病みつき物語   作:勠b

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小説に全く触れてなかったせいか文書が全く思いつきません。
ご指摘等あればどんどん下さい。


病みつきクリスタ2

ごめん、ごめんね

 

言い慣れた謝罪の言葉を並べる俺を優しく抱き寄せる。

何も言わずに、何も責めず。

母親のように寛容に、姉のように優しく。

 

ごめん

 

壊れたラジオのように同じ事しか言わない俺の頭をそっと撫でてくれる。

静かに微笑みながら。

無力な俺を見て

何も言わない

あぁ

責めてくれたほうがどれだけ楽になったんだろうか。

 

ただ、きっと、俺の事を責める事はない

だって俺は---

俺達は----

 

 

 

 

彼女に案内されたのは小さなお部屋。

聞けば、元々用具室として使われていたらしい。

小さな用具室としては充分だろうけど、人が住むには小さすぎる。

部屋というよりも、独房と言われたホウガすんなりと受け入れられたと思う。

トレー1つ置けば半分は置き場が無くなるであろうテーブルと隣にある同じような大きさのタンス、普通のベッド。

後はもう人一人が通れるようなスペースしかない。

こんなところで、2人で住むなんて、住む場所にすら悪意を感じる。

まさしく初めから歓迎してないというのを感じ取れた。

 

「小さなお部屋だけど、私が住むにはちょうどいいよ」

そう言ってベッドに腰掛け、前のめりになり手を伸ばすと壁に手の平がついた。

それにと続けて古びた壁時計を指す。

「これだけ近いと時計の針も何とか見えるから、お兄ちゃんを起こしてあげられるの」

クスクスと笑いながら壁を伝ってタンスへと手を伸ばした。

そこかれ白いタオルを取り出すとそっと私の顔に触れる。

 

「ここに来てからね、お兄ちゃんと約束したの」

「約束?」

「うん、お兄ちゃんが私の分もお仕事してくれるから、この部屋ではお兄ちゃんの分迄私が頑張るって。お兄ちゃんの身体を拭いてあげるんだぁ」

「そうなんだ、偉いね」

楽しそうに言う彼女は、だからと続けると一呼吸おく。

手は止まり、顔を俯かせながら。

「お兄ちゃんが怪我してるの、知ってるんだ」

その言葉に私は何も言えない。

ちょうど今さっき、あんな場面を見たのだから。

 

「私ね、知らないふりしてるだけ。本当は、知ってるの」

う紡いた顔からはどんな表情なのかわからない。

でも、小刻みに揺れる身体と声で察することは出来た。

「お兄ちゃん、ここにきてから怪我ばかりしてるから」

きっと

「きっと」

彼女もまた、理不尽に巻き込まれた犠牲者なんだ

「イジメられてるんだって」

 

タオルを持つ彼女の手を包、静かに見守る。

声を殺しても、それでも溢れる涙は止まらない。

「私のせい……だよね?」

なにも、言えないよ。

彼は何って言っるんだろう。

「お兄ちゃん……これ聞くとね、困った顔をするの。そして、大丈夫って言うの」

言えないよ、言えるはずないよね。

「……音がね、聞こえたの。何かぶつかる音と生なましい音と何かが転がる音。心配で……見に行こうとしたけど……」

けど、ともう一度呟いてそっも顔をあげる。

ゆがんた顔で私が私を見つめる。

悲痛な、顔で。

あぁ、兄妹なんだなって思っちゃった。

こんな話の最中なのに

悲しみでゆがんた顔が、とてもよく似ていたから。

 

「私、怖くて……部屋を出るのが、怖かった。殴られたらどうしよって……っ!!お兄ちゃん、叩かれてるのに……私だけ……」

「誰だって怖いよ」

そっと頭を撫でながら、なるべく優しく応えていく。

「でも、クリスタさんは助けてくれたよ」

「私だって怖かったよ。でも、助けてあげたいって思ったの」

「なんで……?なんで、そんな風に優しくできるの?」

優しい、のかな。

自分でも正直わからない。

ただ

 

「昔ね」

過去の自分を見つめる。

「知らない子によく石を投げられてたの。イタくて……でも、誰も助けてくれなかったんだ」

今でも、その痛みを思い出せる。

「知らない大人にね、怒鳴られる事もあった。何もしてないのに」

今でも、その怖さを覚えてる。

「助けてほしかったな」

誰も助けてくらなかった。

助けてくれた人の事なんて

助けてくれそうな人の事なんて

今でも覚えてない。

「だからね、助けてあげたいって思ったの」

そう

私を助けてくれなかった人達に

そんな人達になりたくないから

「それだけ、だよ」

 

そうだ

自分で言って自分が納得した。

これだ

この生き方画

私の

いや、クリスタ・レンズの生き方だ。

誰かを助ける、優しい女の子。

それが、今の私の、私に出来る生き方。

理想の、生き方

 

「……クリスタさんはやっぱり天使だよ」

天使

そんな風に言われるような人じゃない。

でも、嬉しい……かな。

誰かに求められるのは。

今までにない感情が私の胸を満たしてく。

気がつけば、彼女の顔から悲痛は消えて楽しそうな笑みが残った。

「私、クリスタさんみたいなお姉ちゃん欲しかったな」

お姉ちゃん……

私も、兄妹がいたらこんな気持ちにもっと早く気づけたのかな。

「ねぇ」

「なに?」

「クリスタお姉ちゃんって呼んでいい?」

 

状態か本気かはわからない。

悪戯っぽい笑みを浮かべながらのその言葉は---

私の頭に強く響いた。

「……お姉ちゃん?」

「だ、だめだよね」

「駄目じゃない!!」

彼女の肩を強く握る。

「駄目じゃない、よ」

急に掴んだから驚いた声を聞いて、自分の行いに気づく。

「いいよ、呼んで。ううん、呼んでほしい」

徐々に力を抜かしながら、彼女に願う。

「いいの?」

「いいよ」

じゃぁー

一呼吸

たった数秒の時間が永遠と思うほど長く感じた。

早く、早く……っ!!

 

「クリスタお姉ちゃん」

 

……あれっ?

「どうしたの?」

「ふふふっ、お顔奇麗にしてあげる」

「うん、よろしく」

お互いに微笑みながら、私の顔は優しくタオルで顔を包まれていく。

あれ?

おかしいよ

何も

何も、感じない。

表情に出ないように気をつけながら、困惑している頭の中を整理する。

お姉ちゃんって呼んでくれる妹が出来た。

家族……が、出来た。

でも、何も感じない

感じないのは---

---あぁ、そうだ

当たり前だよね。

だって私は

家族じゃないもん。

私は、お姉ちゃん役なんだ。

ただの他人のお姉ちゃん役なんだから。

家族なんかじゃ、ない。

 

何を話していたのだろうか、全く覚えていない。

優しく包まれながら、孤独に包まれながら過ぎていく時間もまた、永遠のように感じる。

酷い、酷いよ。

家族が手に入るなんて思ってなかった。

なのに、期待させて……

なにも感じさせてくれないなんて。

 

 

 

 

「ようやく掃除終わったよ」

そんな一言でようやく私の頭は覚める。

気がつけばタオルは済に寄せられ、ベッドに腰掛けて談笑していたようだ。

いけないな、ちゃんとしないと。

変な事言ってないといいけど。

「お兄ちゃん遅いよ」

「ごめんごめん」

頬を膨らませながら、彼女は身体を寄せてくる。

私は軽く押されながら隅に隅にと動いていくと、彼女を挟んだ反対に彼も腰掛けた。

3人で座るには、少し窮屈だけどこの窮屈さは嫌じゃなかった。

 

 

「あのね、クリスタさんがお姉ちゃんになってくれたの」

「……何の話?」

急なお姉ちゃん発言に苦笑しながら、テーブルにパンを2つおく。

「お願いしたらね、お姉ちゃんになってくれたの、ねっ!」

「私でよければお姉ちゃんになるよ」

年相応の笑顔を向けられると、思わず調子のいい事を言ってしまう。

でも、一度受け入れたんだから、最後までやらないとね。

少し考えたそぶりを見せると、察しがついたのか彼も微笑む。

「そっか、クリスタお姉ちゃん」

「お兄ちゃんのお姉ちゃんなの?」

「えっ、どうしよ」

そんなの、考えてないよ。

「どっちがいいの?」

妹と同じような悪戯な笑みを向けてこられると、私は考え込んでしまう。

彼の妹か、姉か。

……でも

どうせならお姉ちゃんがいいな。

妹は、もう居るから

 

「じゃ、クリスタさんは俺の妹かな」

「えっ、選ばせてくれないの!?」

「時間切れ」

……この兄妹は私の期待を裏切るのが好きみたい。

というより、妹はいるのに、なんで妹を欲しがるんだ。

欲張りにしか見えない。

「よろしくね、クリスタさん」

優しく語りかけてくれて、軽く頭に手を置かれる。

そして、優しくそっと頭を撫でてくれた。

 

……暖かい。

心が満たされて行くのを感じる。

なんでだろう。

彼女のときとは違う。

彼に優しくされるのは、とても気持ちが良く、乾いた心が潤っていく。

あぁ、いい。とても、いい。

なんでだろう、彼に優しくされるという事に私は幸せを感じてしまう。

出来ればもう少し、もっと長くこのままで。

そう願っていても口に合わない出すことは出来ない。

恥ずかしさもあるけど、彼にそんな迷惑をかけられないから。

 

「お兄ちゃん、私も」

彼の胸にもたれ掛かるように甘えた声で私の幸せは終わる。

甘えん坊だななんて迷惑そうに軽口を叩きながらも、優しい微笑んでゆっくりと頭を撫でていく。

さっきまで私を撫でてくれたその手で。

……そうだよ、本当の妹はすぐ横にいるんだから私ばかり優しくはしてくれない。

その事実だけが重く重く頭にくる響く。

どれ程撫でていたのだろうか。

少なくとも、私よりも長くこの光景を微笑んでいたらノックの音と共にドアが開かれた。

 

「あぁ、ここにいましたか」

黒い服装に身を包んだ初老の男性が私の顔を見てため息と共に安堵の表情を浮かべた。

「心配しました。部屋を見たらいないのですから」

「オーナー、遊びにきてくれたの?」

オーナーと言われた男性は、期待の眼差しを向ける彼女の傍まで行くと、優しく手を取る。

ここの管理人として勤めている事から、皆からオーナーとして親しまれている男性は、私を家からここに連れてきた男性でもある。

最も、それはこの人が悪いんじゃないんだけど。

 

「今日はもう遅いですから、また明日にしましょう」

「えー」

不服そうな彼女を彼は窘める。

そんな兄妹を横目にオーナーは私の顔を見て微笑んだ。

なんだろう、兄妹の時とは少し違う感じがする。

機械のような感情を感じない微笑みを。

出会って吸う時間もたってないが、この微笑みは少し苦手だ。

「彼等と仲良くしてくれてありがとうございます」

「……えっ?」

少し驚いた。

ここの人達は皆侮蔑な態度で接していた彼等との仲を公認する事に。

いや、明日も会うと言ってたばかりだし。

 

「今日はもう遅いですが、少しクリスタさんと話したい事がありまして……部屋に戻るまで老人の話し相手になって頂けないでしょうか?」

「オーナー、私もお話したい」

「クリスタさんと話がしたいって言ってるだろ」

聞き分けのない妹の頭を軽く叩きながら注意される。

不服そうな顔をしながらも、その対応に満足したのか直ぐに笑みを浮かべて機嫌を直す。

より深く、彼の胸に飛びこびながら。

 

「わかりました」

時計を見ると私が部屋を出てから二時間が経とうとしていたのを見て驚く。

実感が全くわかない。

こんなに早く時間が過ぎて行くように感じたのは、大好きな馬達のお世話をしている時ぐらいだった。

もう戻らないと彼等にも迷惑だ。

彼にも私にも、明日も仕事があるから寝ておかないと。

 

扉に手をかけたオーナーについて行くように立ち上がる。

横から眺めても上から眺めても彼女の顔は満足そうな笑み。

大好きであろう兄に甘やかされているその姿を見ると、ふと考えてしまった。

あんな風に彼に甘やかされる自分の姿を

---あぁ

眺めているだけじゃ満足出来なかった。

「おやすみ」

その言葉に2人も返答をくれる。

私は、これだけで満足できる。

そう、ついさっきまで思ってたのに。

 

「お兄……ちゃん」

 

言いたい事を言い残してドアを勢いよく締める。

顔が熱い。

きっと、真っ赤なんだろうな。

こんな顔、あまり見せたくない。

でも、顔を見て言ってみたい。

彼は、どんな顔をしてどんな反応をしたんだろう。

……優しく頭を撫でてくれたら、嬉しいな。

 

「随分と仲良くなられましたね」

「えっ!?あっ、はい」

羞恥心に染まる顔を俯かせていた私を面白そうに見られていた。

恥ずかしい。

「彼等の母親や妹ちゃんとは縁がありましてね、だからここに招いたのですが余り周りと馴染めていない。貴方を切っ掛けに周りとも馴染むといいのですが」

「そう……ですね」

彼等と周りとの関係は一目瞭然。

同じ建物に住み、同じ仕事をしてるのに明らかに不当な扱いを受けている。

妹が病気だから

そんな、理由で。

「今日もヒト悶着あったのでしょう。マルコスが話しているのを聞きました」

マルコスという名前を聞いて記憶を探る。

今日一日出色んな人と出会い、自己紹介をした。

マルコスという人の顔が直ぐには出なかったけど……。

「あっ」

顔と名前が結びつき思わず声が出てしまう。

マルコス、あの人は彼に暴力を振るった大人の男性。

私からしたら理不尽の象徴のような人。

「仲良くするように伝えているんですがね、病気というのは難しい。感染らないと伝えても皆疑心暗鬼に刈られてしまう」

悲しげな顔で語るオーナーを見て、少しだけ安心する。

私だけじゃない。

この人も、彼等を心配してくれているんだ。

 

ゆっくりと歩いた先にある階段にオーナーが足を乗せる。

私は、段差に乗せようとした足をそっと床に戻し立ち止まる。

着いてきていない事に気づいたのか、踊り場で止まるとそっと振り向き私の様子を伺うよな沈黙が場を包む。

彼の顔を思い出す。

今にも泣きそうな、彼の顔を。

あんなに幸せそうに笑うのに、部屋から出たら笑うことすらしない。

不思議と両手に力が入る。

意を決してオーナーの顔を見た。

「オーナー、彼は今日殴られていました。マルコスさんに……彼は、悪くないのに」

「みたいですね、他の人達に話してるのをたまたま聞いて事情を聞きました。彼は何も悪いことをしていない」

「なのになんで……殴られたり、イジメられたりすんですか?」

「皆不安なんでしょう。壁を壊して巨人が現れ、今まであったモノが全て崩れたのですから」

「……彼もそうなのに」

「そうですね」

 

皆、自分の都合を押し付ける。

自分の不満を、彼に

彼だって被害者の一人なのに。

「では、マルコスさんをここから退去させましょう」

「……えっ?」

急な提案に驚いてしまう。

震えていた私の肩はすっかり収まる。

力は抜け、思わず変な声が出てしまった。

「マルコスさんが出ていけば彼は暴力を受けずに済むかもしれません」

「そ、そんなのいいんですか?」

「私はここのオーナーですから、可能です」

無機質な微笑みのまま、淡々と言う。

マルコスさんを退去させる。

そうすれば、彼は暴力を受けなくなるのだろうか。

でも、それでいいんだろうか。

何も言えない。

いや、返事なんてできない。

私が知らないだけで、マルコスさんもまた事情があるかもしれないんだから。

困り困った私を襲うように、オーナーほ深々と頭を下げた。

何故、こんな事をするのだろうか。

踊り場に佇む彼の姿がまるで、私を惑わす悪魔の様に見えた。

その姿に怯え、階段にぶつけていた足は一歩、また一歩と遠ざかる。

 

「私はここのオーナー」

そして、と続けてその悪魔は囁いた。

「私は、貴方様の忠実な犬でございます」

買おだけ上げた微笑みは、さっきとは違う。

明らかに、何かしらの感情を感じる。

それをなんと表現するのかわからない。

だけど、ただただ不気味。

 

「理由はわかってらっしゃるでしょう」

……理由。

それは、オーナーが私を引き取った理由でもある。

「私がレイス家の血を引いてるから……ですか」

その回答しかない。

答えなんて、それしかない。

不気味な笑みは消え、また無機質な微笑みに戻ろと満足気に傾く。

「でも、私に良くしても何もありませんよ」

 

レイス家の血を引いてる。

それでも、それだけだ。

気族の血を引いていようが、私にはそれだけしかない。

本当の娘では、ないのだから。

 

「いえいえ、貴方様には価値があります。私が尽くす程の大きな価値が」

価値

私にも、価値はあるのだろうか。

誰かに愛される、誰かを愛すような人としての価値が……。

「ですから、どうか覚えていてください」

そう言うとオーナーほポケットから何かを取り出した。

首飾り、だろうか。

金属で出来てるであろうそれを見せつけるようにしながら続けた。

「私の名前とウォール教の存在を。我々に助けられたという恩を」

……ウォール教

聞いたことがない名前に反応する。

でも、宗教の一種なのだろ。

本で見たことがある。

余り家の外のことを知らない私は、彼のいう団体の事を何も理解できない。

彼の言う事の殆が理解できない。

 

「貴方様はまだ若い。単刀直入に伝えたほうが分かりやすいと思ったのですが……」

苦笑しながら頬を掻き、私の様子を見て過ごし困っていた。

「難しく考えないでください。私はただ、貴方様の欲しい物を出来るだけ提供し、貴方様の嫌うものを排除するたげです」

「排除って……そんなのいいです!!」

自分のために他人を犠牲するだなんて、そんなの駄目。

それじゃ、私も理不尽な人になる。

それだけは、嫌だ。

「では、欲しい物を仰有って下さい。出来るものは揃えますよ例えば---」

続く言葉を溜めながら、私の反応をジッと見てくる。

聞きたくないっと思いながらも、彼の言葉が気になってしまう。

でも、私の欲しい物なんて---あるとしたら、それは手に入らない物だから。

それは----

 

「家族、とか」

『家族が欲しい』

 

私の思いと同時に言われた同じ言葉。

家族

もしも、もしも私がそれを願ったら叶えてくれる?

家族を---

でも、だけど---

 

 

「いえ、もういいです」

大丈夫ですから、と続けて話を終わらせるように促す。

これ以上は、もう聞きたくない。

聞かせないでほしい。

 

気持ちは伝わったのだろう。

最後に、と続けて謎の首飾りをポケットに仕舞いながら。

「この首飾りを持つものはウォール教の教えを知るもの。ここでは貴方様の味方でございます。貴方様の忠実な犬。妹ちゃんも、貴方様の味方でございます」

「彼女も……?」

あんな小さな子まで宗教に入っているの?

本では余りいい印象をうけなかったけど。

だったら、彼も--

「何かありましたら、我々犬共にお伝え下さい」

話は終わったと言いたいのだろう。

踊り場から離れていくオーナーに彼の事を聞こうとしても終わらせようとしたのは私。

それに

聞きたければ、本人に直接聞いてみればいい。

 

だから、明日も行っていいよね。

いいよね?

自問自答をしながら、私も階段に足を乗せる。

明日は晩ごはん一緒に食べよう。

そして

そして、お兄ちゃんって目の前で言ってみよう。

どんの反応するかな?

……あぁ、駄目な子だな私。

オーナーの話を頭の片隅に無理やり追いやって、彼等の事を考える。

部屋に戻って横になると襲ってきた睡魔に誘われながらも考えてしまう。

昔読んだ本にあったこと。

忘れていたけど、宗教の事を思い出すときにふと思い出した。

 

禁断の果実

 

決して手にすることを禁じられたモノまつわる物語。

欲しいと思っても、それを口にすることは禁じられている。

名は体を表すとはまさしくこのことだろう。

あぁ

私の禁断の果実は、きっと---

でも、それを得るわけにはいかない。

だって、それは

禁じられているのだから。

一話完結の話がいいか、数話かかるストーリーがいいか、どちらがお好みでしょうか?

  • 一話完結
  • ストーリー物

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