風が君の頬を撫でる。 作:だん
申し訳ございませぬ。。。
そう思うバッツだが、読者諸君も想像してみていただきたい。
絶世クラスの美女に挟まれて緊張しない男など、そうそういないのではないだろうか。
しかも、レナもファリスも完全に無防備なのである。
好意的なのはわかるのだが、むしろ自分が男とみなされていないのではないかとすら思えるほどだ。
もういい加減、勘弁してくれと嘆きの声が出そうになったその時である。
ゴンゴン!
と、少々乱暴なノックと共に「お、おかしら!すいやせん!」と、王宮内に似つかわしくない口調で声がかかった。
先ほど正門階段でバッツ達を迎えにきた青年、ロイの声であった。
これぞまさに天の助け!
「お!どうかしたのか?」
すかさずバッツは立ち上がり、ファリスの「王宮内でおかしらはよせ!」の恒例の叱咤さえ遮る勢いで扉まで逃げ……走り寄ると、扉を開いてロイを招き入れた。
「どうしたんだロイ?何か問題か?」
「あ、バッツ
扉を開けたのがバッツである事に少々驚いた表情を見せたのは、ロイ・バーソロミューという年若い青年兵士だ。
元海賊頭領という過去を持つファリスだが、海賊時代は若干二十歳という若さで、海の荒くれ者どもを仕切っていた。
人望も厚く、腕もたったため、若輩でしかも女だてらというにもかかわらず、海賊団内では絶大な人気を誇っていた。
彼、ロイはその海賊団の最年少団員であった。
“無”の脅威が去った今、タイクーンに王女として戻ったファリスだが、暇をみつけては海賊団のアジトに顔を出し、今やファリスの海賊団は、タイクーン御用達の、海上保安部隊的な扱いとなっている。
そんな海賊団において、いまだに元頭領ファリスを慕う団員達は多い。
ロイはそんな団員達の中で、人一倍ファリスに対して強い憧れを持っており、熱心な志願の末、ファリス専属の近衛兵という立場を手に入れた。
もっとも、海賊時代は年若い事と、何より致命的な“船酔いする”体質であったため、体良くファリス及びタイクーンに押し付けられたかたちだが、本人の希望や、その憎めぬ性格も相まってか、およそ理想的な形に落ち着いていた。
「来客ですか?今日は申し訳ないけれど、面会を止めさせてもらったはずなのだけれど……」
レナがおかしいわねと呟く。
「ああ、ロイも分かってるだろう?大事な友達が来てるんだ。謁見は明日にしてもらえ」
「それが……」
ロイがほとほと弱り果ててと言ったていで、言葉を続けようとした時である。
「……だからっ!……ってるだろう!!」
よほどの大声なのか、階下の広間から聞こえてきた怒鳴り声に、バッツが眉根を寄せる。
「……この声」
聞き覚えがある。それも最近の事だ。
確か……。
「チッ、アイツか……」
ファリスが嫌悪感を隠そうともせずに言う。
レナも表情を険しくしている。
どうやら、彼女達にもこの声の主に心当たりがあるらしい。
「仕方ないな。おれが追い払おう。バッツ、付き合ってくれ」
言ってファリスが立ち上がり、バッツもそれに頷いた。
流石に苦楽を共にした仲間達である。
バッツの表情をみて、彼もこの招かれざる客の事を知っていると理解したのだろう。
「姉さん、私も行きます」
「レナは残れよ。ここはおれとバッツで充分だ」
「いいえ。こういう時は、きっぱりとした態度の方がいいと思うの」
妹を気遣う姉に感謝しながら返すレナの言葉に、ファリスはそれ以上は言わず、仕方ないなとうなずき返した。
「行きましょう」
そう言ったレナを先頭に、彼らは強引すぎる来客の元へと向かうのだった。
はい。
ようやく話が動き出しそうですな(笑)
今回は
ロイの詳細を説明文させていただきました。
ファリスの海賊アジトにて「オイラ、船酔いしちゃうの」っていってたり、見送りなどでいつもワンテンポ遅れる彼です。
今回はシェリルとともに名前をつけての登場となりました。
コイツもよろしくお願いいたします。