くいくかな?」

 

延珠の期待と不安が入り混じった瞳を見てから前方に囮のリムジンが走っているのを確認し最後に首をめぐらせて車内を見る

 

蓮太郎「どうだろうな」

 

聖居の職員のものを借り受けたバンは、サスペンションがへたっているのか揺れがひどく、間違ってもリムジンの乗り心地と比べられるものではないが、特に聖天子は不平を述べるでもなくちょこんと座っている

 

先日、木更のお見舞いのあと真莉の家で夜通し作戦会議をして土壇場で聖天子の乗る車を変えようと二人で話し聖天子にそれを提案した蓮太郎だった

 

それも信用できそうな聖天子の側近のいる目の前でいきなりだ

側近たちは最初、目を剥いてこちらを見た、どうやら聖室の貴人を一般乗用車に乗せるという提案自体が信じがたいほどの非常識なものだったらしい

 

だが、常識的な奇策は奇策たり得ない、非常識であればあるほど、ティナへの目くらましには効果的な筈だ

今回の警護計画書の漏洩は聖居内に裏切り者がいると考えるのが妥当だろう

 

裏切り者が、計画書を作成している聖天子付護衛官だった場合面倒なことになるが...そうでなければ早晩逮捕されるに違いない...と言うよりそうでなければすぐに真莉に捕まるだろう

真莉は依頼があった後からずっと聖天子の周りの事を全て調べていた

 

すでに内務調査班も動き始めて聖居内の情報リーク者を洗い出そうという動きがあるらしい

犯人さえ捕まって仕舞えばほんの少しだけ肩の力を抜いて護衛できるのだが...

 

蓮太郎はそこで嫌な人物の顔を思い出して拳で膝を叩く

 

蓮太郎「.....斉武宗玄、あいつが犯人に決まっている」

 

聖天子の頭がピクリと動き、悲しそうな表情で振り返る

 

聖天子「里見さん...それは....」

 

蓮太郎「証拠はまだ出てこない、でもあんたが死んで一番得するやつは誰かって考えるとあいつ以外考えられない...大体、奴はなんだって非公式にコソコソと東京エリアに来てるんだ?そこからしておかしいし、あんたはその会談の帰りに襲われてるんだぞ、それにおかしいと言えばもう一つ」

 

蓮太郎は一旦言葉を切って聖天子の瞳を見つめた

 

蓮太郎「聖天子様、アンタの側近はみんなクズだ、警護計画書が何処から漏れたかっていう責任のなすりつけあいばかりするくせに肝心の防止策は講じない。そもそも奴らはどうして暗殺の依頼人は誰かって話はしないんだ?これは、ちょっと考えればわかる筈だ、けれど本当に斉武が今回の事件の黒幕だとあばいてしまったら、一歩間違えればエリア間の戦争が勃発する、あいつらはそれを考えるのが怖いんだ」

 

高い唸りを上げて車が横を通過し、ヘッドライトの光が後ろに流れていく

話の雲行きが怪しくなってきたのを悟った運転手は、運転席で座りが悪そうに尻をもぞもぞとさせている

 

聖天子は目を瞑る

 

蓮太郎「それにあの時の襲撃、真莉は別の場所で、それも四人を相手取って戦っていたみたいだ、俺としてはこれ以上あいつに負荷を掛けたくない」

 

聖天子はやがて目蓋を開けるとこちらを見返した

 

聖天子「里見さん、前半の話は私の胸にだけ止めておきます、決してそのようなことを他言しないでください...古畑さんの件はこちらも...いえ、私自身も考えています、しかし私自身も古火田一族のことを調べてはいましたが...分からないことが多く、彼にしか対処が出来ないのも現状なのです...」

 

言外に意味するところを知って、蓮太郎はおもわず立ち上がりかけるが、聖天子はゆっくりと首を振る

 

聖天子「私は仮にも国家元首です、証拠もないのに会談を中止することなどできません、里見さん、これは仕方のないことなのです」

 

蓮太郎「殺されるぞ!」

 

聖天子「それが天の選んだ私の運命ならば、いたしかたありません、私は私の中の神に従います」

 

蓮太郎は突如灼熱の感情がこみ上げてきて気が付けば聖天子の胸ぐらを掴み上げ拳を振り上げていた

 

延珠「っ!?蓮太郎!」

 

夏世「それをしてしまえば貴方も、それにお兄さんもこの依頼クビになります、やめてもらえませんか?」

 

夏世は冷静に、延珠は慌てて取りなすが蓮太郎はギリギリと歯を食いしばりながら握った拳を震わせる

されるがままの聖天子は静かに蓮太郎の瞳を覗き込んでいるだけだった

ぎゅっと目を瞑る

どれくらいそうしていただろうか、蓮太郎は聖天子を突き飛ばしムシャクシャしながらどっかりと腰を下ろす

 

夏世は突き飛ばされた聖天子を受け止めほっと一息ついた

蓮太郎はどうしてこうも自分の周りにいる女は馬鹿ばかりなんだろうと、真が強いにもほどがある、羨望せずにはいられないではないかとそう思った

 

蓮太郎「俺は守るぞ、アンタをみすみす殺させるために護衛を引き受けたわけじゃない、俺が無理でも真莉がいる、真莉だって俺と同じ気持ちだ」

 

聖天子「.....ありがとう、里見さん.....ところで古畑さんは何処に?」

 

蓮太郎「あいつなら多分そこらへん走ってると思うぜ」

 

聖天子「そうですか」

 

それからしばらくして、バンは高級料亭『鵜登呂亭』(うとろてい)に着く

率直して料亭内を検索・消毒していた護衛ユニットが車を誘導して、料亭の横につける

蓮太郎はスライドドアを引くと、聖天子の方に手を伸ばす

 

蓮太郎「さ、お姫様、いくぜ」

 

聖天子は反射的に「私はお姫様ではなく.....」と口を開きかけるが、恥ずかしそうに俯くと黙って蓮太郎が差し出した手を取る

車外に出てやや冷たい空気に身をさらしながら料亭入り口に視線をやって、そこで蓮太郎は顔をしかめた

出迎えてきたのは、面倒なことに憤怒の形相をした保脇だった

 

保脇「里見蓮太郎!!貴様これはどういうことだ!何故聖天子様をこんな粗末な車に乗せている!!」

 

蓮太郎「...車を変えた、リムジンじゃ危険だと判断した」

蓮太郎は無言で保脇を睨む、お前の能力が信用出来ないと暗にそう言っているようだった

 

それに気が付いているのか保脇は歯をギリギリと食いしばる

 

保脇「貴様ぁ....貴様のような勘違いしたスタンドプレイヤーがチームを崩壊させるのだ!貴様のようなクズが...」

 

保脇がそこまで言うと一瞬、一陣の風が吹くすると近くの木から声が聞こえた

 

真莉「その提案を決めたのは俺だ、テメェらみてぇなアホどもに護衛プラン任せると色々と穴だらけになりそうなんでな」

 

真莉はそこまで言うと木から飛び蓮太郎の近くに着地する

 

真莉「よ、蓮太郎、悪りぃな押し付けて」

 

蓮太郎「気にしてねぇよ」

 

保脇は無視されてるのに腹を立てたのか怒り余った保脇が腰の拳銃に手をか伸ばしかけるのに応じて蓮太郎も牽制の為腰のXDに手を掛ける

真莉の後ろに控えていたアカネは眼を紅く染め腰を低くしすぐにでも飛び書かれる体制をとり

延珠も眼を紅く染め靴の裏で路面をにじる

 

突如、アカネと真莉は顔をパッと上げ周囲を見渡し始めた

蓮太郎もその異変に気付き耳を澄ませた、すると虫の羽音めいた音が聞こえてきて蓮太郎は弾かれるように辺りを見渡すが何も見つからない

 

まただ...

前回の狙撃事件の時にも聞こえてきた虫の羽のような音、あれは一体.....

 

だがそうやって神経を張り詰めていたことが結果的に、視界の端...巨大ビルの屋上が明滅するのを先んじて捉えることに一役買った

 

背筋がゾッとする、見間違えようもない、先日と同じ狙撃の銃口炎

 

真っ先に動いたのは真莉

真莉は聖天子を守るように聖天子の前に立ちはだかりそれにコンマ数秒遅れて蓮太郎が叫びながら聖天子の腰に体当たりをして上体を倒す

 

次の瞬間、体に鋭い痛み、真莉は飛来してきた銃弾を蹴りで僅かにずらす、蓮太郎の身体真横を対戦車弾の熱せられた銃弾頭が擦過するのを感じる

 

一拍置いて、場に狂乱がぶちまけられた

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