風が君の頬を撫でる。   作:だん

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レナの次はやっぱりあの人の登場です。

読んでくださる皆さんは、妹姫と姉姫のどちらがこのみでしょうか?

ロリひめさまの登場までは、もうしばらくお待ちください(笑)


1節(3)

門番に挨拶をし、応接間へご案内いたしますとの提案を丁重に断ったバッツは、タイクーン城の正門から城内へと続く長い階段を、ひとりゆっくりと登って行くところであった。

 

勝手知ったる友の居城だ。門番にも顔が効くバッツは、先頃無理矢理に拝領させられた“(サー)”の称号を有効活用させてもらうことにしていた。

「ま、こんぐらいのわがままくらい、通させてもらっていいよな」

ひとり呟きながら歩む彼の歩調は軽い。

本来ならば、正式な手続きを踏み、面倒な手順にのっとらなければ、通ることを許されぬこのタイクーン城の大階段を、バッツはひとり、颯爽と進む。

友人が友人に自由に会いに来れるようにと、半ば強引に与えられた騎士の位。

自由気ままが身上のバッツにとっては、地位などあっても堅苦しいとしか思わなかったのだが、彼の仲間達は、皆それぞれやんごとなき立場なので、それこそ自由気ままにこうして遊びに来るためには、致し方ない重石のようなものであった。

そんなふうに、早速いただいた立場を利用して、こうして友の顔を見にやってきたというわけなのだが……。

 

さて。

 

ピリっと首筋に走る感覚に、思わず唇の端がつりあがる。

無遠慮に叩きつけられるのは、平和になった昨今ではなかなか味わうことのできない、懐かしい感覚。

殺気である。

無理もないといえば無理もないのかもしれない。

アイツは自分のように自由気ままというわけにはいかぬ立場だ。

もっとも、真面目なアイツの妹さんに比べれば、だいぶ勝手気ままにしているようだが、それにしたってアイツの性格だ。

窮屈な王宮暮らしに、刺激を求めるのも無理はない。

……俺も相変わらずだが、お前も相変わらずだな。

 

「なぁ、ファリス!」

 

言うや、腰の剣帯から深紅の愛刀を抜きはなったバッツは、ろくに狙いも定めぬままに、頭上へと刀身を振り上げた。

瞬間。

 

ぎぃんっ!!

 

刃と刃がぶつかり合う火花を散らし、彼の頭上から躍りかかった影が、斬撃に弾かれて飛びすさり、彼の数段先にひらりと着地した。

 

「久しぶりだな、風来坊」

「ご挨拶だな、海賊王女」

 

言ってニヤリと笑う二人。

バッツの目の前に降り立った人物。

王女と呼ばれはしたものの、その出で立ちは世間一般の人々が想像する姫君のそれではない。

ピシッと立った詰襟をワイルドに着崩し、スカートの代わりに細身のズボンに軍靴をまとった凛々しい出で立ち。

右手にはバッツの斬撃とぶつかり合い、火花を散らした曲刀を携えた男装の麗人ことファリス・シェルヴィッツは、バッツの物言いに気を悪くすることなく、むしろ笑みを深くして、曲刀を腰に吊るした鞘に収めた。

「まったく、いつもいつも急に現れやがって。お前が来ているんだったら、おれも討伐隊に同行するんだった」

言って拳骨を作るファリスに「まぁ、たまたまだよ」と、同じく握った拳骨をぶつけてバッツが応える。

およそ王女らしからぬ振る舞いなのだが、これで本当にタイクーン第一王女サマなのだから、世の中とはオソロシイものである。

「今度は、ゆっくりしていけるんだろ?」

そう言ってくれる友の言葉に、バッツは苦笑を返すばかりだ。

言ったファリスにもわかっている。

この男は風だ。

ひとところにジッとしてられるワケがない。

「ったく、世辞でもなんでもいいから、たまには気の利いたことを言えよ」

呆れたように言うファリスに、バッツは頭をポリポリとかきながら「まぁ、一晩くらいは厄介になるよ」とだけ返すのだった。

「あんまし長居しても、レナやお前の仕事の邪魔になるだろうしな」

などと、下手な気遣いまで付け加える朴念仁。

それが、バッツであった。

「あのなぁ」

さすがにちょっとだけムッときて、ファリスが眉根を寄せる。

「私やレナがどれだけ……」

寂しい思いをしてると思ってやがる。

そこまで口に出かかってハッとする。

「……?お前やレナが、なんだって?」

案の定、無神経に聞き返して来るところは一緒に冒険していた頃となんら変わらない。

「う、うるさい!なんでもねぇよ!」

慌てて突っぱねるファリスに、困り顔しかできないバッツ。

そういえば、こんなやり取りをどれくらいしただろうか。そんな事がふとファリスの脳裏をよぎったその時であった。

「お、おかしらぁ〜!」

そんな二人に向けてかかる声がある。

声のもとに顔を向けた二人の視線には、見慣れたタイクーンの青い甲冑を、如何にも着慣れぬといった風情でまとった青年が、彼らに向かって手を振っていた。

「おかしらぁ!バッツの兄ィ!何してるんでさぁ!レナ姫さんが応接間で首を長くしてますぜぇ!急いでくだせぇ!」

およそ王宮兵士らしからぬ口調である。

「ロイっ!城で“おかしら”はよせって言ってるだろっ!」

怒鳴り返すファリスは、これ幸いとロイと呼ばれた青年のもとへ大股で詰め寄って行く。

叱りつけられたかたちのロイは「ア、アイアイサー」と慌てて返す。

そんな様子を見て、バッツはコイツも相変わらずだなと、内心吹き出すのだった。

「オイ、バッツ!何してるんだ!レナが待ってるだろ!急げよ!」

「はいはい」

やや八つ当たり気味なファリスの声に苦笑いして、バッツは彼らを追って歩き出したのだった。

 




ハイ。

ってぇなワケで、ファリス姉さんの登場です。
ちょいとわかりにくいかもしれませんが、ファリスの一人称が「おれ」だったり「私」だったりするのは仕様です。

後半に登場したロイという兵士ですが、彼は前節に登場してきたシェリルと同じく、ゲーム本編にも登場しているキャラクターです。
さて、誰だかわかるでしょうか?
まだ出てきたばっかだし、わかるわきゃないですよね(^◇^;)

次回以降の更新で、ちょっとずつ彼らも絡んでいきます。

お楽しみに!
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