ブラック・ブレット 紅き守り手   作:フルフル真

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今回から新章、アルデバラン編です!
今回は原作をほんの少しだけ変えてるだけでほぼ原作です、最後らへんを除いて

楽しんでもらえると嬉しいです!


第3章《VSアルデバラン編》
第1話


 

蒸し暑い夜の見回りほどうんざりさせられるものはない

 

肩に食い込む帯紐で重い小銃を吊ったまま、すでに歩き詰めで二時間、日課とはいえとうに集中を切らしている

 

首に巻いたタオルで拭っても拭っても汗が噴き出し、時折ねっとりとした微風にした草が揺れるが、分厚いコットン地の迷彩服の下の肌はわずかな涼すら感じられない

たった一人、ザクザクとジャングルブーツの底で地面を踏みしめながら歩く陸上自衛官・佐藤良房三曹(さとうよしふさ)は今日もまたパトロールに出ていた

 

先輩たちにカードゲームで負けて見回りを押し付けられるのは三日目になる

歩きながら、調子悪く明滅する電灯を鬱憤を込めてガツガツと叩く

やけになって思い切り力を込めて叩くと不意に点灯、よしと思いながらライトで周囲を照らしていく

 

彼、良房がパトロールしているのはこの狭い世界の天国と地獄を分ける境界だった

良房から見て左手側にはライトの光が届く限り林が続いており、そして右手には一面の漆黒の壁面が垂直に立ちはだかっていた

 

良房は立ち止まり、一分間だけ空を見るが、空をも壁が貫いて屹立しており、その根元付近にいる良房から頂が見えない

 

『モノリス』

 

縦に一.六一八キロメートル、横に一キロメートルもある長方形の巨大なバラニウムの構造物、闇よりもさらに濃い黒光りする金属塊だ

 

こんなものが十キロおきに建って万里の長城よろしく無虜何百キロも東京エリアを取り巻いているのだ

 

物思いにふけっていたその時、何かが高速で目の前を横切っていくところだった、草むらに飛び込む寸前にそれがネズミだとかろうじて判別がつく

心臓がバクバクと鳴り、束の間、息の吸い方を忘れて激しく喘ぐ

良房は首を振る、馬鹿馬鹿しいと、俺は何を怯えているんだと

 

十年前のガストレア戦争からこの方、ステージV以外のガストレアが真正面から侵入に成功したことなど、一例たりともないのだ

思考を断ち切ろうとしたその時、不意にツンとくるほどの汚臭が鼻腔に運ばれてきて鼻を押さえた、どぶのようなひどい臭いだ

 

その時、頭上から肉食獣の荒い呼吸めいた声が聞こえ、良房の総身が強張る

 

噴出す汗の種類が変質している、先ほどまでは蒸し暑くて仕方がなかったと言うのにいまはとてつもない寒さと寄る辺のなさに嘔吐官すら覚える

 

パニックに陥らないように一呼吸置くとゆっくりとライトをそちらに向ける

ぬらぬらと光る代表がライトを反射して良房の網膜に映る

ライトを取り落とし、直後に下肢から力が抜け膝から崩れ落ちそうになった

 

良房「あ.....あ.....」

 

良房のいるモノリスの根元付近から50メートルほど直上に巨大な生き物がいる

天を覆い尽くさんばかりに巨体が視界いっぱいに広がり、モノリスに取り付いていた

 

闇の中、シルエットの胸郭が上下、凄まじい熱量を持って、吐き出す息が重低音を伴いながら大気を振動させている

ここからでは縮尺が掴みづらいが大きさにしてジャンボジェットほどもあるのではないか

 

良房「そんな....ガストレア.....なのか?」

 

わけもわからぬままに、さらに異常事態は加速する

突如、夜天に銃声が一発木霊する、すぐに怒声と悲鳴が連鎖し、銃声が断続的に続く

銃声は良房の正面、自衛隊官舎からした、モノリスのすぐ内壁に設営されている良房たち自衛隊員の家でもある場所だ

 

『敵襲』

 

良房は呆然と立ち尽くす

自分の頭が変になったとは思えなかった、だが、異常事態の連続に対して脳に合理的な解釈を与えることができない

ハッとして我に変えるとともかく官舎に全力で走り扉に体当たりをして中に飛び込む

 

そこには....

 

 

 

 

 

倒れた仲間の隊員たちの体をむさぼっていた

 

 

怪物はアリの姿をしていた、だが、ただのアリではない

ガストレアウィルスの恩恵で肥大化した体は四つん這いでも良房の胸元まである、巨大アリのガストレア、モデル・アントである

 

アリたちはおぞましい饗宴を止めてL字型の触覚ごと頭部をこっちに向ける

良房は呆然と、もう何度目になるかわからない『どうして』の疑問を宙に投げる

モノリスには、絶対に地上ガストレアは近付けない、その定説が最も忌むべき形で眼前で蹂躙されている

ただ一つわかるのは自分が想像していた以上の最悪の事態が起ころうとしていると言うことだ

 

良房「仲間を、放せええええ!!」

 

怒りに任せて肩に担いでいたライフルのトリガーを絞る、派手な銃口炎を上げて傍らのアリの右目を吹き飛ばし、天井にガストレアの破片が飛散、付着

ほとんど条件反射に至るまで研鑽された良房の水際立った動きは次の標的を求め、連続で発砲、着弾と共に凄まじい悲鳴をあげるガストレアに後退しながら連続で浴びせていく

 

勝てる

そう思った瞬間、不意に背中に悪寒が走る

反射的に右に飛んで顔をあげると、たったいま良房が居た空間をアリの凶悪なハサミが通過したところであった

何事かと思って照準具から顔をあげるとそこには絶望があった

 

いつの間にかモデル・アントのガストレアが良房を取り囲んでいる、その数は百はくだらない

 

その瞬間突如何処からか大きな、それでいて軽めの声が響く

 

「伏せててね〜、じゃ〜ま」

 

良房はその声に即座に反応し伏せる、瞬間

 

ぐしゃっと音がし良房の目の前にモデル・アントの首が転がってくる

ヒッと良房は小さく悲鳴をあげる

ゆっくりと顔をあげるとそこには紅蓮の髪をし紅蓮の瞳を持った自身よりまだ若い、恐らくは学生であろう青年であった

 

その青年はこちらをちらりと見てすぐにモデル・アントの軍団に顔を向ける

 

「ん〜...違和感を感じてきてみたけど...こうなってたか、もうこのモノリスはダメっぽいね〜...そこの君、さっさと聖天子だっけ?に伝えたほうがいいよ、このままじゃ恐らく一週間弱でこのモノリスは崩壊するよ、ここはボクがやっとくから」

 

青年の言葉に驚愕な表情を見せる良房

 

良房「ダメだ!君も逃げなければ!」

 

「ん〜めんどくさいなぁ...さっさと行ってよ、邪魔だから」

 

こちらを向かずに言い放つ彼を見て良房は恐怖を覚える

赤目となれば呪われた子供たちを連想させるが彼は男で青年、どう考えても勝ち目がない

 

ならばこの場はこの子を生贄にすれば自分は生き残れるのではないか?

ふとそう考えつく、すぐに頭を振りその考えを打ち消そうとするが一度考えてしまった自身が助かる道を捨てることができないでいる

 

「はぁ、どうでもいいから早く行けって...君から食っちゃうぞ」

 

軽めな口調とは裏腹に殺意のこもった目を向けられた良房は先ほどまで動かなかった体が跳ねるように動く

 

怖い

ただそれだけだった、ただ一言言われただけで今まで感じたことのない程の殺意を感じた

良房はすぐに走り出し震える手で電話を取り自身たちの上司に連絡を入れたのだった

 

 

 

 

 

 

その数十分後、現場に現れた自衛隊の集団は周囲の惨劇に唖然とする

 

辺りには血とみられるものやモデル・アントの首やら触手やらが散乱しそこらかしこの木が全てなぎ倒されていた

 

自衛隊員たちは辺りを警戒しながら状況を把握していたがすぐにモノリスの異変に気付き聖天子に連絡したのだった

 

 

 

 

 

「ん〜、あのガストレアは確か.....タウロスだっけ?あの子の側近的なやつだったよねぇ〜.....めんどくさい相手だなぁ、今回ばかりは『全開放』でもしないとキツイかもよ?考えておいてね、全てを捨てる覚悟を...」

 

青年、真莉の中に潜むガストレア、キャンサーはそう言うと瞬時にその場から消えた辺りには自衛隊たちの騒音だけが木霊していた

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