現代人 in エド in ONEPIECE   作:アディオス

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空島までの航海手順を探る一日な26話

 

 

 

 

「またお前、変なの買ってきたな」

「そうか?大事な手がかりだぜ?」

「手がかり?」

 

貝殻が入った木箱をドライヴに乗せてメリー号に帰ってくると丁度昼食の準備を終えたのかサンジが出て来て木箱の中を覗いていた。

ウソップはいるか?と問うと、食堂のウソップ工場で何か作業しているらしい。みんなが帰ってくるまで暇なのだろう、扉を開けて覗くと何か一所懸命に作っていた。

 

「ウソップ、邪魔するぜ」

「うぉ!エドか!後ろから話しかけんなよ!って何だそれ」

「お前へ土産だ」

 

土産?と怪訝そうな表情を作ってウソップ工場の隣に置いた木箱の中を覗き込む。中にあるのは渦巻き状の貝殻ばかり、一つ手にとってはいるが正直嫌がらせにしか思われていないだろう。

 

「お前が好きそうだと思ってな、買ってきた」

「その気持ちは有り難いが……おれ、装飾品とか作れないぞ」

 

そうじゃねぇよとウソップの言葉を否定して、食堂の椅子を引いて座る。脚を組み、頬杖を突いた。

 

「その貝はガキ共からはおばけ貝なんて呼ばれてるモンだ。殻長を押すと様々な反応をするのが特徴的で、声を出したり、息を吹いたり、震えたり、火を吹いたりするらしい」

「なにそれ怖!!」

 

早速押してみたのか、貝殻から小さな風がふいてウソップの髪を揺らしている。心成しかウソップの目がキラキラと輝きだした。

 

「面白いだろ?」

「あぁ!!」

 

同じ渦巻き状の貝だとしても、その色や大きさ、形が少しだけ違ったりして様々だ。ウソップは貝を同じ形ごとに分け始めた。勘のいいやつだ。貝殻だとしても元は生物、おばけ貝と云われる所以である不思議な現象はその貝の性質だ。ならば同じ性質なら、同じように育っていてもおかしくはない。

 

「面白れぇもん買ってきたな!エド!これ全部くれるのか!?」

 

貝殻を一つ一つくるくる回しながら検分しているウソップは興奮したようにそう問うてきた。俺としては元よりそのつもりだった。ウソップなら何かに使えるだろうし好きそうだなと思ったからだ。武器にするにも何にするにも俺にはもうドライヴがあるからな。

あぁと頷くとやっりぃ!と片手を上げて喜び、そのまま貝殻で遊び始めた。その姿にくつくつと笑ってやり、俺本来の目的を果たすために椅子に座りなおす。

本来の目的はこのナソードだ。古代文明であるモノが古い骨董品店にあるなんて思いもしなかったからな。そもそもこの世界のナソードの歴史は古くからある。それも空白の100年と呼ばれる禁忌の歴史より以前からである。それ程昔の技術で、建造物ならまだしも空白の100年より前の技術が現代に受け継がれるわけもなく、今ではもうあるはずもない空想の産物と成り果てている。まぁナソード自体知るものは少ないんだけど。

 

「(そういやDr.くれはの反応……あの時は気にしてなかったが、どう考えてもナソードの事知っていた反応だったな……)」

 

ナソード、というかドライヴを見て、“その機械”とは言わず“その技術”と言った。ということはドライヴがナソード技術によってできているというのを一目でわかったということだ。彼女がドライヴを見て驚いたのは、ただ単に大昔の技術であるナソードを何らかの形で知っていたか……それともオレの親の故郷に一度でも寄ったことがあるか、そのどちらかだろう。まぁあの年齢から考えて、多分後者だろうが。

 

「(ドライヴでスキャンした結果、そこかしこに傷があるな。配線には問題ないから、動作には影響がない)」

 

一番の問題は動力部の部分に傷があり、そのせいで動力があっても動かないということ。そもそもその動力自体も入手するのには非常に困難な代物、もう一度動き出すのは先になるかもしれない。

因みに同じナソードであるドライヴは動力源は太陽光だ。効率よく変換出来るために陽の当たる場所ならばいつまでも動き続ける。蓄積された分もあるので、陽が当たらなくても数年は動き続けるな。まぁそれがメインの動力源ってわけじゃないんだけど。

 

「(見た限りドライヴ程、エネルギーを喰うわけじゃなさそうだな。なら、太陽光で代用できる)」

 

太陽光でエネルギーを充電し、動作中は風力発電。まぁ所謂電気で代用するわけだ。この世界にも電力はある。ただその動力源が他の何かというだけで、最終的には電力だ。ここら辺の世界観は前世からわからないものなのだが、それは置いておこう。

ウソップからプラスドライバーを借り、ネジを回して動力源がある場所を開く。暗い中身をドライヴで照らすと、深緑色の手のひらサイズの小さな石があった。それを目にした瞬間に自然に口角が上がり、そーっと取り出す。

 

「クハハッ!」

 

笑い声が自然に溢れる。やっぱり間違いなかった。

 

これはエル(・・)だ。

 

力を失っているからか神秘の石には見えないが、確かにこれはエルである。ドライヴで何度解析してもそう(・・)だと示している。

しかし妙だな。この世界にエルがあるのもそうだが、このドライヴにエルだと示せる程の情報量がある事だ。ドライヴだって機械である。入力されたもの以外の事は解析できない。ということは、だ。

 

このドライヴは過去にエルを解析したことがあった(・・・・・・・・・・・・・)という事になる。

 

「…………考えても仕方がねぇか」

 

エドの記憶らしきものが戻ってきているのはわかっているが、自覚できないので考えても仕方がない。というより先にSAN値が削りきって発狂しそうだ。

というわけで放置、先にこのナソードである。考えても仕方がない事だしな。

 

「あーー!!!腹立つ!!!サンジくん!水っ!!!!!!」

 

さて、とナソードを改造しようとネジを回すのと、食堂の扉が勢い良く開くのは同時だった。

カウンターに座ったナミは非常にイライラした様子でサンジに水を要求していた。ガラスコップで出されたそれを苛立ちを隠しもせずに一気に飲む。ドン!と船が揺れた気がした。

あまりの荒れ様にウソップがこそりと話しかけてきた。

 

「なぁ、どうしたんだ?ナミのやつ」

「さてな。大方、何かにムカついたんだろ」

「それは見りゃわかるわ!」

「そこ!!聞こてるわよ!!!」

 

ナミにギロリと睨まれて慌てて目を逸らす。

 

「聞いてよ!サンジくん!!あいつらときたら!」

「あいつらってーと、ナミさん誰です?」

「あいつらよ!あ・い・つ・ら!!!!」

 

「うわぁあ゛あ゛!?どうしたんだよ!お前ら!傷だらけじゃないか!!医者ー!!医者!!!!」

「「お前だよっ!!!!っぐふ!!」」

「あっ!おれだった!!!ってゾロ!?!?ルフィ!?!?死ぬなー!!」

 

「……あいつらよ」

「あーー……」

 

さ、サンジが遠い目をしている!遠い目をしながらコップを拭いている!

ルフィとゾロがチョッパーが叫ぶ程の傷ということは何かやらかしてきたのだろう。海賊の多いこの街だ、揉め事を起こさないで帰ってこれるはずもなかっただろうが、あの二人が傷だらけなんてな……面白い事もあるもんだ。

話を聞いているとどうやらベラミーとかいう海賊団の船長にやられたらしい。正確にはその団員にだが。

食事をしていたところでその海賊達が入ってきて絡んできたという。ルフィが3000万の首ということに笑い、更には乱闘になる前にと焦って店員に空島の事を聞けばそれも笑われたらしい。それも店にいる他の海賊たちにもだ。

 

「だからだろ」

「……何がよ?」

 

最初は反撃しようとしていたルフィ達が、空島のことで笑われた後に喧嘩を買わなくなったのは。

喧嘩は絶対ダメというナミの言い付けを守ったわけではない、彼はただ自分達の目指す道を笑われたからだ。

 

「空島が幻想?ログポースが狂うのが当たり前?誰がそんなの決めた?夢を追わなくなった海賊たちだ。そんな彼らに笑われ、それに怒り狂い反撃すればまた……俺達も空島がないと信じてる事になる」

「なんでよ!反論してるんだから違うでしょ」

「いーや、ナミ。わかってねぇなー。そりゃぁ悔しいだろうよ、ムカつくだろうよ。でもな、男の夢を笑われたんだ。ただ力で答えちゃぁ意味がない」

「……?どういうことよ?」

「どうもこうもウソップの言う通りだぜ、ナミさん。ま、そんな辛気臭い話はやめといてデザートでもいかが?あ、ランチまだでしたらお作りしますよー♡」

「そ、もういいわ。サンジくん、デザート頂戴」

「はぁい♡ナミすわぁん♡」

 

愛の奴隷はナミを甘やかすことにした様だ。すでに用意していたのだろう。冷蔵庫から素早く出すと、クルッとターンを決めてナミの前に出した。その動作いるのだろうか?

考えることを放棄したナミの代わりに説明すると、彼らは空島があるわけがないと笑われて喧嘩を買わなくなった。ならば簡単だ。その喧嘩を買えば、空島の存在を一ミリでも信じていないことになり、空島はないと笑う夢を追わない馬鹿な海賊と同じ土俵に立つことになる。それじゃぁ意味がない。

ただ殴って怒って言い聞かせても彼らは笑って言うだろう。

 

“じゃぁ、証明してみろよ!”

 

そんな事を言われたらできるはずもない。だって俺たちだって今半信半疑に手探りの状態で探しているのだから。空から船が降ってきたからあると言っても、んなことあるわけがないと一蹴される。

いつまでも平行線だ。そんなの不毛だ。だから証明する。俺たちが空島へ行く事によって。

笑え、嗤え、いくらでも嘲笑え。その笑みは俺たちにとって無意味なんだから。

 

ククッと笑って、手元の作業を再開する。

 

いや本当に、彼奴らは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---面白い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もう一人の情報収集隊であったロビンによって島の端に住む変わり者、モンブラン・クリケットの下へと訪ねることになった。彼は島の住民の誰もが信じていない黄金郷の存在を信じ毎日海底に潜っていた本当に変わり者であった。

北の海(ノース・ブルー)で有名な絵本である『うそつきノーランド』。その主人公であるモンブラン・ノーランドの子孫がクリケットであり、彼が見た黄金郷を探すために海賊をやめたんだそうだ。並大抵の決意じゃない。

ノーランドとのと決闘なんだ、と教えてくれたクリケットは麦わらの一味に唯一空島へ行ける方法を教えた。この辺りが急に夜になる現象は上空に太陽光を通さない程の巨大な雲のせいであり、その上に乗れば空島へと行けるはずだと言った。そしてその上に乗るには突き上げる海流(ノックアップストリーム)という海流に乗って船ごと登るという。

ただその為にはランダムで発生地点が変わるノックアップストリームとあのどデカイ雲の地点が重らなくてはいけない。一体何分の一の確率であろうその奇跡はどうにも明日起きるらしい。

ウソップはその事を嘘だと言ったが、嘘を付くような人間ではない事はこの数時間で把握済みだ。腹を決めろと肩を叩けばうな垂れたように諦めて、クリケットに謝る為に走り出した。

 

まぁそんなこんなで今は森の中。大きな虫取り網を持たされて、サウスバードというずっと南しか向かない変な鳴き声の鳥を探す事になった。日の落ちた夜のことだ。

 

「鳥なんだから夜行型ってわけでもねぇだろうに、寝てんじゃねぇのか」

 

変な鳴き声だからわかるだなんて言われてもなぁ。

俺の独り言に誰も答えずただ、“ジョ〜”という鳴き声が聞こえるだけ。他の鳴き声は聞こえないのにこの鳴き声だけさっきからやけに聞こえた。

 

「…………起きてやがる」

 

なんていう鳥だ。常識を外れてやがる。

 

「ドライヴ、周囲を散策しろ。この声を発する鳥がいたら、電磁波で気絶させろ」

 

了解、と言う様にドライヴはくるりと動いてから周囲を一斉スキャンした。何匹もいるのか変な鳴き声はそこら中から聞こえて来る。一個体だけ特別というわけでもなく、種全体が夜にも起きているということになる。夜行性の鳥だなんて、フクロウ以外にあり得ないと思っていたんだが……動物に関しての知識はそんなにないからなぁ。

数分すると遠くからジョワ!とかいう変な悲鳴が聞こえた。悲鳴まで変な鳴き方だな。

 

「クックック。良くやったドライヴ。ほーかく、っと」

 

ドライヴに案内させ、見つけたのは木のそばで気絶して痙攣しているカラフルな鳥であった。ここの気候は暖かい方に入るので南国っぽくても不思議ではないが、この森にはカラフルな植物などほとんどない。身を隠す程で進化したとは言えない模様であった。きっとこの森の王者がこの鳥なのだろう、変な鳴き声のくせに。

サウスバードの脚を持って意気揚々と来た道を戻る。そんなに動き回っていないので帰るのも楽勝だ。

 

「一羽いれば充分だって言ってたが、他の奴らも捕まえてきたらどうするんだろな」

 

森を抜け、月が照らす海岸へと到着する。何故か半分だけハリボテな家が見え、他の奴らの姿もないことから俺が一番乗りだとわかる。サウスバードが馬鹿な奴で良かった、でないとこうもすんなり捕まえられていない。

……というか、クリケットと猿共だけにしては家の前にいる人数多いな……?

 

「ハッハァ!黄金は貰っていくぜぇ?モンブラン・クリケットぉ」

 

嫌な声だ。煽り方がオレに似ていて同族嫌悪してしまう。

そこらに転がっている巨大な何かは血を流し、気絶している。十中八九猿共だろう。そしてあの金髪の前に倒れている名前の通りの頭をした彼はクリケット。

ほぉ?黄金の噂を聞きつけやって来たってところか。クリケットを倒す程の実力とは雑魚ではないらしい。

クリケットが血だらけの手を伸ばす。

 

「やめろ……ッ」

 

金髪の男はニマリと笑って腕を振り上げた。

 

「やめねぇよ」

 

バネのように変化した腕を振り下ろすその刹那に俺は地を蹴り、一瞬でクリケットの前に躍り出る。防御モードにシフトしたドライヴでその男の拳を受け止め、バチリと電磁波で皮膚を焼いてやる。

 

「ぐぅっ!」

「ベラミー!?」

 

部下の一人が叫ぶように男の名前を呼ぶ。ベラミー……ベラミーねぇ。なんか聞いたことあるような……前に暇な日に賞金首リスト見てた時に書いてあったような……多分ルフィより下だった気がする。小物か。

まぁクリケットの黄金を殴って蹴って暴力で奪うのは海賊らしいが、やってる事は小物だな。

 

「痛ぇだろう?なァ!オイ!全身焼き切っても良かったんだぜ?」

 

戯ける様に嘲笑うとフッサフサの白いコートを着た金持ちそうな男がテメェ!と得物を取り出す。やる気満々らしい。煽り耐性がなさすぎるとも言うけど。

密かに攻撃モードに変更したドライヴを待機させてやるか?と首を傾げると意外な事にベラミーと呼ばれた金髪野郎が手で制した。ふーん。

 

「ハッハァ……!あぁ、痛ぇなぁ。お返しをあげたいぐらいだ」

「クックック、それはそれは遠慮しとくぜ」

 

焼けて痛いだろうにグーパーと手を開いたり閉じたりして動作確認していた。成る程これぐらいの痛みならどうってことないってことか。指先でも焼いとくべきだったか?神経が細かく通っているそこなら、比べ物にならないぐらい痛いだろう。

 

「ま、今のは無かったことにしてやるよ。でだ、クリケットの黄金を取ったんだってな?」

「あぁ、取ったぜ?まさか返して欲しいとか言うんじゃねぇだろうなぁ?人の手を焼いておいて酷ぇ言い草だ。どうしてそんなに肩入れする?そういうタマじゃねぇだろぉ?」

 

確かにただ黄金都市を見つけるためだけに日々潜り続けて病気になったバカなんて肩入れする程でもない。だが、それは俺個人での話だ。俺が所属する麦わら海賊団としてはクリケットに死なれては困る。

なにせ。

 

「空島へ行くには此奴の存在が必要不可欠だからな。死なれちゃァ困るし、恩を売っといて損はないだろ?」

 

そう言って笑うとベラミー達は一拍の静寂の後、盛大に笑い始める。その声は近隣に家があるものならクレームが来るほどの大きな笑い声だった。

俺は訝しげに眉を顰め、何が可笑しい?と彼らに問う。すると彼らは言った。空島なんてあるはずが無い、と。

 

「テメェもあの馬鹿共と同じだったってわけか!」

 

金持ち男は笑う。

 

「馬鹿ども?」

「昼にテメェと同じ様に空島を探してるっつー馬鹿共だよ!女もそうだが、あの男どもは仕返しもしない腑抜け共だった!」

 

ヒーwwwとお腹を抱えて笑うその姿にイラっときたが、そうか……お前らがナミの言っていた奴らか。把握把握。

となると俺の判断でぶっ飛ばして良いわけじゃねぇなぁ。俺はあくまで麦わらの一味。空島関連は船長に一任しないと、な。

 

つーわけで。

 

「帰れ、お前ら」

「は?」

 

金持ち男が間抜けな声を出したかと思うと、次の瞬間にはどこかへ消えていた。ベラミーとその他諸君もだ。船も置いておかれたら困るので同じように送ってやった。

いやはやこの数ヶ月、テレポートもといワープは範囲を広めて、このジャヤ程度なら問題なくどこでも送れるようになっている。ま、その分負荷があるが……海賊なら耐えれるだろうよ。船も含め、俺たちが元いた街の側に送ったので、今頃一瞬で変わった景色に驚いている頃だろうな。人間業じゃねぇし。

クックックと笑って、わざと転送しなかった黄金が入った袋を拾い上げ、傷だらけになっているクリケット達へと歩み寄る。

 

「早く帰ってこい、チョッパー」

 

オレは科学者なんでな、医術は得意じゃないんだ。

 

 

 

 




空島遠いなぁ……。

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