ブラック・ブレット 紅き守り手   作:フルフル真

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第31話

吹き飛ばされた真莉は廃ビルにぶつかり辺りに砂塵を撒き散らしながら飛んでいく

ようやく止まり真莉は口の端から血を流し倒れ伏す

 

(っち、やっぱり強いな...)

 

真莉は身体を起こさずに思考する

しかしあちこちからくる鈍痛に思考も上手くまとまらずにいた

 

(どうする...このままじゃ勝てる戦いも勝てない.....ってかアカネは大丈夫なのか?)

 

などと今は関係ない思考までも生まれていた

 

ざり、ざり

 

とこちらに歩いてくる足音が真莉の耳に届く

真莉は身体を仰向けにし上を見る

上を見たところで廃ビルのコンクリートや剥き出しの鉄筋しか見えず更には先程真莉が突っ込んだときの衝撃からか上からパラパラと色々な物が落ちてきている

 

(さて、どうするかな...やっぱり現状じゃ勝つのは無理なのかねぇ...)

 

真莉は大きく息を吐きついでに口の中の血も外に吐き出す

 

やがて足音は大きくなり恐らく廃ビルの前で停止した

和眞は戦闘経験が豊富な男だからかいくら相手が隠したであろうとも手を抜く事はない、それ故に本来ならば生まれるであろう僅かな隙ですら容易に見せる事はない

 

それ自体は真莉も当然知ってはいた、幼き頃は真莉も古火田一族にいたし戦闘技術も父である和眞にしっかりと叩き込まれている

しかし叩き込まれているからこそ真莉の技術は和眞が教えたことでもあるので和眞自身には通じない

真莉はそれについて悩んでいた、実際のところ、和眞よりも真莉の方がスピードの面では上だ、しかし和眞はそれを自身の戦闘経験からくる予測と真莉の僅かな癖から行動を読み先に手を打っている、それ故に真莉の攻撃は全て受け流されてしまっていた

 

 

《やっぱりボクも動こうか?》

 

不意に真莉の頭の中にもう一つの声が響く

その声は鈴のなるように高く、それでいてハッキリとした発音で聞こえてくる

 

(.....悪りぃ、予想以上に受けすぎたか?)

 

真莉はその声に語りかける、その声の主、真莉の中に住まう世界を滅ぼしかけた11体のガストレアとは別のガストレア、本来ならば...いや、世間一般には欠番扱いとして存在しないことになっているもう一体のステージVのガストレア

 

ステージV、《寄生型》ゾディアック・ガストレア、《キャンサー》

 

《いや、別にボクは良いんだけどさ...いや、良くもないか!キミがここでもし、死んでしまうとボクまで死んじゃうんだ、それだけ分かってればボクも直接いうような事はしないんだけどさ〜》

 

キャンサーは飄々とした態度で真莉に問い掛ける

 

キャンサーはその能力上、宿主が死ねば死んでしまう、しかしゾディアックガストレアとしての再生能力を宿主に与えるため宿主が死ぬ事は本来ならば中々にないことである

 

しかし今回の件はまた別で真莉は今、自身の力のみで戦っている

 

本来真莉の戦闘パターンは圧倒的な再生能力と驚異的な速度、強靭なパワーでの一撃離脱の戦闘スタイルである

 

キャンサーの恩恵である再生能力はあるもののそれに対応しきる体力を人間は持ち合わせていない、故に真莉は直接の打ち合いは今まででほとんどやっては来なかった

 

しかし今回は事前にキャンサーに説得を行いキャンサーの力を使わずに戦うことにしていた真莉は当初の予定とは異なる展開になってしまい少々自分に対しイラつきというものを覚えていた

 

キャンサーもそれが分かっているため今までで危険でも助言をしてこなかったが危険と判断し真莉に語りかけるまでに至っていた

 

《それで?分かったかい?現状をさ?》

 

「.....悔しいが...お前の言うとおりなのかもしれないな.....」

 

ボソリと、真莉の呟いた言葉はスッと消えていった

 

「悪い、キャンサー...もう、ワガママは終わりだ、今はそう....しっかりと聖天子を守らなきゃいけねぇんだもんな....」

 

真莉は何かを決意し目を開けるその目にはもう迷いは見受けられなかった

 

《それじゃあ行くんだね?本当に良いんだね?》

 

キャンサーは最終確認をしてくるが真莉はもう起き上がり始めていた

それを感じ取ったキャンサーはもう何も言うでもなく真莉の中深くに戻っていった

 

「あぁ、行くぞ...相棒」

 

《うん、それじゃあ行こっかね〜〜》

 

真莉の眼が黒から徐々に紅蓮に染まりだす、そしてその眼は呪われた子供たちの様に紅蓮に染まった

真莉の眼からはもう既に先程までの迷いは存在しなかった

 

 

 

「!?...?ようやく...遊び飽きたのか?真莉」

 

真莉の目を見て警戒の色を強める和眞と榛名

和眞は左腕を引き右拳をグッと握る

榛名は自身の持つ二丁の銃の狙いをしっかりと定めいつ来ても対処できる様に構えていた

 

「遊び...か、まぁ、お前からすれば遊びなのかもな...だがな、これは俺の、俺個人の問題だしな...でももう終わった、結論は出たしな」

 

真莉の言葉に2人は怪訝な顔をみせる

 

「結論...貴方はもう私たちに勝てないって事?それともまだ私達に勝てる考えでもあるの?」

 

榛名は警戒しながら問い掛ける

 

「あぁ、俺だけじゃお前らには勝てないってのが分かった」

 

真莉の言葉に流石の和眞と榛名も驚愕に目を見開く

 

今まで何を言っても自分の敗北を疑わなかった真莉がこの戦いで急に自分では勝てないと言い出したのだ、驚愕するのも無理はなかった

 

榛名は安堵の息を吐きだす...が

 

「だからこそ、俺《たち》でお前らを倒す事にする」

 

ダァァン!!

 

「っ!?」

 

「っきゃ!?」

 

突如銃声が鳴り響き何処からか飛んできた銃弾が榛名の左手にあった銃を粉砕した

 

「狙撃だと...何処から!?榛名!無事か?」

 

「え、えぇ、私は大丈夫...でも、この狙撃って」

 

榛名の元へと動いた和眞のその隙を真莉は見逃さなかった

 

「戦いの中での余所見は何やられても言い訳できねぇぞ」

 

「っ!?」

 

和眞はほんの僅かな隙により真莉は今まで出来なかった和眞の懐深くに一瞬で入る

真莉はそのまま左足を思いっきり踏みしめ和眞を蹴り上げる

 

「《空蹴牙》(くうしゅうが)」

 

真莉の蹴りは和眞の顎をしっかりと捉える...が

 

「(っち、ズラしたか...)」

 

《あのタイミングでズラすのは至難の技なんだけど〜...ボクもやりあった時に全てズラされてたからね、ここからだよ、分かってる?》

 

「(分かってる)」

 

空中で態勢を整え着地する和眞

真莉は追い打ちを掛けずにバックステップで距離を取った

榛名は先ほど銃撃を受けた方角を向いてジッとしていた

その目には先ほどよりも驚愕に染まっていた

 

「まさか....なんであなたが....朱音」

 

榛名が見ていたのは廃ビルの中

その中からの狙撃だと分かった榛名はジッと見ていた

すると狙撃した人物が出てきたのだ、その人物は...本来は相手方にいるはずの少女

髪はストレートで真莉や和眞の様に紅蓮に染まっており目には迷いのない目をした少女

 

古火田朱音がライフル銃を担ぎこちらを見下ろしていたのだった

 

「(来たか...こっちに来てないって事はあいつはあっちに行ったんだな...ならアカネは無事だろうな...さて)ここからが本番だよな、古火田家当主、古火田和眞!」

 

真莉は和眞に再び突っ込んだ




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