ダン間違短編集   作:渡り烏

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オラリオの外に灰色の大狼がいるのは間違いなのだろうか

 

 

 

 

「おい、本当に居るのかよこんな所に……」

 

冒険者の一人が確かめるように呟く。

ここはオラリオからそう離れていない森の中、川のせせらぎと鳥の囀りが響く穏やかな雰囲気に包まれていた。

それに加えて遠くから大量の水が流れ落ちる音があるので、どこかに滝があるのかもしれない。

 

「私に聞かれてもねぇ……でも対象が交易路の真ん中を突っ切って、このも森の中に入って行ったって証言が数多くあるし……。

集団で変なの食べたり吸ったりしてない限り、見間違いと言う線は薄いと思うわ」

 

「でもたった一匹なんだよな?

まあ、大きさがその話通りだったらの話だけれど」

 

「オラリオの冒険者も何人か見たって話だ。

それによるとだな……」

 

最近になってオラリオではこんな噂が流れている。

オラリオに繋がる東の街道上で、1頭の巨大な狼が出たという噂だ。

今の所大した被害は出ていないが、馬が動揺したりして荷崩れを起こしたり、馬車が横転して怪我人が出たと言う程度のものだ。

直接的に何もしていないので最初こそはギルドも様子を見ていたが、日が経つに連れてその目撃数はどんどん増えて行き、逆に何もしないのが不気味なものだから商人が怖がり始め、品物がオラリオに届かないことも出てきた為に、この4人の男女の冒険者が調査の為に雇われた。

女性の一人は所謂エルフと呼ばれる種族で、後の三人はヒューマンの構成で、オラリオに住まう神々が作ったファミリアと呼ばれるものがあり、4人とも数多く有る弱小ファミリアの内の一つに所属していた。

 

「まあ探索系ならあたし達の十八番だし、ちゃっちゃっと確認してギルドに戻ろうよ。

尾鰭が付いてるけれど、その通りならあたし等程度じゃどうにもならないって」

 

オラリオに流れている噂は次のとおりになる。

曰く、その狼は人間を一飲みに出来る大きさである。

曰く、その口にその巨体と同等の大きな剣を銜えている。

曰く、その姿は神々の話に出てくるフェンリルの様に美しかった等、枚挙に暇が無い。

 

「それでもこれで3日目だ。

そろそろこの森を半分はうろついたんじゃないかって気分だぜ」

 

「まあ食料は豊富だしいいんじゃないかしら?

それにこんなに綺麗な川もあるんだし、私的には結構気に入っているんだけれど?」

 

「そりゃお前がエルフだからだろう、俺としては早くホームに帰って酒でも飲みたいよ」

 

「えー」

 

そんなやり取りもこれで何回目だろうか。

いい加減飽きてきたと思っていたところで不意に視界が開けた。

 

「おおー」

 

「これは……絶景だな」

 

何らかの遺跡が残る開けた場所に出る。

そしてその遺跡とは石造りの橋が掛けられた崖で分断されており、川の水はその谷底に落ちていき、更に大きな流れを形成していた。

エルフの冒険者が橋の先にある大きな鉄製の門を指差す。

 

「遺跡にしては門が新しすぎない?」

 

「何らかの防錆処理が施されているのだろうな。

とりあえず今日の所はあそこで休息を取ろう」

 

ここまで来る途中で日が暮れてきている。

森の中で野営するのに、これほど好条件な場所は無かった。

4人は石橋を渡り鉄門を開ける。

メインは探索系だがLv2になって暫く経つ中堅組みであり、この重々しい門を開くのに難儀はしなかった。

 

「なに、これ……」

 

ヒューマンの女性冒険者が呟く。

彼らの目に飛び込んできたのは無数の武具と墓標が並び、その奥には巨大な墓標と剣が立てられていた。

 

「まさか……墓場か?」

 

「ちょっと、勘弁してよ……」

 

「そう言えばお前、その手の奴は苦手だったな」

 

ともあれ既に太陽は山の向こうへ隠れようとしている。

今日はここで野営するしかない。

4人は広場の中央に鎮座する墓標達を避けるように、片隅で野営の為に火を起こす準備を進めていく。

 

「しかし、なんとも奇妙な場所だなここは」

 

「ええ、まるで戦士達の墓場ですね。

あそこにある数々の武具、ちゃんと手入れをすればそれなりに価値のあるものだったでしょうに」

 

「でも流石にこれだけ丁重に弔われていると、手を出し辛いわ」

 

「確かにね……」

 

遂に日が落ち辺りが真っ暗になる中、夜空に上る満月と篝火の明かりだけ4が人を照らし出す。

森の中を進んできた疲労からか、森の民であるエルフの女性以外の3人は先に眠り始める。

 

「本当、何でこんな場所にあるのかしら……」

 

眼前にある墓標群を見据えながら彼女は呟く。

だがそれに応える為なのか、森の奥から獣の匂いが漂い始める。

 

「っ……なんだ?」

 

ファミリアでも探索に特化したメンバーであり、エルフの女性は勿論、寝ていた3人も眠りから覚醒して臨戦態勢に入る。

仮に狼や熊だった場合、この場で殺して保存食にするつもりではあった。

だが森の奥から現れたのは、そんなちゃちな獣などではなかった。

 

「……」

 

呆然と『見上げる』4人。

そこには自らの背丈の何倍もあるであろう巨狼がそこに居た。

月明かりにその体毛が照らされ神秘的な様相を醸し出し、正しく神話に出てくるそれに相応しいの気配を出していた。

 

ウルル……

 

巨狼が喉を鳴らす。

それはこの墓標に来た侵入者に対する警戒なのか、或いは相手の反応を見る為に出したものなのか。

 

「と、突然の訪問に気を悪くしたなら謝るわ。

私達は……そう、あなたを探し出して欲しいと依頼されてここまで来たの」

 

森の民であるエルフの女性が、何とか対話を試みようと大狼に話しかける。

だが当の狼は僅かに首を傾げるのみ。

 

「ここがあなたにとって大切な場所なら、私達は何もしないわ。

ただ、あなたがこの森の外にある街道で、その姿を見られてから行商人が怖がって、私達が住む街が迷惑しているの」

 

続けて出された言葉に大狼はなるほどと言った様子で頭を縦に振る。

どうやら話が分かる類のものらしい。

 

「なんとか、この場は何とかなりそうだな」

 

「ああ、墓に手を着けなくて正解だったぜ」

 

「でも、大きいとは言っても狼でしょ?

私達が束になって掛かれば……」

 

「ば、ばか!

何を言っているのよ!?」

 

グルルル……オオオォォォォォォン

 

ヒューマンの女性の声が聞こえたのか、大狼は唸り声を上げ、そして咆哮した。

 

「お、怒らないで!この馬鹿にはちゃんと言っておくから!」

 

だが大狼は既にエルフの声が耳に届いていない。

一吼えすると巨大な墓標の元へと歩みだし、それの脇に突き刺さっていた巨大な剣の柄を咥え、そして大地から抜き放った。

 

「ああ、神様……」

 

「ぶ、武器を使う狼だと!?

そこまでの知性があるのか!」

 

「これは……やべぇな」

 

前代未聞のその姿に4人は狼狽する。

エルフの女性は自らが敬愛する神に祈り、ヒューマンの男性二人は大狼から放たれる威圧に翻弄され、ヒューマンの女性は既に遅いが自らの口を抑えて青褪める。

そして、大狼はもう一吼えすると4人に切りかかった。

 

 

 

4人は重傷を負いながらもなんとかあの場から逃げ切り、ポーションで身体を癒してからオラリオへ帰還できた。

墓標のある広場からあの大狼は追わなくなり、4人の背中が見えなくなるまで睨みをきかせるのみだったのだ。

その後あの大狼は、エルフの言葉を聞き入れたのかあれから街道に姿を現すことはなくなり、行商人の間ではオラリオの冒険者に討伐されたのだろうと、勝手に思い込み滞っていた流通を再開し始めた。

 

だがオラリオの神々は知っている。

この街の外に広がる森の中に、自分達と遠くも近しい存在が居る事を……。




うん、息抜きのつもりで書いたんだ。
だからダンまちでやる意味なくね?と言われても私は謝らない
誰かこれを元に続きを書いてもいいのよ?
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