みなさんいつもありがとうございます!
なるべく早く登校できる様に頑張りますね!!
真莉の言葉に一同はシーンとしてしまう、だが、それを受けても真莉はさして態度を変えずに聖天子に言う
「そんで?聖天子さまは何の目的が?」
真莉の言葉に聖天子は静かにお茶に口をつけ顔を上げる
風鈴がなり、その隙間から新調されたクーラーの動作音が室内に響く
「里見さんに『アジュバント』を結成して欲しいのです」
「アジュバント?」
真莉と蓮太郎は首をかしげる、蓮太郎が隣を見ると木更が緊張に体を強張らせている
どうやら木更にはアジュバントとやらがわかるらしい
「木更さん、何だよ?そのアジュバントってのは?」
木更が愕然とした表情でこちらを見る
「ちょっと里見くん?『アジュバント・システム』知らないの?
え?古畑くんも?民警許可証(ライセンス)取るとき座学で習ったじゃない」
木更の言葉に蓮太郎と真莉は同時に答えた
『しらねぇよ(しらん)座学なんて寝てた』
木更が呆れたと言って額に手を当てながら続ける
「政府は緊急措置として民警を、自衛隊組織に組み込んで運用することができるの
アジュバントは部隊を構成する民警の分隊システムの事よ」
「分隊システム?俺にチームを組んで戦えってことかよ?」
聖天子はその通りですと頷きそのまま続ける
「アジュバントはチームリーダーの上にそれを統率する軍団長を置いて戦います
つまり、『蛭子影胤テロ事件』の際の依頼形式とは全く異なるものなのです
現在私たちは大規模な民警の部隊を組織するため主要な民警会社に呼びかけています、里見さんたちにも民警分隊のチームリーダーとなるためにメンバーを集めてもらい、来るガストレアとの決戦に参加して欲しいのです
里見さん、古畑さん、代替モノリスの建造着手までの三日間、崩壊したラインから侵入してくるガストレアを一体残らず迎撃して欲しいのです」
聖天子は膝の上で手を重ねると背筋を伸ばした
「突然のことで混乱しているのはわかります、しかしお願いします!里見さん、古畑さん、国家のために、今一度力を貸していただけませんか?」
「大変なことになったな...」
「まぁ予想外っちゃ予想外だな」
蓮太郎は両手をポケットに突っ込んだまま、真莉は視線を真上に浮かぶ月を見ながら帰路についていた
二人は一旦立ち止まり遥か遠くにあるモノリスの方向を睨む
十年間も人を守ってきた不倒の壁、強固極まる頼もしい壁、人類の叡智が築き上げたモノリスは倒壊する、六日後、確実に
二人は再び帰路を急ぐ
蓮太郎の頭の中には一つの事がずっと浮かんでいた
『この依頼は危険度を遥かに超えている』
そもそもスタンドプレイヤーの代名詞のような民警がチームを組んで戦う?こんな状況でなければ冗談もほどほどにしろと蓮太郎は言うだろう
いくら個人の戦闘能力が高くても戦争などの軍団戦では全く意味をなさない、それは近代戦史が証明している
蓮太郎の頭にはもうひとつ別の事が浮かんだ
自分は延珠に何て言えば良いのか...だ
蛭子影胤テロ事件や聖天子狙撃事件の記憶も新しいうちに自分は延珠に命をかけろと言うのか...
「なぁ、真莉、どうしたら良いと思う?」
蓮太郎の問いかけに今まで上を見ていた真莉は蓮太郎に顔を向ける
「主語がねぇからわかんねぇよ...」
「俺は...延珠にもう一度命をかけて戦ってくれって言ったほうが良いのかなとな...」
真莉はふぅとため息を吐く
「そんなもん他人に聞くな、それを決めるのはあいつの保護者であるお前が決めることだ」
真莉は淡々と答える
「.....お前はあの子達にそういう風に言えるのかよ?命をかけて戦えって、まだ十歳ばかしの子供たちなんだぞ」
蓮太郎は少し語気を強めながら真莉に言う、その目はキッと細められ敵意のようなものが見え隠れしている
「さぁな」
真莉は蓮太郎から視線を外しまた上を見た
蓮太郎はそれを見て抑えきれなくなったのか真莉の胸倉を掴みあげる
「お前は!本当に何も考えてねぇのかよ!あの子達を!お前もあの子達を兵器として見てるのか!?」
蓮太郎の叫びをその身に浴びた真莉の眼は一気に緋眼に変わり黒の髪が紅く染まりだした
「.....離せ、蓮太郎」
「ッ!?」
真莉の迫力に蓮太郎は気圧され手を離し視線を外す
「.....えて....ねぇ.....だろ(ボソリ)」
「っえ?」
「何でもねぇよ....俺も何かしら考える、テメェもその足りねぇ頭振り絞って考えやがれ」
真莉はボソリと何かつぶやいた後足を進めた、少し遅れて蓮太郎も後に続く、意外と真莉の家の近くまで来ていたようですぐに真莉の家の前に着く
最近...と言うよりあの戦いが終わった後から蓮太郎たちは真莉の家に居候の様な感じになっている
真莉の家はそこそこデカく、蓮太郎と延珠が入ったところでまだまだ余裕がある
真莉が家の鍵を開け蓮太郎と同時に中に入ろうとドアノブを回し開けた瞬間...
突然、鋭利な刃物が四つ、蓮太郎に一つ、真莉に三つ突き付けられ流石の真莉もギョッとする
戸口には魔法少女が『五人』立っていた
正確には赤穂浪士系魔法少女アニメ『天誅ガールズ』のコスプレをした少女たちである
よく見れば刃物に見えたのはオモチャの刀身で、それにマジカルステっけの柄を組み合わせた『ステッキブレード』というおもちゃだとわかる
このおもちゃやコスプレ衣装は真莉が延珠やアカネがどうしてもというので買ってあげたものだった
「ほ、本当にやるんですか?延珠さん?アカネさん?」
天誅ピンクこと、ティナの不安そうな声に、真っ先に反応したのは天誅グリーンの格好をしたアカネだった
「もっちろんだよ!お兄ちゃんに可愛いとこ見せようよ!」
「そうです、ただでさえわたしはこういう風にしないと近付けないのです、頑張るしかないんです」
普段のだるそうな目に力を入れている天誅ブルーのコスプレをした千歳夏世はふんすと鼻息を荒くする
そしてその次に天誅レッドこと延珠が胸を張る
「何を言う!こういうのに男という生き物はクラッと来るのだ!よし!それでは皆の者!行くぞ!」
小さく延珠がいっせーのーでとつぶやくと五人は可愛らしくポーズをとり声をハモらせる
『あなたのハートに天誅、天誅♫』
「あ、あなたのハートに...天誅、天誅♫」
それを受けいち早く復活した真莉が物凄く緊張しており服の丈が若干合ってない少女、古火田朱音に問う
「.....こいつらはまぁわかるが何でお前までコスプレしてんの?」
天誅ブラックのコスプレをしている朱音は顔を真っ赤にしてわたわたしながら言う
「ち、違うんだよお兄ちゃん!わ、私は嫌だって言ったんだよ!?だけど延珠ちゃんたちがどうしてもって.....「何を言う?朱音だってノリノリに練習していたではないか?」ニャァァァ////やめてぇぇぇ////延珠ちゃん!?////もぉぉぉぉ////」
完全に茹で上がったタコの如く真っ赤にした朱音は走って自身の部屋に逃げて行ってしまった
真莉ははぁと再びため息を吐き、話はまた後でだなと改めて考えるのであった