Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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デジャヴ

「イテテ、あの女………容赦なくぶん殴りやがって」

 

「悪いな、乙坂」

 

乙坂の隣を歩き、乙坂の家へと向かう。

 

何故乙坂の隣を歩いてるかというと、俺が個人的に心配だったので送っている。

 

「アンタが謝ることじゃない。で、アンタも僕と同じクチなのか?」

 

「違う。俺は、友利に助けられたんだ」

 

「助けられた?」

 

「能力に目覚めて、自暴自棄になり、ストレス発散と日々の生活費の稼ぎの為に不良を狩って、生活してた俺を、友利は助けてくれた。まぁ、他にも色々あったが、とにかく、俺は友利に救われたんだ。だから、アイツの為にこの力を使ってやろうと思った。それだけだ」

 

「ふ~ん…………好きなのか?」

 

乙坂の質問に思わず、転びかけた。

 

「好きね………正直分からん。アイツの事は好きだが、それが愛情か友情か。それか分からん」

 

「…………そうか」

 

乙坂の家に着き、俺は帰ろうと乙坂に声を掛ける。

 

「じゃ、俺は帰るな」

 

「帰るのか?折角だ、上がって行けよ」

 

「いいのか?じゃ、お言葉に甘えるぞ」

 

「ああ。(あれ?どうして僕はコイツを誘てるんだ?)」

 

乙坂が何故か不思議そうな顔をするが、取り敢えず後に続いて階段を上がる。

 

「ただいま~」

 

「おかえりなさいませ!有宇お兄ちゃん!」

 

扉を開け、乙坂が言うと中から元気いっぱいの声が聞こえた。

 

お兄ちゃんってことは、妹さんか。

 

「わあっ!?どうしたの、その顔!?」

 

乙坂が顔に怪我をしているのに気付き、妹さんが慌てる。

 

「えっと、体育の時間にちょっと……な」

 

「あ、そうそう!叔父さんから凄い話を聞いたのですぅ!あゆと有宇お兄ちゃんが星ノ海学園の中等部と高等部に特待生として転入すると聞いたのですぅ!本当なのですか?」

 

「(マジかよ)……まぁ、本当だ」

 

「おお!それは家計が助かるのですぅ!それと叔父さんからお祝いに美味しいものが届くそうですぅ!」

 

妹さんは両手を上げて大喜びする。

 

本当に中学生か?

 

言動が幼すぎる気がするぞ。

 

「でも、いいのか?学校が変わるだぞ。友達とも別れることになるし」

 

「今は、スマホで顔を見ながらおしゃべりできるので、それほど寂しくはないのですぅ!」

 

「……そうか」

 

「ところで、そちらの方はどちらさまなのですぅ?」

 

妹さんが俺に気付き、声を掛けて来る。

 

「星ノ海学園の生徒会の一之瀬響です。お兄さんは、星ノ海学園に来たら、すぐに生徒会の仕事に参加してもらうから、そのことでお話をしに上がらせてもらったんだ」

 

「おお、そうでしたか!乙坂歩未と申します!有宇お兄ちゃん共々、よろしくお願いしますのですぅ!」

 

「折角だ、晩飯も食べて行けよ」

 

「いや、流石にそこまでお邪魔するわけには」

 

「それは名案なのですぅ!是非食べて行ってください!」

 

妹さんもとい、歩未ちゃんに押し切られる形で、俺はそのまま乙坂家で晩御飯をごちそうされることになった。

 

台所では、歩未ちゃんが鼻歌を歌いながら料理をしてる。

 

「乙坂、つかぬ事を聞くが、親御さんは?」

 

「離婚した。で、僕らを引き取った母親は、親権を叔父さんに押し付けて、どっかに消えた」

 

「………すまなかった。変なこと聞いて」

 

「いや、気にしてない。家族は僕と歩未の二人だけ。そう思うことにしたから」

 

乙坂の奴は結構、強いな。

 

親に捨てられたにも関わらず、妹と二人で強く生きようとしてる。

 

そうしてる間に、晩御飯はできたらしく、俺と乙坂の前に料理が置かれる。

「今日の夕飯は、有宇お兄ちゃんの大好きなオムライスなのですぅ!」

 

「へぇ~、うまそうだな。ありがたく頂くよ、歩未ちゃん」

 

「はい!どうぞなのですぅ!」

 

スプーンを手に取り、いただきますと言ってからオムライスを食べる。

 

一口目を入れて、俺が思ったことはこれだ。

 

(甘っ!?)

 

なんだ、このオムライスのライスは!?

 

甘いぞ!

 

「どうでしょうか?」

 

歩未ちゃんが目を輝かせて聞いて来る。

 

「えっと………このライスに何を入れたの?」

 

「それは、乙坂家特製のピザソースなのですぅ!お口にあったでしょうか?」

 

正直に言うと、甘い。

 

少なくとも大人の舌には合わない。

 

だが、こんなに目を輝かせてる子にそんな事は言えない。

 

「あ、ああ………美味しいよ」

 

「やったー!」

 

喜ぶ歩未ちゃんを横目にし、乙坂を見る。

 

(毎晩、こんなに甘いのか?)

 

(毎晩どころか、毎日だ)

 

乙坂の苦労が目に浮かんでくる。

 

こればっか、食ってたら、将来糖尿病まっしぐらだな。

 

「ああ、お母さんのオムライス、久々にたべたいなぁ」

 

「……母さんの事は忘れろ」

 

「まだ怒ってるの?許してあげてほしいのですぅ」

 

「僕たちに両親はいない。家族はお前と僕の二人だけだ」

 

「そっかぁ。でもね、あゆ時々思うんだ。もう一人家族が居たような気がするのですぅ」

 

「それは気のせいだ。兄妹は僕とお前だけ。他にはいない」

 

歩未ちゃんの話に乙坂は冷たく言い返す。

 

「気がするって言えば、お客さんがうちに来たのって懐かしい感じがするのですぅ」

 

「そうなのか?」

 

「それも気のせいだ。うちに人が来たのは今日が初めてだ」

 

乙坂と歩未ちゃんの話に耳を傾けながら、甘い以外は普通においしかったので、なんとか完食する。

 

そして、食後のお茶をもらい、帰ることにした。

 

「今日は悪いな。ごちそうになって」

 

「いや、別にかまわない。誘ったのは僕の方だ」

 

「明日は引っ越しだろ。学校が終わってからになるが、手伝いに行くよ」

 

「悪いな、頼むよ」

 

「おお、響お兄ちゃん、明日も会えるですか?」

 

歩未ちゃんが元気な声で聴いて来る。

 

「ああ、手伝いに行くよ」

 

そう言って、歩未ちゃんの頭を撫でる。

 

歩未ちゃんは気持ちよさそうに目を閉じる。

 

その瞬間、何かが頭を過った。

 

にこにこと笑う、女の子。

 

その横で仏頂面をする男の子。

 

そして、その様子を見て笑う男の人と女の人。

 

この光景……………どっかで見たことがある?

 

「響お兄ちゃん?」

 

「どうした、一之瀬?」

 

「あ……いや、なんでもない」

 

いや、気のせいだ。

 

ただのデジャヴに決まってる。

 

そう自分に言い聞かせ、俺は乙坂家を後にした。

 




歩未ちゃんは響に懐きました。

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