なんやかんやでボーボボ一行に加わった因幡てゐ。
自称、幸運を呼ぶ兎がもたらすモノとは !?
メリーとボーボボ三人を元の時代に戻すべく行動を起こす!
五つの難題 前編
首領パッチを模した要塞、無敵要塞ザイガス。
その無敵要塞ザイガスの中にある首領パッチの形をした首領パッチハウス。
その二階の一室に輝夜の部屋がある。
部屋の中は暗く、寝静まっている。部屋の主が寝ているからだ。
その枕元にはオレンジの円筒に棒の腕と死んだ目をした顔がついた目覚まし時計が…
『うるせェェェ!!! ジャスタウェイはジャスタウェイに決まってんだろーが!
それ以上でもそれ以下でも、ましてやそれ以外の何物でもねーんだよ!
わかったかボケェェェ!!!』
その目覚まし時計から野太いオッサンの怒鳴り声が部屋に響く。
頭を叩いてアラームのスイッチを切り、息の根を止める。
カーテンの隙間から暖かく心地好い陽の光が差し込み部屋の中を照らし始める。
布団から上半身を起こし、思いっきり背伸び。自分の身体をまじまじと見つめて観察する。
昨日よりも身長が伸びている。地上に落とされる前、月にいた頃に体格が戻っている。
どうやら、完全に薬が抜けきったようだ。もう少し時間が掛かると思っていたのだが…
窓のカーテンを引いて、両開きの窓を開く。
眼下にはイナバたちがゆっくりたちを抱えて走り回っている。随分と早起きである。
傍から見ると生首を抱えて走っているように見えるが、許容範囲といえるかな…?
その近くにはトリケラトプスの全身骨格と昨日知らずに口にした氷づけのマンモス。
うん。おかしい。違和感しかない。
それとは別に見慣れないロバが一頭。イナバの一人が世話をしている。
でもそれ以上に… 頭上を見上げ、空を見上げる。
そこには太陽がさんさんと輝き、雲一つない青空。小鳥が鳴きながら空を飛んでいる。
「ここって要塞の中だよね?」
誰に言うわけでもなく放った私の小さな呟きが空に溶け込み、掻き消える。
こうしてこの世界二日目の朝を迎えた。
= 少女移動中 =
螺旋階段を降りていくと魚を焼く音と香ばしい匂いが漂ってくる。
またボーボボがマンモスを焼いているのだろうか…
ふと違和感を感じて螺旋階段の方に振り向く。支柱がない。コイル状の作りになっている。
それぞれの段を支える支柱がこの螺旋階段にはない。また壁からも離れている。
どうやって作ったのだろうか… 謎が深まる。
開きっぱなしの玄関の扉から髪もヒゲも真っ白の老人が大工道具片手に出ていくのが見える。
彼が作ったのだろうか? でも誰? ボーボボたちが呼んだのか? いつ?
窓の外には彼が所有してるであろうロバが、イナバとゆっくりたちと戯れている。
老人がイナバとゆっくりの頭を軽く撫で、ロバに荷物を乗せて出口へと向かっていき…
その姿が突然、霞がかったように輪郭が薄れていき… やがて消える。…本当に誰あれ?
肝心のボーボボたちは居間の半分を占める畳に三人が布団を敷いて寝ていた。
はて…? ボーボボが朝食を作っていないなら、一体誰が…?
「おいボーボボ。腹減ったぞ。この首領パッチ様のために、なんか作れやオラァ!」
「さっき食ったばっかりだろうが… 張った押すぞコラァ!」
「うるさいぞお前ら、静かにしろ! 近所迷惑だぞ!」
寝言で怒鳴りながら会話している。器用な連中である。
誰が作っているのか気になり、台所に向かうと――――
「あら姫様。おはようございます」
巨大な鯉、ヴォルガノスが魚を焼いていた。
「魚が魚を焼いているゥゥゥ!?」
その日の朝は私の叫び声で連中が起きたそうな。
食卓に続々と人が集まってくる。居間で寝ていたボーボボたち三人に
二階の別室、私の部屋の反対にいるメリー。いつの間にかにやって来て席についているてゐ。
てゐ以外は私の姿を見るなり驚いていたが、成長期の一言で片付けた。
食卓に並べられていく料理。白いご飯に味噌汁、漬け物にサンマの塩焼き。
サンマだ。何の変哲もない普通のサンマ。見た目だけならば…
昨日のマンモス事件を踏まえ、恐る恐る口にする。……ん?
「普通にサンマですね…」
メリーが口にした感想を漏らす。
普通じゃないサンマというのもよくわからないが…
メリーが箸でサンマをつつきながらヴォルガノスに直接、聞いてみる。
「どこで手に入れたんですか? これ」
ヴォルガノスが一旦、箸を止めてメリーの問いに答える。
どうでもいいがよくあのヒレで箸が使えるものである。
「この要塞の中に生け簀みたいなものがあって、そこで釣ったんですよ」
魚が魚を釣る。その奇妙な光景を思い浮かべつつ箸を進ませる。
不老不死の私は食事しなくても平気なのだが… 習慣というものである。
サンマを箸で割きながら思った。何でこの要塞の中に生け簀があって魚がいるのか…
一体いつ、そんな生け簀と魚を用意したのか… そんな時間があったのか…
意思を持ち始めているが、この無敵要塞ザイガスは、元は首領パッチが変化したもの。
なら首領パッチの体内にあるモノも変化しててもおかしくはない。
このサンマも首領パッチの体内にある小さな生物が変化…
考えるのは止めることにした。今は食事中。これはサンマ。サンマ以外の何物でもない。
メリーが知ったら卒倒しかねない。
ちなみにてゐは元が兎のせいか、私たちとは別に用意された野菜をバリバリ食べていた。
それとも兎云々関係なく、知っていたのか…
てゐがメリーを見てほくそ笑んでいる。絶対、知っていて黙っている。
= 少女食事中 =
食事を終えた私たちはてゐから神宝の話を聞かされる。
彼女の考えでは時を越えるような奇跡を起こすにはそこら辺の宝程度ではどだい無理な話。
神話級の神宝でなければ――――とのこと、そして彼女は知っている物を一通り
仏の御石の鉢( ほとけのみいしのはち )
蓬莱の玉の枝( ほうらいのたまのえだ )
火鼠の皮衣( ひねずみのかはごろも )
龍の頸の玉( たつのくびのたま )
燕の子安貝( つばくらめのこやすがい )
――――の五つを挙げた。
そのうちの一つである『蓬莱の玉の枝』については心当たりがあった。
というよりも知っているし、実物も持っているといえば持っている。
「――で、これが件の『蓬莱の玉の枝』なのか?」
「ただの木の枝にしか見えねぇぞ、おい」
天の助、首領パッチが各々口を出し、他の面々はつぶさに観察する。
「私の知っている蓬莱の玉の枝ってのは…
根は銀。幹は金。実は真珠。ってモノなんだけどね」
「蓬莱の玉の枝ってのは、元々は月にしか生えない優曇華(うどんげ)が
地上の穢れで開花して実をつけたものがそうなのよ」
てゐの疑問に私が答える。納得しかねる顔をしていたけど。
ついでに言えば月の民は稀に優曇華を地上の権力者に渡すときがある。
渡された優曇華は権力と穢れの強さに応じて美しくなる。
「要はこいつに穢れを与えれば『蓬莱の玉の枝』になるんだろ?」
ボーボボの『穢れ』という言葉に反応し、首領パッチに視線を向ける一行。
「首領パッチ、試しにこれを持ってみろ」
そう言いつつ枝――優曇華を首領パッチに差し出すボーボボ。
「ふざけんなテメーら! これじゃ俺がまるで穢れの塊みてーじゃねーか!
誰がやっかよっ! ばーか! ばーか! ばーか!」
私たちのお願いに激怒し拒否し拒絶する。
「そんなこと言わずにお願いしますよ…」
「ちょっと持つだけでいいからさ?」
天の助が首領パッチの背中にアサルトライフルを突きつけ
ボーボボが小銃をぐりぐりとこめかみにめり込ませる。
「うん。わかったから、その銃を仕舞いましょうね? 危ないから」
両手を軽く上げて無抵抗を示す。
天の助とボーボボの説得のかいがあってか、首領パッチは快く引き受けてくれた。
「だぁぁぁっ、ちっきしょー! やってやっよ! ヨコセヨや、それ!
俺がどんだけピュアでキレイな妖精なのか――――
その目ん玉かっぽじって、よ~く見ておけよコラァ!? ああん!?」
引ったくるように奪い、頭上に掲げる。しかし、変化が起きない。
「ほら見ろよ! なーんも…」
言い終わらぬうちに首領パッチが触れた部分から金色に変わっていき、根は銀色に変色。
枝分かれした部分からは真珠の実が幾つも実る。
変化はそれだけで留まらず、純白の実がそれぞれ異なる色に変わっていく…
「…………………………………………あれ?」
文字通りに目が点になる首領パッチ。こうして私たちは『 蓬莱の玉の枝 』を手に入れ
その立役者である首領パッチを褒め称えたが、彼はしばらく部屋の隅っこで膝を抱えて
身体中のトゲを萎れさせて「俺、穢れているんだ…」と、終始呟いていた。
私たちは打ちひしがれている首領パッチを放っておいて次の神宝を入手すべく話し合う。
『仏の御石の鉢』
釈迦が使ってたという金剛石(ダイアモンド)並みに硬い上に神々しい光沢を放つ鉢。
「でもそれって天竺(てんじく=インド)にあるんですよね?」
「本物はね。でもそれに似せたやつなら、この竹林にあるよ」
メリーの言葉にてゐが首領パッチハウスの玄関。その先にある竹林の森を指差す。
そして玄関から二人のイナバが二人がかりで両手で抱えるほどの桐の箱を運んできた。
テーブルの上。てゐの目の前に置くと、私たちにペコリとお辞儀をして玄関から出ていく。
「こいつは本物と同じく四つの欠片が組み合わさってできた代物なんだよ。
本物と違って金剛石でできているけど。砕かれても元に戻る術式がつけられているんだ。
本物は無理だけど代用としてなら申し分無いと、私は思うよ?」
なんだって、そんなモノがここ――竹林に?
口には出していないが皆疑問に感じたのだろう。彼女は淡々と語り始める。
ある一人の僧侶が釈迦にあやかって鉢を作ることにした。
そして本物にも勝らないモノを作り出した。
しかし、どのようにして作ったのか… 材料はどこで手に入れたのか…
術式はどんなものなのか… 未だにわかっていない。
しばらくは寺の宝具として祀っていたのだが…
二人組の人喰い妖怪がそれに目をつけて僧侶を殺害して鉢を奪った。
「そいつらはその鉢を餌にして近づいて来た僧侶を喰ってきた連中でね」
宝を手に入れれば――――人間が寄ってくる。
そして何処から聞きつけてきたのか… 奴等は光る竹の話を知った。
光る竹というのは金銀の類いでできた竹なのではないのか?
それを餌にすれば今度は欲深い人間が来るのではないのか?
光る竹を探しに二人組の妖怪は竹林の森にやって来た。
「そう、この二人組の妖怪ってのが――あんたらが倒した大蜘蛛と大百足なのさ。
あんたらが倒したあとに手下に命じて持ってこさせたってわけね」
てゐが箱の蓋を開けると、光を反射させて輝く片手で持てるほどの鉢が置かれていた。
「その鉢に元に戻る――復元以外に何か力でもあるんですか?」
「んや、こいつは金剛石でできただけの鉢で、復元以外の力はないよ」
「それじゃその鉢を手に入れて… 何か意味があるんですか?」
メリーの疑問はもっともだ。それに対して――
「鉢自体に意味はないけど、置くことに意味があるよ。
奇跡を起こす確率を少しでも上げるために、縁起の良いモノを置く…
運を高める。ていう意味合いが強いね、この場合」
それに天竺まで行くのは面倒だし、手に入らない方の確率が高い。
彼女はそう付け加えた。一理ある。…が、メリーは
「妖怪が僧侶を殺害して手に入ったモノを縁起が良い。って、いえるものなんですか?
むしろ縁起が悪そうなんですけど…?」
「んー。悪さをしていた妖怪たちを人間の英雄が倒し、その英雄が保管している。
――って、ことだったらそうでもないと思うけどね?」
なるほど。そういう見方か、だが…
ボーボボが妖怪と山賊集団と戦ったときのことを思い出す。
目からビーム。口から火炎放射。身体から毒ガス。分離と合体。そして巨大化。
ボーボボを人間というカテゴリーに入れていいのか?
「ほんじゃ姫様が保管するというのはどうだい?
月のお姫様が持っているっていう話なら箔がつくよね?」
神宝は私が所有することになり、これ以降の神宝も私が持つことになった。
『 蓬莱の玉の枝 』『 仏の御石の鉢( 贋作 ) 』を手に入れた一行。
首領パッチの心が折れた気がしなくもないが気にしたら負けだ!
残る三つの神宝を求めて、要塞の外へと飛び出す!
はたして、こんなんで未来へと戻れるのか !?
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(´・ω・)にゃもし。
ぶっちゃけ、この『 五つの難題 』は省略する予定でした。
でも折角なので書きました。
※カッコと空白部分を修正しました。