激闘の末、月の使者たちを追い返したボーボボたち。
紫の能力で輝夜と共に永遠亭へと帰ってきた。
その中には月の叡智である「永琳」の姿も…
宴会
陽が落ちて空が橙色に染まる頃。
空に浮かんだ月が輝きを増していく。
「姫様が宇宙船に乗せられた所を複数の人間に目撃されましたから、
月に帰ったと思われていることでしょう」
永琳が平安京のある方向に目を向けて語る。
ボーボボたちが乗った「ザイガス」「ヒソウテンソク」と
月の使者たちが乗っていた巨大宇宙船「ザンボット」が激突した様子は
平安京の人間たちを始め多くの地上人たちに見ていたことだろう。
その光景を見た地上人たちはどう思ったことだろうか…?
「テメーは考えすぎだっつーの、もうちょっと気楽に生きていこうぜ♪」
首領パッチは少しは考えた方がいいと思う。
少なくともここに求婚目的で人が来ることはなくなるだろう。
悩みの種が一つなくなるのはプラス要因と考えるべきか…
「よし問題が解決したことだし宴会でもするか――――っ!!!?」
突然ボーボボが拳を振り上げて叫び、他の二人も同調して「おーっ!!」と叫び合う。
宴会をやるのは勝手だが食料の殆どがザイガスと共に空に散ったのだ。
どうするつもりなのか訊いてみると…
三人が「えっ!?」と驚き、すぐさま真顔になってレオタード姿に着替える。
「「ちょっと平安京の帝の所に行って食料を一時摂取してくるわ」」
緑色の唐草模様の大風呂敷を背中に背負って、
手拭いでほっかむりを作って被っている。盗む気満々だ。
「悪いがその姿で平安京に入れさせるわけにはいかないな」
声をかけて立ち塞がったのは二人の男。
軍服姿のソルジャーとその背後には巨漢のビッグボディ。
以前の「求婚問題」で知り合った平安京の貴族。
もっとも見た目だけなら戦場帰りの兵士にしか見えないのだが…
「「すいません、コイツが主犯です!!!!」」
何の躊躇いもなく、お互いがお互いを指差すボーボボたち。
「貴様ら!? 共に過ごした仲間をあっさり裏切り見捨てるとは何事だ!?
お前らには人の心ってモンがないのか!?」
ボーボボが憤怒の形相で両腕をL字に曲げて、
その内側部分を首領パッチと天の助の喉元にぶつける。
ラリアットを喰らった二人は後ろ向きで倒れていき、
後頭部を地面に思いっきり打ち付け、白目を剥いて気絶。
「――あの巨大な空を飛ぶ船の中にあった「蓬莱の玉の枝」の反応が消えて…
次にここ「迷いの竹林」に現れた。俺たちはその調査に来た。
もっとも俺たち以外にもいるようだがな…」
ソルジャーが見つめる視線の先、竹と竹の間。
その奥から海亀に乗った漁師姿の老人がモヒカンを引き連れて出てくる。
瀬戸内海の海賊を纏めていた老人、浦島太郎。
その隣には半透明の透き通った身体を持った幽霊、おツル。
「さすが平安京の守りの要と言われてるソルジャーにはバレバレじゃったかの…?」
モヒカンの集団を連れていれば、あっさりとバレると思うけど…
海賊稼業から足を洗って只の漁師になった彼らが何でここに?
「おツルの件で世話になったからな心配で来たんじゃよ。
まあ無事のようじゃがな…
それと手ぶらで行くのもなんだしなと思うてな…
肴はないが魚を持ってきたぞ?」
後ろにいるモヒカンたちが笑顔で魚の干物を手に持って掲げる。
中には魚じゃなく鳥類なんてのもいるが、
「これでわざわざ危険を冒してまで盗みに行かなくても済むな」
レオタードを脱ぎながら天の助が喋る。
やはし盗みに行くつもりだったのか、
「…何を言う宴会と言ったら酒。酒を忘れているぞ?」
野太い声と共に酒樽を肩に担いだ男にしか見えない女の青鬼が現れる。
シャイニング・ナイト・プリンセス。
コロセウムでチラッと見かけた以降、随分と久しぶりな登場である。
「あやや、私が一番乗りかと思っていたんですけどねー」
次に黒い羽を畳んで天狗の少女が空から舞い降りる。
コロセウムで実況していた
「ボーボボ親方! 空から女の子が!!」
「5秒で支度しな! 首領パッチ!!」
「ちょ!? 意味がわかんないですけど!?」
ボーボボの指示に狼狽える首領パッチ。
そこに上空からの文の膝蹴りが首領パッチの両目に突き刺さる。
「鴉天狗アタック!!!!」
堪らず両目を押さえながら「目が、目がァ!!」と地面を転げ回る。
「身の危険を感じて思わず攻撃してしまいました。すいません」
「失敗は誰にもあります。
肝心なのは反省し次に活かす事ですよ?」
両手を後ろに組んだ天の助が穏やかな表情で場を締めた。
「やれやれ相変わらず騒がしい連中じゃな」
「まあ男の子ですもの、元気が有り余っているのですわ」
「キュピー、キュピー」
上半身が引き締まった体躯の白髪のじいさんに
胸がなけりゃゴツいおっさんにしか見えない婦人。
でっかい桶に入っているホオジロザメ……誰?
「おお、チャイコフスキーにビオラのお母さん。
ホオジロザメのブルーシャークも来ていたのか!」
ボーボボが親しそうに声をかける。
私が一人で宇宙船に連れてかれたときに知り合ったのだろうか…?
「今日、初めて会う奴らだよ」
知るわけないじゃん! いや何で知ってるのよ!?
誰が呼んだのか種族を問わずに来訪者たちが次々と永遠亭に訪れる。
陽が地平線の向こうへ沈み、夜の暗闇が辺りを支配して星が散りばめられる。
建物の外で火を焚いて、赤い焔が天へと伸びていく。
その周りで祭りのように歌えや踊れやと騒ぎを始める。
その光景を少し離れた所でイナバたちが用意した長椅子に腰掛けて見ていると
ソルジャーが私が座っている横にやって来て腕を組んだ立ち姿で一緒に眺める。
「――礼を伝えに来た。
君たちのおかげであの空飛ぶ巨大な船が立ち去った。
平安京に住んでいる者たちと帝たちの言葉だ」
でも私のせいで月の使者たちが平安京にやって来たのも事実…
「だが君たちの手で問題を解決したのも事実だ。
それでも受け入れられないのならば「蓬莱の玉の枝」を厳重に保管してほしい。
あれは戦争を引き起こす道具だ」
――もっとも、それが無くとも人は人と争うのだろうがな…
そう呟く彼の横顔は覆面のせいで分かりづらいが、どことなく寂しそうに見えた。
彼はそれだけを伝えると焚き火の近くでボーボボたちと一緒に騒いで飲み食いしている相方
ビッグボディの襟首を掴んで引き摺っていく。
「去らばだ」
こちらに背中を向けたまま短い別れの言葉を告げて、永遠亭から立ち去った。
彼と彼が仕えている帝がいる限り、ここに来る貴族の心配はしなくていいだろう。
特に理由も根拠もないのだが彼の背中が「任せろ」そう語っているように感じた。
「主役がこんな所にいていいのかしら?」
ソルジャーが居なくなってから今度は藍を連れて紫が近寄って来た。
「不思議な光景よね。
人と妖怪と月の民、それに人為らず者がこうして一堂にいるんですもの…
ああ一人、自称「妖精」の方がおりましたわね」
アルプス山脈の純粋な水にのみ棲息している妖精らしいが……妖精って何だっけ…?
それよりも何で妖怪であるこの人物が月の民である私を助けたのか
「そこの妖怪、私も気になる。
お前たちが姫様を助ける義理も義務もない。
お前たちが居なくとも目的を達成することはできた」
――永琳。月の叡智。彼女は頭脳だけでなく戦闘能力も高い。
それこそ宇宙船にいた月の使者たちを
「貸しを一つ。月の賢者相手に悪くはないでしょ?
貴女は自分の手を汚さずに済んだ。
それに貴女が頭を下げて感謝を述べるべき相手が他にもいるでしょう」
紫が扇子で示した先にはボーボボたち三人。
ただし全員べろんべろんに酔っ払っていて足取りがふらついている。
「おーいそこのフレイザードもどきィ、誰のお陰で輝夜を救出できたのか言ってみろよォ~」
無謀にも首領パッチが永琳に絡んできた。
酒でも飲んで酔っ払ったのか思いきゃ手に持っているのは「モーモー牛乳」
天の助は「ところてん促進運動」と書かれたタスキを、
ボーボボは作り物の鼻がついた眼鏡を永琳につけさせようとして――――
「酔いは覚めたかしら…?」
針鼠のように背中に大量の矢を刺されて地面に横たわり、力なく「はい…」と答える。
「ところで永琳。成り行きで地上に残ったがこれで良かったのか?
地上に残る理由もないだろう」
起き上がったボーボボに問われた永琳は月の、その裏側にあるだろう都に目を向けて
「――月の民は賢者の称号を持つ者たちに頼り過ぎている。
彼らには己で考える力を身につけるべきだと私は考えている。
それに私だけ罪に問われなかったことに納得できなかった…」
「本当かよ? ただ単に自由が欲しかっただけじゃねぇの?」
「自称、妖精。話を折らないで欲しいのだけど…
そうね貴方の言う通りに自由が欲しかったのかもしれないわね。
輝夜と一緒にバカをやってる貴方たちが羨ましかったのかもね…
私が月で職務に追われているときにあなた方はときたら……」
こみかみを指で押さえつつ溜め息を吐く。
私がいなくなった後の月で何があったのだろうか…
そんな時にメリーが私たちの元に走り寄ってきた。
よほど慌ててたのか息を切らして――――
「私がやって来た時に通った結界の境目が開いてます!!」
――そう発言した。
(´・ω・)にゃもし。
執筆開始してから「5ヶ月」経っていました。
一話目と最新話だと書き方も違ってますね。
それ以上に「東方Project」なのに舞台が「幻想郷」じゃないことに驚いた。
さらに物語の都合上とはいえ、永遠亭の一人である「鈴仙」がいない。
ゴメンね、鈴仙。
物語はもうちょっとだけ続きます。
ここまで読んでくれて、ありがとうです。