城下町のダンデライオン ~赤い弓兵~ 作:じゃんぬ
後悔先に立たずというか、平和に染まりすぎて注意力が散漫だとか、己を叱責する言葉が頭の中に何個も浮かんでくる。
遠坂凛がこの事件に介入してくるのは予想の範囲内だった、しかしまさか自分の妹が入ってくるなど士郎は予想外もいいところだった。
「(今はいつ悟られたか、ではなくどうやってこの場を切り抜けるかを考えるとしよう)」
彼女らには自分が戦っているところを見られた。
そのまま諭して返すとしても、まあどう考えても無理だ。
凛に頼んで記憶を消すなどするとしても、この世界では初対面だ。
加えて自分で消すというには何かボロがでる可能性がある。
まあ最悪士郎がやるとして、なぜこうなったかを思いかえしてみようと、士郎はライダーのクラスカード回収の後、凛のうっかりでも移ったか、などと失礼な事を考えながら頭に浮かべていた
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士郎はここ数日を冬木での本格的な対サーヴァント用の装備を整えるために費やしていた。
アーチャー時代に使っていた物に似せた革の鎧やらを揃えたりした。とは言っても似せただけで雀の涙ほどの防御力しかない上に聖骸布もない。聖骸布に関しては奏あたりに生成して貰おうと思ってもどの程度の値段が飛ぶかわからない上に、何かを感づかれても困る。
聖人の遺体を包んだとされる布、など何に使うのか聞かれてもこれと言った理由も思いつかない。真実を話すなど論外だ
で、そんな雀の涙ほどの防御力しかない鎧とは言っても戦闘の度に私服を無駄にするわけに行かないから用意するしかなかった。
「(さてここからどうやって理由をでっち上げ、冬木への滞在を認めさせるか、というのが問題だな)」
そう、問題は其処だ。
今は春の中頃、思いっきり学校がある。しかも認められたとして、護衛が付くのは必至。
友人の家に泊まると言っても同じく護衛が付く。
「(最悪行方を眩ますしか無いか、だがするにしてもこの容姿は目立ち過ぎる)」
この街から行方をくらませば、如何にか出来るというわけでもない。
変装道具一式を用意しても浅黒い肌は隠せない。勘のいい者は直ぐに気づくため、基本は野宿ということになる。
「(仕方あるまい。今日1日くらいなら誤魔化すことは可能だろう。考えるのは後にして今日はそろそろ行かなければな)」
時刻は午後11時ここから窓を抜け足に強化の魔術を仕掛け警備の者が気づかぬ内に街を出る。
「古風な手だが、これで少なくとも朝までは保ってくれると願いたいものだ」
ベッドに白髪のウイッグと人型にまとめた人形のような物を投影し、布団を被せる。後は同室の茜が部屋に入り、布団を引っぺがしでもしない限りは大丈夫だろうと士郎は判断し、窓から家を出て、強化の魔術を用い高速で走り抜けた。
その判断を数時間後、後悔するとも知らずに。
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自分の双子の兄が何か重大な事を抱えているのは多分事実だ。ここ最近双子の兄が何かを作成したりしているのを何度も見た。何を作っているのかまでは見せてくれなかったが。
櫻田士郎という人は何かを抱え込む嫌いがある。
これは自分たち家族やspを信頼してないとかではなく、巻き込まない為だとわかる。
それでも、兄が何かを抱え込んでいるならせめてその内容を知り支えたいと思った。
「で、それがバレ無いような発信機を作れっていうのの理由?」
「うん。お願い!カナちゃん!!シロちゃんが何かやってるのは合ってるから、絶対」
「で、だからなんで発信機なのよ?もしかしたら普通に友達と喧嘩した、とかかもしれないじゃん」
「多分そうじゃ無いよ。シロちゃんの様子がおかしくなったのあの私とカナちゃんと栞以外が家を空けてて、其処から帰った後からだもん。その時凄く疲れてたみたいだし」
「ちょっと見ただけで其処まで推測できるあんたに少し引くわ。でも、そういうことなら生成してあげる」
修の時のような失敗はもうしない為に、奏は今より十数年後くらいの超高性能の小型発信機を生成した。
「じゃ、士郎がなんか変な動きしたら私もついてくから」
「え!?なんで?」
「あんたが悪用しないかの監視の為よ。それに士郎に何かあったりしたら…」
もし、それが原因で死んだり、後遺症が残ったりしてしまったら、と続けようとして奏は言葉を飲み込む
「それじゃあ、仕掛けに行くわよ」
「うん」
こうして、姉妹は兄弟に発信機を仕掛け、動向を探ることにした。
「動いた!」
その夜の午後11時、早速標的は動いた。
「まさか、仕掛けたその日に動くなんてね」
「何かに乗ってるのかな、動きが早いよ?」
「車、だと思うけどそれでも規定の速度を大幅にこえてるわね、追うわよ!」
「うん、行こう!」
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アーチャーの時と同じように世界に介入する。
やはり、気を抜き、何かをしくじれば死、今いる場所が自らが生前通った高校であっても懐かしむことは無いし、余裕も無い。
そもそも生前の記憶は磨耗してしまったため殆ど思い出せないのだ
そしてサーヴァントがいるであろう世界に自らを潜り込ませた
そして、数秒たち、空間から歪みが現れ、サーヴァント『ライダー』があらわれる
「(アレを相手にするならば目に警戒しなければならんか)」
幸い知っているサーヴァントであり、目さえ使われなければ十分に勝機がある。
敵が高速で接近し、釘のような無銘の短剣を振るう。
それを、両手に投影した干将・莫耶で受け流し反撃する。
高速での連続攻撃、トリッキーなその動きに対し、士郎はあろうことか自らの急所をさらす。
しかし、それはブラフ。もしライダーが正気であったのなら成功しなかったであろうそれは見事ライダーに深い一撃を喰らわせた
宝具を使わせるまでに魔力、体力を削りきり、偽・螺旋剣でトドメを刺す。
その為には大きな隙を作る為にある程度敵を削る必要がある
ダメージにより後ろに引いたライダーに間髪入れずに接近する。
そして更に肩と足に傷を付ける。
その時何者かがこの世界の内に浸入した。だが、そんなことに気をとられている暇も無い。とりあえず入ってきたものは捨て置く。
狙うは短期戦。英霊と人間では覆しようのない体力の差。体力が尽きる前に奴を宝具の一撃により打倒可能なレベルまで落とす
奴の宝具、騎英の手綱は攻防一体の宝具。
熾天覆う七つの円環での防御は恐らく可能だが、一対一のこの状況では防げても魔力が尽きる。故に奴の宝具が発動されるまでのラグに全てを賭ける
ライダーが全力に近い感じで距離を取る為に後ろへ向け跳躍すると同時に
「
そしてライダーの宝具発動の兆しである魔法陣が出現する
「
「遅い。
勝敗は決した。ライダーの宝具発動より士郎が早かった。
周囲の空間をも削り取るそれは、ライダーの体をズタズタにし、それを消滅させる。
其処に残ったのは一枚のカードのみ。
「(今回もなんとか勝てたか。しかしあのライダーに私、もしやなぞっているのか?)」
しかし、回収した矢先、横槍を入れる者が現れる
「クラスカード『ランサー』
「其処の男!クラスカードを置いてこちらに向きなさい!」
乱入者の容姿は金髪の女性に黒髪の小学生。片方は魔法少女の格好をしていた。
なぜだろうかあの魔法少女みたいな格好を見るとトラウマを刺激されるような感覚があった
そして、金髪の方。何処かで見たことがある気がする。
もしかしたら生前、何か縁があったのかもしれない。
だが、今この場に於いては味方でない事は間違いない筈だと士郎は思考を巡らしていた。
そして、その二人はこちらに槍と宝石を向けている。あの槍は士郎がアーチャーとして参加した聖杯戦争にいたランサーの物であろう。だとすれば真名解放されると今の時点では分が悪い。その上あちらは警戒心を全開にしている。それは当たり前だろう。何故なら櫻田士郎は英霊にたった一人で打ち勝ったのだから
「子供の力を借りてまで横取り、とは感心しないな」
「あなたのような得体の知れない者にカードを渡すよりはマシですわ」
「ふん。私はコレが街に被害を加えん内に回収したり過ぎんのだが」
「ならばこちらにそれを渡しなさい」
「それは無理な話だ。なに、簡単な話だ。君たちと同じように私も得体の知れない者にコレを預けようとは思わんというだけだ」
「ッ貴方、状況がわかっていませんの?此方は二人に対し、貴方は一人。しかもライダーとの戦いによって消耗してますわ。これでもまだ反抗すると言うのなら力尽くで…」
「君たちがどうしようが勝手だが、君たちのような小娘相手ならどうとでもなるし、遅れをとるほど耄碌してもない」
士郎は幾つかの巨大な剣を投影する
「そら、串刺しになりたくなければ動かんことだ」
そういった次の瞬間上空に投影したそれを落とし、二人を剣の檻に閉じ込める。
「その剣は私がここから出れば消える。これに懲りたらハイエナのような真似はしないことだな」
そういって士郎はこの世界から出た。因みに剣の檻は士郎が出る直前に消しておいた