病みつき物語   作:勠b

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君だけを見つめるだけの物語


病みつきクール~終談~

彼女、東郷あいはステージ衣装を身にまといながら楽屋でため息を吐く。

彼女の手に持たれていた形態からは、1人の人物にたいして通話をしていた。

コールが鳴り響くこと数回、聞き慣れた機械音がなると同時に通話を切る。

 

やれやれ、ゆっくりと追っていこうと思ったが逃げられてしまったようだな。

 

再度重い溜息を吐くと同時に片手で頭を押さえる。

 

「全く、罪作りな男に恋をしてしまったものだ」

 

嬉しそうな笑みを浮かべながら独り言を嬉々として語る。

 

「私から追ったら逃げるとは……今度は追われる側に回ってみようか?」

 

クククっと喉をならしながら語ると、携帯を手元の鞄に仕舞う。

 

「まぁ、今回は私の負けか……だが、次は勝たせてもらおう」

 

ゆっくりと立ち上がると、目の前にある鏡が自分を映し出す。

鏡に映る分身の頬を優しく触れると、笑みを濃くする。

 

「女として、負けられない勝負があるからね」

 

その言葉と共に自信の瞳を見る。

深く濁ったその瞳をあいは気に入っていた。

たった1人の人間にしか興味を見いださないその瞳に。

 

「さぁ、まずは……」

 

鏡から手を離し、扉へとゆっくりと歩を進める。

 

「先ずは、君を捜すところから始めよう。

 恋する女としてはやはり、待ってるだけでは始まらないからね」

 

誰もいなくなった楽屋に言い残すように呟き、あいは部屋を出ていった。

狂気に溢れた笑みを口元で浮かばせながら。

 

 

 

 

━━━━━━

「……おはよう、ございます」

 

文香はまだ慣れない事務所に尋ねると頭を下げる。

「おはよう、文香ちゃん」

そんな彼女に作り笑いでちひろは返した。

一歩踏み出すと、文香は事務所内を見渡していく。

居ないことは知っていた。

それでも、もしかしたら。

そんな気持ちが文香を襲う。

何度も見渡しても目的の人物の姿はない。

当たり前だ。

その人物はもう事務所にはいないのだから。

……約束、したのに。

その思いが胸を締め付ける。

私のこと、見てくれるって。

傍にいてくれるって……!!

 

文香はこみ上げてくる感情を必死に抑えつつ、ソファーに腰掛けると鞄から一冊の本を取り出す。

 

私も、こんな風になりたいな。

そんな思いを抱きながら現実から目を反らすようにページをめくっていく。

その本は、最近叔父の本屋から見つけた恋愛の本。

それを、何百回も文香は読み返していた。

私も、この本みたいに。

ページをめくる度に思いが強くなる。

その思いと共に、本の世界に入り込んでいく。

 

ヒロインである少女と、少年の恋愛小説。

それは、自分が願うようなずっと、永遠に2人が結ばれる物語。

話の展開も、結末も、全て頭に入っている。

それでも文香は読み返す。

その世界に逃げるために。

物語も終盤。

その頃には、文香は自分の中の青年と共に物語の役者と入れ替わっていた。

 

「プロデューサーさん……もぅ、何処にもいけませんよね

 もう、私以外見なくていいんですよ」

 

誰にも聞き取られないように気を配りながら小声で呟く。

深く目を閉じると、目の前に青年の姿が現れる。

それは、本の役者として。

 

両手両足を拘束され、身動き出来ない状態。

力が入らないのか、唇からはだらしなく涎がたれていく。

虚ろな瞳のまま、ただ地面を見据えるその姿。

そんな姿の青年を思い浮かべ、文香は笑みを浮かべる。

「もう…他の人の事見てるから、そうなるんですよ」

彼の頭を支え、自分へと視線を向けさせる。

力なくなすがままになる青年の姿に思わず満悦してしまう。

そうだ、私が欲しかったのは。

 

「プロデューサーさん、約束ですよ……私だけの傍にいて下さいね」

 

私が欲しいのは、私だけの傍にいてくれるプロデューサー。

それ以外のプロデューサーさんは……。

ふと気が付くと、ページをめくるのを忘れ、ただ強く本を握っていた。

夢の中でしか、あえません。

ですが、今だけですよ。

待ってて下さいね、プロデューサーさん。

 

そんな思いを胸に、自分を呼んだ今のプロデューサーの元へと文香はむ向かう。

アイドルして頑張ってたら、傍に来てくれる。

きっと、遠くからでも見てくれる。

今はまだ、我慢します。

……でも、我慢にも限度がありますからね。

 

 

 

 

━━━━━━

「ただいま」

ちひろは嬉しそうな笑みを浮かべると家に入る。

「ただいまであってます、私達もう結婚してるんだから」

嬉しそうに話しながら鞄から食材を取り出していくと、キッチンへと向かった。

 

「今日はハンバーグだから、楽しみに待っててね」

そういうと鼻歌を歌いながら早速調理に入っていった。

だが、そんな鼻歌も直ぐに止まる。

「何時結婚したかって、こないだ書類にサインしてくれたじゃないですか。

 まぁ、印は私が押したけど」

ちひろは嬉々として語るりながらも、手は止めない。

「騙したかって、酷いですよ。

 たって、私達もいい年なんですからこの年でつき合うなら結婚を前提で、私達には互いの性格や相性なんてもうわかりきってるんだから。

 だったら、付き合わなくてもいいでしょ?

 わざわざ面倒なことしなくても、結婚したって」

優しくも何処か強い口調で話していくと、ふとリビングに視線を向ける。

「だから、婚約届を出しちゃいました」

悪戯っぽく舌を出し、微笑みを浮かべる。

幸せそうな彼女は誰が見ても女としての幸せを噛みしめていると見えるものだ。

 

「だから、結婚指輪は楽しみにしてますからね。

 ちゃんとした形が欲しいですから」

 

だから

そう続けると、冷たい視線を向ける。

誰もいない空間に向けて。

 

「私の夫を返してもらわないとなー」

 

そう呟きながらも微笑みは崩さない。

感情を押し殺しつつ、料理を続ける。

 

本当に、私がいないと何も出来ないんですから。

駄目な人に捕まるだなんて、もっと見守りが必要ですね。

次は失敗しないようにちゃんと考えとかないと。

先ずは、何処にいるか探さないとな。

 

 

 

 

━━━━━━

「はい、今日の夕食ですよ」

美優はそう言うと、数人分はあろあである料理達をテーブルに並べていく。

「もう、プロデューサーさんは男の人なんですから、沢山食べて下さい」

子供を叱るような優しい口調で言うと、腕時計を見る。

「少し早めに出来ちゃいましたね」

そう言うと、携帯を取り出し慣れた手つきで触っていく。

目的の人類の名前を出すと、通話ボタンを押す。

コールが鳴ること数回、相手からの声が聞こえた。

 

「今日の帰りはどうなりそうですか?

 ……そうですか、わかりました。

 いえ、早めに出来たんでどうしようかと思ったんですけど、ならもう、少し待ってますね。

 はい、待ってます」

 

嬉しそうに微笑みなら通話を切る。

その微笑みを前に向けると、嬉しそうに報告を始めた。

 

「もうすぐ帰ってこれるらしいですから、待ちましょうか。

 食事は皆で食べた方が美味しいですからね」

 

そういうと、ゆっくりと歩き出す。

「だから、もう少し待ってて下さいね」

壁際までつくと、目の前に映るモノに視線を合わせる。

壁際に背を預け、糸が切れた人形のように力が抜けているモノに。

虚ろな瞳で目の前のモノを見つめる。

それだけで、美優の笑みは濃くなり、より嬉しそうなモノに変わる。

 

 

「ねぇ、プロデューサーさん」

 

 

嬉々として呼ばれた青年は、力なくうっすらと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

━━━━━━

もう、どれだけの間過ごしてきたんだろうか。

与えられた部屋には時間を確認するようなものなんてない。

唯一ヒントになりそうな窓も常にカーテンで隠されており、明かりを隠される。

それ以外には、何があるんだろうか。

わからない。

目の前に映る霞んだ部屋に確認できるのは自分が過ごしている布団のみ。

歩くことはもちろん、立つことすら出来ない。

匍匐前進で進もうにも、小さな部屋を閉ざす扉を開けるためのドアノブは今の俺には高く、遠く感じる。

あぁ、早く帰ってこないかな。

そんなことを思いながら、今日を過ごす。

そして、明日も過ごすのだろう。

明日も明後日も……これからも。

外、でたいな。

そんなことをふと思い、諦めと共にため息をつく。

今の俺には、外に出ることすら許されない。

何も出来ない自分を嫌になりながら、今日も何もせずに過ごす。

 

何もしないで過ごすことかなりの間、扉が開かれた。

「ただいま、プロデューサーさん」

嬉しそうに微笑みながら俺の傍に立つと、ゆっくりと身体を起こして壁際を支えるように座らさせてくれた。

そんな彼女を見ると笑みが浮かぶ。

今日も来てくれた。

その言葉から来る嬉しさが、俺の空っぽの世界を埋めてくれた。

 

「おかえり、美優」

 

少し遅れて挨拶をすると、美優は子供を誉めるように俺の頭を撫でてくれた。

あぁ、懐かしいな。

そういえば、前ちひろさんにやってもらったっけ。

元気かな、ちひろさん。

ふと、彼女の優しい笑みが脳裏にちらつく。

でも、それも一瞬だ。

直ぐに収まる。

少なくとも、今の俺はちひろさんに会えないんだから、意味がない。

 

「やっぱり、好きな人に名前を呼ばれるのは恥ずかしい……」

「三船さんのほうがいい?」

「……意地悪なプロデューサーさんは嫌いですよ」

 

嫌い

その言葉を聞くと、両手が勝手に動く。

力強く、縋るように彼女の肩に手を伸ばしてありったけの力で抱きしめる。

 

「ごめん、ごめん、だから、嫌わないで、お願い、見捨てないで、美優……」

 

だめだ

今、美優達に嫌われたら……!!

そしたら、俺はもう生きていけない。

生きていくだけの力がない。

だから……!!

お願いだから、嫌わないで。

目の前に広がる大きな恐怖感で思考が襲われる。

こうなると、自分でも恐ろしく感じるぐらいまともな思考が出来なくなる。

そんな俺を落ち着かせるように、美優は優しく抱きしめ返してくれた。

 

「嘘ですよ、私がプロデューサーさんのこと嫌いになるなんてないですから……だから、ずっと傍にいてくださいね」

「いる、いるから、だから、ひとりにしないで」

「しませんよ……ずっと傍に居ますからね」

優しい言葉と共に、頭を撫でてくれる。

これだけで、不思議と落ち着いていく。

そうだ、俺の傍に居てくれるんだ。

1人じゃない。

その気持ちだけで恐怖感が一気に消える。

安心した実感を得ると同時に、美優に回した手を離していく。

 

「ふふふっ、夕食を作ってきますから待ってて下さいね」

 

頭から手が離れる。

それは、俺の傍から彼女が離れていくことを指す。

寂しさと孤独感が押し寄せるが、それを口にすることはしない。

初めは嫌がっていたが、彼女だって仕事がある。

寂しいけど、仕方がない。

我慢しなきゃ。

そう思いつつ、開かれた扉から聞こえる音を聞く。

ただの雑音が恋しく感じる。

傍で誰かが何かをしている。

だからこそ生まれる雑音。

それが、今はとてつもなく恋しい。

誰かと共にいる。

その時だけが唯一落ち着く時間だ。

 

どうしてこうなったんだろう。

ふと、思い出していく。

初めは、出してくれと何度も叫んだ。

でも、彼女は優しく俺の頭を撫でたり、抱きしめたりするだけで何も言わない。

ただ、俺の傍に居てくれるだけ。

初めは、それが凄い嫌だった。

彼女達が居なくなって、逃げ出そうにも何もできなくて……

何日も……何回も……。

俺からしたら永遠にも感じるような1人の時間を過ごしていた。

気が付いたら、今の環境を受け入れている自分がいた。

三船さんって呼んでいたのを、止めてと言われたから美優と呼び始めた。

他にも、俺が出来ることは何でもした。

そうだ、俺は生きてるんじゃない。

生かされてるんだ。

そう理解していくと、気が付いたら反抗なんてする気をなくした。

少なくとも、ここにいれば、生きていける。

それだけで、その事実だけで俺は満たされた。

……そっか。

これが、罰なんだよな。

 

 

 

━━━━━━

美優が部屋に入ってくると、俺と視線をあわす。

どうやら、今日の夕食が少し遅れるらしい。

別に、そんなの教えてくれなくてもいいのに。

時間なんて、わからないんだから。

美優は話を終えると俺の隣に座る。

俺と同じように、壁に背を預けて。

静かな沈黙が酷く嫌になる。

無自覚だった。

彼女の手に重ねるように俺の手を置く。

小さくて、柔らかいて。

離したくない。

そう感じてしまう。

美優の顔を見ようと、視線を向けても残念ながら彼女の表情は見えない。

だからこそ、怖い。

どんな顔をしてるのだろうか。

 

「プロデューサーさん」

 

優しい口調で話されると落ち着く。

怒ってはいない。

そう感じるから。

 

「私、今幸せですよ。

 こうして、あなたの傍に居られるから。

 だから、幸せです。

 あなたの温もりを、あなたの存在を直で感じれるから。

 それだけで胸が満たされます。

 ……やっぱり、こうしてよかった。

 あなたの傍に居られるだけで幸せになれるから。

 だから、私は間違ってなかったんですね。

 プロデューサーさん。

 もっと私を見て

 もっと私を触れて

 もっと私を感じて

 もっともっともっと

 私だけ見て何て我が儘は言いません

 もう、言いません。

 変わったんです。

 気づいたんです。

 私があなたに抱いてたのは恋心じゃない。

 もっと、それ以上のモノ。

 あなたと付き合えなくても、恋人になれなくてもいい。

 ただ、傍にさえ居てくれればそれでいい。

 プロデューサーさん。

 私の傍にいて、私を見て、私を感じですくださいね」

 

優しい言葉が俺を被う。

それたけで、幸せな気持ちになれる。

狂ってるのは彼女たちなんだろうか。

それとも、受け入れた俺なんだろうか。

わからない。

それでも、それでいい。

彼女の言葉を静かに聞きながら、強く手を握る。

離さないように、強く。

愛しい彼女の言葉に意識を向けていたからだろう、もう1人の彼女に俺は全く気づかなかった。

 

「2人とも、仲良しですね」

 

空いた扉から声が聞こえる。

呆れたような声で話す彼女に視線を向けると、美優は嬉しそうに挨拶をした。

 

「おかえりかさい、アーニャちゃん」

 

アーニャは俺の隣に座ると、空いた手を握る。

 

「ただいま、2人共」

 

嬉しそうな口調で話すあたり、怒ってはないのだろう。

少しだけ安心した。

「おかえり、アーニャ」

彼女の手を握り返しながら、挨拶をすませる。

2人の手を強く握る。

俺のことを行かしてくれる2人の手を。

 

 

 

 

━━━━━━

2人に食べさせてもらいながら、夕食を済ませると、美優は片付けをするためにキッチンに向かってしまった。

俺はアーニャの手を借りて何とか部屋に帰り、先程同様に座る。

アーニャも俺の隣に座ると、横から抱きついてきていた。

そんな甘えてくる彼女の頭を撫でながら、アーニャから仕事の話を聞く。

全てを聞き終え、頑張ったねと伝えると、巻き付かれた手に更に力が入った。

 

「プロデューサー、私幸せだよ」

突然の言葉に驚きはしない。

もう、気に慣れたから。

「こうやって、傍にいられるだけで、幸せ」

「俺もだよ」

優しくとも頭を撫でていると、必要にされているように感じて満たされていく。

狂う程愛してるっか。

もしかしたら、俺の方もそうなのかもな。

 

「私、美優にプロデューサーを、捕まえる話聞いた時、嫌だったんですよ。

 но…ですが、今は、幸せです。

 同じ目を、してます。

 私と、美優。

 あなたの傍にいたい。

 そう強く思う、目らしいです。

 今なら、わかります。

 私、傍にいられるなら、いい。

 恋人じゃなくても

 寂しいです。

 でも、いいんです。

 傍にさえ、いてくれたら。

 それで、いい。

 プロデューサー。

 愛してますよ。

 だから、いいんです。

 愛した人が、傍にいる。

 自然で、当たり前のこと。

 だから、今は幸せ。

 当たり前の、幸せ。

 ですよね、プロデューサー」

 

猫なで声で甘えてくるアーニャ。

そんな彼女の頭を撫でる。

霞んだ視界で。

 

 

「プロデューサー、なんで泣いてるん、ですか?

 ……あっ、わかりました。

 счастье…幸せだから、ですね。

 私も、泣きそうです。

 幸せ、だから。

 嬉しい、から。

 だから、泣きそうです。

 プロデューサーの傍に、いられること。

 とっても幸せ感じます。

 だから、ですね。

 こういうの、相思相愛って言うんですよね?

 私、この言葉好きです。

 だって、幸せなこと。

 お互いに思いあうこと。

 それは、素敵なこと。

 プロデューサー。

 私達、幸せ、ですよね?」

 

彼女の言葉に力なく頷く。

 

そっか、泣いてるんだ。

 

なんで、泣いてるんだろう。

 

わかんないな。

 

……幸せ、だから?

 

そうだよね、そうに違いない。

 

だって、満たされてるんだから。

 

……そう、だよね?

 

内心で自問自答を繰り返しながら、俺はアーニャの言葉を聞く。

何度も愛を訴えるその言葉を聞く度に、何故か胸が苦しくなる。

そのたびに、この思いがなんなのかわからなくなる。

 

その日、床についた時、不思議な夢を見た。

あいさんが

文香が

ちひろさんが

美優が

アーニャが

同じ事務所にいて、笑いながら話し合ってる夢。

その夢を見てるとき、胸が苦しくなる理由がわかった。

わかったからだろうか。

ただ、周りから離れた所にいた俺は、泣くことしか出来なかった。

なんで、こうなったのだろうか。

簡単だ。

依存してたのは……縋ってたのは俺の方だ。

初めから、自分で考えて、自分で動いていたら、こうはならなかったのかもしらない。

もしかしたら、それはただの妄想。

自分で動いても、変わらないかもしれないのに。

それでも、縋りたくなる。

この、幸せが現実で

何もできない不幸か夢で

━━━もしも

━━━もしも

 

俺は、何もできない縋ることしか出来ない自分に泣くことしかできなかった。

 

 

 

 

━━━━━━

後日談……というか、変わらない話。

 

今日はアーニャがオフの日らしい

だからだろうか、今日は朝からずっとアーニャに抱きしめられている。

さっきから何度も愛を囁いてくれる彼女が、とても恋しく感じる。

あい……?

ふと、頭の片隅に誰かの面影がちらつく。

思い出そうとすると、アーニャが俺を強く抱きしめる。

どうやら、他のことを考えていたことがバレたらしい。

本当に、俺のことなら何でもわかってくれる。

わかってくれる人……?

そういえば、他にもそんな人がいたような気がする。

 

プロデューサーには、私達しか傍にいない。

だから、他のこと考えるのは駄目、ですよ。

寂しいです。

 

そんな事を耳元で言われると、謝罪の言葉しか言えなくなってしまう。

傍……か。

そういえば、昔傍にいるって約束した人がいたな。

 

でも、いいか。

今の俺には美優とアーニャしかいないんだから。

 

そう思いながら、抱きついてくる彼女の頭を撫でる。

霞んだ視界に映る彼女。

そういえば、眼鏡がほしいな。

美優とアーニャの顔をもっと見れるようなりたいし。

お願いしてみようかな。

 

俺はアーニャに眼鏡が欲しいことを伝える。

すると、アーニャは買ってきてくれると言ってくれた。

やっぱり、アーニャは優しい子だ。

 

そんなことをしていたら、すっかり頭の片隅に映った彼女達の姿は消えていた。

 




携帯を変えたり仕事が忙しくなったしとしっぴつが中々進まない状況ですので、次回は以前投稿していた短篇を投稿したいと思います。
リクエストしてくれた方々本当にすいません。

一話完結の話がいいか、数話かかるストーリーがいいか、どちらがお好みでしょうか?

  • 一話完結
  • ストーリー物

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