Fate/Apocrypha ホストが聖杯大戦に参加するようです 作:ニーガタの英霊
黒の陣営がサーヴァントを召喚している合間、我らが相良豹馬は日本から空へと飛び立った。
東京から急遽鹿児島へ飛び立ち、さらに引き換えし国際線でルーマニアへと向かう旅路、長旅によって豹馬は大層疲れていた。
しかし、豹馬に対しさらに追い打ちをかけるかのように、豹馬の隣の座席では、大量のカマボコとそれを食す中年の姿があった。
後退した頭髪に口髭を蓄え、ラフなワイシャツの袖をまくりながら、大量の書籍と大量のカマボコに埋もれながらそれを消費している男の姿があった。
「アサシン、お前は疲れを知らないのか?」
「サーヴァントだからな、早々に疲労で倒れることもない。生前は一日四時間の睡眠を必要としたが、今では何日でも徹夜が出来そうだ。いやはや、サーヴァント万歳といったところだ」
彼こそがアサシンであり、豹馬が召喚したサーヴァントである。最初は何もかもが目新しいのか、周囲を見渡すなどの行動もとっていたが、何回も飛行機に乗ることで慣れたのか、こうして書籍を読みだした。アサシンが読んでいるのは歴史書や詩の本、現代科学や司法、軍事書など多岐に渡る。
おかげで豹馬の懐はすっからかんだ。同情するなら金をくれ。
「そういう君はどうかね? 現地の言葉は覚えたかね?」
「日常会話程度なら問題はないさ、こう見えて頭の出来はいいからな」
自慢気に髪を撫でながら告げる豹馬。優秀な自分をひけらかす様で気が引けるが、本心では少しだけ満足そうだった。
「学制と言ったか、私の時代は藩学でな、大学というものも行ったことはない。そう思うと非常に興味深い」
「はぁ・・・・・・なんか、祖父ちゃん、曾祖父ちゃんと話してる気分だ。前時代すぎる」
「私などまだまだよ。漸く、これからという油の乗った時期にぽっくり逝ってしまったよ」
彼からしたらジョークなのだろうが、まったく笑えない。
「特に、飛行機は素晴らしいな、私の時代は外国に行くのは船でね。嗚呼、これがあったら私は病に罹ったとしても生きれたかもしれんな」
彼の死因は病死。それもフランス視察のときに罹った病によってアサシンは亡くなった。
幕末という動乱の時代に生き、日本という国にメスを入れた一人の男に対してはあまりにあっけない死であった。
「無理のし過ぎだ。一日四時間なんて言う無理をするから肉体が弱まっても不思議じゃないさ。(今は大丈夫なら完徹させようか、俺は寝よう)あんたは一人になんでもやりすぎた。(俺は手伝わないけど)少しは周りを頼ってもよかったんじゃないか。(まぁ、俺は一人で何でもできるが)嗚呼すまない、そんなことも考え付かなかったのか(低能、マジ低能。ププー)」
きらりと豹馬の瞳が光る。ここだ、そうここだといわんばかりに豹馬はアサシンをDisる。歴戦の英雄を馬鹿にするという行為に豹馬は新たなカタルシスを感じるのであった。
「ははは、痛いところをついてくる。
―――そうだな、誰かに頼ればよかったんだろう。それでも、あの時代は誰も彼もが無理をしてきた。非難に晒され、多忙な職務にまい進し、誰も彼もが必死だった。そんな状況で私だけが休むなど言語同断だろう? そんな風に思っていた。その結果が、あの病だ。ひどいものだ、後任の為に無理をしたのに、逆に後任に無理をさせてしまうとはな―――警察失格だ」
「―――そうだな(何一人で勝手に納得してるんだこのオッサン)」
彼こそアサシンのサーヴァント、川路利良。
動乱の幕末の時代に生まれ、明治維新を成し遂げた英雄、その一人。新政府誕生後は欧州視察に同行し、現代における警察制度に多大な貢献。「日本警察の父」と呼ばれる維新の英傑である。
豹馬のような小物とは雲泥の差がある。
「だが、それでも、私のしたことは無駄ではなかった。日本の警察は優秀だ。それがわかっただけでも、私は嬉しいと思う」
アサシンは、ポツリと一人呟くのだった。
(何一人で自己完結してるんだ? むかつく)
豹馬はそんなアサシンの態度に対し嫉妬の気持ちを浮かべるのだった。
―――fate/Apocrypha ホストが聖杯大戦に参加するようです―――
「正直、召喚した当初はこてこての鹿児島弁でもしゃべるかと思ってた」
おいはおいは! ごわすごわす! と言ってくると思って爆笑必死な状況に対しどう笑いを堪えるかと召喚前不安だった豹馬だったが、ふたを開けてみれば何とも肩すかしだった。
「言葉使いは東京の方で直した。―――そいともなんだ? こっちの方がよかか」
アサシンは言葉使いを変えて、豹馬に問うが、当の豹馬はやんわりと断る。方言で真名の特定がされることもあるのだ、その可能性があるなら標準語でしゃべってもらった方が彼にとっては良かった。
とりあえず、寒い冗談を口にするアサシンに対し少しだけイラっときた豹馬はアサシンの発言を無視して話題を変換する。
「まぁいいや。それとも準備はいいか? ここが、ミレニア城塞だ(古くさい砦だな、俺には似合うそうにないな)」
「ほう・・・・・・、まぁせめて熊鎮以上に堅牢なことを祈ろうではないか」
紺色の制服を纏い、腰にサーベルをひっさげながらアサシンはしばしミレニア城塞を見つめるのだった。
ミレニア城塞に入ると、出迎えたのはホムンクルスだった。相変わらずのアルビノで豹馬は見るからに病弱そうなこの人形を見下すのだった。
まぁ、スペックに関してみれば圧倒的にホムンクルスのほうが優秀であるのだが・・・・・・、それに関しては豹馬は知らない。
さて、そんなホムンクルスを見て豹馬はどうするのかというと、簡単なことだった。
「出迎えありがとう。こんな極東の木端魔術師に対し丁重な扱い、ありがとう」
「いえ」
弱いものに対しては逆に親切にふるまうのが豹馬だ。馬鹿な女に馬鹿な同僚を基本的に見下しているが故に、少しでも頼られているという優越感に浸りたいが故の行為だった。
もっとも、そのおかげで仕事場での彼の評価は非常に高かった。ルーマニアに数週間旅行に出かけると言ったときも半ばお祝いムードで見送ってくれたのだ。
ホムンクルスに道具を預け、案内されたのは黒の盟主であるダーニック(以下駄肉)とそのサーヴァントであるランサーの下であった。豹馬にとってみれば先代からのお得意様だったが、現在ではこの状況を作り出したすべての元凶、大戦犯である。
「(豆腐の角に頭ぶつけて死ねばいいのに)極東より参戦いたしました、相良豹馬であります。(豹馬・相良・ユグトミレニアじゃないからね)サーヴァントアサシン共々、黒の陣営とともに戦い抜く所存であります(死なない程度に程々にな)」
様になっている挨拶ではあるが、当の豹馬本人はランサーのプレッシャーにあてられ今にも失禁しそうだった。膝が笑っているのを何とか隠し、無表情にランサーから視線を逸らさない。
「(なんだこのオッサン、目ぇ怖!)」
「ダーニックよ、中々に気骨のある男ではないか」
「えぇ領王、魔術師としての腕はともかく、優秀であることは間違いありません」
何故だかよくわからないが、ランサーからは高評価である豹馬であったが、肝心の駄肉からの評価からは少し見下された印象を受けた。
この男、自分が他人を見下すのはいいが、見下されるのは大嫌いである。先の情報で明らかに魔術協会という組織に喧嘩を売った元凶であることにイラついていた豹馬はここぞとばかりに駄肉に向かって言葉を発した。
「領王よ、発言を許してくださるでしょうか」
「発言を許そう」
「では、ダーニック・プレストーン・ユグトミレニア卿に一言物申しましょう。そもそも魔術師の腕とは何でしょうか? 血筋? 才能? 確かに魔術師としての能力を指す指針にはなりましょう。(俺には関係ないが)確かに俺には才能がありません、血筋はそれなりに長いと自負していますが、最早没落した身、薄汚い情報屋として貴方が毛嫌いする魔術使いと揶揄された事があります。(そもそも魔術を仕事に利用してるのはそっちも同じじゃん)
―――ですが、この相良豹馬、自らの魔術の腕を恥ずかしいと思ったことはありませぬ。(暗示とか超便利だよね)むしろ俺はこの先代、先先代より受け継ぎしこの魔術を誇りとして生きてきました。(お陰で人生ユルゲーだったわ)それを侮辱するなら、例え貴方であっても許さない・・・・・・!」
そして言ってしまった後で気づく後悔、真正面から自陣の盟主に向かって喧嘩腰で説教をかましたのだ。ついカッとなって言ってしまったが、吐いた言葉は戻せない。アサシンが後方でニヤニヤしているのがすごく鬱陶しいが、すぐさま持ち前の媚売り能力を以てどうにかしようとすると先に言葉を制したのは豹馬でもなければ駄肉でもなかった。
「くはは、中々に威勢のいい啖呵ではないか! ならば相良豹馬よ、その力を見せてもらおうではないか」
「領王・・・・・・」
「のうダーニック。余はな、余以外で圧倒的強者に対し毅然と立ち向かった者を知らない。オスマンとワラキア、圧倒的国力差がありながらも余が戦い抜いた。想いの為に、信仰の為にだ。故に聞こう! 故に魅せてもらおう! この相良豹馬という男の矜持を・・・・・・!」
なんだかよくわからないが、ランサーがいきなりノリノリになった。豹馬はこの好機を逃さず、懐から紙束を取り出した。
「ふむ、これは一体?」
「俺が独自に調べ上げた今回魔術協会から派遣、あるいは雇われた赤の陣営の魔術師に協会が取り寄せた触媒を元に割り出したサーヴァント候補の数々です」
「―――!?」
「暗示に潜伏、比較簡単な魔術ですが、ようは使いようでいくらでも変化します。情報は鮮度が何より求められます。古来から情報を制す者が世界を制すなどという言葉もありますから」
豹馬から渡された資料には事細かに魔術師の経歴や、触媒を取り寄せたルートなどが事細かに調べられていた。だからこそ腑に落ちないことがある。
「しかし、よくこれほどまでに精巧な情報をもっておったな。もしや敵と内通しているのでは?」
ランサーの懸念はもっともだろう、元から裏切りに対しては機敏な質ではある。だからこそ豹馬はあえてこう言う。
「えぇ、言葉に多少語弊はありますが、協会とはそれなりの繋がりは持ってますよ」
鋭くなる駄肉とランサーの視線。裏切り者には死を、それが両者の共通見解だ。両人が敵にまわるこの状況に際し、豹馬は内心びくびくしながらも、表面上は極めて冷静に、口を動かす。
『八枚舌』ダーニックと呼ばれた協会随一の論争巧者であるあの駄肉に論争で挑む。並の魔術師ならば話を聞かずに去るのが正しいのだろうが、火のついた豹馬は止まらない。なぜなら彼も、弁術に関しては得意分野と自負しているからだ。
「そもそうでしょう、俺は情報屋。貴方に対して協会の情報を逐一報告していたのは誰だと思っているので? そもそも、私が裏切り者であると思っているのなら、総勢200人の魔術師があんな簡単に殺らされるとでも思っているのですか? 魔術協会に対し、そのような情報をリークする危険性を貴方はわかっているでしょう?」
本人ですら危ない橋を渡っているという自覚はあった。不幸なことはその総勢200名の魔術師が誰一人帰ることなく目の前のランサーが虐殺してしまったことだ。『八枚舌』と呼ばれた駄肉なら、政治的判断の下にうまくのらりくらりと躱すだろうとそう思ってそれなりに協力できそうな魔術師を数名ピックアップした資料をあらかじめ送っていたはずだ。
「そして、勝利するにしても、敗北するにしても、魔術協会とユグドミレニアの橋渡し役は必要でしょう」
魔術協会からの離反を表明した時点で、豹馬は知り合いの封印指定執行者の伝手を頼って魔術協会に接近していた。まぁ、当の知り合いの封印指定執行者も目の前のランサーに殺されて、またもや微妙な立場に立ってしまったのだが。
そう思うと、なんだか目の前のランサーにもイライラしてきた。すかした顔をぶん殴りたい。
「まぁ、魔術協会でも俺は微妙な立場ですけどね(信用しにくい立場で)。なんせ協力者も(貴方たちのせいで)死んでますしね」
可能性としては蚤程度の小さな可能性ではあるが、それでも無いよりマシた。何せサーヴァントがいる。何の抵抗の手段無く死んでしまうということもないのだ。それだけは幸いと言えよう。
「それでどうします? 俺を殺しますか? ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア? 俺を殺したら、ユグドミレニアの一族はそれこそ一人残らず狩り尽されるでしょうね! 何せ天下の魔術協会に喧嘩を売ったんだ! よくて死亡! 悪けりゃ魔術の為の教材扱いになるでしょうな! 子を、子孫を残せない、貴方にそれを許容できますかねぇ・・・・・・」
表情を変えなくてもわかる、駄肉は明らかに考える余地を作っている。この弁舌で、考える余地を作った時点で豹馬の勝ちと言える。
そもそも、駄肉の持つ情報を与えてくれるのは他ならぬ血族の一員、豹馬のように魔術協会に在籍する内通者を使った方法ではない。最悪、血族ごと刈り取られてしまえば駄肉は身動きが取れなくなってしまうのだ。
敵か味方かわからない状況、だが、現状においてそして大戦の終わりに際し豹馬の能力が必要であるが故に駄肉は判断を下せないのだ。彼自身に使い道がある故に、それは豹馬にとっては千載一遇のチャンス。この間にこそ豹馬の真価は試される。多くの仲間を集い、やがては駄肉に対抗できるだけの派閥を作り出せばいい。その中に納まればいくら優秀な魔術師である駄肉も豹馬を切り捨てるわけにはいかない。
なにせ、豹馬の存在はそれだけでメリットであるからだ。
情報収集、潜伏、諜報に特化した魔術師とその相棒であるアサシンの存在はいるだけで対マスターに対する抑止になりえる。アサシンは敵であればこれほど厄介な存在はない。加え豹馬自身に至っては疑問は多く残るが、現状において黒の陣営における不利益を及ぼしていないことがあげられる。
何も不利益を出していない者を勝手に処断しては駄肉は兎も角、黒のサーヴァントのまとめ役であるランサーの沽券に係わるためだった。
そして何より、駄肉のもっとも痛いところである、ユグドミレニア一族のことがあげられては彼はどうしようもない。ユグドミレニアという一族をもっとも愛しているのは他ならぬ駄肉であるが故に。
そして豹馬はとどめとばかりに駄肉に対し甘美な囁きを手にする。
「俺なら、守れますよ。俺なら、ユグドミレニアのすべてとはいかないが、多くを救えます。それだけは保障しましょう(俺もユグドミレニアの一員だからな、俺が生き残れば無問題だ)」
担保は血族の命、それを救える可能性を豹馬は指し示したのだ。ユグドミレニアが勝利した暁には不要になる物とはいえ、それでも保険は欲しい。そう思うのはごく自然なことである。
「・・・・・・わかった、これ以上のことは不問にしよう」
「寛大な処置、ありがとうございます」
『八枚舌』論破したった、気持ちいィィィィ!
アドレナリンが駆け巡り、脳内ではちょっとしたパーティーが開かれている。気分も高揚した状態で部屋を後にする豹馬に声をかけたのは駄肉とは違う人物、ランサーであった。
「相良豹馬よ、二つほど聞いてもよいだろうか?」
「何なりと、領王」
機嫌のいい豹馬は多少の上から目線な態度に意を貸さず、それどころか、頭を垂れる。普通では考えられない状況だった。
「協会とつながりを持っていると聞いていたが、もし我らを裏切ることがあるなら如何にする?」
「知れたことですよ領王」
豹馬は大層な身振り手振りをしながら、堂々とランサーに豹馬の持論を展開する。
「この世に、完璧に信用できる存在などありませぬ、それこそ神と言える存在だけでしょう。自分自身ですら信用できない人(まぁ、俺は俺を信用しているが)がいるというのに、他人を信用するなどおこがましい。(まぁ、他人は信用じゃなくて利用するものだしな)人はそれを傲慢と言いましょう。
―――大陸の言葉に杞憂という言葉があります。いつ裏切るかわからないままずっと考えていれば気が滅入るというもの。(俺はだれも信用してないから関係ないが)古来より猜疑心故に破滅した王は多い。破滅せずとも、それは時代へと負の遺産となって現れるでしょう。(次の時代とか知ったこっちゃないけどな)まぁ、何が言いたいかと言えば考えすぎはよくありませんよ。領王の回りがいかに信用できない存在で囲まれていたかは史跡でしか把握できませんでしたが、もっと気楽に考えましょう、そちらがこちらを利用するならこっちも利用しようと」
持論の展開で気分を良くした豹馬は満面の笑みを抑えきれず、両手を広げながら、ランサーに向かって最後の一言を告げた。
「俺が裏切った場合どうするかと言いましたね。それこそ心外です、俺はいつだって俺の為に行動している。俺は貴方を尊敬しているし、貴方の才能に嫉妬もしている。しかし貴方の臣下ではない。
―――俺は貴方の友でありたいと思う、よき隣人でありたいと思う。だが、貴方の臣下にだけはなりたくない。なぜなら、俺は貴方と同じ地表に立っているからだ」
口角を吊り上げるランサー、何たる不遜、何たる傲慢だろう。王である自身にとって何たる不敬であろう。だが、なぜかそれを心地いいと感じる自身がいたことに、ランサーは驚きを隠せなかった。
「仮定の話をしましょう。たとえ、貴方と俺が敵対したとしても、せめてその時まで友好で紳士的でありましょう。出来得るならば、その日が来ないことを望むばかりではありますが」
「―――そうか。いや、そうだな。せめてその時までな・・・・・・」
その時、豹馬の後ろで沈黙を保っていたアサシンが姿を現し、ランサーに告げる。
「偉大なりしワラキアの公王。私はアサシンのサーヴァント、真名を川路利良と申します」
なに主に相談もせずに出てきちゃってるのこいつと、豹馬はせっかくのいい気分に水を注された形になり、しかも真名を勝手に暴露された豹馬は心の中で憤慨するが、豹馬が何か言う前に、アサシンは淡々とランサーに自らのスタンスを告げていた。
「私もマスターである豹馬と同様、貴方を一人の人間として尊敬していますが、臣下になることは出来ませぬ。私には使えるべき陛下がおります。臣は二君に仕えず。私の忠義はひとえに陛下と国家の為に捧げました。貴方に協力しましょう、ともに轡を並べ戦い抜きましょう。それでも、この聖杯大戦、いずれは敵対する定め。その時はともに死力を尽くして戦う所存です」
あれ? これ遠回しな宣戦布告になってねと思うがすべては過ぎたこと、冷静になる豹馬をよそに、アサシンとランサーは気分が高揚しているかのように高笑いを上げた。
「くはははは! 面白い、面白いぞ! こんな宣戦布告は初めてだ! あぁ、ダーニック。余はこの聖杯大戦に参戦できて良かった、このような男に出会えるとは、惜しむらくは、余は貴様の名を知らんことだな」
「貴方の死からおよそ四百年後の極東の唯人であります故な、知らずとも不思議はありませぬよ」
「いいや、覚えたぞ。川路利良か、不思議な音調だ。極東とは実に面白い」
豹馬を空気にすることで、逆に意気投合した二人のサーヴァントを尻目に豹馬はちらりと駄肉に視線を向ける。そこには、驚きの表情を浮かべた黒の盟主(笑)がいたのだった。
豹馬はその表情を脳内でコピーし、しばしの愉悦に浸るのだった。
アンチ・ヘイト=ダーニックを駄肉と呼ぶ度胸。
アサシン=美男美女のサーヴァントの中に禿げかけたオッサンをいれるという度胸。