ブラック・ブレット 紅き守り手   作:フルフル真

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遅くなりました!!

今回なんか駆け足になってしまった感が...




第33話

 

 

(なんだ?雰囲気が変わった?)

 

和眞は警戒を強めた、先ほどまでの真莉とは何かが違う事を瞬時に見抜き一定の距離を開けた

 

真莉はその場で数回ジャンプして何かを確かめているようだった

 

(.....ふ、ここまで警戒をしたのはいつぶりだ...その相手が実の息子とはな....真莉、お前は何処まで.....)

 

和眞は視線を一切動かさずに真莉を見つめる、いつ動かれてもすぐに反応出来るように体全体をリラックスさせる

 

(っ!?)

 

ぶん!!

 

突如和眞はその場でしゃがみこむ、それは和眞自身も予期していなかった動きだった

和眞は真莉を確かに見ていていつでも上にも下にも後ろにもそれこそ左右にでも避ける準備は出来ていた

 

だがそれでも、それでも和眞がしゃがみ込んだのは余裕を持っていたからではなく無意識の中での行動であった

現に和眞の顔は驚愕に染まっていた

 

(見えなかったわけじゃない......だが....速い)

 

先ほどまでの速度に慣れていたからではなく、そして比喩でもなく真莉の速度は和眞の反応速度を僅かに上回ったのだ

 

和眞が避けれたのは長年の経験とその類稀なる戦闘センスによるものだった

その二つが瞬時に脳に指令を与えしゃがむという電気信号を体に送ったのだった

 

和眞はその場からバックステップで離れ真莉から距離をとる

 

「.....驚いたな、まだ本気ですら無かったのか?」

 

和眞は内心に湧いて溢れてくる疑問に内心混乱しながらもそれを悟られないように真莉に軽口を言う

 

「.........」

 

「.....真莉?」

 

しかし真莉から帰って来たのは無言だった、顔を上げてないため表情をうかがい知ることが出来ない

すると真莉は姿勢を低くしさながら肉食獣のように四肢を地面に着く

そして真莉は顔を上げ和眞を睨む

 

それを見た和眞は思う

 

「(まさか.....)内の中の化け物に....ゾディアックに食われたか.....バカタレが....」

 

真莉の目は肉食獣のように、俗に言うネコ目と呼ばれる目になり明らかに敵意、そして殺意が見て取れる

口元からは伸びたのか牙が見えている

 

「....ここでお前を人間として殺してやるのが親としての義務なのかもしれないな....」

 

和眞はこの戦いで初めて戦闘態勢に入った

先ほどまでなら真莉にどうやってもこの男には勝てないと判断させ自らの敗北を促すために基本攻撃を逸らし相手に実力の差を見せつけるつもりだったのだが真莉が自身の中に宿している人類の敵にしてその頂点に立つ11体の最強のガストレア、その11体の最強のガストレアと同格の隠されていた最後の最強のガストレアである12体目のゾディアック・ガストレア、キャンサーに意識も人格も乗っ取られた

 

ならば彼はもう和眞たちの知っている古火田真莉では無く、ただの人類の敵となってしまったということだった

 

真莉は全身で地面を弾き和眞に接敵する

 

先ほどまでのほんの少しの警戒状態ならばいざ知らず、今回は完全に警戒している状態で真莉を見ていた為和眞には真莉の動きがしっかりと見えていた

その為和眞は真莉がきた瞬間にその顔面にめがけカウンターを放つ

 

「!?!?」

 

グシャっと鈍い感覚が和眞の腕に響き真莉は地面を転がる

和眞は追撃の為に真莉のすぐ目の前に瞬時に動き左手の指の第一関節をすべて折り曲げそのまま真莉に振り下ろす

 

「古火田流戦闘術二式《鍵衝蛇》(かぎしょうだ)!」

 

ドゴォォという音とともに血が浮き出る.....一拍....

 

「っぐぁ!?!?」

 

苦悶の声をあげたのは攻撃を放ったはずの和眞の方だった

和眞の左手からは血が流れ出ておりあるはずの指、小指と薬指が存在していなかった

 

和眞は後方に跳躍し距離を取りすぐに止血をする

 

 

(ばかな....確かに真莉に当てた、感触もあった...なのに何故俺がこんなに.....まだ何かを隠しているのか?)

 

ッブ!

っと何かを吐き出す音とそれに似合わないぽとりという音が静けさを消し飛ばし辺りに響いた

出た音は一瞬、それでもそれが未だに鳴り響いているような錯覚を和眞は起こしていた

 

和眞はこの時初めて.....恐怖を覚えた

 

こいつは...

 

「ふぅ....待たせたな、っつうか口の中が気持ち悪りぃんだけど...」

 

この男は、自分の知っている

 

「これがラストバトルだ、お前をぶっ飛ばして....俺は聖天子も、蓮太郎も、延珠もアカネも....俺の大事な奴らを、絶対に守る!

それがたとえ、俺が....オレで無くなろうとも、オレはあんたを絶対にぶっ飛ばす!」

 

古火田真莉では無い....

 

和眞はようやくそれを認めた、そして何故か清々しい気分になり口角が上がっていくのが自分でもわかった

 

「ふ、ふふふ、あっははははは!」

 

急に笑った和眞に怪訝な表情を見せる真莉だったがすぐに警戒を強めた

 

「いや、すまないな...ただ、俺も認めなきゃいけないな...自身の息子の成長を...古火田真莉....いや、古畑真莉!」

 

古火田では無く真莉が自分で繋げ自身の名としている古畑の性を呼ばれ真莉は姿勢を崩す

その見た目は何処からでも攻撃出来るような無防備な姿だった

 

「お前は...いや、もう充分自分のやりたいことをやっていると自分で言うのだろうが敢えて言わせてもらう、これは古火田家現当主である古火田和眞の言葉にあらず、お前の、真莉のただ一人の父親としての言葉だ....聞いてくれるか?」

 

和眞の真剣な表情に真莉も同じく真剣な表情で返す

 

和眞はゆっくりと一歩一歩真莉に近付いて行く、真莉はそれをただ見つめるだけだった

やがて和眞と真莉の距離はお互いの手が届く距離になる

それでも和眞は歩みを止めない、そして.....

 

 

 

 

 

 

二人の距離はゼロになった

 

和眞は真莉を抱きしめたのだ、真莉は身じろぎひとつせずそれを甘んじて受ける

 

「真莉、もう、俺はお前に自分からは干渉しない、それを誓おう...お前は自分の道を見つけ自身の護りたいものを見つけた

俺はそれでいい」

 

和眞の言葉に僅かに体を揺らした真莉はそのままの姿勢で顔を上げずに言う

 

「良いのかよ、オレが言うのもアレだが依頼人には俺を連れて来るようにと言われてるんだろうが...」

 

「確かに、古火田家当主として、長年のしきたりを壊してしまう事にはご先祖達には悪いと思っている...だがな、ここにいるのは家がどうこうよりも一組の親子だ、ならば俺はお前を好きにさせる道を選ぶ、例えそれが間違った道だとしても、年のいった俺より、未来をまだ見れるお前ならいくらでも修正は効くだろう」

 

和眞の言葉に真莉は目を閉じながら一字一句噛み締めながら自身の中へと入れていく

 

だが...と和眞は呟き抱き締めていた体を離しゆっくりと離れていく

 

そしてある程度離れたところで和眞は真莉に向かい合う

 

「っ!?」

 

真莉は冷や汗をかく、先ほどまで圧倒的に有利になったと思っていたのに今は最初の段階よりも遥かに上回るほどの圧力を和眞が放っていたのだ

 

「俺は俺の中の最大の一撃を今からお前に放つ、お前はそれを避けてみろ、当たれば.....死ぬぞ」

 

和眞は右腕をゆっくりと腰まで引き左腕をだらりと下ろす

左足を前、右足を後ろにして腰を落とした

 

真莉はすぐに悟る、これは、避けなければ死ぬ

 

だが真莉の口角は自身が思っているよりも上がっていた

それは自身が唯一認める絶対的な強者にして自身の戦闘スタイルの基礎を教えてくれ、自信を僅かではあるが育ててくれた親の最強の一撃を受けてみたい、受けきりそしてそれを上回るほどの技を俺は持っていると教えたかったのだ

 

その思想になった真莉は両腕を交差させ拳を半開きにして左足を前、右足を後ろにして迎え撃つ構えをとる

その構えを見た瞬間和眞は目を見開くがすぐに意図を理解し笑みを浮かべる

そして静けさが辺りを包む.....刹那

 

和眞が一気に距離を縮め真莉に腕を振るう

 

「古火田流戦闘術奥義!《月光》!!(げっこう)」

 

和眞の腕はあまりの速度に一瞬消えたと思う程に早くなり真莉に襲いかかる

真莉は交差した腕をその和眞の技に合わせる様に一気に引く

 

「《刃砕》(じんさい)」

 

お互いの技がぶつかり合い辺りには凄まじい轟音が響き衝撃が辺りを包む

あまりの衝撃に真莉は吹き飛ばされ廃ビルに激突し今までのダメージのせいか真莉がぶつかった衝撃でその廃ビルは崩れ落ち真莉のいる場所に降り落ちてくる

 

それを見た和眞はすぐに助け出そうとしたが自身の全力の技を使った反動でその場から動けずにいた

そして.....

 

ズガァァン!!

 

廃ビルは崩れ落ち崩壊した

 

 

辺りは瓦礫とその瓦礫が出した粉塵が舞う

和眞は真莉の身が心配だったがそれは杞憂に終わる、何故なら....

 

 

 

ピシ、ピシピシ

 

と落ちた瓦礫からピシピシとヒビ割れる音が聞こえしたから何かが飛び出してくる

和眞はそれを見た瞬間驚愕する

 

瓦礫の下にいたのは確かに真莉だったはずなのだが瓦礫から飛び出して来たのは......

 

《ォォォォォォ.....ゥゥゥゥゥ》

 

体長おおよそ3メートルを超えるだろうか、それ程の巨体が瓦礫を粉砕してその場に出現した

 

神話に出てくる様な幻獣、ユニコーンの様な一本の角に強靭と呼ぶのも生ぬるいのでは無いかと思う程の四肢、そしてその四肢ほどもある尻尾と背中にはライオンの様なたてがみが付いている、そしてその二つの双眼はしっかりと和眞を見つめていた

 

和眞はその目に見覚えがあった

 

「まさか.....お前がキャンサーなのか?」

 

和眞の呟きに応えるかの様にその巨大なモノは伏せをする

 

《いかにも、ボクが君たちの言うところのゾディアック・ガストレアのキャンサーだよ.....まぁただほんのちょっとだけ力をこの子に貸しただけなんだけどね、気を失っちゃったしね》

 

和眞はこのガストレアが喋るとは思っておらずいささかびっくりした様だった

 

《今回は完全にこっちの負けだね、いやぁ、人間って強いんだねぇ、この子の中から見てたけど....いや、前回戦った時も思ったけどなかなか強いよ、君は、この子が強くなるのもわかる...》

 

「.....キャンサー、君に頼みが《言われるまでもないね、ボクはこの子が好きだからね、例え何があろうともこの子を守る選択肢をとるよ》

...そうか」

 

和眞はそれを聞くとホッとしたかの様に息を吐き軋む体を動かしキャンサーに背を向け歩き出そうとすると巨大な尻尾が和眞に絡みつく

 

流石の和眞も驚愕の顔をした

 

《待った、そのまんまだとそこら辺の野良ガストレアに殺られるよ...ボクの血を一滴飲むといい、この子の親である君なら適合するはずだ》

 

和眞は怪訝な顔をする、確かに現状の状態なら野良ガストレアとの連戦になるとキツイ

さらに妻も回収しなければならないので相当キツイものがあった

 

《まぁ、信用は出来ないだろう、だから君の自由だ、ボクは単純にこの子の為を思っての行動だ》

 

和眞は意を決して腕に近付いて来た尻尾をほんの少し傷付け一滴指に取り口に含む...すると

 

「っ!?....これは驚いたな」

 

《うん、適合したね、これで君はほぼ完全に戻ったよ》

 

和眞の体から目立つ傷が消えていった

 

すると役目は終わったとばかりにキャンサーの尻尾は元に戻る

 

「...真莉を、息子を頼んだぞ?」

 

《君に言われるまでもない、それにこの子に死なれるとボクも死んじゃうしね、それ相応にやるさ》

 

 

 

そこまで言うと和眞はその場から走って行ってしまった

残されたキャンサーは誰に言うでもなく呟く

 

《この敗戦は決して無駄じゃない、だからそんなに泣かないの...ね?真莉?》

 

(.....泣くわけねぇだろ....黙って....ろ)

 

《ん、そだね》

 

(....次は....絶対に負けねぇ....絶対に負けねぇから!!)

 

《うん、頑張ろう!》

 

 

やがてキャンサーはその場から消えて辺りには再び静寂が訪れたのだった

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