Charlotte~君の為に……~   作:ほにゃー

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転校

乙坂が転校してくる日。

 

俺たち生徒会メンバーは職員室の前に集まっていた。

 

「失礼しました」

 

乙坂が出て来て、職員室の扉を閉めると友利が声を掛けた。

 

「ようこそ、我が校へ」

 

「うわっ!」

 

俺達の顔を見て、乙坂は溜息を吐く。

 

「……ここでは全生徒が特殊能力者なのか?」

 

「いえ、その可能性がある者、前兆がある者の方が大半です」

 

そう言えば、その辺の事はあまり聞いてなかったな。

 

全員が全員、特殊能力者ってわけじゃないんだな。

 

「でも、それだけの理由で転入だなんて」

 

「昔、我々の様な特殊な力を持った者は、尽く脳科学者のモルモットにされたんっすよ。一度捕まったら人生おしまい」

 

「はっ!そんな大げさな」

 

乙坂が鼻で笑う。

 

「私の兄のことなんですけどね」

 

友利があまりにも冷静にそう言う物で、俺と乙坂は言葉を失った。

 

「能力者を守る為にある人物が今のシステムを作り出した。兄は間に合いませんでしたが」

 

友利の奴、兄貴が居たのか。

 

まぁ、そんな事情があったら言いにくいだろうけどな。

 

「でも、お前は僕にその力を使えと言ってるじゃないか」

 

「生徒会だけは特別なんです」

 

「お前の様に、能力を悪用する特殊能力者を保護又は脅して力を使わせないようにする。それが生徒会が特別に能力を使うことを許されてる理由だ」

 

「だけど、なんで僕がそんなことを!」

 

「まぁまぁ、いいじゃねぇかよ」

 

怒った様に怒鳴る乙坂の肩を叩き落ち着かせる。

 

「その代わりにそれ相応の手当ても出る。家計が助かるし、歩未ちゃんに余計な負担を掛けさせなくても済むぜ」

 

俺がそう言うと乙坂は少し悩むが、結局は折れてくれた。

 

そして、乙坂のクラスは俺達と同じだった。

 

「乙坂有宇です。陽野森高校から来ました。よろしくお願いします」

 

乙坂は俗に言う、イケメンスマイルで笑う。

 

クラスの女子たち(友利を除く)から黄色い歓声を浴び、男子(俺と高城を除く)から嫉妬のまなざしを受けている。

 

だが、クラスに俺と高城、友利の三人が居ることに目を見開き驚いていた。

 

一時間目の後、乙坂は俺の時と同様に質問攻めに合っていた。

 

昼休みになると流石に人も乙坂への質問を止めた。

 

「乙坂さんは、お昼はどうされるんですか?」

 

高城が前を覗き込むように、乙坂に尋ねる。

 

乙坂は慌てて、何かを隠し、答える。

 

「いや、何もなくて」

 

「では、一緒に学食に行きましょう。案内します」

 

「そりゃ、助かる。…………アイツは誘わないのか」

 

乙坂が友利の方を見てそう言う。

 

「貴方が良ければ誘っても構いませんが」

 

「………いや、いい」

 

友利は誘わずに、三人で歩きながら学食へ向かうと既に、席は満席で空いてるところは一つも無かった。

 

「空いてないな」

 

「では、購買でパンを買って教室で食べましょう」

 

「いや、無理だ。購買もかなり混んでる」

 

俺が購買の方を見ながら答えると、高城は笑顔で返してきた。

 

「ご安心を。そこは私の能力の見せ所です」

 

「使っていいのか?」

 

「監視カメラの死角から狙います。ですが、あまりの早さ故、どのようなパンになるかは運次第です」

 

目つきを鋭くし、ポッケか小銭を出した瞬間、俺達の視界から高城の姿は消え、学食は大惨事になり、ガラスは破壊された。

 

「お待たせしました」

 

俺と乙坂の背後から声を掛けられ、振り向くとそこには血まみれで笑顔の高城がパンを手に立っていた。

 

「おっ、今日はカツサンド。当たりですね」

 

「だ、大丈夫なのか?」

 

「制服の下に防具を着ているので、特に深い傷はありませんが」

 

いや、前も言ったけど頭から血が噴き出てるからな。

 

教室へと戻り、高城が体を張って買ってきてくれたサンドイッチを手に取っる。

 

「全部カツサンドじゃないか」

 

「瞬間移動ですよ。品定めする暇があるとでも」

 

「しかも潰れてるぞ」

 

「瞬間移動ですよ。物を掴む力のさじ加減が可能とでも」

 

不完全な能力だとでも言いたげな目をして、乙坂はカツサンドの袋を開ける。

 

そして、席で一人、コンビニ弁当を食べる友利を見る。

 

「生徒会長なのに女友達もいないのか?」

 

「対象の人間以外から視認されない。言い換えれば、それ以外の人間からは見えるんです。それなりの理由があるとは言え、彼女が能力を使って暴力を振るってる姿を周りの人間が見ていたら、どう思うでしょう。監視カメラにはただの喧嘩にしか映らない。そんなことをしていたら、嫌われ者になるのは当然かと」

 

話を聞いて、あの日、友利にリンチしていた女生徒の事を思い出した。

 

今思い出してもむしゃくしゃする。

 

「でも、中学生になるまで、彼女はそんな性格ではなかったそうですよ」

 

「え?」

 

「おっと、こちらに来ましたよ」

 

高城の言う通り、友利が弁当を食べながらこちらへとやって来た。

 

「協力者が現れます」

 

「は?どういう意味だ?」

 

「生徒会室に集合って意味だ」

 

協力者がなんなのか分からない乙坂は、俺達の後を不思議そうに付いて来て生徒会室へと着く。

 

「一体何が始まるって言うんだ?」

 

乙坂がそう言った直後、外から濡れた足音が聞こえ、そして、扉を勢いよく開けて入って来た。

 

「うわぁ!?なんだこいつは?」

 

乙坂の声を無視し、協力者は地図の前に立ち、指を一本差し出す。

 

水滴が落ち、地図を濡らし、協力者は口を開く。

 

「能力は………念写」

 

そう言い残し、協力者は生徒会室を出て行った。

 

「今のは!?」

 

「特殊能力者の場所と能力を教えてくれる協力者だ。見た目が気になるかもしれんが、時期になれる」

 

「難波高校か。待ち伏せすっか。早退していくぞ」

 

「え!?何しに?」

 

「捜査に決まってるっしょ」

 

「警察でもないのに?」

 

そう言う乙坂に友利はあきれるように溜息を吐く。

 

「その警察に見つかりでもしたら、その特殊能力者の人生は終わりなんです」

 

「マジかよ」

 

高城の説明に乙坂までも溜息を吐き、俺達は難波高校へ向かった。

 


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