永遠亭で行われた秘密の談話により
決闘は平安京で行われることとなった。
そして…
道の両脇には区画整理された建物が建ち並ぶ大通り。私たちが向かうその先には平安京。
牛車に乗りつつ私たちは平安京へと向かう。向かうが… 目立つ。なにしろ――――
牛ならぬ空を飛ぶ鯉に牽かせた牛車。牛車の手綱を握っているのはボーボボたち三人。
その後ろにはイナバとゆっくり軍団。これで目立つな、という方が無理。
少々大きめに作られた牛車の中。外を眺めていたメリーがてゐに訊ねる。
「物乞いですかね… 道端にいるのは…」
視線の先にはお世辞にも身なりが良いとはいえない者たちがゴザを敷いて座っている。
それが一人、二人ではなく… 道の先に裏路地にあちらこちらにいるのが見てとれる。
「飢饉のせいで増えているからね。食糧求めてやって来た連中だろうね」
そういった連中を狙って人喰い妖怪が拐っていき
貴族たちも利用価値のないモノは見て見ぬふりしているという。
正義感の強いのが退治して回っているが焼き石に水状態で進まないとのこと。
そんな状況の平安京に私たちみたいのが来たら…
「そこの怪しいの、そこで止まれ!」
青銅の鎧を着た二人がヤリを交差させ――バツを作って行く手を遮る。
ここは都。当然、こういうのがいて… こういう風に止められるわね。
長身のアフロにトゲとぷるぷるが並んで歩いているのだから…
「首領パッチ、天の助。呼ばれているぞ」
「「ええええっ!?」」
「そこの黄色い頭のお前もだ」
自分のことも含まれているとは思わなかったのか驚くボーボボ。
彼は両手両膝を地面につけると――――
「頼む! コイツらはどうなってもいいから、俺だけは見逃してくれ!」
最低なセリフを吐いた。
「そいつらは入れても大丈夫だ。通せ」
兵士の後ろからやって来たのは迷彩柄の服装の――――
「ソ、ソルジャー隊長!?」
「久しいな… といったところで三日しか経っていないがな…」
数名の兵士を引き連れたソルジャーがそこにいた。
「お前たちも聞いているだろう。
今日、行われる決闘――その相手をな… そこにいる三人がそうだ」
「しかし隊長… 相手はどう見ても人間には見えません」
「承知の上だ。それにいざというときはこの俺が動く。
それともお前たちは俺の実力を疑う気か?」
そういわれては無理に反論するわけにもいかず――私たちを通す兵士たち。
このやり取りだけで如何にソルジャーが兵士たちから信頼を得ているのか…
イヤというほどに思い知らされる。
私たち一行はソルジャーの案内の下、大通りを進んでいく。
その間の会話が一切無かった。
先を行くソルジャーの背中が無言の圧力がそうさせるのだ。
それはボーボボたちをも黙らせるほどである。
否が応にも実力者ということを理解する。
五人の中でも一番強いのではなかろうか…? なぜ求婚争奪戦から降りたのか…?
「考えてわからないものは考えるのをやめた方がいいよ」
「てゐさんの言う通りですね。今は勝つことだけを考えましょう」
難しく考えて悩むのも時間の無駄かもしれないが
他にやることもないのだが…
「そうね… 今は――今を楽しみましょうか…?」
私たちはお気楽に事を構える。ボーボボたちが負ける想像が思いつかないからだ。
真面目(?)に戦闘しているのだろうが…
ふざけているにしか見えない戦いは――彼らには悪いがついつい笑みをこぼしてしまう。
戦闘で周囲を笑わせるのは彼らぐらいだろう。
それゆえか、そのせいなのか… 悩むのがバカらしく思えてくる。
それはきっと彼らにしかできないスゴいこと。
そこに立ち入ったとき、空気が変わった。大きな建物が目の先にそびえ立つ。
イナバたちが寄せ合い抱き合い身を震わせて怯え始めたのだ。
門扉の前にはソルジャーを除く件の四人。
彼ら――フェニックスが何かをしたのだろうか…?
「最初に言っておくが… 我々は何もしていないぞ?
強いて言えば――この地であった出来事がそうさせるのかもしれないな」
この地…? この場所が何か深い意味があるのか…
「太古の昔。月の民が地上にいて月へと移住するときだ。
妖怪どもが徒党を組んで都へ攻めてきたそうだ。
結果――妖怪どもは敗れ、月の民は月へと旅立った…」
「それは一方的な虐殺だったそうだ…」フェニックスが面白おかしそうに笑う。
「そして、この場所この付近には妖怪どもは近寄ることを忌避する。
それはなぜか――――? それは…」
ここが月の民が過去に妖怪どもと争った場所がここだからだよ!
「「な、なんだってぇぇぇっ!?」」
そういえば聞いたことがある。私が生まれる以前の話。
ここがこの場所が月の民が地上に住んでいたとこだというのか…
めっさ、初耳なんですけど…
「それだけではないぞ? 月の民、そのごく一部だが少々変わった趣味を持つ者がいた」
妖怪を生きたまま捕まえ、妖怪同士を命がけで争わせる狂った娯楽。
そのフェニックスの言葉に誰もが絶句する。
「我々にはできない。月の民だからこそできる芸当だ。
まことになんと素晴らしい力を持っている! …そうは思わないか?」
最低な発想だ。だが、彼の言っていることは本当なのか?
「疑うのも無理はない。今から、その証拠を見せよう」
言い終えると同時に地面が揺れ始める。周囲の地面が盛り上がり隆起。
私たちを取り囲むように壁ができあがっていく…
多層に重なったアーチ構造の建物。それはまるで――
「観客席…? これはコロセウム? 太古の日本にそんなものがあったっていうの?」
メリーが周囲の建造物を見て述べる。
「博識だな、そこのお嬢さんは。そう、これはコロセウムというものだ。
大陸の遥か西にもあるらしいが――そんなものはここのを真似たモノにしか過ぎん!
このコロセウムこそがオリジナル! 唯一無二のモノなのだよ!!」
フェニックスが拳を握り締めて力説する。
コロセウムの完成も近いのだろう。
私たちとフェニックスたちとの間に四角いリングが地面の下から出現してきた。
□ 決闘準備中 □
観客席が人で埋まっていく。中には明らかに人でないモノもいる。
リングの外に作られた甘味処の外に置かれているような椅子に私たちは腰かけている。
私たちだけじゃなくソルジャー、さらにビッグボディもいたりする。なんでいるのよ…
「姫様。観客席に鬼がいるよ…」
てゐが観客席を視線を向ける、そこには角を生やした一団がいた。
中心にいるのは背丈、体格が違えど… どれも女性。
見覚えのある青鬼もいる…
「それだけじゃない九尾の狐なんてのもいる」
「え!? 九尾って物凄く有名じゃないですか!? どこにいるんですか!?」
メリーが食いつき観客席を見て回すが九本の尻尾を生やしたモノは見つからない。
「今は尻尾を隠しているからね。見えないよ。でも問題はそこじゃない…
九尾すらも式神にしているヤツがいる… そっちのが問題だわね。
それにイカサマ、卑怯なことが嫌いな鬼を前にして―― 」
『必殺、姫様の超加速でイカサマを使う』
人間だけならば… 誤魔化しができてもこれだけの妖怪相手には難しい。
フェニックスはこれを見越して認めたのか…
「どうでもいいが俺を前にしてよくイカサマどうのこうの言えるものだな…」
ソルジャーが呆れながらこちらに顔を向ける。
「九尾って… 中国――大陸で猛威を奮った大妖怪ですよね?
そんなのがいて大丈夫なんでしょうか…?」
「その九尾と、あの九尾は別人だよ。むしろ、使役しているヤツのが危険だわね。
何を考えているのか、わからないけど… 最強の妖獣を従えるヤツが弱いわけがない」
『――こちら放送席の毎度お馴染み清く正しい射命丸(しゃめいまる)です』
コロセウムに少女の声が響き渡る。能力でも使ったのか、声の主は鴉天狗の少女。
リングの下。その側で机を並べて陣取っている。
『さー皆さんもご存知でしょうけど――この決闘は三人の超人たちによる求婚。
その試練の一つとして行われるものであり――――三対三による変則デスマッチです。
貴族たちは守護者たちを倒せなければ求婚することが認められません』
何そのルール…
四角いリングの中にはボーボボたち三人とフェニックス率いる貴族たちが相対している。
リングの内側には首領パッチが、貴族側はゼブラ。
他の面々はコーナーポストに張られているロープ。その外側にて出番を待って立っている。
試合開始のゴングが鳴り響き――――
『さぁ… 試合開始のゴングが鳴りました。実況は不承この射命丸が――』
『解説は先代の帝、キン肉スグルがお送りします』
鴉天狗の少女の横にはいつの間にか赤いパンツ姿にマントを羽織った男が座っていた。
そして当然のようにマスクを被っている。
ナニあれ…?
「先代の帝だ」
ソルジャーが腕を組んで答える。それはわかるよ。そう名乗ったし…
イヤ、そういうのが聞きたいわけじゃなくて――
『おーっと!? 開始早々、銃撃戦です!!』
「「なんで!?」」
首領パッチがドラム缶を盾にして二丁の小銃を両手に
ゼブラは木陰を背にしてライフル銃で応戦する。
なんでそんなものがあるのよ…
『これはいかん。皆のもの流れ弾に気をつけるんじゃ』
いやいや、それよりも試合止めなさいよ、先代の帝。
『ぐわぁぁぁっ!?』
言った傍から流れ弾が下腹部を貫通。よろめき後ろ向きに倒れる先代の帝。
おいっ! 帝が撃たれたぞ!? 止めなくていいの!?
『なんのぉぉぉ、火事場のクソ力ぁぁぁ…』
身体から赤いオーラを纏わせて立ち上がる先代。
先代のその姿に感動したのか観客席から割れんばかりの拍手が起こった。なにこれ…
「「銃撃戦では埒が明かない!」」
銃を捨てて接近戦を試みる二人。
「相手が馬ならばこっちも同じ馬で対抗じゃ~~~!!」
『おーっと、首領パッチ選手!
どこから取り出したのか竹馬でゼブラ選手に突撃を仕掛けました!』
『よくしなる竹は昔から武器として使われておる。
当たり所が悪ければ… 致命傷になりうるぞ』
なにその実況と解説…
竹を交互に動かして走る首領パッチ。ゼブラの近くまで接近すると竹を掴んだまま高く跳躍。
ゼブラの頭上で滞空。竹馬の足――その裏から金属でできたヤりのような刃物が出現。
「死ねや! おらぁぁぁっ!」
「ちぃぃぃっ!」
ゼブラは頭上からの攻撃に対して前方へ身を低くして駆け出し――避ける。
首領パッチはゼブラの後方に両足から着地。土煙が舞う。
「命拾いをしたな…」
首領パッチがゼブラの方に振り向き…
「あの竹馬の刃物には0.01ミリグラムでクジラを動けなくする上に
半日ほど激痛に見舞われ苦しんだのちに死ぬ猛毒が塗られているんだからな…」
首領パッチの言葉に恐れおののき恐怖しながらも彼を指差しながら――
「もしかして、お前の頭に刺さっている
首領パッチの頭には二本の竹馬が刺さっていた。
「はい…?」とマヌケな声を残して時の流れが遅くなったかのように
静かにゆっくりと身体を横に傾きながら倒れていく首領パッチ。
両目の端から涙がこぼれて… 空中に撒き散らした水滴が光の反射を受けて真珠色に輝く。
…ごめんねやっくん。パチ美… 勝てなかったよ…
ガンバったけど… 勝てなかったよ… パチ美は… 悔しいよ…
崩れ落ちて… リングの床を叩きつけるように身体を数回軽く跳ねさせて…
床を跳ねる音がコロセウム内に静かに
首領パッチはリングの中央で倒れて、静寂が支配する。
束の間の沈黙ののちに射命丸の声がコロセウムの沈黙を破る。
『首領パッチ選手バカです! 自分の攻撃で死にかけています!
なんというか、バカです! バカ以外の何者でもありません!
――というか何しに来たんですか!? あのバカは!?』
射命丸がやたらたバカバカと連呼する。
普通――仲間を無能者呼びされたら、頭にくるのだろうが…
ごめん。否定できない。
早速一人が離脱した。
決闘はまだ始まったばかりだというのに…
私たちのチームはピンチに陥った。
(´・ω・)にゃもし。
一日に二話投稿その2。
さすがに憑かれたぜよ。
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