病みつき物語   作:勠b

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久しぶりの投稿です。
暫くは病みつきセイバーを短期連載していきたいと思います。



病みつきセイバー~紫出会い談~

慣れた町並みの中通っていた高校を卒業し、見慣れる町での一人暮らしと大学生としての生活が始まってもう1年が過ぎた冬の日。

俺は、とある彼女と出会った。

先ずはその話をしよう。

幸せな出合談を。

 

 

 

都会な町並みから外れた所に古びた教会を見つけたのはたんなる偶然だった。

自然豊な草原の中にあったその教会はどこか魅力的に見えた。

散歩……といえる距離ではないが、ここまで来たのはちょっとした理由がある。

もっとも、目的は教会ではなかったのだが。

だからと言って特に目的の場所は定まっていない。

だからだろうか、俺の足はその古びた教会に向かっていた。

興味心というか、ちょっとした遊び半分。

別に特別な意味はなかった。

今となってはその行いが悩みの種になるなんて思ってもいなかった。

俺の人生を変える出来事になるなんて。

 

教会の中身は外観とは違い小綺麗に整えられていた。

中には信者なんだろうか、複数の人が手を合わせてお祈りをしていた。

俺は少し離れた席に座り回りの真似をする。

神様の事を思いながら、祈りを捧げる。

たすけてください

ただただ、祈る。

祈りを初めてから少し経つと俺の隣に誰かが座る気配を感じた。

ふと横目で隣の人を見る。

シスター……なんだろつか、真っ黒な修道服を見に纏った彼女はフードを深く被っており、その顔までは除くことができない。

だが、ただ祈りに来たのでないのだろつ。

顔は前ではなく俺に向けられていたのだから。

 

「此方に来られるのは初めてですか?」

 

優しさを感じる綺麗な声でシスターは俺に問いかける。

「すいません、若い男性が来られるのは珍しいですので、つい声をかけてしまいました。」

クスリっと笑いつつそのシスターは俺に話し続ける。

「はい、たまたま散歩をしていたら教会を見付けまして」

「そうですか」

 

俺の返答に頷くと視線を前に向けてシスターも手を組んで祈り始める。

少しだけ心が落ち着いた気がする。

誰かと話したお陰だろうか。

席を立とうとすると、シスターが声をかけて来た。

目線も動かさずに、呟くように。

 

「もしも、貴方が話したいことがあれば懺悔室をご利用ください。きっと、貴方の救いになりますから」

 

懺悔室……か。

名前しかしらないが、何となか興味が湧いた。

「ありがとうございます」

礼を残して俺はその懺悔実に向かった。

 

 

 

 

教会内にある隅の部屋に懺悔室。

テーブルと椅子が二脚しかない小さな部屋に来るとなんとなく不気味な感じがした。

なんか嫌だな、この感じ。

そんな思いに刈られていると、扉が開かれる。

現れたのは、先ほどのシスターだった。

「本当に来られたんですね」

再びクスリっと笑うシスターに笑みを返す。

「たいした話ではないですけど、話せば気が楽になると思いまして」

「そうですね、悩みを共有するのもこの部屋の使い方だと私も思います」

そういうと、シスターは椅子に座る。

俺は空いている対面の席に座り真っ直ぐシスターを眺める。

深く被ったフードからは綺麗な瞳が覗かせていた。

まるで、全てを受け止めてくれそうな優しさを感じる瞳が。

 

「貴方の懺悔を聞き入れましょう」

 

その言葉を皮切りに俺は懺悔を始めた。

 

「俺は、俺の事を好きになってくれていた人がいるんです」

目を閉じて彼女の姿を思い浮かべる。

出会った頃の、笑顔の彼女を。

「俺は、そんな彼女の愛から逃げたんです」

彼女の笑顔が変わる。

「切っ掛けはわかりません、ですが、彼女は変わったんです。

俺の知ってる彼女はもういません。

優しくて凛々しさを感じる彼女は、今は俺から全てを奪うことしか考えていません。

そんな彼女を受け入れようって頑張ってた事もありました。

ですが……」

俺はふと思い出す。

セイバー

彼女との思い出を。

身体の所々が痛む。

思い出すだけで。

痛む。

痛い

痛い

痛い

 

身体中に走る痛みを感じていると、肩に柔らかい感触がする。

ふと気がつくと目の前にいたシスターは俺の後ろにいて、肩に手を乗せていた。

「触るとわかりますが……所々に傷痕がありますね」

シスターは肩を撫でながら子供をあやすように優しく言う。

「お話しください、貴方の懺悔を」

 

その言葉で落ち着きを取り戻す。

「逃げたんです、怖くなって」

ゆっくりと立ち上がると、シスターが俺から少し離れる。

そんなシスターに向かってシャツをめくると、フードから覗かせていた瞳が驚く様が見えた。

 

「逃げたから、罰をうけた」

 

俺のお腹には大きな傷痕がある。

剣で切られた痛々しい傷痕が。

シスターは何も言わずに優しく傷痕に触れる。

ひんやりとした感触が傷痕に染みるが、悪くない気がした。

 

「貴方の罰……ですか」

 

シスターの呟きを最後に狭い室内に思い沈黙が流れる。

長い沈黙が。

それを破ったのはシスターだった。

傷痕から手を離すと俺を優しく抱き締める。

驚きで言葉が出ない俺の頭を優しく撫でながら子供をあやすような優しい口調で耳元に呟く。

 

「大丈夫ですよ、もう恐れなくても」

 

その言葉に俺は……

俺は、泣いてしまった。

子供のように無邪気に。

 

どれくらい泣いたのだろうか。

大分落ち着きを取り戻す。

ふとシスターを見つめると、彼女はゆっくりとそのフードを下ろした。

 

「……セイバー……?」

 

どことなく似た雰囲気を感じる彼女は、ゆっくりと首を降る。

「私はルーラー。またの名をジャンヌ」

ジャンヌ。

そう名乗る彼女は再び俺を抱き締めると優しい笑みを浮かべる。

そんな笑みが視界を埋める。

安らぎが、安心感が、心を埋める。

「貴方を救いに来た者です」

 

その言葉は、俺の心の安らぎを埋めた。

 

 

 

これが、彼女との出会い談。

ジャンヌダルクとの出会い談。

俺の全てを変えた者との出会い談。





今回は出会い編ということでかなり短めですが次回からはもう少し長くしてヤンデレしていきたいですね。

一話完結の話がいいか、数話かかるストーリーがいいか、どちらがお好みでしょうか?

  • 一話完結
  • ストーリー物

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