海賊たちの首魁、謎の老人の手によって破壊された首領パッチカー。
あの手この手で苦しましてくる老人に対して
遂に反撃の狼煙を上げる… !?
「ここまで手強い人間なんて、そうはいないから先に白状するけどね」
敵の攻撃で動かなくなった首領パッチカーの車内にて、てゐの声が響く。
「私の「幸運にする能力」には限界があるし… カラクリもある。
一円支払えば、一円分の幸運が手に入る。そう考えればいいよ。今はね?」
戦闘に関しては当てにせずに自力で倒せ――と彼女は私たちに言い。
盗賊たちは人買いの連中のためになるべく無傷で女性、子供を手に入れようとする。
ならばボーボボたちが戦えやすいようにわざと捕まるのも一つの手だとも。
釣り糸と釣り針には硬い物質を貫通するほどの威力はない。憶測と推測ではあるが…
それならば全身鎧で身を固めればいいとボーボボは提案し実行する。
アフロから手のひらに収まる赤いクリスタル状の物を取り出して――――
「テックセッター!」
ボーボボが赤いクリスタル状を左手で掲げると
衣服が弾け飛び、代わりに人型兵器のような装甲を身に纏っていく…
やがて完了したのか名乗りを上げる――――
「テッカマンエビル!」
赤と黒の毒々しい二色。下半身はほっそりとしたフォルムに対して
上半身は巨大な、先が尖った肩アーマが装着されており… ゴツゴツしたイメージ。
アフロが邪魔して入れなかったのか、アフロの上にヘルメットが乗っている。
「これならヤツの釣り針も大丈夫だ」
頭が無防備なんですが?
「最初に言っておこう、この姿で理性を持たせることができるのは30分だけだ。
その時間を過ぎれば俺は理性を失い… 敵味方関係なく暴れるだろう。
その間にヤツとけりをつけるぞ! 」
そんな危険な物を装着しないでほしいと思ったが――
普段から敵味方関係なく暴れているので普段と大して変わらない。…と結論に至った。
てゐとメリーも同じ意見のようで深く頷く。
ボーボボの傍らには白銀に輝く全身鎧に身を包んだ天の助。
右手には片刃の剣。左手には真珠のような色合いの逆五角形の大盾。
「聖騎士ガイア… ここに見参」
そしてもう一人、首領パッチは竜を模した黒い兜を被り背には竜の羽。
手には斧と槍が組合わさった漆黒の武器を持っている。
「竜騎士ガルザークだ。友の願いにより
うん。中身以外はカッコいい。
三人はそう言うと扉の外へと飛び出し、私たちも後を追う。
地面は首領パッチカーが走り回った影響か、あちこちにタイヤの跡が残っている。
あれだけいた海賊――モヒカンたちがいなくなっている。どこに消えたのか…?
今のところ敵の襲撃はない。
三人の視線、向かう先には木の枝から吊るされた村長、トモヒロがそこにいた。
ただしトモヒロの手前の地面には――――
『安心してください♥ 罠はございませんから♥』
と、書かれた立て札が立てられており… 地面には細い糸が幾重にも張り巡らされていて
その糸を目で辿っていくと矢が装填された弓と石が乗せられた投石機に行き着く。
「「どう見ても罠!」」
怪しいことこの上ないにも関わらず首領パッチとボーボボは――
「見ろよ。罠はないってさ」
「ああ、助かるぜ。ヤツが来る前に急いでトモヒロを助けるぞ」
「オーケー」二つ返事で了承。何の疑いもなく加速して突っ込んでいく。おい。
私たちが声をかける暇もなく、躊躇なく罠に足を踏み入れる――――当然、罠が作動。
ボーボボたちに向かって石と矢が放たれる。
「「しまった! 罠か!?」」
「「罠だって言ってんでしょ!?」」
豪雨のように降り注がれる石と矢。
風を切る音がしばらく続き、衝撃が土埃や砂塵を巻き上げて三人を覆い隠す。
やがて矢弾が尽きて、視界が晴れると――――
「ふぅ… 危ないとこだったぜ」
全身に矢が突き刺ささり白目を剥いた首領パッチ、天の助と
二人を盾にして難を逃れた無傷のボーボボの姿が…
「「味方を盾にしたぁぁぁ!!!」」
視線と意識が前に集中した時。それは
足下――その地面の下から例の黒い釣り糸でできた巨大な蜘蛛の巣の形の網が出現。
私を含むメリーとてゐを巾着袋のように包み込んで閉じ込め空中に吊り上げる。さらに――――
「海亀ダイブ!」
私たちから離れてたおかげで助かったヴォルガノスだが――――
空から降ってきた海亀。その下敷きになり気を失う。その背には漁師姿のあの老人。
ただし頭から血を流して身なりもボロボロ。なんでケガをしてるのこの人…?
「お主らが撃った水色の円柱の弾丸。避けたのは良いが木の下敷きになったんじゃ…」
まさかのところてんマグナム。
彼は両腕の袖に腕を交差するように中に両手を入れると…
細い木の棒に巻かれている釣り針のついた黒い釣り糸を取り出し――
「あんまし動かんようにした方がよいぞ? 大ケガをするからのぉ…」
右手に持っているのを頭上で小さな円を描くように振り回した後に釣り針を投擲。
蛇のように時には雷のように三人の間を駆け抜け…
両手・両足・腰・首を縛り上げて――――三人を拘束。捕縛した。
「バァカめがっ! こんなモン噛み千切ればいいんだよ! 俺様をナメんなよ!」
言うや否、犬の格好の首領パッチが口を大きく開き、猛獣のような牙で力強く噛む。
『ガジン!』と歯と歯を打ち鳴らし… 歯に亀裂が入り――粉々になる。
声にならない悲鳴を上げてもんどり打って転げ回る。
「切ってダメならば燃やすのみ! いくぞ天の助!」
「ちょっと待てい! 燃やすなら自分のを…」
「遠慮はいらん! 受けとるがいい! ボーボボ・ファイアー!」
口から火炎を吐き出して… 釣り糸どころか天の助まで炎に包ませる。
天の助を黒焦げにしたにも関わらず釣り糸に変化はなく
前のめりにゆっくりと倒れ――――地面に突っ伏す。
「生憎、この釣り糸は女性の髪を結って束ねた逸品での…
人の手どころか妖怪の力でも引き千切ることも断ち切ることもできん。
当然、防火対策も施し済みじゃよ…? そして――――」
指で釣り糸を弾くと『ピィィィィィン…』と弦楽器のような音が鳴り響き…
鎧の――釣り糸が触れている部分が激しく振動を起こしてヒビが入り亀裂が生まれ破裂。
破片が辺りに飛び散ると――――
ピンク色のスケスケの女性モノの下着を身に付けた三人の姿が
「「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」」
顔を赤くして慌てて胸と股間に手を当てて隠す。
「何が『きゃぁ!』だ! そんな気持ちの悪いモン誰も見たくないわい!」
老人が怒鳴り声を上げる。うん。私も見たくない。一瞬、吐きそうになった。
だが鎧がなければ、釣り針をどうやって防ぐのか…
三人は老人の言葉など耳に入っていないのか無視して甲高い声で――――
「エッチ! スケッチ!」
天の助が巨大な「ぬ」を両手で持ち上げて老人に向かって投げる。
海亀が空中を滑るように水平移動して避けて――――
足下にいたヴォルガノスに投げられた「ぬ」が当たって、直後に爆発。わー。
「ワンタッチ!」
首領パッチが『危険』と書かれた箱に入っている赤いボタンを押すと――――
海亀の下の地面が爆発。背に乗っている老人ごと爆風で上空に吹き飛ばす。いつの間に?
さらに一体どこから用意したのか釜風呂に入って身体を真っ赤にしたボーボボが――――
「お風呂に入ってアッチッチ!」
空中で身動きの取れない老人と海亀に向かって口から熱線を吐き…
赤い一条の光が目標へと伸びていき、命中して爆発。
地面へと落下していき頭を下にして激突。口から泡を吹いて痙攣。そのまま動かなくなる。
「見たか! これぞ、鼻毛真拳奥義『無邪気な子供の言葉遊び』!」
無邪気な要素が一個もありませんでしたけど?
老人が完全に気を失って糸が緩まったこともあり
私たちは黒い網から、さほど苦労せずに抜け出すことができた。
とりあえず動きを止めた今のうちにトモヒロを縛っている縄を解いて救出。
その縄で老人と海亀を拘束。身動きが取れないようにして… 彼が目を覚ますのを待つ。
トモヒロの情報を得てから対処する話だったのだけど… ま、いっか。
「お前は『浦島太郎』でいいのか?」
「如何にも浦島太郎じゃ…」
目を覚ました彼――浦島太郎に質問していくボーボボ。
観念したのか、質問に大人しく答えていく。
過去、家族に何も告げずに竜宮城へ行ったこと。
戻ってきた時には自分がいた時代から既に300年が経っていたこと。
渡された玉手箱には老化する煙しか入っていなくて浴びてしまったこと。
もう一度、竜宮城へ行くために海賊稼業をしていたこと。
その途中で黒龍と出会い竜宮城の正体を教えてもらったこと。
そして――――
私――輝夜が現れた…
月の都へ行くための手掛かりになりそうな人物。
彼は私を確保するために動き出すも… 結果は敗北。
彼の気持ちはわからない訳でもないが、やられる方は迷惑である。
「仮に月に行けたとして… 貴方は何をするつもりだったの…?」
復讐だろうか… 彼を冷凍睡眠(コールドスリープ)させた人物への…
「謝罪の要求と質問じゃよ…」
予想とは違った答えが返ってきた。
「月の都の文明はこの目で見ている。あれは人の手でどうにかできるものではない。
ワシはただ何故300年も経った後に帰したのか… それを知りたい。欲を言えば――――」
家に帰りたい。家族に会いたい。それができる可能性を持っているのは月の都だ。と、
彼はボーボボたち三人とメリーと同じく時と空間の迷い人。
彼の場合は人為的なものという違いがあるが… 彼は被害者なのだ。月の民の手による…
彼の今の姿は私たちの数ある未来の一つと一つの可能性でもある。
そのことを理解したのか押し黙る。一人を除いて。
「甘ったれんじゃねー!」
伸ばした数本の鼻毛をムチのようにしならせて浦島太郎に打ち付ける。ボーボボだ。
「「ええええぇぇぇぇっ!?」」
さほど強く打ったわけじゃないのか、すぐに起き上がる浦島太郎。
「いきなし何をする!?」
抗議の声を上げる。当然といえよう。
しかし、ボーボボは彼の意見も主張も何かも全て無視して――――
「家に帰りたい? 家族に会いたい? そのための努力?
大いに結構だ! 思う存分やればいい!
だがな、だからといって海賊稼業して良いわけねーだろーがっ! 傍迷惑なんだよ!」
なおも言い続けるボーボボ。浦島太郎はただ彼を強く睨む。
「テメーには俺たちの言葉は届かねーし、お前の言葉など俺には響かん!
貴様が被害を
加害者が被害者面してんじゃねー!」
『聖鼻毛悪夢領域(ボーボボ・ワールド・ナイトメア)!』
世界が変わっていく… 森林から砂浜へと… 幻覚、幻影の類いか?
「故に、お前にはお前のせいで苦しんだ者に貴様を裁いてもらう…」
ボーボボと浦島太郎との間に一つの霊魂だろうか…?
最初は蜃気楼のようにぼんやりと、徐々にくっきりと姿を現し…
さらに人型を形作っていく――――
髪は短く刈り上げられており、額にねじり鉢巻を結んでいる。
日に焼けた小麦色の肌には背中に鶴と書かれたハッピ。
サラシにフンドシ姿の若い女性。
「おツル!? 貴様ぁぁぁ! よりによってワシの妻のニセモンを!」
「妻!? あなた結婚していたんですか!?」
「しちゃあ、悪いか!? 月に行く前は25のハンサムボーイだったんじゃぞ!?」
メリーが驚き思わず訊ねる。私も驚いた。てっきり独身なのかと…
でも、300年前のそれも浦島太郎の妻。彼女をなぜ…?
それ以前に本物なのか… 偽物なのか…
彼女は無言で高く飛び上がると右足を斜めに飛び蹴り。
細く長い健康的な小麦色の足が浦島太郎の顔面に突き刺さる。
数回、砂浜を転げ回り… 顔面を下にして倒れる。
「情けない。ああ、情けない。情けないったら、ありゃあしない。
浮気の罰として海亀にくくりつけて海に流した手前だ。
穏便に事を済まそうと思ったんだけどねぇ… 」
まさかの真実。そんな理由で海亀に乗っていたのか浦島太郎。
顔を砂につけていた浦島太郎は、やおら『ガバッ』と顔を上げると――――
「この蹴りの感触… 間違いない本物じゃ!」
「「ええぇぇええぇぇっ!?」」
普段から何をやっているんだ、この夫婦は…
まぁ見た目からして姉さん女房で尻に敷かれてるのは想像がつくけど。
もしかして日頃の暴力を浮気で解消してたのではなかろうか?
「あたしゃ、ずっと後悔していたんだよ…」
浦島太郎の妻――おツルさんが語り始めた。
あたしゃ、器用な人間じゃねぇ。その上短気だ。だから口よりも手が早い。
海亀にくくりつけた後、頃合いを見て助けるつもりだったんだ。
でも… あんたは文字通り消えていなくなっちまった。
あんたを探すために海の底の龍神様にもお願いしたよ。
神隠しと月のことを教えられただけだけどね…
すぐに帰ってこないのは月の民に殺されている可能性があるともね…?
あたしは後悔したよ。だから待った。ひたすら待って…最後はババアになって死んじまったよ。
それでも未練がましく地上に残って、数年前にようやっと、あんたと出会えたんだよ。
もっとも、あたしは幽霊になっちまって喋ることも触れることもできやしねぇ。
あんたはあんたで月に行くために海賊を始めちまうし…
ずっと幽霊になってあんたに取り憑いて… そして今――――
「ボーボボさんの力でこうして顕現できたってわけだよ」
苦戦しながらも怪老人――浦島太郎を倒した一行。
ボーボボの力で顕現した浦島太郎の妻――おツルさん。
彼女は夫に何を言いたいのか… 伝えたいのか…
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(´・ω・)にゃもし。
この浦島太郎に関しては独自設定、独自解釈で突っ切ります。
コメントとツッコミがあると助かります。
※カッコと空白部分を修正しました。