もうすぐ朝を控えた夜中に、町は静まり返り人々は眠り呆けている中、町外れの工場で場違いな戦闘音が今も続かれている。
「GubOooo !!!」
異形の獣が強靭な足で恐ろしい速さで一人の男に一瞬で近づき男めがけて腕を降り下ろす
だが
この男、湯助はそれを軽々と避け獣の大木のような腕に飛び乗り、頭へとまるでピエロの綱渡りのように駆け足でかけ上がろうとするが、瞬時に獣は腕を上下に振るい湯助を落とす。
落ちていく湯助は空中で体を捻らせ体制を建て直し地面に足を付ける
獣と狩人の攻防は凄まじく、辺りはその余波で既に廃墟へと化していた
……決定打が無いな、火力不足か
湯助は火力不足のせいで攻めあぐねており若干不利な状況に成ってきている
……まぁそれだったら
「地道に削る」
鎌を折り畳みダガー位の大きさの刃物へと変え、もう片方の手に昔買ったククリを取り出し獣へと向ける
ククリの刃は黒く錆びており見た感じではとても切れそうには思えない
だが、その刃物は幾度の獣を殺し付いた血が自分の血と混ざりあい一つの恐ろしい能力、否この場合は呪いといった方が良い。
その呪いは神秘のものへの絶対的殺害権
言うなればどこぞの[幻想殺し]と同じ能力である
その刃にある力に獣も本能で気付き、先程よりほんの少し距離を取る
しかしそれをただ見ているだけの湯助ではなく一気に獣との距離を縮め何回も刃物を振るう
獣もただ切られるのではなくギリギリのところで後ろに下がるように回避しているお陰で、皮が切られ肉がほんの少し削がれる程度の軽傷で済ませている。
なおも続く攻防
獣は腕を横凪ぎするヘェイントを入れたりしてわざと隙を作り湯助を誘うが湯助も騙されるほど焦ってはなくそれを逆手にとって相手の隙をつく
罠と罠の応酬が繰り返される
わざと避けやすく獣は腕を大雑把に降り下ろす。
勿論湯助は簡単にそれを読み懐に飛び込むように避け追撃を加えようとするがそれを更に深く読んでいた獣はビル2つ分ほど飛び跳ねて天井までも突き破り湯助へと急降下する
それをいち早く察しバックステップでギリギリ避け獣の目に向けて蹴りを放つ
目玉の潰れる感触と音が鳴り獣が痛みで思わず仰け反る
「kuooo!!」
悲痛の叫びを腹の底から出し痛みに身を悶える。
だがそれもほんの数秒で立て直し此方を睨んでくる
ザァァ
天井に大穴が空いたせいでそこから雨が獣と狩人に降り注ぐ
体が冷えることによって更に冷静になる両者
彼等が考えることは一つ
……確実に息の根を取る
それだけを考える
両者はもう一度構え、一触即発の空気へと変わる
解ることはこの後どちらかが負け、どちらかが勝つそれだけ
雨が静かに降り注ぐ中普通より少し大きめの水玉が落ちてくる
ポチャン
獣と狩人が同時に動き出す
しかし運とは非情なもので常に運命の女神は湯助にはむいてなどくれ無かった。
今回も同じく
「ッ!?」
自分の足元にできた水溜まりに足をとられ前のめりに姿勢が倒れていく。
獣はそれを見逃すわけもなく頭を潰すために飛び掛かるその光景をスロー映像のように見ている湯助。
次にくるのは鋭くゆっくりとした激痛と気を失う際の喪失感
湯助は倒れた
Sidaut
「局長何故ですか!?」
「何故も何で、でもない今町はとても危険なんだ外には出させれない。」
セントレアから連絡を受け急いで我先に動こうとしたが局長に行く手を阻まれ言い合いになる
「私の担当の子が危険に更々されているのを指を加えてみていろと!?」
「そう言うわけではない。……もう少しなのだもう少しで危険は解かれる。だから其まで待ちたまえ。」
局長と言われた男はスミスの身を守るために
スミスは今もこの時までも危険に更々されているであろう、パピをただ心配する
しかしその心配はスミスの方が勝っていたようで
スミスが強引に男を退かし外へと抜ける
「くっ! 待ちたまえ!……くそ! 何でこうなる!?」
彼は仮面と衣服を取り出しそれに着替える
「どうか湯助君、間に合えよ。」
彼も夜の町を駆け抜ける
Sidaut
雨のなか骨が砕かれる音がそこら中に鳴り響き、それとと同時に血もまるで池のように流れる元は人だったものに拳を降り下ろす異形の獣
勝負に勝ちその余韻を感じ頭を砕き動かなくなった湯助の体で死体遊びを始め出す
腕をもぎ、腸をえぐり、自分がされたように片目を潰し、あばらの骨を折り、最後に心臓をえぐり取り指で潰した
プチュン!
と軽快な音が鳴り血が辺りに雨のように降り注ぐ
赤く濡れた大地がすぐ雨によって、かき消されていく
「……。」
獣は何を思ったのかその場を離れるために後ろを振り向き前に足を出す
が
ガシッ
「ま……だ、だ…おわ…てない。」
もう動かないはずの湯助に足を捕まれ反射的に振り向く
……殺しきれなかったのか?
獣は思うしかしそれはすぐに間違いであると頭のなかで決定付ける
……こいつは確かに殺した。心臓を潰した
と
しかしそれでも湯助は動くまるで壊れかけの自動人形のように目的のために身がどうなろうと
その光景に恐れ出す獣は再度、トドメを刺すために拳を降り下ろす。
瞬間血渋きが飛び散り方の骨が砕かれる音が鳴る
しかしそれでも湯助は手を離さない
何度も何度も降り下ろす拳
湯助は何度も何度も砕かれ、潰されていく。
今湯助が動いている理由であるその執念は獣を恐れさせた
もし獣に声があるならこう言っていただろう
「何故やめない!?」
湯助はどう答えるかは解らない。だがその執念それは人である特徴であり、最もおぞましい力の一つそれが今の彼の原動力となる。
ふと風が切れる音がしてもう片方の目に直撃する
「湯助!」
それを撃った張本人は湯助のそばに走り込み彼の体を触れる
「スミス……にげ…ろ」
スミスはそれを聞くことはなく湯助に微笑み彼を抱き締める
「なにいってんの、こんな時まで他人の心配?」
『何をいっている、少しは自分の心配をしたらどうだ?』
……はは、また怒られたな
聞き覚えのある声が頭をよぎる
怒り狂った獣がその腕をスミスと湯助目掛けて降り下ろされていくのをゆっくりと見つめる湯助
……こんなんじゃ彼女に言い訳が出来ないな……だから
体に鞭を打ち立ち上がり獣の腕を自分の腕で防ぐ
……今この瞬間にありったけを!
一歩でも引き下がればスミスが潰されてしまうそれは断じて避けるために湯助は一歩づつ獣へと足を出す
「Oooooon!!!!」
獣が更に力を込めて押し潰そうとする
脚が砕け、筋肉が割れ、それでも湯助はその二本の足で地面を踏みつける
「ぐおおぉぉぉぉ!!!!」
腕を押し返し獣を大きく仰け反らせゆっくり湯助は鎌を構える
「Gaaa!!!!, 」
獣も直ぐに体制を整え湯助に拳を振り落とそうとするが
そこに何処からともなくクロスボウの矢が飛んできて獣の眉間を撃ち抜く
「Gyaaa!!!, 」
たまらず痛みに手で顔を覆う
「グ、ラアァァ!!」
鎌が降り下ろされ一つの閃光が走り
辺りは静寂に包まれる
「せめて安らかに眠りたまえ」
その言葉と同時に力なく獣は血を撒き散らせながら倒れ込む
ザァァ
雨にまるで血を与えるように辺りに血が広がっていく
「ハァ ハァ ハァ……」
意識が朦朧としはじめる湯助最後に見たのは急いで走ってきたであろう自分の家族全員の顔、と守りきれたスミス、そして此方をただ見つめる仮面の男だった。
Sidaut
「集まったかい?」
「ああ」
暗い部屋の中に数人の男が円卓に座る
「それにしても道端でたまたま出会った男が選ばれし者だったとはな」
「ククッ」
暗闇のなか一人が不気味に笑う
「まぁあんな劣化物生きていても要らないけどね」
「そうやって人の命を甘く見すぎだ貴様は」
更にもう一人部屋へと入り言葉をかける
「おや?[仮面]来たのかい? 久し振りだね」
「そうだな確かこの集会を抜けて一年くらいたちましたっけ?」
「ふん、その裏切り者が今さらなにようだ?」
場の空気が重く冷たいものへと変わる
「何、貴様らに伝えに来たのだよ。狩人は貴様らの命を必ずや刈り取るとな」
辺りに静寂が流れ時間が止まったかのように静かになる
ふと一人が笑いだす。狂ったかのように
「ハハハ,……良いよヤってみろよ。」
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