Fate/Apocrypha ホストが聖杯大戦に参加するようです 作:ニーガタの英霊
GOやってると分かる。ハサン先生最優のサーヴァントですわ、ニーガタのオルレアンの英雄は小次郎じゃなくてハサン先生でした。輝いてたぜ、妄想心音
「よかったのか、豹馬」
私室に戻った豹馬に対しアサシンは問いを投げかける。その問いに対し豹馬は憮然とした状態のまま椅子に深く腰掛け、目を覆う。
「なにがだ? アサシン」
「情報のことだ、なぜわざわざ規制した。メリットは分かるが、デメリットの方が大きい。現に盟主以外における評価は下がっただろう」
致命的なミスではないが、完璧な仕事とは言えない。確かに豹馬のもたらした情報は値千金だ、わかる奴にはわかる。現に黒のランサー、アーチャー、キャスターはその部類だろう。セイバーはあまり反応を示さず、ライダーとバーサーカーは問題外。
秘密主義は団体戦においてはメリットはあるが、同時に爆弾となるデメリットも多い、最悪は陣営内で孤立することもあり得る。それを心配してのアサシンの問いかけであったが、豹馬はそこまで深くは考えていなかった。
「これ以上相手に有能とみられてみろ、逆にこっちが雁字搦めになる。適度に気を抜き、適度に仕事する。出る杭は打たれる。相手が慢心してくれるなら結構だ。(もうこの時点で辛いんだけど、俺は社畜じゃないんだよ! お仕事勘弁、観光とかしたいな)・・・・・・それが隙となるなら、それすなわち俺たちの勝ち目だ。最低限度の労力で最大限の効率をだ(よし、なんかそれっぽくなったな)」
「評価下げは分かった、情報規制は?」
「(単純に横やり入れてほしくなかったんだけど、なんかそれっぽいこと言おう)現状、俺らは弱い。単純な戦闘能力は俺にはないし、アサシンのステータスはとてもじゃないが、高いとは言えない。低いステータスは知名度の関係もあってさらに劣化している。これは俺のミスだな。まあ、そんなことはどうでもいい、重要なことじゃない」
豹馬は向きを変え、アサシンに相対すると、アサシンに正面から向かい言葉を告げた。
「仮に、そう仮にだ。この情報が漏れ出たとして、現状ならまだ挽回が効く。しかし、一度会えばそれは難しいだろう。勿論、コンタクトをとったならきちんと正直に言うさ、敵マスターを把握したとね。アサシン。俺たちがしてはいけないのは嘘をつくことであって、とぼけるのはまだ可能だ。そのための布石の為に自らの無能を謳った道化になったんだ。(記憶にございません大作戦、俺はこれで魔術師を22人ほど謀った、出来る出来る)まあ勿論、道化のままで終わるつもりはないけどな。何せ俺たちは最弱、保険は多ければ多いほどいい。(あ、そうだこれも言っておこう。先に言っておいた方がこじれても何とかなるか)
―――だからアサシン」
豹馬はデスクに肘をつき、指を絡めて、鋭い視線でアサシンを見つめる。
正直言ってガクブルだ。最悪殺される可能性もあるだろう、しかし豹馬は信じている。相手はそんな短慮な性格ではない。理詰めで説得し、誠意も示した。仮に失言だとしても、豹馬は挽回する自信がある。だって俺はそこそこ頭いいから、そして、こういった言葉はあえて先に出すのも効果的な場合もあり得るからだ。
「俺はお前を駒として使う、それに変わりはない。最悪、お前に死ねと命じるだろう。
―――俺を恨んでもいい、憎んでもいい。俺の為に死んでくれと、俺はそういうだろう。俺の目的のために」
俺の目的=何の損もせず聖杯戦争からうまくフェードアウトすること。
これが豹馬の考えることのすべてである。謙虚? いいえただの自己保身の怪物です。自分がよければいいじゃん、じゃけん温暖化加速させましょうねー。どうせ50年後とか生きてないし。
そんな糞ほどの考えしか持たない男、それが豹馬だ。世界の救済だとか、子孫繁栄だとか、他人を慈しむとか、それで利があるならするけど、そうでなきゃやる必要性を感じない。
コンビニで募金箱を見て、今にも死にかけている人がいるというのに、その募金箱すら眼中にない人間。自分に関係のない人がいくら死のうが、自分に害がなければどうでもいい、そんな人間だ。
動物のドギュメンタリーを見て、凄いな、感動したなとか思っても、実際問題それを暇つぶし程度の価値しか持っていなく、何かしらの問題で犯罪を犯した人がいたとして、それに対しうれうれと犯罪者を断罪して自分の評価を高めるのが豹馬だ。たとえ心が動かされたとしても捕まえる。だって豹馬は善良な一般市民だから。
「愚問だな、豹馬。もとよりその覚悟だ。・・・・・・おいはとっくに死んだ、おはんが気にすっこっじゃね」
「アサシン・・・・・・(やめて! 突然の鹿児島弁やめて! なに素になってんの)」
「豹馬、死んだ人間に気をつかうな。死んだ人間より、今を生きる人のことを想え。忘れろとは言わん、それを背負って、生き抜け。少なくとも、おいはそうした。そうせんとならんじゃった」
「・・・・・・(やめてー! 笑わせに来るのやめてー! 内容が入ってこないよー!)」
川路利良は薩摩の一藩士、それも身分の低い立場の生まれだ。そんな恵まれたとは言えない出生から必死に努力し、やがては維新を成し遂げた英雄の一人だ。一兵士から、指揮官へ、そしてのちに警察機構の創設者としての名声を手に入れた川路だったが、その道のりは順風満帆とは言い難がった。
身を削り、友の屍を超え、ただひたすら国の為、国の為と想い、功罪を積み重ねたその人生は決して善とは言えないだろう。敵を蹴落とし、地獄を見せ、その罪科を背負ってここまで来た。その結果が英雄川路利良である。
後悔はない、後悔などあるはずがない。あの時ああすればよかった。そう思うことは何度もあった。それでも、その選択をしたことを後悔することはないだろう。彼はいつだって最善と信じる道を選んできた。
それが、死したものに送る彼の生き様であり、選択だ。治安を守る、人を守る。民衆の守護者であろうと、国家の威信を守る盾であろうと、そう御前にて誓ったあの想いは決して間違いではない。
「切り捨てろ、豹馬。いざとなればおいを切り捨てろ。こうして現身をもって現世にいるのが奇跡だとするならば、これ以上を求むのは酷であろう。何、おいの願いを聞いてもらった礼よ」
郷里の土を踏むこと、それが彼の最低限の願いだった。川路は郷里から遠い青山の地で眠っている。死してなお、彼は郷里に帰ることはなかったのだ。いいや、彼だけではない、彼の家族も、そして部下も同じだった。
『私情においてはまことに忍びないが、国家行政の活動は一日として休むことは許されない。大義の前には私情を捨ててあくまで警察に献身する』
生前の川路の言葉だ。川路は故郷を敵に回してでも、国に尽くした、その結果がこれなら納得はできるだろう。だが家族は関係ない、部下も関係ないはずだ。すべては川路の責。
そして、目の前にはすべてを投げ打っても戦おうとする一人の人間がいる。(少なくともアサシンにはそう見える)そして、目の前の人間を救えない人間が真に国家の秩序を守る警察と言えるのか、答えは否だ。
「安心しろ、私は警察だ。日本国民を守るのが私の仕事だ、豹馬、約束しよう。君を決して私は見捨てない。無論、悪意ある犯罪行為は認めないがね」
「それは悪意のない犯罪行為は認めると?」
「トゥリファスの監視カメラをハッキングして、一部映像を流出しているのは流石にぎりぎりだと思うが?」
アイエエエ!? タイーホ! タイーホナンデ!?
豹馬は半狂乱になりながら焦るが、顔には絶対に出さずに引き攣った笑みを浮かべるだけだ。そんな豹馬の心情など知らず、アサシンは穏やかな笑みを浮かべる。心が通い合ってるようで通い合ってない謎コンビ。それがアサシン陣営の内情だった。
現に豹馬はこの空間からどうやって逃げようかと思案中であった。久しぶりに頭を最大回転、小物パワーからくる超保身力が火を吹く。
「・・・・・・少し出てくる。アサシンが仕事をしているんだ、俺も俺なりの仕事を進めるとしよう。(正直無理、この空気無理)それとアサシン、俺はあんたが思っているほどきれいな人間じゃないよ(お前の勝手な理想を俺に押し付けるな、今から外道戦法の準備しなきゃいけないんだよ)」
「人間、きれいなままの状態では生きれない、皆それぞれ何かしらの罪を犯して生きている。功罪の大小あれど、それが人というものだ。それに悪い奴がいたら嫌でも矯正させるのが私の仕事だ。豹馬、君が間違ったのなら、私の威信を以て君を救おう。それが私にできることだよ」
ぐう聖、アサシンの爪の垢を煎じて豹馬に飲ませるべきであろう。奴に一番足りないのは反省だ。毎度毎度、俺は悪くねぇで済まされるほど人生は甘くないということを豹馬は知るべきである。
どうしてこいつの相方がこのアサシンなのだろう、この男はもっと小物らしく死ぬべきであろうに。たとえば顎を切断させられ「コヒュー、コヒュー」言いながら死ぬのがお似合いである。
「無理だよ、俺はとっくに悪人さ。これまでも、これからもだ(余罪いくらあったっけ、情報屋も楽じゃないからな。まあいいや、ゴルドさんのとこ行こう、死にはしないだろう。何とか言い訳考えとかないと)」
豹馬は静かに扉を閉じ、ゆっくりと目的の場所へ向かうのだった。
偽悪的なその姿勢をアサシンは見つめると、ため息とつきながら腕を組む。
「やれやれ、我がマスターは少々偽悪的なのが傷だな。それが悪いとは言えんが、危なっかしいのが傷だな」
場合によっては外道を容認する。それは確かに必要なことだろう。人間正しい道を生き続けることなどできない。戦争によって人を殺めることがあったとして、罪に問われないもののそれは立派な殺人という罪だ。戦争など出来得る限り避けるのがよいが、国家の為にはそれを是認せねばならない。
例え相手が自身らより正道であったとしても、その誇りを捻じ曲げてでも自身らの正統性を嘔わなければならない。自らの手を汚す意志、それがあるのは結構だが、アサシンにはそれが少々卑屈に見えていた。
まあ本心は自尊心と妬みが肥大した小物なんですけどね。
「さて、私も私の仕事をせねばな」
アサシンは懐から小さな端末を取り出すと、それを耳に当てた。いわゆる無線機だ。
「こちら大本営川路、対象との接触はどうだ」
『こちら藤田、対象との接触を完了、明朝05:00にトゥリファス近郊の喫茶にて面会を希望している』
「店名は?」
『セントラル・ルーマニア』
「了解、おって伝えよう。任務達成だ」
アサシンは端末を切ると窓から見えるルーマニアの景色を見る。ミレニア城塞からは町は遠く、近隣の森しか見えないが、彼にはしっかりと町の様子が見えていた。
「さて、あとは藤田警部と豹馬の仕事だ。やるからには全力だ・・・・・・」
敵は未知、格も何もかもが相手の方が圧倒しているだろう。それでもアサシンは不思議と負ける気はしなかった。自身の前では、神秘だの格だのは関係ない。彼はいつも通りの全力を以て相手を叩き潰すだけだ。そこに一切の慢心はなく、一切の油断なく、詰将棋のように一手一手を指していく。うまくいくとは限らない、予定通りに進むとは思えない。しかしそれがなんだというのか、そんなもの、彼はいくらだって超えて来た。
「憂いはない、なぜならこの身は死人の身、恐れることは何もない」
この身はすでに放たれた一発の弾丸、後退も迷いもなく、敵を穿ちぬく鉛の玉。
「この身は最弱、相手は格上。だが私は一人ではない、ともについてきてくれるものがいる限り、私は孤独ではない、ならばこの身、最期まで戦い抜く。
―――嗚呼、なんと数奇なことか。死して漸く、自分の為だけに戦えることが出来ようとは・・・・・・」
つり上がる頬、沸々と湧き上がる闘争への想い。我ながら何と畜生なことか、忌むべき戦に対し、どうしても嬉々とした感情を抑えきれない。嗚呼何と無様、これが国家の安全を守る大警視の本性かと。
思えば、戦場に自身の想いで立ったことはない、いつだって彼は、上からの命令に対し、ひたすら戦ってきた。戦争を忌むべき気持ちもある、それに対し、戦争に対し湧き上がる思いもある。なんという二律背反だろう。
「では、見せてやろうか、我々の戦いを。どこまで通じるかわからない、それもまた一興だろう。無論、我々は勝つつもりで往こうか」
アサシンのその想いはこれまでも、そしてこれからも他人に見せることはないだろう。なぜならこの想いは自らのもの、それを汚すことは豹馬にすら不可能であるからだ。
―――fate/Apocrypha ホストが聖杯大戦に参加するようです―――
「はぁ、疲れた・・・・・・」
アサシンから逃げるようにゴルドさんの部屋に向かった豹馬だったが、依然として収穫なく、ゴルドさんの私室を後にした。現状、豹馬とゴルドさんの接点は薄い、故にまず豹馬が始めたことはゴルドさんの信頼を積み重ねることであった。
ゴルドさんの持つホムンクルスに対する知識はかなりのものだ、豹馬はそんな知識に付け焼刃ながらなんとか対話を重ねることで信頼をつかみ取ろうと必死に頭を動かした結果、脳がパンク気味に熱を持っていた、有体に言って疲労の色が濃くなってしまったのだった。まったくごますりは楽じゃない。
「あら、貴方は・・・・・・」
さて、そんな状況にパタリと会ってしまった車椅子の少女、名前を確かフィオレ・フォ・・・・・・なんとか・ユグドミレニアと、うろ覚えの知識を使ってなんとか豹馬は思い出そうとしていた。
「(あ、身体弱者だ。めんどくさいな。ちゃっちゃとうまく躱すか)これはこれは、確かフィオレ譲でしたかな。俺は相良豹馬です。こんなところで会うとは何とも奇遇ですね」
「えぇ、確かに。私はフィオレで構いませんわ。貴方は、相良様とお呼びしましょうか?」
「(こいつの苗字なんだっけ、みんなユグドミレニアでめんどくさいんだよ)いえいえ、女性を名前で呼んでいるのに俺だけ姓で呼ばれるのはいかがなものかと、私もヒカ・・・・・・豹馬で構いませんよ(あっぶねぇ、職業病が出てくるところだった)」
「分かりました、では豹馬様と。・・・・・・折角ですから一緒にお茶でもどうでしょうか?」
またか、まったく自分の美貌の犠牲者がまた現れてしまった。と豹馬はトチ狂ったことを考えているが、これはあながち間違いしゃない。豹馬は顔がいい、性根は糞なせいなのか、外面だけは良いのが豹馬である。鑑賞用美青年、ホスト経験は伊達じゃない。
魔術師としてそれなりの家に生まれ、学歴もそこそこで教養もある、立ち振舞いには気品があり、何より顔がいい。
本当にこいつを事故に遭って死なないかなと思うくらいには腹が立つ程度にイケメンなのだ。逆ナン経験は25回程と生々しい。
ちなみに女には困ってないが手を出すことは希だ、性欲処理なら自慰で済ますくらいには良識はある。ほんの少しだけな。
と言う訳で、豹馬のフィオレに対する第一印象は顔はいいがめんどくさい女だった。
「(断ると後がめんどうだな、しかもサーヴァントまでいるよ、汚い。嫌な女だ)折角の誘いです、お言葉に甘えましょうか。(悪意は無いな、こういう天然は騙しやすいがなにするか分からないのが嫌なんだよな。取り合えず好感度だけは稼いでおこう)こう見えて、茶の扱いは得てでしてね」
「そんな、客人にその様なことは・・・・・・!」
「俺がやりたいからやるのです。それに、女性の前で格好つけたくなるのが男という生き物でしてね」
なんで俺は営業スマイルをしているんだろう、これも全部駄肉が悪い、そうに違いないと豹馬はすべての恨みを駄肉にぶつける。聖杯大戦に参加してからというもの散財してばっかりだ。豹馬の資産がどんどん溶けていく様は実に悲しいものだった。
故に、少しでも優越感を得るために社会の強者ぶりたいのだった。
「分かりました、アーチャー」
フィオレは自身のサーヴァントに声をかけると、アーチャーは頷き、豹馬に声をかける。
「ええ、マスター。案内しましょう相良豹馬殿」
「豹馬で構いませんよ、代わりに俺はアーチャーと呼ばせていただきますがね」
飄々とした態度だったが、豹馬はにこやかな表情の奥底でアーチャーを観察していた。
「(頭いいなこいつ、ウチにもいたなぁ、こういうインテリヤクザ。なんだかんだで神代の英雄だ、それ以上と思っていた方がよさそうだな。才能豊かで、人格者で、知的な雰囲気をもつ大英雄・・・・・・なんだこいつむかつく)」
豹馬、ジェラる。よく見たらこいつもイケメンじゃねぇか、俺とキャラかぶってんだよ。というが、完全にお前の上位互換だということには触れる気はない。
自分が敗北を認めたらそれは敗北だ、しかし敗北を認めなかったらそれは負けじゃない、戦略的撤退だという論調を使うのが豹馬だ、狡い。だから俺は負けてない、いつかこいつが苦痛にゆがむ顔を見たい。そしてカタルシスを味わいたい。それだけが、今の豹馬の願いだ。
控えめに言って糞ですわこいつ。
「(嗚呼! 馬鹿にしたい、馬鹿にしたい、こいつを馬鹿にしたい! 天才に挫折を味あわせて、死体蹴りしたい!)」
きれいな顔の底で、くっそ下種なことを考えていた豹馬だった。
訪れたフィオレの部屋は整頓され、所々可愛らしい年相応な装飾が凝らされていた。その中でも、魔術に関するものが一番多いのは魔術師故か、書類と電子機器に囲まれたオフィスさながらの豹馬の部屋とは雲泥の差である。
さて、そんな部屋の中で豹馬が何をしているのかというと。
「さて、どうぞ。砂糖とミルクはご自分で」
「まぁ、いい香り。ありがとうございます」
紅茶を入れていた。それもただ入れているだけではない、きちんと計算された温度、時間を元に最高品質の紅茶の味を損なわない完璧な手法で豹馬手ずから入れた紅茶だ。
なぜ、豹馬がこんなことができるのか、それは彼の学生時代に遡る。豹馬は昔から腐った人間だった。自分は選ばれた人間であり、他の人間は格下であるという思想をもっていた。そしてその格下の人間に自らが劣るというのは彼は許容できなかった。
そんな彼が何をやったか、それは常軌を逸した努力である。この男、魔術に関しては二流、よくて平凡な腕前であったが、こと勉学教養に関しては鬼気迫るほどに努力した。学業では校内一位、学内カーストでは常に頂点、生徒会会長を経験。しかもそれは魔術を使った結果ではなく、すべて彼の自力故だ。
そして、そんな当時の悪癖は道場破りならぬ部活破りだった。
ひらりとあらわれる豹馬、生徒会長という権力を盾に視察という名目で部活動に参加、部員をコテンパンに打ち負かすのが当時の彼の趣味だった。なんでこんな性格悪い奴が生徒会長だったのか、それは一重に顔だった。
『いいか、自分が一番自信のある物を容易に超えさせられた時の顔はすごいぞ。とてもじゃないが人様に見させる顔じゃない、茫然自失、心が折れる音が聞こえるんだ。俺はこれこれこういうのが得意なんだなんていう一芸特化の奴らを馬鹿にするために、俺はコツコツ努力してきたんだよ。お前らみたいな社会の底辺どもとはやっている努力の量が違うんだよ、屑が』
豹馬は唯一信用していた親友だけに言った言葉だ。
時には弓道部に押し入り、最終的に的の中央を射抜き、鼻で笑う。時に野球部に混ざりエースピッチャーからホームランを打つ。吹奏楽部ではトランペットを借りて、見事な演奏で同トランペット奏者の心を折る。そして茶道部では部員顔負けの作法に、茶を煎じて飲ませるという外道振り。
しかもそれは、本人の犯罪紛いすれすれの偏執と努力の結果であることを巧妙に隠した結果だ。その努力を少しは魔術に使えばいいものの、本人にとっては魔術なぞ、便利な道具ツールにしか思っていないことで察せられる。ともに魔術を競い合う者がおらず、親を超えた程度で満足してしまったのも特筆に値する。
「まあ美味しい! 貴方とてもお上手ね」
「お褒めの言葉ありがとうございます(当たり前だろ、この俺手ずから入れてやったんだ。その反応は当たり前だ、それより問題は・・・・・・)」
「確かに美味しい。凄いな、何かコツはあるのかな」
そう、これだ。この黒のアーチャーの驚く顔。これが見たくてやったのだ。だがそれだけじゃない、その程度で満足するほど豹馬は人間は出来てはいない。こいつは正真正銘の屑な小物なのだ。
「少しだけご教授しましょうか?」
「確かに興味はある。お願いできるかな」
イィィィィィィヤッホォォォォオオオォ! その言葉が聞きたかった!
そう、豹馬は成し遂げたのだ、あの大賢者ケイローンに、幾多の英雄を教えたケイローンに対し、教えてくださいと、そうせがまれたのだ。
何という感動、何という爽快感。ほぼイキかけました。豹馬は絶頂しそうなほどのカタルシスに襲われていた。ケイローン、英雄の先生、偉い。そのケイローンの先生ということは即ちそのケイローンの格上なのだという図式が豹馬の頭の中を駆け巡る。なんというおめでたい頭脳なのだろう。あながち間違いではないのが癪に障る。
「ええ、いいでしょう。紅茶で大事なのは―――(ビャァァァァァアアアアオオオオオオオオオオ!!!!)」
テンション上がってきた。脳内はすでにお祭り騒ぎ、スーツを着た豹馬は「勝訴」という紙を広げ、その豹馬を多くの豹馬が胴上げするという不思議空間が豹馬の脳内では起こっていた。ケイローンに対しうれうれと、しかもなれなれしそうに紅茶の入れ方を指図するという様は豹馬の絶頂期トップテンに入るほどの出来事だ。今日はいい日だ、疲れも吹っ飛ぶ。いい気分な豹馬は偉そうに、それでいて細かく丁寧にケイローンに紅茶の入れ方を伝授していたのだった。
アサシンが獅子劫に会わなかった理由、姿見たら一発で正体がわかってしまうから。
全サーヴァント中、写真に写ってるサーヴァント。それがこのアサシン。