城下町のダンデライオン ~赤い弓兵~   作:じゃんぬ

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約2年の放置、…すいませんでした!
ネタがあんまり浮かばず、別名義で他の作品に手を出してましたすいません!

話は変わりますが、さっきアビゲイルとシバの女王が出ました。


交渉

遠坂凛は目の前にいる男を警戒しながら見やる。

交渉に応じた以上、男がこちらを今すぐにどうにかしようとする気がないのはわかる。

この場に櫻田茜、櫻田奏、そしてイリヤスフィール・フォン・アインツベルンはいない。席を外している。

彼女たちが居たら話が進まないからだ。

遠坂邸の別室にて待機している。

そして目の前の男─────櫻田士郎は相手の工房のある場にいてなお余裕の態度を崩さない。

あの二人は魔術の存在を知らないようだが目の前の男は確実に知っている。それなのに平静そのものなのは、たとえ敵対するとしてもどうとでも出来るという自信の表れなのか。

 

「それじゃあ、まずどこであなたがコレの存在を知ったのか教えてもらえる?」

 

「単なる偶然だ。冬木に足を踏み入れた時、以上な魔力を感知してその原因を探った。ただそれだけにすぎん」

 

「それでわざわざ首を突っ込んだってこと?随分とお人好しなのね」

 

「よく言われる。だが…国民を守ってこその王族だろう」

 

よく言う、と内心凛は目の前の男の言葉に返す。

男は魔術師だ、間違いない。

あの時英霊と戦う時、彼は身体強化の魔術を使っていた。

 

あの手に持った武器も出鱈目この上なかったが、あの武器…とりわけライダーを屠った捻れた剣は確実に宝具。

何故宝具を持っているのか…これに関してはなんとも言えないし、向こうもそんな情報を易々と吐くとは思えない。

 

何せ、実力の上では向こうが上。その気になれば自分の首など容易く獲れる。

精々こちらに出来ることといえば、出来る限り彼と敵対せず、持っているライダーのクラスカードを手に入れられるよう交渉するのみ。

 

「此方も一つ聞きたい。いったいいつ、そして何故こんなものがばら撒かれた?放って置けばコレは下手な爆弾よりもよっぽどタチが悪いと言うのに」

 

「さあ。コレを誰がなんの目的でこんな極東の地方都市になんかばら撒こうとした理由はこっちにもわからない。ここは一級の霊地だけど、ここより上の霊地なんて探せば世界中にいくらでもある。理由なんてばら撒いた犯人にしか分からないわよそんなの。時計塔がソレを見つけたのは二週間前。英霊の力を模した現象を起こす。それ以外に分かってることなんてないわ」

 

「成る程な」

 

櫻田士郎が少し考え込む素振りを見せる。

この反応から見て、本当に偶然に居合わせて首を突っ込んだだけ…と見るのが正解なのか。

 

「ふむ。…それではこの手の問答はやめにして、そろそろ交渉に移るか。これ以上話しても情報など出てこないだろうし、私もこれ以上出す気は無い」

 

さて、どんな無理難題を押し付けられる事やら…なるべく優しめの条件であることを願った。

 

「なに、そう警戒するな…私がしたいのはただ一つ。単なる協力体制の構築だけだ」

 

「は?」

 

一瞬、言われた言葉の意味がわからなくなった。

訳がわからない。

今眼の前の少年が言った事は遠坂凛が切り出そうとした事である。

言われた言葉の意味を飲み込んだ後、怪訝な表情で士郎を見る。

これで万事上手くいったなどと考える魔術師が居たらそれは馬鹿だ。

 

何せ、向こうにメリットが殆どない。

魔術師である以上、等価交換は絶対だ。事交渉ごとに至っては大きな意味を持つ。

 

ソレを完全に無視した内容。疑わない方がおかしい。

 

「ふざけてるわけ?それにそんなこっちにしか理がないような条件、逆に警戒しろって言ってるようなモンよ」

 

「裏などないさ。私はこの一件の早期解決を望んでいる。なんなら『自己強制証文(セルフ・ギアス・スクロール)』を使ってもいい」

 

「へえ、そこまで私を騙せる自身があるわけ?」

 

自己強制証文を持ち出す以上、不正は書かれているものに関してはできない。

ならば、櫻田士郎は遠坂凛にはわからない何かをしでかしてくるかもしれない。そう考えるのが普通だ。自己強制証文の契約は絶対に違反できない。

だがその契約の穴をつく程度、分けないということか。

 

「ハァ…そもそもな、私は魔術を使うが魔術師ではない」

 

「は?」

 

言ってる意味がわからない。

この男が身体強化とあとなにかしらの魔術を使ったのは明白。

 

「言うに事欠いて、魔術師じゃないですって?馬鹿にするのも大概に…」

 

「事実だ。君たち魔術師は魔術を研究し、根元に至るための研鑽を、犠牲を惜しまない。言ってしまえば魔術師にとって魔術とは研究対象と言ってしまえる」

 

その通りだ。遠坂の家も第二魔法の到達のために何代にも渡る研鑽を続けている。

 

「君にこれを言ったら怒るかも知れないが、私は魔術をそもそも手段としか見ていない。目的の為に唯魔術を使う者。そら、そんな者は魔術師とは呼べまい。言うなれば魔術使いとでもした方がいいだろう」

 

「成る程ね、今言ったことが本当ならアンタは魔術師なんかじゃない」

 

「それにだ、遠坂凛。君はこの同盟を受け入れざるを得ないだろう」

 

その通りだ。今彼の手にはクラスカードがある。

それを見て思わず凛は舌打ちをした。

アレをどうにかして、こっちに渡して貰わなければ大師父の任務をクリアできないのだから。

 

「そうね。こっちにはもともと選択権なんてなかった。いいわ一時休戦としましょ」

 

ルヴィアにもそう言っておくわ。と付け加える。

 

「でも一つ聞かせて。私たちと共闘してそっちに何かメリットがあるわけ?」

 

「ないな。強いて言うなら、アレと戦っている最中に妨害されると此方も命がいくつあっても足りないのでね。それにこんな危険物をいつまでも抱えていたくない」

 

嘘ではないが全て本音というわけではないのだろう。

 

「これは報酬の前払いだ」

 

そう言って櫻田士郎はライダーのクラスカードをこっちに渡してくる。

 

「どういうこと?」

 

「そちらにはそのカードの力を使うなにかしらの方法があると見た。ライダーとの戦闘後に襲ってきた二人組のうち一人がやっていたからな。使える戦力が増えるのは此方としてもありがたい」

 

「こっちが裏切るとか、考えないわけ?」

 

「こちらにはまだ手札が残っているのでね」

 

そうして櫻田士郎はアーチャーのクラスカードを見せてくる。

うっかりしていた。

アーチャーのクラスカードが行方不明だという話は聞いていた。

少し考えれば彼がアーチャーの英霊を単独で倒してカードを所持していることなど容易くわかるというのに。

自分たちの前任者以外でカレイドステッキなしに英霊と正面戦闘出来る化け物など眼の前の男の他にそうそういるわけがない。

 

「さて、もう交渉はいいだろう。知っての通りこちらも学生だ、これ以上遅くなると明日が辛い」

 

 

 

 

 

今日は色々ありすぎた。茜はそう回想する。

魔術の存在、常識を遥かに超える強さを持つ英霊、そしてそんな化け物と互角どころか打ち倒した目の前の兄。

 

ライダーと呼ばれた女の英霊を矢で撃ち抜く瞬間の鷹のような目は未だに頭から離れない。

見たことのない顔だった。

 

同時に士郎がどうしてこんなことに首を突っ込んだのかもわかった気がする。

底抜けのお人好しで、正義の味方。

そんな彼が、あんな危険物を放っておく筈がない。

 

そして、なぜ家族の誰にも伝えようとしなかったのかも。

 

あれは勝てない。

例え国の自衛隊員や特殊部隊であっても。

重火器がなんの役に立つだろうか。あんな速度で動かれては当たらないし、当たったとしてもどれ程の効果があるか…。

 

だから何となくわかった。士郎が一人で動いた理由が。

父がそれを知って特殊部隊を動かしたとして、そんなもの死体の山を作っただけで終わるだろう。

 

間近で見てわかった。その殺気の余波に当たっただけで理解した。

だから今更何で言わなかったのかなど茜も奏も聞くことはしない。

どうしてあんな強さを持ってるのかも聞くことはしない。聞いても教えてくれるはずも無いし。士郎も聞かれても誤魔化すつもりだ。

 

だが、これだけは聞いておかなければならない。

 

「シロちゃんは、これからどうするの?」

 

「無論、残った英霊を全て狩る。あれを放っておいて外に出たら未曾有の大災害になるのはいうまでもないだろう」

 

「…凛さんとかイリヤちゃんみたいなそれを倒す人がいるのに?」

 

「あの、カレイドの魔法少女か。無理だな。特にあのイリヤスフィールという少女は見たところ一般人だ。大方何らかの事故で巻き込まれたクチだろう」

 

あの愉快型魔術礼装のことだ。きっとロクでもない理由に違いない。と士郎は心の中で呟く。

 

「もう後1組、カレイドステッキを持った少女と相対したが…あちらもまだまだだったな。イリヤスフィールに比べればまだマシだが、まだ拙さが目立つ」

 

「え?もう一人いるの?」

 

「ああ、だがあの二人…魔法少女の方ではなく遠坂凛ともう一人の魔術師は聞いたところ仲が悪いらしい」

 

士郎にとっては遠坂凛とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの小競り合いは懐かしい限りだし、有事の際はちゃんと協力しつつ闘うのも知っている。まあ互いに悪態をつきながらだが。

まあ、そんな事を知らない茜たちの勘違いはそのままにしておこうと考える。

 

「そんな不和を抱えた状態で闘って勝てるほど彼らは甘くない。とはいえ、カレイドの魔法少女の力は魅力的だからな。一先ず協力関係に落ち着いたよ。まあ、もう一方の陣営は知らんが」

 

ここで、今まで黙っていた奏が話に入る。

 

「明日も行くんでしょ?」

 

「無論だ」

 

「私も行くから」

 

「来たところで何ができる。例え奏の能力で、兵器を量産したとしてそんなものが効くとでも?そもそも掠りもせんだろう」

 

「怪我した時の治療とか、アンタできるわけ?」

 

「基礎的な治療魔術はある程度使えるさ。それは他の二人とて同じだろう。イリヤスフィールの場合はカレイドステッキの方がどうにかするはずだ。あの様な巫山戯た見た目だがあれは魔術礼装としては最上位に当たるものだ」

 

故に心配はいらない。家でおとなしくしていろ。言外にそう伝えるが、きっと意味はない。

奏も茜も引くつもりの無い顔をしていた。特に奏は顕著だ。理由を知ってるだけに彼女は何を言っても聞かないことがわかってしまう。

きっと昔、修に起こった一件が未だに尾を引いてるのだろう。

その目はかつての自分がしていたであろう、そして聖杯戦争での元マスターやあの小僧のしていた諦めの悪い目だ。

無論、遠坂凛や衛宮士郎ほどの決意と覚悟を感じさせるものでは無い。

しかし、その目をするものが簡単に引くことをしないのは身を以て知っている。

ああ、かつてセイバーもこんな気分だったのか…と思いつつ。

まあ、味方も増えるわけだしこの二人の面倒くらいなら見る余裕があるだろうと結論づける。

 

「勝手にしろ。だが戦場で前線には入ってくるな。さすがに庇いきれん」

 

と言って話を打ち切った。

空は白み始めている。もうすぐ誰かが起きだす頃合いなので家路を急いだ。




少し書き方を変えてみました。前の方がいいか今の方がいいか感想欄で言ってくれるとありがたいです
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