そして所々ちりばめられているAC要素。
作者は間違いなくフロム患者です。
冒険者の街、ダンジョン都市、神々が住まう場所、世界の中心、色々言われており、あらゆる国から独立した街がある。
街の名はオラリオ、その片隅に一軒家ほどの大きさの小さな家があった。
そこは知る人が居れば余り近寄りたくは無く、そして知らないものがそこで無法を行えば、漏れなくダンジョンの入り口にその報いを受けた姿を晒す事になる。
その家の名は『モリガンファミリア』、破壊、殺戳、戦いの勝利をもたらす戦争の女神の名を冠した、立派な神の家である。
「今戻った」
「お帰りなさい、今日の『報酬』はどうでした?」
完全武装した男の声に、赤い絹糸の生地で出来た衣服を身に纏い、灰色の長髪を持った女神、モリガンはそう応える。
「まあまあと言った所だ。
少し出し渋ったが、少し『お話』をしたら素直に差し出してくれたよ」
「それは重畳、良い働きにはそれなりの報酬が伴うのは、良い行いの第一歩です。
それなくば、世の中は回りません」
「まあ、それも仕事の内容によるが、何であっても仕事は仕事だ」
ガチャリと金貨を入れた袋を机の上へ無造作に載せ、その仕草に似合わず壮年の男は、女神の対面にあるソファーへ静かに身を沈める。
装備は黒一色で統一された、ゴブニュファミリア製の対魔法処理を施した防具一式、そしてショートボウにバスタードソードに、同じく対魔法処理をしたバックラーと、単独で活動している冒険者にしては上等な装備であった。
そのどれもが使い込まれ、弓には彼の手の形に凹んだ跡があった。
直ぐにと言うわけではないが、このままでは破損は免れないだろう。
「この弓もそろそろ替え時かしら、これ以上使うと折れてしまいそうだわ」
「ああ、今度は複合弓でも頼んでみるか。
ダンジョンの素材(ドロップ)で出来たものなら良い物もあるだろうし……こいつも替え時だな」
今まで愛用していた剣だが、その刀身には目に見えない疲労が見えていた。
今日もあの穴倉(ダンジョン)で振っていた時もそうだが、如何せん刃が当たったときの違和感が出てきている。
「じゃあ今日のステイタスの更新をしましょう」
「ああ、頼む」
男は女神の言葉を聞き、なんの躊躇も無く鎧と下着を脱ぎ、モリガンは手馴れた動作でさっさとステイタスを更新し、紙に写して彼に見せる。
クロウ・ネイヴァル
Lv6
力:D=530→D=568
耐久:C=682→B=701
器用:C=678→C=699
敏捷:B=784→A=804
魔力:H=175→H=177
《魔法》
【】
《スキル》
【暗黒鳥(ダークレイヴン)】
・格上と相対した際のステイタス補正
・武器に貫通属性付与
・心が折れない限り常時発動
「1足りなかったか」
「1足りなかったわね」
―ハァ……―
互いに呟きながら男、クロウとモリガンは溜息を吐いた。
これでもかなりの実力なのだが、やはりここまでステイタスが上がると、どれほど激闘をしても上がり難くなるのが常である。
「やはりこうも上がり難いと、稼ぎの向上が難しいな」
「私としては、唯一の子供である貴方が無事であれば、それだけで十分なんだけれど……。
今の生活だって悪くはないし」
「それでも我が主神には、外で恥かしい思いをしないようにさせたいのだよ。
そんな可愛い烏の我侭だ」
それでもクロウ自身が稼いでくるヴァリスは、単独で行動をしている割には上位に食い込む物で、二つ名は『黒色傭兵(レイヴン)』と呼ばれ、彼と組んだ冒険者からは概ね―敵にしなければこれほど心強い奴は居ない―等の評価を受けていた。
そんな風に主神とじゃれ合っていると、時計の鐘が鳴る。
「あら、もうこんな時間」
「確か今日は神会だったか?
今日の犠牲者が楽しみだな」
「貴方って、本当にその感覚(ネームセンス)はこっち寄りよね」
クロウのネーミングセンスは神様寄りであり、神会毎に命名される二つ名(犠牲者)が発表される度に、ここで笑っている。
彼がまだ若輩の時名立たる二つ名を聞き及んだ際にはどん引きし、主神であるモリガンに懇願した所で、彼のネーミングセンスが露呈したと言う裏話があった。
「まあ俺の時は本当に感謝しているよ。
しかし、ここに来てからもう15年か……年は取りたくないな」
「まだ31に成ったばかりじゃない。
これからが一番人間として体力や気力が充実する時期よ?」
「ああ、数え年でこの年齢になったときから言われ続けているさ」
そんな他愛の無い会話を続けていると、玄関のドアがノックされる。
ノックの回数は4回、礼儀正しいノックなので手早く身奇麗にして二人は頷く。
そしてクロウは玄関のドアを開けた。
「どちらさまで……ってヘルメス様に万能者か」
「やあお久しぶり」
「お久しぶりですクロウさん」
相手が顔見知りだと確認したところでクロウは二人を中へ通す。
先程のノックのこともあり、きっと何かしらの依頼だろうと当たりを付けて、クロウは女神が待つ応接室へ案内する。
「あら、ヘルメスじゃない」
「やあモリガン、今日はちょっと頼みたいことがあるんだ」
「ここへの依頼は高いわよ?
その分依頼の内容は分け隔てないけれど、無理そうだったら断るわ」
「いや、今回はゲスト二人とその護衛と一緒に中層まで潜って欲しいだけなんだ。
報酬は20万ヴァリス」
「ゲスト……ね」
モリガンは訝しげな視線で客人達を見る。
片や自由人、片や苦労人、プラスマイナスでギリギリ信用できると言う具合だ。
そして傍で待機しているこのファミリア唯一の団員に目線を向ける。
「俺は貴女の判断に任せる」
「……」
口元を隠してモリガンは目の前の男神を見る。
当の本人はニコニコとした表情で女神に相対し、付いて来た眷族は傍目では平静を装っているが気の毒な位心労が溜まっている。
そして女神は一旦瞼を閉じ、そして見開く。
「ヘルメス、一つ尋ねたい」
口調を変えたのを感じ取り、ヘルメスとアスフィが姿勢を整える。
「追加報酬は覚悟して置くように」
「いやぁ、やっぱりあの女神には敵わないなぁ」
「どう考えても貴方の自業自得です。
追加報酬分の10万ヴァリス、貴方が払ってください」
「そ、そんなぁ!」
「で、その坊主共は中層で迷子と言うわけか?」
主神と眷属のコントを断ち切るようにクロウが割って入る。
替え時になっていた装備を手早く手入れし、二人を大して待たせることなく装備を整えたのだ。
「ああ、だけど目撃者の証言から少し時間が経ちすぎている。
最悪遺体か遺留品でも持ち帰れれば良いけれど、僕の勘では彼らはまだ死んでいないと思っている」
「まあ、あのリトル・ルーキーだ。
色々曰くがある奴ってのは、一概に死に難いってもんだ」
「それは君の経験則からかい?」
「その様な物だ」
男神と駄弁っているとダンジョンの入り口に到着した。
正直疲労した身体でまたここに来たくはないのだが、彼の主神が行けると踏んだのだ。
その期待に応えないわけにはいかない。
ここへ向かう前に疲労回復のポーションと、治癒のポーションを飲み身体的な疲労は回復している。
だが精神的な疲労はまったくと言って良いほど回復していないので、これが終わったらホームでぐっすり寝たい気分だった。
「やぁお待たせ、話は付いたかい?」
「ん?ああ、なんとか落とし所は着いたよ。
……で、その彼が君が言っていた心強い助っ人かい?」
「クロウ・ネイヴァルと言う、貴女が女神ヘスティアで?」
「ああ、そうだけど……ってクロウ・ネイヴァル!?
あの『黒色傭兵』の?!」
ヘスティアの驚きの声に、周りに居た救助隊らしき冒険者達も身構えている。
クロウ……そしてモリガンファミリアの評判は、良くも悪くもその営業姿勢にある。
依頼達成率の高さもそうだが、その後に待っている報酬に対する絶対的ながめつさからでもある。
少しでも渋れば少々『お話』をするのは当たり前、払える資産があるにも拘らず渋り続ければ、その依頼主はその資産ごと闇に葬られると言われ、実際彼のファミリアにそうして姿を消された者は、既に二桁後半に差しかかろうとしているとの噂だった。
だが本当に払えない状態であるのならば払い終えるまで待つのと、仕事の斡旋をするだけの温情もあり、一概に悪評ばかりではないと言うのが性質が悪い。
「今回は僕のファミリアから報酬を払う事にしているから、そう身構えないで欲しい。
彼はあくまで保険だし、それに口も堅いからね」
「俺としては報酬をしっかり払ってもらえるならそれで良いんだがな。
だから今回に限っては、貴女が心配する事は無いというわけだ」
「そ、そうかい、それなら良かった」
そう言いながらクロウは改めて自分の装備を確かめ、何の不備もないことを確認すると、恐らく本当の依頼者である女神に何時でも行ける旨の意思を示した。
「噂の黒色傭兵と肩を並べられるなんて光栄です」
「君は?」
「タケミカヅチファミリアの桜花と言います」
「なるほど……まぁ、余り気にするなよ?」
クロウはそう言いながら桜花の肩を叩く。
一瞬彼の体が固まったように思ったが、クロウはそんな事を気にせずにダンジョンの入り口へと向かう。
「さて、噂のリトル・ルーキー、どう言う奴なのか楽しみだ」
烏の様な目付きでそう呟き、彼ら一行はダンジョンの中へと消えて行った。
本命の話がなかなか書けなくて、むしゃくしゃして書いた第二段です。
気が向いたらまた何か書くかも。