風が君の頬を撫でる。 作:だん
「バッツ!」
花のような笑顔で、タイクーンのお姫様は応接間に通されたバッツを迎えてくれた。
「久しぶりだな、レナ」
豪奢なソファから立ち上がって、入室したバッツのそばまで駆け寄ってくるレナに、自然と笑みがこぼれる。
こういうところは全然変わらない。
この気取らなさこそ、レナという女性の一番の魅力である。
「本当、お久しぶり。元気そうで安心したわ」
そう言って、口元に手を当ててクスリと微笑む。
昼下がりの光が窓から差し込む中、まるで木漏れ日のようだなとバッツは思った。
この日のレナは、政務用の簡素なドレスなのだろう、飾り気の少ない白のブラウスに紺色のスカートといった出で立ちだが、飾り気が少ない分、余計に彼女の美しさが際立つかのようである。
「レナもな。やっぱり忙しいか?」
「少しだけね。二つの世界の統合で、やっぱり領土関係でトラブルが多くて」
「ああ。俺もそれは気になってたんだ。サーゲイトとカルナックだろう?」
ええ、と。返すレナは少し困った顔をした。
「ジャコールとバルに関しては、クルルが間に入って頑張ってくれているから大丈夫のようだけど、ゼザ王を失ったサーゲイト内部で、権力争いが表面化してきてるらしくて、それの影響がカルナックにまで及んでいるの」
可憐な顔を曇らせるレナ王女の言葉に、実際タイクーンをなかなか離れることのできない彼女達の代わりにその場に足を運んだバッツは、そうだなと神妙に頷くのだった。
彼らの話に出てきたサーゲイトとカルナックだが、そもそもは別々の世界の国家であった。
先の冒険、バッツ達がクリスタルに導かれ、世界を襲った“無”と、その力を求めた“
世界の統合直後は、その混乱に乗じてエクスデス率いる“無”の力と魔物の軍勢の侵攻より、領土問題どころではなかったのだが、バッツ達の活躍によってエクスデス打倒がなされ、“無”の脅威から世界が救われた途端に湧き上がってきたのが、まさにこの領土問題であった。
先の動乱で各国とも疲弊している現状だからこそ、表立って争いごとにはなっていないのは、不幸中の幸いと言えるのかもしれない。
だが、まだまだ争いの火種はくすぶり続けていた。
「俺も実際観てきたよ。カルナックは女王の体調がまだ万全じゃないらしくて、陣頭指揮がとりきれていないし、サーゲイトも似たような問題った」
腕を組んで唸るように言うバッツ。
いつになく、真剣な顔を見せるようになったものだなと、大事な仲間の意外な成長に、レナの胸にはなんとも言えぬ思いが湧いてくるようで、思わずバッツをじっと見つめてしまうのだった。
「……ん?」
その視線を感じたのか、バッツか視線をこちらに戻して来たものだから、見つめていたレナの視線とバッツの視線とが絡み合った。
「ッ!?ご、ごめんなさい!」
急に気恥ずかしくなって、急いでレナが視線を外す。
何故だかわからないが、耳たぶが熱い。
普段は沈着な自身の鼓動が、今だけ不可解なほど速かった。
「お、おう……」
バッツの方も、少しだけ顔が赤いようだった。
「な、なんだよ。急にジッとこっち見て」
頭をポリポリとかく仕草。
出会った頃から全然変わらない彼の癖だった。
…ああ、やっぱりバッツだ。
そんな考えがレナの脳裏に浮かぶと、途端に今度はさっきまで瞬間最大風速を記録しかけた彼女の鼓動がなりをひそめた。
なんとなく、安心した彼女は、クスリと笑みをこぼすと「ごめんなさい」と言いながら「バッツがあんまり真面目な話をするものだから」と続けて、再び鈴のように笑った。
「む。なんだよ〜、ヒトをちゃらんぽらんみたく」
むくれる
「ええっ!?自覚なかったの!?」
やはりバッツはこうでなくては。
いつも通りの掛け合い。
大きな瞳を見開いて
きゃあと可愛らしい悲鳴とともに、「やったわね」と彼の肩を軽く叩き返してやる。
おどけて「いってぇ!」などと大袈裟に言うバッツに、こんな普通の女の子の様な真似をするのも、かなり久しぶりだと思いながら、彼女自身いつぶりになるかわからない心からの笑い声をあげるのだった。
今回の更新はここまで。
ん?ファリスは?
と思った方。
ご安心を。
すぐ出てきます。
あー、俺もいっちゃこーらいっちゃこーらしたーい(笑)