風が君の頬を撫でる。 作:だん
なんとか今回も日付変わる前に更新できそうです。
「今更何を言ってる」
フ。と口元の笑みを浮かべるファリスに、レナも「そうね」とうなづく。
「むしろ、最近は全然顔を見せに来てくれなかったんだもの。体調でも崩してないか心配しちゃった」
ちょっとだけ上目づかいになるレナの言葉には、少しだけバッツを責める様な響きがあった。
「そうだそうだ。何ヶ月も顔を出さない事もあったじゃないか」
便乗するファリスの声にも、少しだけトゲが混じる。
「何を遠慮してるのか知らないが、友人に会う時間がないほどの激務じゃないんだから、もうちょっと顔を出せよ」
「そうは言うが、女の子……しかもわざわざお姫様に会うってのに、それ相応の理由もなしにってわけにはいかないだろう?」
言って頭をかきながら口を尖らせるバッツである。
「まぁ」
「な、何言ってんだッ」
そんなバッツの
レナの方は『女の子』に、ファリスの方は『お姫様』反応したのだろう。
普通(?)の女の子扱いされた事に慣れぬレナは思いの外嬉しかったらしく、お姫様扱いされた事に慣れぬファリスは思いの外照れくさかったようだ。
「もう、バッツったら!」
「バカヤロウ、何言ってやがる!」
「イテェ!?」
両サイドからそれぞれ照れ隠しの一撃をもらい、女の細腕に込められたクリスタルの加護が、バッツ口から悲鳴を叩き出すのだった。
…考えすぎかな?
確かに、レナとファリス。そしてもう一人、バルの王女であるクルルは、とても魅力的な女性達だ。
だが、魅力的な女性で高貴な姫君である前に、彼女達は苦楽を共にしてきた仲間なのだ。
浮ついた思いよりも、確かな友情がある。
そんな不純な考えを彼女達に持つのは、やはり不謹慎な事だ。
そう思うと、バッツは両肩に襲いかかる激痛にも笑顔で耐えられるように思えた。
・・・
・・
・
…甘かった。
そんなバッツの紳士な思いは、彼女達の魅力を意識してしまった今となっては、なんと無力な事であろうか。
否。
バッツは頑張っている。
バッツはかなり頑張っているのだ。
…近い。
頬をひきつらせるように笑顔を作って見せるが、うまくいっているか自信がない。
…何故、こんなに距離が近いんだ…?
おかしい。
この距離感はおかしい。
確かに先ほどまでは、普通の茶会だったはずだ。
普通にお茶を楽しみ、普通に三人向かい合って、普通に会話を楽しんでいたはずだった。
それが何故、こんな近距離になったのだ?
確かにさっきまでは、普通の距離感だった。
図解すればこんな感じだった。
◽︎▼◽︎
◽︎◯◽︎
◆◽︎◆
それが今では
◆▼◆
◽︎○◽︎
◽︎◽︎◽︎
こうである。
▼がバッツで◆が姉妹。
○はテーブルである。
……近い……。
なんかこう、物理的に。
いつの間にこんな位置になったのか。
気がついたらこの状態であった。
「どうしたんだ?」
右隣のファリスがこちらを覗き込んでいる。
…うっ。
普段は男装しているが、もともととんでもなく綺麗な容姿をしているファリスだ。
それが女装……もとい、本来の女性らしい服装に変わるだけで、こうもドキドキするものか。
ギャップ萌えというヤツの恐ろしいところである
「い、いや。どどどどうもしないよ」
物凄く努力して平静を保とうとするバッツは、卓の上のスコーンを手に取ると、千切らずそのまま口に押し込んだ。
案の定喉につっかえるが、むせ返りそうになるのを気合いでこらえて飲み込む。
本当なら、きっと物凄く美味しいスコーンのはずなのに、少しも味がしない。
「もう、慌てないの。ホラ、ほっぺたに付いちゃってる」
「!!??」
今度は左サイドのレナである。
天然ってヤツは、最強かもしれない。
バッツの頬にくっついていた食べカスのスコーンをつまみ取るや、そのままパクッと食べてしまったのだ。
そして、さもはしたないマネをしました事を誤魔化すように舌を出して見せる。
普段のレナからは想像できない表情。
これは反則だ。
まさに前門のファリス、後門のレナである。
「おい!レナ!はしたないんじゃないか、それは!」
「えへへ。ゴメン、姉さん」
そう言うファリスだが、頼むからこちらを挟んで注意するのはやめて欲しい。
フワッと甘いにおいがして、クラクラする。
「ちょ、ちょっと二人とも」
近すぎやしませんか?
そう言おうとするのだが、男という生き物のなんと悲しい事よ。
今のこの状況の幸福感を手放す事を、無意識に残念に思うのか、強く拒めぬ己自身が情けなかった。
ハイ。
ハーレム系ラノベを書いている人って凄いよね!
尊敬します!