城下町のダンデライオン ~赤い弓兵~ 作:じゃんぬ
戦闘シーンって難しいな
『───問おう。貴方が、私のマスターか』
闇を弾く声で彼女は言った。
『召喚に従い参上した。これより我が剣は貴方と共にあり、貴方の運命は私と共にある。───ここに、契約は完了した。』
そう、契約は完了した。
彼女がこの身を主と選んだように。
きっと自分も、彼女の助けになると誓ったのだ。
月光はなお冴え冴えと闇を照らし。
土蔵は騎士の姿に倣うよう、かつての静けさを取り戻す。
時間は止まっていた。
おそらくは、一秒すらなかった光景。
されど。
その姿ならば、たとえ地獄に落ちようとも、鮮明に思い返すことができるだろう。
「夢、か…」
懐かしい夢を見た。
かつて、己が二度参加した戦い。
7人の魔術師が、7基の英霊を従えて殺し合う戦争。
聖杯戦争。
1度目はマスターとして、あの青い騎士王と共に駆け抜けた。
2度目はサーヴァントとして、赤い魔術師に召喚され、自らの願いの為に裏切り、その後、嘗ての自分に答えを得た。
高校二年、生前、衛宮士郎として聖杯戦争に参戦した時の学年と同じ学年に櫻田士郎はなった。
だからだろうか、今頃になってこんなことを夢に見るのは。
「(今度、冬木を訪ねてみるのもいいかもしれんな…)」
この世界に冬木があると知ったのはいつ頃だったか
また、あの戦いが起こると言うのなら、また嘗ての未熟だった頃のように、巻き込まれる無関係な者を救う為、奔走しよう。
正義の味方。嘗て、目指したもの。
磨耗し、絶望した。だがこの理想は間違ってなどいない、そう答えを得た。
この体は死すればどうなるかはわからない、櫻田士郎として死に普通の人間のように召されるのか、英霊エミヤとして座に戻されるのか…だからこうして生きている、答えを記憶として持てている間はそれに殉じてやろう。
ただそう思った。
「(さて、考え込むのはこれまでにして、折角早く起こされたのだ。偶にはいつもより手の込んだ朝食でも作ってやるとしよう)」
「シロちゃん今日はすごい手の込んだものを作ったね〜」
「朝早く目覚めてしまってな、どうせなら手の込んだものを作ってみようと思ってな」
「美味しいです兄上!」
「美味しい、でも女子としてはかなり複雑な気分…」
____________________________________
「(家族の大体が家を開けるというから来てみたが…やれやれ、どうやら来て正解だったらしい)」
冒頭のあれから数日後、茜と奏と栞以外の家族が家を空けるというので、適当に理由をでっち上げ、護衛を撒き、冬木の街に来ていた。
そこかしこから感じるサーヴァントの魔力。
「(聖杯戦争…という訳ではなさそうだな。あまりに魔力が弱い)」
そして、士郎はとある方向を睨む。
「(この魔力…これは私か…?)」
とりあえず、自分の、英霊エミヤの魔力が感じられる方に移動することにした。
「おかしいな…この辺りから魔力を感じるのだが…」
たどり着いたはいいが、肝心のサーヴァントが見つからない。
そして、
「…!…なるほどそういうことか」
どうやらこの魔力の辺りは歪みが生じている。そして、そこに英霊の存在する世界が構築されているようだ
「取り敢えず中に入ってみるとしよう」
その歪みの内部に魔力を注ぎ込む。
激しい頭痛と吐き気に見舞われる。
その歪みに世界に自分を捻り込もうとする。
しくじれば死は間逃れぬだろう。だが、士郎は手を止めない。
そして、士郎の意識は暗転する。
「…上手くいったか」
数メートル先、少し離れた一直線上。
そこに『アーチャー』はいた。
裸の上半身に、腕と頭に聖骸布を巻きつけている。
見た目は聖杯戦争の時のアーチャーとは異なっていた。
『アーチャー』は
士郎は手に『アーチャー』と同じ得物、干将と莫耶を投影し、受け止める。
「…どうやら理性や感情はないと見ていいようだな」
理性はなくとも技術や戦闘法はそのまま、守りの硬い剣を使う
このままではサーヴァントのときより総合的な力が落ちた士郎が『アーチャー』に勝てる道理はない。
だが、
「気に入らんな」
理性も感情もなく、動くその様はまるで、世界に操られているときのようなもの
「どうあれ貴様に負けるわけにはいかん」
高らかに鳴る剣を打ち合う音。
互いの剣を壊し、壊されを繰り返す。
一瞬の油断で、隙で命を落とす。そんなことが当たり前の剣戟。
士郎が打ち合えるその理由は『アーチャー』が弱体化し、理性の剥奪がなされているため。
それでも、敵の一撃の重さは自分以上。打ち合うたびに大きな疲労が溜まる。
干将、莫耶を投擲し、少し離れた地面に突き刺す。
そして、新たな干将、莫耶を投影、打ち合う。
『アーチャー』を先程の剣に誘き寄せ距離を取りながら爆破する。
「(理性がないからか…先程から面白いように引っかってくれるな)」
理性がないからか、先程から単純な罠によく引っかっかる
しかし、士郎の身体も英霊の時とは違い革鎧も聖骸布もつけていない。
服は打ち合いでボロボロになり、筋力も低くなっているためか『アーチャー』の剣を受けながらだとあまり長くは戦えない。
つまり、出来るだけ短時間で終わらせる必要がある
「───Iam the bone of my sword(我が骨子は捻れ狂う)」
膨大な魔力の込められた捻れた剣
それを弓に番える
「偽•螺旋剣(カラドボルグⅡ)」
向こうが爆破に目を奪われているうちにカラドボルグを放つ
もし、奴に理性があったのなら、こんな初歩的なトラップになど引っかからないだろう。
矢は吸い込まれるように『アーチャー』へと向かう
そして、それは『アーチャー』の眉間を寸分違わず打ち抜き、跡形もなく消し飛ばす。
数秒後、
そこにはただarcherと書かれたカードが落ちているだけだった。
そういえば、アイアスをカラドボルグで貫けるのだろうかとふと、気になった。
次回は日常系に戻ります
あと、プリヤに櫻田家の面々は割とすぐ巻き込まれてくれますw