「こちら戦艦扶桑。提督聞こえますか?」
『こちら提督。聞こえているわ』
「現在南西諸島沖を北東に向けて移動中です」
『了解。そのまま進んでちょうだい』
「はい」
そう言って扶桑は通信を切る。現在扶桑を砲艦とする扶桑、山城、蒼龍、飛揚、加古、電改の艦隊は南西諸島の攻略していた。
「そろそろ敵の主力部隊が見えるはずだわ」
そう扶桑は言う。
「いよいよね。ここの攻略の後提督は本当に引退しちゃうの?」
そう言うのは蒼龍である。
「そうね。立派な提督なのに残念ね」
「引退した後ってどうするのかね。恋人探しでも始めるかな?」
飛揚、加古の順に言う。
「提督と離ればなれになるのは嫌なのです」
電が暗い顔で言う。電は古参メンバーの一人である。最初のころは秘書官をしたり、砲艦が大破した遠征艦隊の訪韓をかわりに努めたりといろいろあった。
「電ちゃん」
扶桑は電に声を掛ける。
「大丈夫よ。引退してもまた会えるわ」
扶桑は電を励ます。
「扶桑さん」
「さあ、行きましょう。提督の引退土産に勝利を持ち帰りましょう」
「はいなのです」
~呉鎮守府~
段ボールでいっぱいになった提督室を見て本日何度目かのため息を漏らす。長年勤めてきたここを離れるのは少し寂しい。
「しかしこればかりはどうしようもないな」
そう言って懐から一枚の写真を取り出す。
そこには私の愛しい一人息子が写っていた。
あと半年もすれば中学を卒業して高校に入る。その時私は傍に居てやりたい。
小学校の入学式、卒業式も、中学の入学式から主な行事まで。
仕事につきっきりで側に居てやれなかった。
「産んでからは妹に任せっきりだったからな~。中学の卒業式はちゃんと出ないとな~」
コンコン
ドアをノックする音が聞こえる。
「どうぞ」
「失礼します」
そう言って入って来たのは先程出撃していた扶桑艦隊であった。
「報告します。海域を解放しました。我が艦隊の損害は軽微」
「分かった、詳しい報告はあとで聞こう。取りあえず入頓して来なさい」
「「「「「「はい」」」」」」
そう言って彼女たちは部屋を出ていった。
一人を除いて。
「・・・司令官さん」
「どうしたの電ちゃん?」
電は震えながら提督に近づき抱きついた。
「提督と離ればなれになるのは嫌なのです」
「・・・電ちゃん」
そんな電を提督は優しく抱き返す。
電は最初に出会った艦娘である。その分誰よりも提督と長く過ごしてきた。
「・・・大丈夫よ。金輪際会えなくなるわけじゃないのよ?それに颯手の希望する高校がこの近くなの。だから颯手が合格すればまた会いに来るわ」
「・・・本当なのです?」
「本当よ。だからほら笑って、ね?」
そう言うと電は少しだけ微笑んでくれた。
数日後提督は海軍を引退し、息子の待つ故郷へと帰って行った。
因みに提督の抜けた穴は新米の提督の育成をかねて新人が着任したらしい。